「熱闘」のあとでひといき

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春シーズンの雑感/「普段着の戦い」から見えたもの(その2)

2013-07-07 06:56:01 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
関東大学ラグビーのリーグ戦グループ永久サポートを心に誓っている私。密かに恐れていることは、対抗戦Gとリーグ戦Gの統合だ。リーグ戦Gは1リーグが8チームの構成だからこそ、何とか全チームをフォロー出来ている。実力も(上下の力の差は明確でも)絶望的な格差があるわけではない。だから、対戦カードのすべてに対して個別にテーマを持って観戦に行くことが出来る。でも、もし「統合」が実現して優勝を10チーム以上で争うということになってしまったら、全チームをバランスよく観ることはまず不可能。それにこれまでサポートしてきたチームから何チームかは視界からは消えて行くことになるだろう。

そういった意味でも、春季大会の設立には敏感にならざるを得なかった。昨シーズンは上位グループの戦いで「格差」をいやと言うほど見せつけられ、そして、今シーズンはジュニア選手権を意識したかのようなシステムの変更。さらに、トップレベルの場合は、Aチームは何とか戦えても、Bチーム以下には歴然とした力の差があることがはっきりしてしまった。ここで、ほぼ関東の大学トップチームの力関係は明確になってきたから、次に来るものは「統合」(=リーグの編成見直し)の二文字となる。誰かがそんなシナリオを書いているのでは、と邪推してしまうのだ。

しかし、総論(大学生の実力アップ)賛成でも、各論に入ったらおそらく反対意見が続出することになるだろう。ここ数年は帝京、筑波の台頭でとみに顕在化してきた対抗戦Gのいびつな試合日程(とその決まり方)ひとつ見ても、今後も「統合」の話しは燻っては消える状況が続くのではないだろうか。また、現状にいろいろな問題があるにしても、「統合」で大学生の実力が上がるわけでもないと思う。問題点はもっと根本的なところにあるはずだ。春シーズンでの交流試合のような機会を増やして、できるだけ多くのチームが切磋琢磨しながら強くなっていくのが健全な姿のように思う。有力選手が埋もれることなく、トップレベルの試合に出場できる機会は多い方がいいはずだから。

ついつい話題が逸れてしまった。関東リーグ戦Gの各校について、今季の私的見所を2回に分けて書く。

◆東海大学 ~FWを中心とした大幅なモデルチェンジも優勝候補の筆頭~

リーグ戦、YCAC、東日本大学のセブンズ大会をまず見て、春季大会は拓大戦のみの1試合を観戦。強力かつ大型だったFWの卒業によるメンバー変更は不安要素ではあるものの、BKにはリーグ戦G屈指のトライゲッター達が揃っている。今年も強力なチームを作り上げることは間違いないだろう。しかし、どんな形で?というのが私的着目点だった。

だが、シーズン当初に行われたセブンズ大会では別の問題が浮上してしまい、「大丈夫だろうか?」と思わせたのだった。優勝が狙える陣容で臨んでも色んな要素が絡み合って結果を出せない難しさがあるのがセブンズ。でも、それ以前の問題として、チームとしての精神的な脆さが気になった。その辺りはついては個別の大会での感想で書いたので繰り返さないが、「何故こうなる?」の連続だったことは間違いない。15人制でも同じ状況になるのなら不味いなぁと思っていた。

しかし、拓大戦を観て、そんな懸念は払拭された。チームコンセプトが例年と比べても明確となったことで、ここ数年でも最高にまとまりがいいチームになりそうな期待感を抱かせたのだ。ここに小原、石井、近藤らが加わったら(得点力は倍以上に上がるはず)というような基本的な骨格ができていると感じた。ラインの幅も幾分か狭めて、速く正確にボールを動かそうとする意図が見えた。FWにしても、去年より小さくなった分、自分達で行きすぎずにBKにいいボールを供給するといった形で、「塊」となって精力的に動き続けるといったような意識で統一が図られているようにも見える。

そうなってくると、実力を盤石のものとし、かつ日本一にチャレンジする上でのポイントはHB団、強いて言えばゲームリーダーを誰にするかになる。東海大の積年の課題であり続けているとも言える部分。SHは新人の湯本が期待できそうだし、上級生だって黙ってはいないだろう。だから、「最適配置」に悩むような状況のCTBとバックスリーを擁する中、彼らを自在にコントロール出来るような司令塔が居ないと宝の持ち腐れになってしまう。もちろん、どんどんBKに展開して大外勝負の意思統一でいいのだが、攻撃の起点の部分をパスマシーンに終わらせてしまったら、終盤から年末(年始)にかけての熾烈な戦いを勝ち抜くことは難しくなる。今季は大東大のパワーアップなど序盤から戦いがヒートアップしそうな状況にあって、まずは、FWとBKの繋ぎの部分をどのようにビルドアップしていくかに注目したい。

◆流通経済大学 ~楽しみなメンバーが揃った反面、不安要素も~

1年で奪い返された覇権奪還、そして積年の目標となってしまった大学選手権ベスト4以上を目指す流経大は、FWが再構築ながらも楽しみなメンバーが揃った。帝京戦を見た限り、戦力ダウンはなさそうだ。HO植村、LOフシマロヒ、No.8高森に加え、FLに強力な新人が加わった。セブンズでも既に頭角を現していたジョージ・リサレは間違いなく対戦する各チームの脅威となるだろう。高さはさほどないものの、強さと速さは現時点でもリーグ戦G随一のFLではないかと思う。高森も元気いっぱいで今年も流経はFW3列でどんどんボールを前に運べるメンバーが揃った。

個性的なメンバーが揃ったBKはさらに楽しみと言える。WTBリリダムとおそらくFBに入ると見られる合谷が自在に走り回るような展開になったら、対戦チームは手が付けられなくなる。問題はリリダムを最初から出すか、それとも後半のインパクトプレーヤーとしてキープしておくかだが、キックオフやカウンターアタックでも高さで勝負できる選手を最初からベンチに置くのはもったいないような気もする。また、矢次や合谷など複数ポジションをこなせる選手を揃えているとはいっても、出るメンバーによりゲームプランを自在に変えられるほどのチームとしての器用さはまだないはず。東海と同じく、流経大も試合内容はゲームリーダー次第という部分がある。

と書いてきたように、とても楽しみなメンバーが揃った反面、うまくまとまるかという不安も抱えているのが今期の流経大と言えそう。もちろん、これは完敗した緒戦の帝京戦しか見ていない上での感想だから割り引かなければならない。序盤戦は、留学生の起用方法も含め、ゲームコンセプトをどんな形で固めてくるのかをじっくり見てみたい。

◆拓殖大学 ~いち早く固定されたメンバーを武器にトップ2へ果敢にチャレンジ!

リーグ戦の他のチームに比べても選手層が薄く、少数精鋭での戦いが強いられる拓大。昨シーズンは逆にそういった危機感をバネにほぼ完全に固定したメンバーで最後まで戦い抜き、3位にまで浮上することが出来た。私的予想でもダントツの入替戦候補だったことを思うと、試合を重ねるごとに成長していった拓大は昨シーズンのベストチームというほかない。今年は、2強にチャレンジして優勝戦線に食い込んで欲しいしその可能性も十分にある。主将を務めるFWのウヴェと実質的なゲームリーダーでもあるSOステイリンの2枚看板が揃うラストシーズンとなる今年はとくにチャンスと言える。

しかしながら、強力な新人獲得の面で苦戦を強いられている状況は今年も変わらないようだ。レギュラーに完全定着したPR具は早くもスクラムやボールキープで威力を発揮している状況だが、WTB山谷の成長が著しいとは言え、BKに強力な突破役とフィニッシャーが居ない状況は去年と同じ。法政や大東と言ったライバル校が強力なメンバーを新たに加えて上位進出を窺うなかで、序盤から苦しい戦いを強いられることになりそうだ。

ただ、拓大の強みは上でも書いたようなメンバー固定度の圧倒的な高さ。チームの骨格がしっかり出来ているだけに、あとはアタックのバリエーション(選手間のコミュニケーション能力)に磨きをかけ、チャンスで確実に得点出来るチーム作りを目指すだけだ。東海大戦でも、BK展開の局面では、ここまで殆ど見せなかった内側へのアングルチェンジを試みるなど新たなステージに踏み出したことが見て取れた。だが、拓大は(2枚看板が揃ったラストシーズンになるという意味で)チャンスではあるものの拙速は禁物。昨シーズンも、我慢に我慢を重ねてようやく目標とするBK展開勝負ができるチームへと辿り着くことができた。

目標を高く持つことはもちろん大切だが、現時点でやれることを確実にこなしていくことが重要だと思う。結果は自ずとついてくることは、昨シーズンの闘いぶりで証明されている。ファンの期待とは裏腹に拓大にとっては我慢(苦難)のシーズンになることも予想されるが、ここをしっかり乗り越えて欲しい。

◆法政大学 ~覇権奪還に向けて体制は整いつつあるが、期待の裏には不安材料も~

何とか迷走状態にピリオドを打ってもらいたい(そして優勝戦線に復帰して欲しい)と願う法政ファンにとって、谷崎新体制への期待はとても大きいはず。もちろん、それは「熱闘」のライターとて同じで、リーグ戦Gで間違いなく魅力No.1だったBK展開志向のランニングラグビー復活を祈るばかりだ。

その谷崎新体制に対してまず期待したことは、どんな形(メンバー構成)でチーム再生に取りかかるかと言うこと。少なくとも、過去2シーズンにチームがピッチ上で示したパフォーマンスを見たら、誰を中心に据えてチーム構築を図るべきかが自明の利となっているような気がする。実質的なゲームリーダーとしてピッチ内(おそらく外も)でチームをまとめることに尽力していた猪村は最高レベルの人材のはず。まず、チームにコアとなるものをひとつ作ることが必要のように思われたのだ。

しかしながら、谷崎新体制のファーストチョイスは加藤だった。彼の真の力を知った上での選択だとは思うし、(ラスト)チャンスを与えたという見方もできそう。しかし、春シーズンとは言え、重要な課題に対するテストをするような段階ではないし、せっかくの選手起用もチームの求心力を高めていく上ではプラスになっていないような気がする。早稲田戦での加藤は積極的に仕掛けるなど、才能の片鱗は見せてくれた。しかしながら、動きにキレは感じさせても他の選手達とのコミュニケーションが不足していることを感じさせるような場面が少なからずあったように思う。

繰り返しになるが、チーム再建の第一歩は誰を中心に据えるかだが、残された時間は少ない。今年も黄金ルーキーを含めて多くの逸材がチームに加わり、過去3シーズンの「実績組」もうかうかしていられない(他校にはうらやましい)状況が生まれている。もちろん現有勢力の能力の高さは折り紙付きだ。とくに、FWは東海や流経の強力FWを相手にしても十分にパワーとスピードで勝負できる陣容だと思う。BKもタックルを含めて個々のプレーを見たらメンバー構成次第ではリーグ戦トップレベルのラインができあがる。ただ、低迷期の負の遺産というべきか、組織面は未整備という印象も強く、アタック、ディフェンスともフェイズを重ねると綻びがみえてしまうことが課題。早稲田戦でも、相手の状態もあったが個々の頑張りが接戦に持ち込めた要因だったようにみえた。

どうしても、ファンの期待は法政の宿命として「結果を出してくれること」になってしまうし、それは突貫工事でも可能だと思う。ただ、今年よりもむしろ大変になりそうなのは(負の遺産がまだまだ残る)来年以降の戦いになるはず。他のチームでも「新体制」が苦労を強いられるのは、言い訳が通用しにくくなる2年目以降だ。将来を見据えながらも、短期で結果を出すという難しい同時並行作業を谷崎さんがどんな形で実現していくのかが法政に対する個人的な着目点になる。
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