初めてソウル支部便り送ります。と、言っても特にこちらに元々支部があって会員がいるというわけでもなく、私がこちらにいる為に出来た支部ではないかと思われますが、これから会員が増える事を期待します。私は韓国に暮らし初めて早くも10年になりますが、私が来た頃は、理工学部の先輩が居られて、数年間に亘りこちらの校友会との橋渡しをされていました。私がこちらに来た頃から、韓国校友会とウリ稲門会の交流が活発になり、当時ウリ稲門会会長であられた故安王錫元会長がウリ稲門会としては初めて韓国校友会の総会に参席されて、それ以来相互間の交流が活発になりました。その後、私は欠かさず校友会の総会に出席させてもらっています。
こちらに来て1年半経った頃、一度こちらでの生活をウリ稲門会の会報に報告しました。読み返してみましたが、その時の希望と情熱が昨日の如くに鮮明に思い出されます。実際、我々がこちらに来た2007年頃が韓国全体の絶頂期であり、景気も良く物価も日本に比べてとても安く、社会も活気に満ちており、1990年のバブルがはじけて停滞していた日本社会と比べて見ても、とても輝いていた時代でした。しかし、革新政権が保守政権に移行していくのと軌を一にして、徐々に輝きを失い始め、景気は悪くなり、物価も失業率も上昇し、現在では日本と比べても物価はほぼ同等な水準までに達しました。韓国は大手財閥が中心となって韓国経済を牽引しており、日本のように堅固とした中小企業の存在がとても脆弱で、よって韓国経済自身がそうした大手財閥系企業の業績に大きく左右されてしまう傾向があります。また、私がここで10年暮らしてとても問題であると思うのは、権威主義がとても強いことだということです。よく韓国で使われる言葉で、甲乙関係、即ち顧客が“甲”でそこと取引をする業者が“乙”という立場にあると、甲は乙に対して絶対的な立場にあると言うことです。それを“甲質(カップチル)”という言葉で表現されますが、まさにその関係が、韓国社会には蔓延していると感じます。そうした関係、及び大企業優遇の経済政策を改善すると言う意味で、第18代大統領選挙の時から各候補者が、選挙公約として掲げていた“経済民主化”というスローガンがありますが、残念ながら言葉のみが先行して、未だ実現には至っていないと言うのが、私の実感です。しかし、昨年暮れに発覚した崔順実ゲート事件に端を発した政権交代により第19代大統領に選出された革新系の文在寅政権に、この間の保守政権時代にもたらされ山積した社会矛盾を解決してもらうことを国民は大きく期待しています。また私事ではありますが、前回の報告にも記したのですが、私の父の故郷である咸鏡南道、興南が奇しくも、文大統領の父と同郷であり、近い将来、高齢の父と一緒に故郷に行く事ができるのではと期待している今日この頃です。
金協一ソウル支部長