映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

ある子供  ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ

2010-05-13 05:54:31 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
「ある子供」はカンヌ映画祭でパルムドールとなったフランス・ベルギー映画である。かなりいい加減な若いカップルの偶像である。正直そんなにいい映画とは思えない。これがうけるということで価値観の違いを感じる。

20歳と18歳の男女カップルに子供が生まれた。女の子は純粋に喜ぶが、男はなんか気乗りしない。入籍の話もはぐらかしているが、結局2人で届けに行くことになる。届けに行くと窓口は混雑していた。行列に並んでいると、男は女を並ばせ赤ちゃんを連れて散歩にでる。散歩にでて歩きながら、子供を売ることを思いつき、携帯で連絡しながら取引の相手に赤ちゃんを連れて行くが。。。。

このあとは転落の連続である。悪いことをしているのであるから仕方ない。これでもかというほど男に試練を浴びせる。

日本も昔は子供のない親への養子の話は多かった。最近少子化でかなり減ったのではないか?あまり聞かない。それでも貧しい国ではこういう子供の売買は数多くされているようだ。
母親の合意を得ずに勝手にすすめている主人公の振る舞いは悪い振る舞いと道徳的に判断されるのであろう。途中から転向もむなしい。

なんかやるせない映画であった。
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赤々煉恋 朱川湊人

2010-05-12 09:16:04 | 
朱川さんが日経新聞に書いた「入学式の奇妙な写真」のエッセイを見てから、彼の本を読み続けている。読めば読むほど彼の世界に引き込まれる。そんな中でも短編集「赤々煉恋」の出来が非常に良い。
特に「死体写真師」「レイニー・エレーン」「私はフランセス」の3作は凄い!

「死体写真師」
22歳で死んだ妹を弔う姉の話。妹思いの姉は、亡くなった妹の葬儀にあたって、彼女の写真を撮っておこうと特別な葬儀社に相談する。葬儀社の写真班は段取りよく美しい彼女の写真を撮る。手際よく葬儀を済ませたあと、病院の看護士が姉のところに訪ねてきて妙な話をするが。。。。

「レイニー・エレーン」
出会い系サイトで知り合った若い女の子と渋谷のホテルで逢引きしている際に、昔学生時代に知り合ってその後別れた女性との思い出をラップさせていく話。別れた女性は昼間有名企業のOLとして働き、夜は渋谷で客をとっていたが、殺されていた。

「私はフランシス」
昔中学の同級生だった女性にあてた手紙に、それまでの過酷な人生を告白して行く話。新興宗教を信じている家で育ったが、レイプされ妊娠する。その事実が教義に反するとその家を10代半ばにして追い出されてしまう女の子のその後の人生を語る。。。。

上のあらすじはいずれもストーリーの核心に触れていない。「レイニー・エレーン」の登場人物がだぶる東電OL殺人事件は最近の小説で繰り返し使われている題材である。ある意味村上春樹の「1Q84」もその類である。
上に述べたあらすじの先に独特の朱川ワールドがある。これがすばらしい!平易な言葉で異常な世界を描いていく。ついつい引きずりこまれる。ぞくぞくする。
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沈まぬ太陽  山崎豊子

2010-05-12 06:53:10 | 
大著である。ページ数にすると1700ページにもおよび、通勤時間往復にかなりの時間を当てても読むのに数日かかった。

山崎豊子さんとの出会いは大学時代に「不毛地帯」を読んだときである。そのスケールの大きさに圧倒された。商社マンってかっこいいなあと思った。「華麗なる一族」「女系家族」「白い巨塔」と読みはじめた。学窓を離れて久しいが、時間を空けてそれぞれ再読している。
しかし、「沈まぬ太陽」とはご縁がなかった。

いつもお世話になっている大先輩から食事をごちそうになったとき、その大先輩が「沈まぬ太陽」のモデルになっている元社員を良く知っていて、山岳仲間だった話をされていた。いくつか逸話を聞いて、急に関心を持った。映画も上映された。大著を読むしかないとゴールデンウィークにかけて読了した。

主人公の航空会社の社員が意図せず組合の委員長に推挙される。国策会社として生まれたこの会社の従業員の待遇は当時あまりよくなかった。その待遇改善を求めて会社に強い要求をする。1年だけの予定が後任がいないため、もう一年やることになる。再度強い会社との対立をして、パキスタンのカラチへの異動を命じられる。そして10年近く遠隔地のみの海外移動を命じられることになるが。。。。

モデルになった航空会社も時を経てついに破綻した。労働組合がいくつかに別れて、まったく言うことを聞かない連中ばかりいるという話はあまりにも有名である。そんな体質とわかっていながらも、ナショナルフラッグの信頼感と颯爽と着こなしているユニフォームを全面的に信頼して自分は使っていたものだった。
それにしてもここで書かれていることはあまりにもひどすぎる。
モデルになった社員と元会長I氏がここでは正義の味方になっている。書いている内容に腹をたてた会社がかなり出版側にプレッシャーをかけたようだ。そうする気持ちは読めばよくわかる。でも子会社のホテル経営に関する事項なんてひどいものだ。裏金体質もよく糾弾されなかったと思う。書いてあることが全て事実とは思わないが、70%以上は真実だろう。これには本当に驚いた。

山崎豊子さんの綿密な取材は有名である。今回もかなりの人からの話を聞いていたであろう。政財界の複雑な動きに報道機関の取材を絡ませた書き方は不毛地帯と同じである。不毛地帯のモデルが再度ここで登場するのは見ものである。昭和60年の墜落事故という事実があまりにも鮮明なので、これまでもある人物をモデルにしていたけれど、よりドキュメンタリータッチに映る。

自分自身は労働組合活動には関心がない。むしろ労働分子を「アカ」とよんでしまう傾向がある人間である。今とご時世が違うが、主人公は不運だったと感じる。意図せず労働組合委員長に推挙されて、物事に真剣な性格のため、徹底的に会社側と対決する。ただ、赤字決算なのに会社に従業員の待遇改善を強引に訴えたり、ストで首相の乗る飛行機を止めようとすることなどは明らかにやりすぎだろう。それで冷や飯をくらってもある程度はしかたないとは感じる。でも会社側もやりすぎだなあ。どっちもどっちかな?もともと共産党員でないのに「アカ」と言われ続けられたのはかわいそうな気もした。

あくまで取材をもとにしたドキュメンタリータッチに近く、文学的な要素は弱い気がする。先日の村上春樹の600ページは読み応えがあり、一つの事実を文学的な技巧で細かく描写していく。どっちがいいのかは好き好きであろう。
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トランスアメリカ

2010-05-09 22:28:18 | 映画(洋画:2000年以降主演女性)
もし消息不明の父親が現われて、その父親がオカマになっていたなら?。。。。
オカマの父親と男娼の17歳の息子がひょんなことで一緒に旅に出るというロードムービーである。テーマにドキッとするが、内容はほのぼのとしたいい映画である。

主人公フェシリティ・ハフマンは性転換手術を受けようとしているオカマの男性である。これから車でロスに向かおうとしていたところ、警察から電話が来る。「あなたの息子が拘留されているので引き取りに来るように」と。今はオカマで女性にはまったく関心がないが、大学生のころただ一人だけ関係を持った女性がいた。どうもそのときの子供らしい。しかし、自分の正体はばらさずに教会から来ていると言う。とりあえず保釈の申請をしたあと、彼と一緒に手術を受けるロスに向かうが。。。。



オカマの主人公が本当は男なのか女なのか最後までわからなかった。フェシリティ・ハフマンは女性でなかなかの好演だ。彼女の実の夫は個性豊かな怪優ウィリアム・メイシーだ。
主人公の息子ケヴィン・ゼガーズは美少年である。こういう青年が突然現われれば、嬉しくなるであろう。でも今の自分の姿を見せて、堂々と自分が父親とは言えない。そういうジレンマに悩まされながら、映画は進んでいく。まさに珍道中で、次から次へと妙な出来事に出くわす。おもしろい映画と思うと同時に心温まる。
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やわらかい手

2010-05-07 05:32:48 | 映画(洋画:2006年以降主演女性)
不思議な映画である。
美女美男子に囲まれた映画でなく、むしろ容姿が普通かそれ以下の人たちを中心に映し出す。孫の難病のために祖母が人の嫌がる仕事に手を出していく話である。初老の女性の悲哀を描いている。別の映画のムードでいえば、「ウィスキー」や「過去のない男」の匂いである。

60すぎた主人公の女性には息子が一人いて、その子供の孫は難病に犯されている。
治療費が高く、主人公の息子は身の回りの財産を処分して治療費に当てていた。
しかし、お金も使い果たして、借りるあてもない。しかもこれ以上の治療を受けるには
多額の費用がかかる。
その様子をみて祖母である主人公は60過ぎて、職を探しにでるが、どこにも仕事はない。
そんな中接待係との求人を見て、行った先はストリップスタジオであった。仕事とは
ストリップに行った男の下半身欲望処理を受け持つことであるが。。。。

壁に小さな穴があいていて、壁を隔てて顔が見れない。その穴の先に女性のやわらかい手があるというからくりである。店の店主が日本でこのシステムを知り、これはいいと始めた仕事だという。
気が付いてみると、この店には行列ができていう奇妙な展開

この話だけで行くと、どんなきわどい映画とも思わせるが、全然そうではない。
孫のためならという気持ちがいじらしい。
流れるムードはやさしい。

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秩父の芝桜

2010-05-05 19:50:59 | 家族
5月2日妻が急に秩父に行こうと言い出した。
芝桜を見るためと。。

そういえば埼玉県に来て10年近くたつけれど、秩父に行っていない。
池袋経由、西武特急アロー号で秩父へいった。
西武秩父の駅に近づくと山が見えた。なんと美しいことか!

娘と妻と3人でシコシコ山に登った。
公園に行ったらきれいだった。羊山公園と名で、借景の山の美しさは比類ないものだ。



人出がすごかった。
それで帰りは特急に乗れなかった。鈍行電車でシコシコもどり、飯能から川越に行った。
川越では洋食屋「グリル満天星」で食べた。
麻布本店の有名な老舗洋食屋だが、川越では安い。テナント料の違いだろう
娘と妻はヒレステーキ、自分はビーフシチューを食べた。


これはおいしい。東京の支店より1500円以上は安いだろう。得した気分だ。
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ヴィヨンの妻  松たか子

2010-05-05 11:04:03 | 映画(日本 2000年以降主演女性)
映画「ヴィヨンの妻」は太宰治の原作をよりリアルに作家太宰をモデルとしているようにつくられた作品である。心中を扱う話なのに、全体を流れるムードがほのぼのとしていて、激辛の韓国映画を見たあとであっさりとした日本料理を食べる味わいを感じた。それは究極のお嬢様松たか子のキャラなのであろう。


戦後まもない東京、放浪癖のある作家大谷こと浅野忠信が妻である松たかこと息子がいる自宅に帰ってきた。息子は病気の様子だが、診療を受ける金もない。そんなとき飲み屋の主人伊武雅刀と女将室井滋が金を返せとやってきた。浅野は飲み屋から5000円の大金を持ち逃げしていたのであった。当然浅野には金がなく、返済期限をつけられた。松たかこは5000円の返済を計るべく金の用意にまわったあとで、伊武の経営する飲み屋に行き「金の目当てがついた。もう少ししたら金は手に入る。それまで自分が働く」と言って給仕するようになる。美人の松たかこが女給をやるので店は大繁盛するようになるが。。。

傑作とまではいえないと思う。この映画は松たか子だけでもっている気がする。ここではダメ男浅野忠信は普通だ。本来台本の設定でいけば、疲れた匂いも残した女性が演じるのが普通かもしれない。(ひと昔前の田中裕子が適役かも?)それを名門出身のお嬢様松たか子が演じることでやさしい匂いがする。居酒屋が繁盛していく姿など、ほのぼのとするではないか。暗いドラマにしなかったことで、見る人たちを安心させる。

あとはクリスマスを祝う居酒屋でのシーンもいい。ジェームス・スチュワート主演「素晴らしきかな人生」や黒澤監督の「醜聞」のワンシーンが思い起こされた。
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母なる証明 ボン・ジュノ

2010-05-03 19:59:04 | 映画(韓国映画)
韓国映画界の奇才ボンジュノの新作「母なる証明」である。兵役でブランクのあったウォンビンがボンジュノのうまい脚本で復活を図る。
キネマ旬報で昨年2位の高評価ながら、個人的には「チェイサー」の方が上だと評価する。「殺人の記憶」のようなリズミカルな展開のほうがなじみやすい。でもストーリー展開にうまみを感じる。

青年の域に達するが軽い知能障害のあるウォンビンは母親と一緒に暮らしている。それでも頭が悪いと言われると逆上する気がある。ある日スナックに酒を飲みに行ったあと、もうろうとしながら帰ろうとすると、目の前に女子学生が歩いていた。あとを追ったが逃げられた。いつもどおり家に帰って母親の隣で寝た。しかし、その後酔って民家に投げつけたゴルフボールを証拠に警察に逮捕される。女子学生が殺され死体が表にあらわになるところに置いておかれたのである。自分の息子が人を殺すなんてことはありえないと母親は懸命に自分の息子の無実を訴え、真犯人をさがすのであるが。。。。



「チェイサー」でも出来のいい韓国映画の話をした。当然この映画もかなりの出来だと思う。出来のいい韓国映画のうまみはストーリー展開の意外性だと思う。こうなるかなあと想像してその通りになったためしがない。この作品もそうだ。
それでも「殺人の記憶」ほど好きになれないのは、スピード感不足と感じるからであろうか?各俳優はみな好演であるが。。。画像が肌に合わないのかもしれない。

韓国経済はサムソン電子などの絶好調で、日本をはるかにしのぐリーマンショック以降の経済復興を見せている。しかし映画での地方都市の風貌はまだまだ田舎である。今から15年から20年前の日本の風貌かもしれない。でもそんな韓国の現代の姿を映画で観ておくのは悪くない。
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映画 チェイサー

2010-05-02 22:51:48 | 映画(自分好みベスト100)
韓国映画「チェイサー」は凄い作品だ。予想を上回る出来である。
昨年2009年のキネマ旬報ベスト4というだけある。個人的には1位「グラントリノ」は過大評価されていると思っていて、3位「チェンジリング」の方が上だと思っている。でもその「チェンジリング」とこの作品は甲乙つけがたい。

韓国映画は暴力描写の残虐さがきつすぎる。日本の感覚をはるかに超越する。この映画は最たるものだ。それに加えてストーリー展開も、必ずしも倫理的、正義の味方的でない。実話が基準とするとやっぱり怖くて韓国には遊びにいけない。

主人公は元警官、辞めたあと出張デリヘルを経営している。彼のもとにいた2人の女性が、多額の支度金を払ったにもかかわらず逃げられたことを気にしていた。
そんなある日、一人のお客から呼び出しがあり、風邪で寝込んでいた子持ち女性を無理やり呼び出し客の元に行かせる。そのときふと男の電話番号の末尾4885に見覚えがあることに気づく。帳簿を開いて以前デリヘル嬢が行方不明になった時に呼んだ男の番号4885と同じであった。そこで出張させた女性に「着いたら住所をメールするように」伝える。
彼女は待ち合わせ場所から移動して相手の自宅に着いたとき「トイレに行く」と言ってメールをする。しかし電波が通じていない。窓を開けようとすると出入りが不可能になっていた。「車に忘れ物」と言って出ようとしたら、鍵がかけられていた。気がつくと彼女は拉致されていた。
連絡を待つ主人公は連絡が来ず車の中でいらだっていた。そんなとき女性を呼び出した男と車で鉢合せをする。その男のシャツに血がついていることに気づき、車から逃げる男を追いかけるが。。。。



このあと主人公はあっさり男を捕まえ警察に突き出す。映画のまだ前半である。どうなるのかと思ったが、ストーリーは単純にはいかない。数多くの起伏をつくりながら、転結に結ぶ。すんなりはいかない。むしろやるせない気持ちにさせる。これにはゾクッとさせられた。何でこんな結末に持っていくの??残虐だ。

昨年の日本映画でこのレベルに達している映画は残念ながらないと思う。よくできた韓国映画のレベルには現在の日本レベルではどうしても達し得ない。ある意味日本がお上品すぎると言うべきか、ええかっこしいのコンプライアンス社会になってしまった気がする。警察の暴力的取調べなんてマスコミの糾弾を浴びる。足利事件のような万に一つの過ちでぼろくそである。韓国はまだ違うようだ。一時代前の「仁義なき戦い」あたりで見せたハチャメチャさが日本社会から姿を消しつつある気がする。ヤクザはいてもサギ犯罪中心のインテリヤクザであって、こういう暴虐的な世界とは違う気がする。

この映画は音楽もいい。ソウルの街中を駆けめくる犯人と風俗店店主とともに情感をじわり盛り上げていく。あとは背景にある街がいい。坂が多い街でわりと高級住宅地のようだ。長崎、横浜などの港町のような住宅風景で逃走劇を映すには絶好のロケーションであった。何はともあれ完ぺきなクライムサスペンス映画である。


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