早稲田大学ウリ稲門会

在日コリアンOB・OGのためのオフィシャルブログ

「共に!」

2013-03-31 11:29:27 | 私の意見・交流・日常

湘南ベルマーレ監督 貴裁

 2012年、湘南ベルマーレは3年ぶりにJ1に復帰できた。指導者として子供たちを教えていた時期を合わせるとちょうど12年目、ひとまわりという年に湘南ベルマーレのトップチーム監督としてのオファーをクラブから頂き、やらなければいけないという責任感と果たして自分がこの大役を果たせるかという不安感が半々の年明けだったことを昨日のことのように思い出す。
 元々トップチームの監督という指導者なら誰もが目指すであろう目標に自分はおぼろげなものしか抱いていなかったこともあり、監督初心者のチームに対する周りの半ば諦めに似た空気感を感じながらも、「俺が監督なら周りがそう思うのも仕方ないかもしれないな」と、どこか自分が置かれた状況を客観視していたきらいもあった。
 監督というのはリーダーである故の孤独感との戦いとも言える。それはユース年代の監督をしていた時期にさえひしひしと感じていたもので、トップチームなら尚更であろうことは想像に易かった。孤独とは自分との戦い。すべて自分に跳ね返ってくるだけに、神経をより研ぎ澄まし、これからやるべきプロセスに磨きをかける。元々1人で何かをすることがあんまり好きではない自分にとっては非常に高いハードルではあるが、同時に達成した時の喜びは何事にも代え難い。現役時代にゴールを決めた時の高揚感とは一味違う充実感のようなものが体全体に満ち溢れる、そんな職業だと思っている。
 開幕から選手の頑張りで9戦負けなし、首位にいた時期も常にこのままでいくわけはない、これでいいわけがないという不安があった。1年間で大きな山は必ず来る。その時にこそしっかり選手に、ブレない自分を示し、高い山の頂上に向かい、なるべく先頭から最終列までがコンパクトに一体感を持ったグループでいさせる。この事に1年間ほぼ没頭してきたと言えるかもしれない。監督が孤独であるのと同時に、プロサッカー選手はその報酬と、安定からかけ離れた立場のミスマッチから基本的に不安を抱えている。全員が試合で活躍したいと思っているが、頑張っても試合に出してもらえない選手がチームのうち半分を占める。見返りを求めるには、実のところ割に合わない職業だと思う。自分が監督を引き受けた理由は実はそこにあった。「この選手たちを成長させたい。と同時に共に成長していけるようなチームの空気を作りたい。」ワールドワイドなスポーツであるサッカーの、有数の優秀な指導者にもこの気持ちだけは負けないだろう、そんな自負がある。9戦負けなしが途切れ、2連敗したもののなんとか踏ん張り、後の8戦負けなしにつなげることができたのも、実際にその自負が自分を奮い立たせたからだろう。
 とはいえ、終盤にきての3連敗など、調子の波が交互に入れ替わる1年ではあった。そんな1年の中で、不思議と当初に抱いた「基本的概念選手と共に歩んでいく」という気持ちは、シーズン当初より終盤にかけての方が強くなっていた。チャレンジしたミスは絶対に起こらなかった。結果論で選手たちにコメントすることだけはやめようと心に誓っていた。その代わり、試合に出られないからといってチームを忘れている選手は、大人であってもきつく叱責した。本当に我々の選手たちは謙虚に自分の後ろにチームがいるという事を忘れずにどの試合も戦い続けてくれた。そして、最終戦の奇跡を生むことができた。監督として彼らを心から誇りに思っている。
 2013シーズンに挑むにあたってもこの気持ちだけは変えるつもりはない。いや変えてはいけないと思っている。「共に」これは監督として、人としての自分のキーワードだ。在日韓国人として、この日本の中で生きていくためにも必要な精神だと思っている。結果の責任は自分が取る、プロセスには徹底的にこだわる。この姿勢をさらに磨いて新シーズンに臨もうと思っている。
 我々の試合を見た人にエネルギーを与えていけるように。そして関わる人全員が生きている実感を感じられるように。今年も自分らしく監督業を楽しんでいきたい。開幕は3月2日。同じ神奈川の横浜マリノスだ。クラブ規模は今のところ叶わないかもしれないが、湘南スタイルだけはスタジアムで存分に発揮していきたい。そしてシーズン通して選手たちを信じ、最後まで諦めないパワフルでアグレッシブなサッカーを皆さんにお見せしたいと思っている。


呉世一当会会長挨拶

2013-03-31 11:23:42 | 会長のご挨拶

2013年、謹んで新春のお慶びを申し上げます。旧年中はウリ稲門会に物心両面のご支援をいただきありがとうございました。執行部を代表し、お礼を申し上げる次第です。
東日本大震災から、そして福島の原子力発電所事故から、はや2年が過ぎようとしております。当時は、1000年から2000年に一度の天災地変は想定外のことであり、原発事故は人災ではないとの主張がまかり通っていました。宇宙の始まりから137億年、地球誕生から45億年、この歴史を考えれば、1000年や2000年は決して長いスパンではありません。また東日本大震災の規模も想定すべき地殻変動の域でありました。事故は人災である、まさに人災という視点から検証してこそ一刻も早い復興をなすことができるでしょう。本年が、被災された方々が平穏な日々を遅れる年になりますよう願っております。
今年は奇しくも韓国・日本両国がともに新しいリーダーを選出し、新体制で臨むこととなりました。歴史からなにを学び、目標がどこにあるかによってその性格は自ずと明らかになるでしょう。とりわけ、韓国初の女性大統領、母を凶弾に奪われ、父も銃弾に倒れ、自身も頬を斬りつけられるテロに遭遇するという想像を絶する艱難辛苦を乗り越え、選挙に勝ち抜き大統領にまで登り詰めた彼女には国民とともに歩むことを切に願ってやみません。同時に朝鮮半島に良き気運があらわれますように。
私たちは、ウリ同窓会、稲水会、そして統合を果たしたウリ稲門会と同窓会の歴史を刻んでまいりました。親睦をコンセプトに、多様性を認め合い、互いに信頼を構築する軌道を歩んできました。時に軌道から外れることが生じると、諸先輩・諸学兄の叡智と復元力が働き、その度に修正が行われてきました。この伝統あるウリ稲門会のタスキを次へと繋ぐことが私の大切な役目のひとつであると心に決め、頼りがいのある幹事団に支えられながら粛々と仕事をこなしてまいりました。3月9日に総会を開催いたします。いっそうのご指導・ご鞭撻をお願い申し上げます。まだまだ寒気きびしき折りです。お体ご自愛の上、来る総会に元気なお姿をお見せ下さい。お待ちしております。