映画「パラサイト 半地下の家族」を映画館で観てきました。
「殺人の追憶」の名コンビであるポン・ジュノとソン・ガンホが組んだ新作だというだけでも気にかかるが、カンヌ映画祭のパルムドール作品でもある。先週、週刊文春「シネマチャート」では全評者5点満点の25点をつけている。これには驚いた。何年ぶりであろうか?そこまでの評価の高さに早々と映画館に向かう。
先入観なしで観たが、これはすごい!
一寸先まで予想が立たないストーリー展開でハラハラドキドキしっぱなしである。
2020年早々に今年のベスト映画が決まってしまった感覚である。
過去に度々事業に失敗、仕事もないが楽天的な父キム・ギテク(ソン・ガンホ)。そんな甲斐性なしの夫に強くあたる母チュンスク(チャン・ヘジン)。大学受験に落ち続け、若さも能力も持て余している息子ギウ(チェ・ウシク)。美大を目指すが上手くいかず、予備校に通うお金もない娘ギジョン(パク・ソダム)。しがない内職で日々を繋ぐ彼らは、“ 半地下住宅”で 暮らす貧しい4人家族だ。
“半地下”の家は、暮らしにくい。窓を開ければ、路上で散布される消毒剤が入ってくる。電波が悪い。水圧が低いからトイレが家の一番高い位置に鎮座している。家族全員、ただただ“普通の暮らし”がしたい。
「僕の代わりに家庭教師をしないか?」受験経験は豊富だが学歴のないギウは、ある時、エリート大学生の友人から留学中の代打を頼まれる。“受験のプロ”のギウが向かった先は、IT企業の社長パク・ドンイク(イ・ソンギュン)一家が暮らす高台の大豪邸だった——。
パク一家の心を掴んだギウは、続いて妹のギジョンを家庭教師として紹介する。更に、妹のギジョンはある仕掛けをしていき…“半地下住宅”で暮らすキム一家と、“ 高台の豪邸”で暮らすパク一家。この相反する2つの家族が交差した先に、想像を遥かに超える衝撃の光景が広がっていく——。 (作品情報より)
この映画ほど、ネタバレしたくともできない映画はないだろう。
ビリー・ワイルダー監督の「情婦」、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の「悪魔のような女」など絶対に結末を語ってはいけませんといううたい文句の映画があった。いずれも最後に向けての逆転である。この映画の驚きは序盤戦から続く。中盤から終盤にかけては極めて短い時間の話なのに、波状攻撃のように我々を驚かせる。それでも途中までネタバレで追っていく。
1.英語の家庭教師の息子ギウ
何年浪人しても大学に行けない。警備員にも大卒が殺到する世の中なので仕事にもありつけない。そんな息子ギウにエリート校に通う友人が訪ねてきた。その彼から金持ち娘の女子高校生に英語の家庭教師をするピンチヒッターを頼まれた。
友人からはこれだけ浪人していれば英語くらい教えられるだろうと言われ、学校に行っているという証明書を偽造してバイト先の豪邸へ面接に向かう。証明書は紹介だということで母親は見もしなかったが、授業を一回聴かせてくれとテストされるもパフォーマンスが効いて無事合格。高額バイト料にありつける。そのときに絵心のある弟の美術の家庭教師を探してくれないとかと言われる。
2.美術の家庭教師の娘ギジョン
ギウは妹ギジョンをパク社長の息子の家庭教師にしようと思っても、もちろん正直には言わない。親類の知り合いにいい女性がいるとしかいいようにない。おもちゃだらけの広い子供部屋にいる息子のために雇われた美術の家庭教師は誰も長続きしない。ギジョンも母親の面談を受ける。ここでも予習が効いて母親をうまくたぶらかして無事合格。うまい具合に2人とも家庭教師になれたのだ。
ここで調子に乗り作戦を立てる。ある日、遅くまで家庭教師をした日にパク家の運転手がギジョンを送ってくれた。盛んに家まで送ると言っている運転手だったが、駅までにしてもらう。
そのとき、ギジョンは自分のパンティを脱いで座席のポケットに入れた。これってどういうことなんだろう?と映画を観ながら思ったが、意図があった。送迎で車に乗るパク社長にこのパンティを気づかせて、運転手が後部座席でよからぬことをしているということでクビにしてしまうということなのだ。そこで父ギテクが運転手として登場する。
3.あっという間にパク一家に入り込む父と母
パク社長の家には、設計した建築家が家主であるころからいる家政婦がいた。この家政婦は家事が苦手な奥様の代わりに家内のことは全部任されていた。しかし、家庭教師に入った2人から見るとうっとうしい。あるとき、この家政婦が桃にアレルギーを持っていることがわかった。そこで3人は作戦を立てる。家政婦の後ろを通るたびに桃の粉を振りまく。すると、アレルギー反応を起こし思わず咳をしてしまう。こっそりと奥様に結核ではないかといい、ゴミ箱に置いた赤く染まったティッシュを見せたりして、長年いた家政婦を追い込むのだ。
父ギテクは富裕層宅の家事をまかなう人や運転手を斡旋するいい事務所を知っていると車の送迎をしている際にパク社長に名刺を渡す。電話をすると、娘ギジョンのところに通じることになっていて、母チュンスクも家政婦として採用されるのだ。
寄生虫のように巧みにパク社長の家に入り込んだ4人は、パク社長一家がキャンプで出かけたとき、この大豪邸で酒盛りをする。手入れの行き届いた広い庭をみながらのひとときのいい時間だった。そんなときに玄関のインターフォンが鳴るのだ。誰なんだろう?ドキッとする4人。
もちろん、このままではこの映画は終わらないだろうと思っていた。何かあるだろうと。
でも、ここからのどんでん返しは見てのお楽しみである。まさにネタバレ厳禁の世界が続く。
緻密なストーリーを創作したポン・ジュノはじつにうまい。二転三転するだけでない。ここでオチになるのかな?と思ってもそれで終わらない。全く先を読ませない韓国クライムサスペンスらしい緊迫感のあるものとなる。
「殺人の追憶」の名コンビであるポン・ジュノとソン・ガンホが組んだ新作だというだけでも気にかかるが、カンヌ映画祭のパルムドール作品でもある。先週、週刊文春「シネマチャート」では全評者5点満点の25点をつけている。これには驚いた。何年ぶりであろうか?そこまでの評価の高さに早々と映画館に向かう。
先入観なしで観たが、これはすごい!
一寸先まで予想が立たないストーリー展開でハラハラドキドキしっぱなしである。
2020年早々に今年のベスト映画が決まってしまった感覚である。
過去に度々事業に失敗、仕事もないが楽天的な父キム・ギテク(ソン・ガンホ)。そんな甲斐性なしの夫に強くあたる母チュンスク(チャン・ヘジン)。大学受験に落ち続け、若さも能力も持て余している息子ギウ(チェ・ウシク)。美大を目指すが上手くいかず、予備校に通うお金もない娘ギジョン(パク・ソダム)。しがない内職で日々を繋ぐ彼らは、“ 半地下住宅”で 暮らす貧しい4人家族だ。
“半地下”の家は、暮らしにくい。窓を開ければ、路上で散布される消毒剤が入ってくる。電波が悪い。水圧が低いからトイレが家の一番高い位置に鎮座している。家族全員、ただただ“普通の暮らし”がしたい。
「僕の代わりに家庭教師をしないか?」受験経験は豊富だが学歴のないギウは、ある時、エリート大学生の友人から留学中の代打を頼まれる。“受験のプロ”のギウが向かった先は、IT企業の社長パク・ドンイク(イ・ソンギュン)一家が暮らす高台の大豪邸だった——。
パク一家の心を掴んだギウは、続いて妹のギジョンを家庭教師として紹介する。更に、妹のギジョンはある仕掛けをしていき…“半地下住宅”で暮らすキム一家と、“ 高台の豪邸”で暮らすパク一家。この相反する2つの家族が交差した先に、想像を遥かに超える衝撃の光景が広がっていく——。 (作品情報より)
この映画ほど、ネタバレしたくともできない映画はないだろう。
ビリー・ワイルダー監督の「情婦」、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の「悪魔のような女」など絶対に結末を語ってはいけませんといううたい文句の映画があった。いずれも最後に向けての逆転である。この映画の驚きは序盤戦から続く。中盤から終盤にかけては極めて短い時間の話なのに、波状攻撃のように我々を驚かせる。それでも途中までネタバレで追っていく。
1.英語の家庭教師の息子ギウ
何年浪人しても大学に行けない。警備員にも大卒が殺到する世の中なので仕事にもありつけない。そんな息子ギウにエリート校に通う友人が訪ねてきた。その彼から金持ち娘の女子高校生に英語の家庭教師をするピンチヒッターを頼まれた。
友人からはこれだけ浪人していれば英語くらい教えられるだろうと言われ、学校に行っているという証明書を偽造してバイト先の豪邸へ面接に向かう。証明書は紹介だということで母親は見もしなかったが、授業を一回聴かせてくれとテストされるもパフォーマンスが効いて無事合格。高額バイト料にありつける。そのときに絵心のある弟の美術の家庭教師を探してくれないとかと言われる。
2.美術の家庭教師の娘ギジョン
ギウは妹ギジョンをパク社長の息子の家庭教師にしようと思っても、もちろん正直には言わない。親類の知り合いにいい女性がいるとしかいいようにない。おもちゃだらけの広い子供部屋にいる息子のために雇われた美術の家庭教師は誰も長続きしない。ギジョンも母親の面談を受ける。ここでも予習が効いて母親をうまくたぶらかして無事合格。うまい具合に2人とも家庭教師になれたのだ。
ここで調子に乗り作戦を立てる。ある日、遅くまで家庭教師をした日にパク家の運転手がギジョンを送ってくれた。盛んに家まで送ると言っている運転手だったが、駅までにしてもらう。
そのとき、ギジョンは自分のパンティを脱いで座席のポケットに入れた。これってどういうことなんだろう?と映画を観ながら思ったが、意図があった。送迎で車に乗るパク社長にこのパンティを気づかせて、運転手が後部座席でよからぬことをしているということでクビにしてしまうということなのだ。そこで父ギテクが運転手として登場する。
3.あっという間にパク一家に入り込む父と母
パク社長の家には、設計した建築家が家主であるころからいる家政婦がいた。この家政婦は家事が苦手な奥様の代わりに家内のことは全部任されていた。しかし、家庭教師に入った2人から見るとうっとうしい。あるとき、この家政婦が桃にアレルギーを持っていることがわかった。そこで3人は作戦を立てる。家政婦の後ろを通るたびに桃の粉を振りまく。すると、アレルギー反応を起こし思わず咳をしてしまう。こっそりと奥様に結核ではないかといい、ゴミ箱に置いた赤く染まったティッシュを見せたりして、長年いた家政婦を追い込むのだ。
父ギテクは富裕層宅の家事をまかなう人や運転手を斡旋するいい事務所を知っていると車の送迎をしている際にパク社長に名刺を渡す。電話をすると、娘ギジョンのところに通じることになっていて、母チュンスクも家政婦として採用されるのだ。
寄生虫のように巧みにパク社長の家に入り込んだ4人は、パク社長一家がキャンプで出かけたとき、この大豪邸で酒盛りをする。手入れの行き届いた広い庭をみながらのひとときのいい時間だった。そんなときに玄関のインターフォンが鳴るのだ。誰なんだろう?ドキッとする4人。
もちろん、このままではこの映画は終わらないだろうと思っていた。何かあるだろうと。
でも、ここからのどんでん返しは見てのお楽しみである。まさにネタバレ厳禁の世界が続く。
緻密なストーリーを創作したポン・ジュノはじつにうまい。二転三転するだけでない。ここでオチになるのかな?と思ってもそれで終わらない。全く先を読ませない韓国クライムサスペンスらしい緊迫感のあるものとなる。