映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

寅次郎夕焼け小焼け  太地喜和子

2009-06-13 19:01:59 | 映画(自分好みベスト100)

寅さん映画17作目昭和51年の作品。いつものように柴又のだんご屋と兵庫の龍野が舞台となる。今回のゲストは演劇界の重鎮宇野重吉と太地喜和子である。戦前愛の逃避行でソ連に逃げ込んだ岡田嘉子さんも出演している。48作の中でも上位10番以内に入る人気作品である。

柴又のとら屋に帰ってきた寅さん渥美清。さくらの息子が小学校に入学するので、入学祝を渡そうとする。ところがいつものようにちょっとしたいざこざで大喧嘩。ぷいと外に飛び出す寅さん。上野の飲み屋に入って一杯引っかけている。すると、一人の老人宇野重吉が無銭飲食をして外へ出ようとする。店の人は怒って警察を呼ぼうとした。それを見た寅さんは飲み代を支払って、老人をとら屋につれてくる。その後も近所で飲んだツケをとら屋に払わせようとして、家のみんなはおかんむり。どうも老人は宿屋と勘違いしたようだ。寅さんに諭された老人は画用紙にさっとスケッチを描く。そして寅さんに「この絵を持って神田神保町の書店街の店にいってくれ」と。。。いくらか足しになるからと言われ寅さんは向かう。 意外な大金を提示されてびっくり!
結局宇野重吉は有名な画家であることがわかる。そして、彼が龍野の街に呼ばれ寅さんも付いていくときに出会う芸者が太地喜和子である。

とらやで繰り広げられているのは究極のワンパターン。タコ社長とのケンカもいつもどおり。全48作の最後の方では大きくなって恋をする甥っ子はまだ小学1年である。宇野重吉に加えて、息子寺尾聡が一緒に出ているのが珍しい。「ルビーの指輪」で大ブレイクする数年前だ。太地喜和子は非常に美しい。彼女のピークではないか。芸者姿がよく似合う。着物の着こなしもよく、早く亡くなったのが惜しまれる。 お笑いの見せ場をいくつも作る監督山田洋次のうまさも光る気楽な作品だ。

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蜘蛛巣城  黒澤明

2009-06-11 05:47:54 | 映画(日本 黒澤明)

シェークスピア「マクベス」を題材にした黒澤明監督の時代劇。主君に忠実に仕える領主三船敏郎があるきっかけで主君を殺害し、自ら主君に成り代わろうとする話。能を取り入れたり日本の伝統芸能の匂いを戦国の争いの中にちりばめる傑作。三船敏郎、山田五十鈴両者の円熟の演技がすばらしい。

時は戦国時代、三船敏郎の主君は反対勢力の鎮圧に苦慮していた。そこを助けたのが、三船と同等の領主千秋実の両者である。鎮圧のあと、森の中で「物の怪」老婆の天の声を聞く。それによれば、三船はやがて主君の城である蜘蛛巣城を得ることができると。その話を三船が妻の山田五十鈴に語ると、山田は「この話が主君にばれると、主君はあなたを討とうとするはずだ。」と言う。忠実な武将である三船は戸惑う。猟の途中に三船のところに立ち寄った主君が泊まる際に、山田の指示もあり、主君を殺害する。そして、それを主君の家来の叛乱とまわりにみなさせるが。。。。

この映画のポイントは、三船と山田のやりとりである。山田はむしろ巫女のような予言をして三船を主君殺害に差し向ける。十分間合いをとる。途中長まわしの無言劇がつづく。そこに絡まる能の音楽。二人の演技、美術、音楽とも完璧である。黒澤明の力量が演技指導だけではないことを示す場面が目立つ。その後、亡霊に惑わされる三船と山田の演技もすさまじい。お化け映画じみているところもあるが、すべてが完璧なのでB級スリラーとは感じさせない。
改めて黒澤の手腕と二人が日本映画界屈指の俳優であることを再認識させる傑作だ。

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彼岸花  小津安二郎

2009-06-10 21:02:00 | 映画(日本 昭和34年以前)
人間ドックの結果を見て、あまり血圧が高くならないような映画を見た方が身のためかと思った。
小津作品をみる。彼にとって最初のカラー作品。ストーリーはいつもどおり結婚に伴う親と子の心のふれあいの話。ワンパターンで何も感動がないが血圧も高くはならない。

商事会社の常務佐分利信は、田中絹代を妻に持ち二人の娘と暮らしている。ところがある日一人の青年佐田啓二の訪問を受ける。どうやら長女有馬稲子と同じ会社の青年のようだ。彼はいきなり自分の転勤もあり、娘さんを一緒に連れて行きたいので結婚したいと言われ戸惑う。。。。
ここに京都の親戚浪花千栄子、山本富士子の親子、佐分利の学生時代の友人笠智衆とその娘久我美子が絡んでいく。新幹線ができる前の時代で今と時代背景が大きく違う。田中絹代はほとんど着物を着ている。京都の親子もずっと着物を着ている。このころはまだ着物を着ていた人が多かったのであろう。でもこれはこれでいい気がする。今の時代着物で通したら、さぞかしかっこいいんじゃなかろうか?

小津のストーリーはワンパターンに見えるが、少しづつ組み合わせを変えている。結婚に対して娘が積極的なパターンと親が積極的な2パターンに分かれる。しかし、どれもこれも似たり寄ったりである。最近は聞かれなくなった重役と言う言葉がある。死語になった気もする。でもその役には佐分利信ほど似合う役者もいないであろう。ここでもいい味を見せる。あとはどうってことないなあ。
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人間ドック

2009-06-10 06:04:49 | Weblog
昨日午前中人間ドックであった。

データ的には、血糖値、血圧が高かった。胃のレントゲンは問題なしだった。
最近家で血圧を計っている。上は130-150、下が90-100程度だ。高い。昨日も138-92であった。特に下が高いのかもしれない。分析するほど健康のことは詳しくはない。どうしたらよいのかネットでぐるりしてみた。歩けってことなのかな?酒はこのごろほとんど飲んでいないんだけれど。。。ストレスで血圧が高くなるような要素は割りとあるんだけれどね。

血糖値も高い。ネットに「笑うと血糖値が下がる」と出ていた。暗い映画を避けて、コメディでも見てみるか?植木等や森繁をはじめとした東宝喜劇陣の顔が目に浮かんだ。寅さんのドタバタも笑えるよなあ。大好きな「ブルースブラザース」もあったっけ。毎日見ているとあきるよなあ。マリリンモンローの「お熱いのがお好き」また見てみようか。

ちょうど父が亡くなってもうすぐ一年になる。心臓疾患であった父も同じような自分と同じ気があった。ただ、晩年やせ細ったときは、血圧も血糖値も下がっていた。
無理には薬は飲まず、万歩計の1万以上を毎日続けることを心がけてみる。

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ターミネイター  シュワルツネッガー

2009-06-09 19:22:39 | 映画(洋画 89年以前)
現在ターミネイター4作目が放映中。2作目からは予算がどんと上がってヴォリュームアップした。シュワちゃんのこの低予算一作目の意義は大きい。序盤戦から緊張感があるシーンが続く。恐ろしさが増幅して、何度見てもあきない傑作だ。

シュワルツネッガー
がいきなり真っ裸で地上におりてくる。その付近でたむろっている不良少年たちがナイフで脅そうとするが、コテンパンにたたきつける。同じころ一人の若者マイケルビーンが町の真ん中に裸で現れる。二人は2029年の未来から1984年にやってきたのだ。未来は核戦争で荒廃していて、機械たちが地球を制している。そこで立ち向かう人間軍の首領がこの世に生まれてこないように、「殺人サイボーグ」シュワルツネッガーが母親を始末しにやってきたのだ。そこに立ち向かう人間軍も人を送り込む。対決が始まる。。。

知事になった彼にとっての出世作。これがなかったら知事にもならなかったであろう。第二作では当初迷彩をみせて、突如悪役から正義の味方に代わる。しかし、傑作といわれる第二作よりもシュワルツネッガーが悪役になるこの作品の方が好きだ。悪役の方が似合っているし、緊張感がある。身体も筋肉モリモリでイカツイ。いかにも不死身だ。事実何をやってもくたばらない。 見るものをドキドキさせるジェームスキャメロンのスリラー映画の手腕を感じる。
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1Q84  村上春樹

2009-06-07 21:27:56 | 

読むのに時間がかかった。最近は映画のことばかりブログに書いているけれど、本はかなり読んでいる。一日に4冊読んでしまうこともある。ビジネス系であればそれで良い。付箋をつけながら、一つでも役に立つことないかと読むわけであるから。。

でもこれは一日では読みきれない。いつものように好きな表現に付箋をつけながら、読むわけだが、これまでの村上春樹の作品の何かに照らし合わせる瞑想の時間が必要になる。時間がかかった。ようやく読み終わった。

世間一般にストーリーの内容が伏せられているので、多くは語れない。主人公は予備校の数学教師である。文学への関心も強く、小説を書いている。彼には10歳のときに強く心を惹かれた女性がいる。その女性も重要な登場人物である。彼女に関しても平行して語られていく。といったくらいにしておこう。

純愛の要素は彼の小説に共通して存在する。誰にもその人にとって強烈な吸引力を持った女性がいるものである。その人に対して、ずっと思い続けているわけではないが、なぜか忘れられない存在っているものだと思う。村上春樹の小説にはそういう存在が出てくることが多い。 ここ20年くらいに世間で話題になった重要事件の要素がネタになっている。それをパラレルに人生を過ごす二人に絡ませる。しかし、それ自体はそんなに重要なことではない。今までのように、その人にしか語れない純愛への思いやさまざまな女性との交わりを丹念に描写していく。村上春樹流というべきか、村上春樹節というべきかそういう丹念な描写が出てくるとほっとする?ような気がする。
でも、それだけではない。怖ろしい凄みを感じさせる場面もあった。ヒッチコックの映画のようなドキドキ感と「必殺仕事人」を思わせる鮮やかさにも感嘆

 昔からよく行っているなじみの店に久しぶりに行って、なじみのマスターにあって、昔から食べているおいしいものを食べる。そんな気分になった。貴重な時間であった。

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戦場のピアニスト  エイドリアン・ブロディ

2009-06-07 20:30:33 | 映画(洋画 99年以前)

二次大戦以前ユダヤ人が最も多かったポーランドを舞台にしたユダヤ人ピアニストの物語。ナチスによるユダヤ迫害の強烈な惨劇が描かれる。その中でピアニストが助けられる話。

古代より行き場を失い世界中をさまようユダヤ人にとって、ポーランドは居心地のよい場所であった。第一次大戦では戦勝国であったポーランドは、逆にユダヤが多いこともあり、ドイツの格好のターゲットとなる。そこにいるピアニストエイドリアンブロディは、1939年のポーランド侵攻以降ひたすら身を隠す生活を続ける。ほとんどのユダヤ人が強制収容所に連れ去られる中、運良く生き残った彼だが、廃墟の片隅でパトロール中のドイツ兵に会ってしまう。。。。
こういう映画が賞をもらいやすいのかもしれない。見ている方はいやな感じである。「シンドラーのリスト」もいやらしかったが、ここでもユダヤ人が虫けらのように殺される。
世界史上屈指のすばらしい経済政策をおこなったヒトラーがああいう狂気の世界になぜ陥るのか?彼の政治能力が高いだけに惜しまれる。

ただ、ピアニストがドイツ軍士官と出会うシーンだけが、安らぎのようなところだ。あのシーンのショパン「バラード」は非常に印象に残る。何度も聴いた曲だが、エイドリアン自ら弾くたどたどしく始まるスタートを経て、(多分プロのピアニストであろう)すばらしい速弾きの場面だけはドッキリする。

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足利冤罪事件と映画チェンジリング

2009-06-05 19:14:36 | 映画(洋画:2006年以降主演女性)

今朝テレビを見ていたら、栃木足利の幼児殺害冤罪事件で釈放された被疑者がでていた。見ていたらかわいそうになった。だって、どう見てもそういう悪さをする人物には見えない人のよさそうな顔をしている。これまでもこういう話はいくつもあった。その中には、こいつ本当はやったんじゃないと思わせる人もいた。 今回は違う。

映画「チェンジリング」に通じるものがある。ロス市警と栃木県警の違いはあれど、威信がかかっているので警察は一度判断したことをひっくり返されることへ強く抵抗する。「チェンジリング」では、全く関係ないところで発見された子供を強引に行方不明の子供にしてしまう。それこそ現代であれば、DNA鑑定をやって一発でわかるはずである。ああいう時代だから警察自体もいい加減であった。しかも、本人と違うことを主人公の母親が証明しようとしたら、母親を精神病院に入れてしまうひどい話である

今回のDNA鑑定については、事件当時と今と鑑定の精度が大きく違っているようだ。その精度が高まった現代の鑑定で大丈夫だったので真犯人が別にいるのは間違いないであろう。しかし、精神鑑定を某大学教授によっておこない、今回の被疑者を幼児に対する異常な性癖があるように診断書を書いている。精神異常者に仕立てるのは「チェンジリング」と同じだ。これはひどい。しかも、その大学教授はインタビューのテープを捨てたというではないか?これっていいのかしら?

「チェンジリング」でも精神病院内で警察の言うとおりに認めなければ、電気ショックの機械にさらしたりする。異常者の行為が判明して、白骨死体が発見された後も、一部の良心的な警察官以外は隠蔽しようとした。
自白の件についても、到着した汽車を降りた少年を母親が違うと警察に言った時、とりあえず自分の子として扱うようにと無理やり警官に言われて写真を撮る。同じような話だ

すべての警察官が悪いというつもりはない。むしろほとんどの警察官はまじめだと思う。おそらくは当時のロス市警だってまじめな人がほとんどだったであろう。自分の過ちを素直に認めていないとあとで自分がもっと罪の意識に犯される気がする。栃木県警の上層部も、DNAの再鑑定を認めなかった検察も素直に懺悔して欲しい。「悪かった」と素直に謝って欲しい。そうでないと、当事者みんな死に際が悪いはずだ。

すぐにはできないであろうが、足利幼児殺人事件も映画化してほしい。

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チェンジリング クリント・イーストウッド

2009-06-05 19:11:34 | クリントイーストウッド

きつい映画だ。かなり気味が悪い。
クリントイーストウッド監督がアンジェリーナジョリーを主演に迎えて異常な犯罪の世界に入り込む。「グラントリノ」よりもかなりエグイ話だ。とかくロス市警は映画の世界では評判が悪すぎる。ここでは際立って悪い!!

1928年3月母子二人でロスに生活するアンジェリーナ・ジョリーが仕事に出ているすきに、子供が行方不明になる。警察に届けたが見つからない。失意の5ヶ月がたち、息子がイリノイ州で見つかったという知らせが入る。喜び勇んで、駅にて迎えた。しかし、来た子供は自分の息子と違った。一緒にいた警部に「この子は違う。」と主張したが、聞き入れてくれない。とりあえず彼を自宅に連れてきて、柱のキズで背の高さを確認すると7センチも低い。息子とは違うことを証明するために、通っていた学校や診察してくれた歯科に行って書面にて本当に違うことを証明させようとするが。。。。

変質者を登場させるのは、イーストウッドの得意技である。特に強烈なのは「ダーティハリー」「シークレットサービス」「ブラッドワーク」あたりだと思う。フィクションでなく今回は実話である。どうも犯人の顔は本物の顔に似ているようだ。イーストウッドは最初に実際のイメージに合った人を配役で選ぶことに注意をするらしい。今回はいろんな意味で会心の笑みを見せていることであろう。主演女優もヒラリー・スワンクやリース・ウィザースプーンの売り込みもあったらしい。 でもアンジョリーナでよかった。

アンジェリーナジョリーについては、個人的には派手なアクションで動き回る方が好きだ。でもシリアスな役も悪くはない。精神的に激しいダメージを受けるかなりきつい役だと思う。目つきも相当悪くするように指示されている。よくもったと感心する。これもここ数年の輝かしいキャリアがあるせいであろう。
ジョンマルコビッチはアンジェリーナジョリーの後見役的な神父さんの役である。頭が禿げていなかったので一瞬わからなかった。めずらしくきわめて一般人の役である。「バーンアフターリーディング」とはまた違った味を出す。イーストウッド映画では「シークレットサービス」で変質者を演じた。そして大統領警護のイーストウッドとの直接対決をする。あの映画でのマルコビッチの怪演ぶりは彼のベストではないであろうかと思う。
あとは本当に憎たらしいと見ている者に感じさせた、ロス市警の警部さん。途中でこっちがむかむかしてきた。これは素晴らしい演技だと思う。 「ディパーテッド」のマークウォルバーグがダブって見えた。

いずれにせよ1年に2作も傑作を生んだイーストウッドに感謝

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サード  森下愛子

2009-06-04 20:12:33 | 映画(日本 昭和49~63年)
78年の作品。誤って人を殺し、少年院に入ってしまった永島敏行の少年院での日常生活を映し出す。若い森下愛子が美しく色を添える。寺山修司の脚本も単純な場面と抽象過ぎる部分と極端に両面つくりすぎる。主人公を妙に走らせたりしてわかりづらくしている映画だ。

永島敏行は高校の野球部でサードを守っている。それなので「サード」と呼ばれている。仲間と女の子2人の3人でお金をためて何かをしようという話になる。女の子からいちばん手っ取り早いのは売春だと言われ、永島がポンビキになり、森下が一人2万で仕事をするコンビを組む。順調に金を稼いでいった。ところがあるときやくざ風の峰岸徹が客となり、二人で部屋に閉じこもるが3時間たっても終わらないので、訪ねていき、そこでトラブルになるという話。それが回顧の話であとはひたすら少年院の中を映す。

この時代って、まだ簡単なことをわざと難しく言うのが偉いとされた時代だと思う。そういう面倒な人が大勢いた。ちょうどディスコブームが始まったころである。もう少しすると人間の発想がもっと単純化されるのであるが、素直にいっていない部分が多い。誤った知性が映画を間違った方向に進ませている。森下愛子の若い裸体はきわめて美しい。でもこの映画ちょっと苦手
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日本のいちばん長い日  三船敏郎

2009-06-03 18:42:55 | 映画(日本 昭和35年~49年)

7月末に連合国から出されたポツダム宣言に対応しきれず、変わらぬ強硬姿勢に原爆の投下、ソ連の参戦とコテンパンにやられたあとの、終戦の前日昭和20年8月14日正午から当日8月15日の天皇陛下のいわゆる玉音放送が流れるまでを中心にしてドキュメンタリータッチで描く。長い映画だが、カットが多く、テンポも悪くない。三船敏郎、笠智集をはじめとして、演技の水準も高く傑作だと思う。

この映画が公開されたころ、まだ小学校の低学年だった。生まれ育った五反田付近に東映、日活、大映とあるのに東宝の映画館がなかった。東宝のでかい看板が今のTOCのあたりにあった。この映画の題名が小さかった自分の心にひびいた。幼な心に終戦の日だけは24時間が30時間くらいあったのかと母に尋ねた記憶がある。映画館のある渋谷へは父とよく行っていたが、当時の渋谷は黒いサングラスの怖いお兄さんたちが多くてまだ怖かった。当然一人で渋谷に行けるほどまだ大きくはなかった。長年の希望がかなってようやく見れた。

無条件降伏を勧告するポツダム宣言が連合国から出されたとき、日本はまだ条約を結んでいたソ連を仲裁にした終戦を考えていたようだ。そのため、はっきりとした態度を内閣が躊躇していた。ところが最前線にいる軍部には連合国からの勧告が伝わっていたため、はっきりとした戦争への態度が必要であり強硬な態度を示した。これが、原爆を招いたということのようだ。
しかし、原爆の連続投下、ソ連の参戦とどうしようもなく、天皇陛下も終戦を決断した。ただ、陸軍の終戦阻止への動きは強く、三船敏郎演じる阿南陸軍大臣も戦争続行を強く主張したが、絶対的な存在だった天皇の意思に従わざるを得なかった。
この映画の中心は、陸軍を率いる阿南陸相の苦悩だけでなく、終戦を阻止しようとする下士官たちの強硬な動きである。終戦直前に放送を阻止する動きがあったことは事実として知っていたが、ここまで皇居内が激しく荒らされているとは思わなかった。

演技としては、三船敏郎が彼独特の声で陸軍のトップの男らしい姿を映す。逆に反逆下士官を演じる普段クールな黒澤年男のアナーキーな動きが、「仁義なき戦い 広島死闘編」の千葉真一を思わせる強烈な個性をはなつ。皇居前の爆沈の撮影はよくできたと思う。味付けとして面白いのは、怪優天本英世だ。鈴木貫太郎首相宅に襲撃を図る横浜銃撃隊の隊長役。晩年は死神博士など悪役専門だった彼が、独特の個性を発揮している。
そういった俳優たちの好演、怪演に加えて、仲代達也のナレーション的セリフを織り交ぜながら、数え切れないくらいにあった諸事実を簡潔にまとめた脚本と演出はすごいと思う。

映画の中では皇居を宮城という。今では死語となった。おじいちゃんと小石川のおじさんのところへタクシーで向かうとき、おじいちゃんが「宮城の横を通って初音町に行ってくれ」と言っていた。明治の人には戦後20年たっても宮城なのであろう。和気清麻呂の銅像を思い出した。

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過去のない男

2009-06-02 20:59:57 | 映画(洋画:2000年以降主演男性)
フィンランド映画である。負傷して記憶をなくした男がヘルシンキを漂流する姿を描く。無口で表情がない登場人物がたくさん出てくる。この国ってこういう人が多いのかと思ってしまう。個人的趣味ではないが良くできているとは思う。

ヘルシンキに旅立った主人公は、深夜3人の暴漢たちに襲われる。病院に搬送され、一時は脈もなくなるが、生き返る。自分が誰なのかの記憶をなくしていた。包帯したまま街に行き、車上生活者に助けられる。仕事をしようにも、自分の名前が思い出せないので、身分を証明できず仕事に就けない。そんな彼は救世軍に助けられる。その中の無表情な女性に彼は関心を示すようになるが。。。。

美男美女はまったく出てこない。インテリアも街に走る車も妙に古く感じる。日本で言えば昭和40年代にバックデートするみたいだ。職業安定所に行く場面では、パソコンが写っていたから、一時代前の設定ではなさそう。登場人物がやけに表情がない。こういう系は正直苦手である。しかし、脚本は次から次に小さい物語を主人公と救世軍の女性に与える。この小さい物語の一つ一つに味がある。奇妙な恋の物語でもある。
銀行強盗、年寄りのやり手弁護士、救世軍の老歌手、アマチュアロックバンドのメンバーなど不思議な登場人物が次々でてくる。一種ロードムービー的な面白さもある。玄人好みかもしれないが、地味すぎる。
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2046  トニーレオン

2009-06-01 20:54:06 | 映画(アジア)
王家衛監督の「花様年華」の続作。日本では木村拓哉の出演で話題になる。日本では近未来ということが、前宣伝で強調されていた。しかし、主人公は花様年華のトニーレオンがそのままの役で演じる話で、レトロな香港のシーンはまともだ。未来描写はいただけない。公開直後劇場で見た。今回「花様年華」を久々見て、もう一度見てみたくなった。

1960年代半ばシンガポールに行っていたトニーレオン扮する主人公が、香港に戻ってくる。新聞記者だった彼は文筆業をしている。ウィークリーマンションのようなホテルに滞在する。支配人の娘フェイウォンは日本人ビジネスマン木村拓哉に恋をするが、父親は気にいらない。その二人の異国間の恋を見て、近未来で主人公自身が日本人となることを想定した小説を書いてみようとする。
主人公トニーレオンの自由奔放な女性関係が主題である。シンガポールの女賭博師コンリー、娼婦チャンツィイー、ダンサーであるカリーナラウと超一流の女優たちがトニーの相手で出演する。マギーチャンも花様年華の一場面のように一瞬登場するが、あまり意味はない。

こうして見直してみても、トニーレオンの出演場面はけっこう良い味を出している。花様年華ではマギーチャンとプラトニックな世界のやり取りであったが、この映画ではチャンツィイーと情熱的な抱擁を交わす。コンリーとも激しいキスをする。非常に情熱的である。花様年華で抑えていたものを吐き出したような雰囲気である。
残念ながら木村拓哉が出る部分はカットした方が、映画としては良かったと思われる。キムタクが悪いわけではない。近未来の設定に非常に無理がある。美術、セットに皆なれていないせいか、非常に稚拙に思われる。しかし、キムタクが出なければ日本では話題にも上らなかったし、配給収入も大幅に減ったであろう。日本からも資本が入っているようだから致し方ないとはいえ、中途半端になってしまった。


カリーナラウやコンリーのキャラクターは絵になる。彼女たちとのやり取りをもう少し増やして、キムタクとフェイウォンの60年代の恋愛場面を増やしたらよかったのでは?近未来設定は大きなミスである。
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