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日本大学 vs 専修大学(関東大学ラグビーリーグ戦G2014年度 1-2部入替戦)の感想

2014-12-23 17:02:02 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


今シーズンもこの日が来てしまった。リーグ戦のシーズン締めくくりとなる入替戦は、一方で一足早く来シーズンに向けたスタートを切る4チームの戦いでもある。メンタル面も含めて文字通りの「入替戦」なのだ。もっともそんなことを言っていられるのは特定のチームに偏らずにゲームを見続けたいリーグ全体を応援するファンだからこそ。関係者にとっては胃が痛くなるような「絶体に負けられない80分間」が始まるのだ。

本日の第一試合では1部リーグ7位の日大に2部リーグ2位の専修が「悲願の復帰」をかけて戦う。専修大学に2部降格したのは2002シーズンのことだったが、正直そんなに時間が経っていたのかという想いを抱いてしまう。その間にも拓大、立正大そして山梨学院が入替戦に勝利しているが、専修は入替戦にも届かない状況が続いていた。永年リーグ戦Gを観てきたファンでさえ、専修が1部リーグで躍動していた姿が記憶の彼方に行きそうな状態。

そんなことを考えながらハンドルを握って熊谷に向かったのだが、まずはスタンドに入ったときに中央席の右サイドを埋めた数多くの専修大学ファンの熱気に圧倒された。専修ファンにとっては千載一遇のチャンスとばかりに居てもたっても居られずやってきたに違いない。リーグの戦績も2位になったとは言え圧倒的な強さを見せた拓大に比べれば何とか手にした入替戦の切符。しかも相手は実力を発揮出来ずに7位になってしまった難敵の日大だ。昇格は難しいことが予想されるような状況だからこそ力一杯応援したい。それに引き替えと言っては失礼だが、キックオフ10分前の段階でも左サイドは閑散としていて寂しい状態。

リーグ戦史上、7位で降格したチームはないという事実はあるにしても、日大が1部復帰を目指してここで戦ったときはOBも含めて多くのファンが駆けつけていたことを覚えている。リーグ戦Gの中でもとくに大人しいのが日大ファンという現実はあるにせよ、国立の大舞台に立った後はずっと芳しい戦績を挙げているとは言い難いチームに対して、ファンの気持ちが離れているのでなければいいのだが。



◆キックオフ前の雑感

日大はFW第1列のPR3伊藤(4年生)以外はリーグ最終戦となった法政戦と同じメンバー。もちろん立正大戦勝利の立役者となったSH有久(3年生)もスタメンで大型SO金(2年生)とHB団を組む。立正大戦の薄氷を踏むような逆転勝利を経てようやくチームになってきた日大。シーズン当初から有久やWTB南波らのベテランを起用していれば、試合は翌日で会場は別だったかも知れないと思うと複雑な気持ちになってしまう。

専修の出場メンバーのことは分からない。ただ、専修に関しては春のYC&ACセブンズでの大健闘が強く印象に残っている。強力な突破役こそ居ないが、ボールをテンポよく動かしていくラグビーで「セブンズに専修有り」をしっかりアピールしていた。リーグ戦では苦戦したとは言え、春に得た自信はチームの支えになっているはずだ。15人のチームでどんな戦いを見せてくれるだろうか。



◆前半の戦い/キックオフから数分にしてラグビーの内容の優劣が明らかに

この時期の熊谷にしては珍しくほぼ無風の状態のなか、メインスタンドから見て右側に陣取った日大のキックオフで試合開始。リーグ戦で不振だったとは言え、日大が1部チームの貫禄を見せて専修を圧倒と誰もが予想しただろう。だが、キックオフから数分にして、ラグビーの内容では専修が日大を圧倒的に上回っていることが明らかとなる。ブレイクダウンで時間をかけずにボールをテンポよく動かしてグランドをワイドに使うラグビーに、日大はディフェンスで対応が遅れて翻弄されるまさかの展開。日大のBKが1対1でしっかり止めていることもあるが、専修に突破役が居たらトライの山が築かれそうな感じすらある。

果たして10分、日大が自陣で反則を犯したところで、専修はSH古川がタップキックから速攻で攻めてインゴールに飛び込み5点を先制(GKは失敗)する。日大の対応が遅れ気味とは言え、ここまでスムースに15人でボールを動かせるチームは1部リーグにもない。入替戦ということは忘れて、すっかり専修のラグビーに魅了されてしまった立ち上がりだった。ここで事の重大さに気づいた日大が反撃に転じる。以後、専修は殆ど自陣での戦いを余儀なくされる苦しい展開となる。しかし、日大はプレーが雑になるなどミスを重ねてなかなか得点を挙げられないままに時計がどんどん進む。

アタックでは魅せる専修もなかなか決めきれない。もし日大FWがSHにしっかりプレッシャーをかけてきたら専修がここまでボールが動かせたかどうか。ここで、何となくだがこんなラグビーができる専修がリーグ戦で他チームを圧倒できなかった理由が分かった。しかし、日大にミスが多いとは言え、自陣ゴールを背負ったような状態になっても日大の前進を許さず粘り強く守る。専修に頼みの13番マイケルは徹底マークに遭っており、マイケルを止められたら攻め手がなくなってしまう日大は苦しい。

テリトリーでは日大が圧倒しながら、ラグビーの内容では専修が上回るというアンバランスな展開の中でようやく31分に日大が一矢報いる。専修陣22m内(右サイド)のラインアウトから鮮やかなオープン展開で左WTB南波がインゴールに飛び込んだ。GKも難なく決まると思われる位置だったが、専修がプレースキッカーにプレッシャーをかけてキックは右側に逸れる。後半の展開を考えれば貴重な2点を阻止した専修のファインプレー、逆に言えば日大にとっては残念なプレーとなった。その後も南波は随所で元気のいいところを見せた。もし日大が勝っていればMOM間違いなしという選手も実はシーズン半ばからの登場。何とも複雑な心境になってしまう。

その後は一進一退の攻防となるが、終了間際の42分に専修がPGで3点を追加し、8-5とリードして前半が終了した。点数だけからなら拮抗した展開が想像されるが、実際に観戦していてよくこの点差で済んだという内容。専修の明快なコンセプト(ボールをテンポよく動かしてゴールを目指す)の前に、アタックがスムーズにいかない日大は個の強さで対抗するしかない。後半の体力勝負にかけるという手もあるが、1部残留に赤に近い黄色信号が点ったような前半の戦いぶりだった。



◆後半の戦い/日大が意地を見せるも専修の勢いは止まらず

このままでは不味いと思った日大ファンに対し、右サイドに陣取った専修の応援団からは「行けるぞ!」の活気ある声が飛ぶ中で後半が始まった。前半の戦いで明らかに自信を掴んだ専修が後半も積極的に攻める。マイボールキックオフのボールを確保に成功してBK展開で前進を図る。しかしWTBで勝負!というところでDFのウラを狙ったキックがチャージに遭い日大に逆襲を許す。入れ替わりのような形で日大がチャンスを掴むが、専修は自陣10m付近でのラックアンプレアブルに救われる。何となくだが、余裕が出てきたところでのミスは得てして相手に流れを渡してしまうもの。

5分、専修は日大のキックに対して自陣から果敢に攻めるものの、パスミスを拾われて日大の左WTB菅沼にインゴールまでボールを運ばれてしまう。金のGKも成功し、日大は12-8と逆転に成功。さらに日大は直後の8分、キックオフに対するカウンターアタックから細かくボールを繋いで前進を図り、ラストパスがこの日絶好調の南波に渡る。GKは失敗するものの日大は17-8とリードをさらに拡げる。誰もがやっぱり結局は日大が1部リーグ所属チームの貫禄を見せて勝利を収めてしまうのかと思っても不思議はない。やはり入替戦は2部の2位チームには高い壁であり、歴史は繰り返される(内容がよくても下部チームが敗れる)のだろうか。

しかし、優位に立っても波に乗れない日大に対し、専修は観客席の後押しを得る形で攻め続ける。日大ゴール前のアタックは実らないものの、まずは16分にPGで3点を返し11-17と1T1Gで逆転可能な点差へとビハインドを縮める。リスタートのキックオフのあと、自陣での日大ボールのラインアウトをスティールに成功して凌ぎ敵陣へ。22分、日大陣10m付近のラインアウトからのオープン展開が鮮やかに決まりライン参加したFB棚橋がインゴールに飛び込む。GK成功で専修が1点差ながら再逆転に成功した。専修応援席がここで一気に活気づいたことは言うまでもない。

再逆転を許しお尻に火が付いた格好の日大も逆襲。26分には専修陣10m/22mのほぼ中央でPKを得るが狙わずにゴール前ラインアウトからトライを取りに行く。ここは1部リーグの底力を見せたいところだったのかもしれないがプライド?は捨てて冷静に狙うべきではなかっただろうか。案の定と言ったら失礼だが、日大はラインアウトでオフサイドの反則を犯し、絶好の得点機を逸する。そして、今度は命拾いした専修の番。日大陣の(PGを)狙える位置で得たPKをタッチに蹴り出し、ゴール前ラインアウトからトライによる追加点を狙う。そして、FWでボールキープしながらゴール前の攻防を制しトライを奪う。GK成功で専修はリードを1T1Gでも届かない8点差に拡げる。

どちらが1部リーグで戦っていたチームなのかが分からなくなってしまうような状況で、終盤になっても専修の勢いは止まらない。36分、HWL付近での日大ボールラインアウトでこぼれ球を拾った専修のFL松土が一気にゴールラインまでボールを運ぶ。GKは失敗するが、30-17と専修のリードは13点に拡がり、夢が現実へと着実に近づいた形の専修応援席のボルテージはさらに上がる。

しかし、実は2T2Gで逆転可能な13点差は、安心してはいけない点差でもある。果たして直後の40分、日大はキックオフから専修陣になだれ込み反則を誘う。ここで、途中出場のSH谷口が間髪入れずタップキックから一気にインゴールへ。GK成功で24-30と日大がラストチャンスを活かせば逆転という展開となり、スタジアムは興奮の坩堝と化す。残留に向けた日大の怒涛のアタックが続き、専修が反則を重ねる展開。インジュリータイムに入り、日大にミスが出れば試合終了という緊迫感の中で試合が進む。しかし、遂に日大が力尽き痛恨のノックオンを犯したところで専修の13シーズンぶりとなる1部復帰が決まった。グランドに崩れ落ちる日大の選手達を尻目に、歓喜に湧く専修関係者。昨シーズン、山梨学院が1部復帰を決めたとき以上の興奮が熊谷を包み込んでいた。



◆専修のラグビーに魅了された至福の80分間/MOMは熱心な声援を送ったファン

1部リーグでもなかなか観ることができないくらいに、ボールを素早く、無駄なく、テンポよく動かし続けた専修のラグビーにすっかり魅了された。1部在籍時もボールを動かすラグビーを指向していた専修だが、より洗練された形で来シーズンは1部に復帰することになる。もちろん、1部リーグのチームでこれだけ自由にボールを動かすことを可能にしてくれるチームはないし、どうしてもパワー勝負で苦しむことになるだろう。しかし、専修はセブンズの延長のようなこのスタイルに磨きをかける形でパワーアップしていけばいいと思う。そういった意味でも、やはり春のYC&ACセブンズで自信を掴んだことは大きかったのではないだろうか。

もちろん、1部復帰を勝ち取ったのはピッチで戦った選手達と村田監督以下のチーム関係者。でも真のMOM(マンではなくマンズ・オブ・ザ・マッチ)はスタンドから熱い声援を送り続けたファンではなかっただろうか。2003シーズンから始まった戦いは予想以上に長くなり、1部在籍時の戦いを知らないファンが増えていく中、選手達が戦い続けることができたのはファンの力が大きいと思った。

◆結局チームを完成できなかった日大/あまりにも残念過ぎる降格

闘志が空回りと言った感じであえなく降格が決まってしまった日大。専修与しやすいと観ていたわけではないと思うが、最後までちぐはぐな今シーズンの戦いぶりを象徴するようなラグビーだった。やはり責めを負うべきは結果を出せなかった選手達ではなく、チームを完成させることなく終わらせてしまった首脳陣ではないだろうか。チームを救ったと言っていい有久や元気いっぱいだった南波らがシーズン当初はベンチにも居なかったことが本当に不思議でならない。

しかし、日大で一番気になることは、結局どんなラグビーを目指し、どこに強みを持とうとしたことが最後まで見えなかったこと。かつての日大であれば、強力スクラムという強力なセールスポイントがあったし、個人で無謀とも言えそうな果敢に攻めるBK先取達がいた。そんなチームの軸のようなものが見当たらない中でどのような形で来シーズンは1部復帰を目指すのだろうか。力及ばすというか準備不足での敗北は仕方ない。来シーズンはトロケや南波がチームを去る中で、明日への展望が見いだしがたい敗北はショックで有り残念で仕方がない。

ラグビー「観戦力」が高まる
斉藤健仁
東邦出版

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1 コメント

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ありがとうございます。 (専修サポ)
2014-12-23 23:12:03
入替戦の詳細なレポ、ありがとうございます。
確かにあの試合のサポーターは気合が入っていましたね。スポーツにおけるサポーターの力の重要性を改めて認識するゲームでしたが、とくに大学レベルだと社会人以上に応援の声はメンタル面に影響があると思います。
とはいえ、この試合のMOMはサポーターではありません。やはり村田亙です。
彼がこの3年間ラグビー部に注いだ時間と情熱(その中にはトレーニングだけでなく選手への意識付けやOB、サポーターへの発信力も含まれます)は間違いなく大学の監督で1番だと思います。
そして、あの試合にはさまざまな伏線があります。
昨年、ジュニア選手権の入替戦に勝ったことでカテゴリを上げることができました。結果、ジュニアで日大と2試合やった後に入替戦にのぞみました。
そのジュニアの試合は初戦は大敗、プレーオフが接戦です。ここで大きく戦術を修正してそれが通用したことが、入替戦にも大きく影響しています(それも日大との試合はすべて11月の半ば以降なのです)。
そして、半信半疑だったサポーターも、どんなにおかしな試合をしてもブレることポジティブな監督を見ていて、最後は彼の掲げた「専修革命2014」を全員で信じました。
一方、日大は5位もあり得る状況で、入替戦は想定外だったでしょう。しかも過去に1部7位が転落したことはなく、専修の2部での試合ぶりを見ても負けることはないと思っていたものと思われます。そこにメンタル面も含めて圧倒的な準備の差がありました。

今回の入替戦は、プロパーの監督を擁する2校が外部招聘監督の2校を落としました。大学のスポーツは、単に外人選手を連れてきてとにかく勝ちゃあいいというだけではない要素も必要なのだと思いました。

そしてもうひとつ今回の勝利について言わせていただくと、外人選手抜きで結果を出したということも評価されていいと思います(外人選手を否定するわけではもちろんありません)。
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