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映画「浮城」 アーロン・クォック

2015-08-23 12:02:27 | 映画(アジア)
映画「浮城」は2012年の香港映画だ。今年ようやく日本公開となる。


返還前香港で、下層からのステップアップを語った映画は多い。中国本土でひどい貧困を味わい、国境を泳いで香港に逃げてきて苦労して巨万の富を得るというパターンだ。
今回は蛋民(たんみん)という言葉がクローズアップされる。要は水上生活者である。以前は香港を舞台にした映画というとアバディーンのエリアに浮かぶ船が必ず出てきたものだ。それなので、香港に行く前は、かなりの水上生活者が居るのでは思っていたが、自分の知る限りでは90年代にはもう少なくなっていた気がする。

この作品は水上生活者として育った混血の少年が、英国植民地支配の香港社会で高い地位を得ていくまでの苦労を描いた作品だ。
傑作というわけではないが、香港好きの自分は興味深く見れた。

1940年代末、イギリス人と香港女性の間に生まれた子供が、流産したばかりの貧しい蛋民の夫婦に買い取られる。赤ん坊は華泉と名付けられ、船の上で成長。人とは違う外見から“あいの子”と揶揄される彼を、母は、その後生まれた弟妹たちと分け隔てなく可愛がった。

ある日、華泉はプロテスタントの牧師から学ぶことを勧められた。「漁師に学はいらない」と反対する父だったが、母の後押しで船を降り、教会の夜学で文字を学び始める。間もなく父が海で命を落とし、自分が買われた子だと知った彼は、長男として身を粉にして働き出す。


やがて憧れの東インド会社に雑用係として採用されると、21歳にして初めて正式な小学校教育を受けることに。イギリス人の上司から差別的な言葉を投げつけられながらも、華泉(アーロン・クォック)はたゆまぬ努力を重ねて次第に頭角を現していく。反英運動に加担した同僚が逮捕されたことなど関係なく、正社員となり幼馴染みの娣(チャーリー・ヤン)とも結婚、順調に出世の道を歩み続けていた。その頃、アメリカで建築学を学んだエリート女性の菲安(アニー・リウ)が仕事のパートナーとして現れる。


菲安は上流社会での振る舞いを華泉に教え、彼もその知識を吸収していく。ついには中国人として初の重役にまで上りつめたが、華泉は常にどこかで「自分は何者なのか?」と問い続けていた。

時は流れ、香港が中国に返還される時がやってきた。かつて赤ん坊の自分が売られた場所を訪ねた華泉は、自らの出生の秘密について聞かされる。それと同時に、改めて育ての母の深い愛情を知るのだった。(作品情報より)


1.水上生活者
古くは映画「慕情」ウィリアムホールデンジェニファージョーンズがアバディーンまでドライブして船に乗るシーンが出てくるし、「燃えよドラゴン」は香港の水上生活者の船に乗ってブルースリーが登場する。漫画「ゴルゴ31」でも香港というと水上生活のうらぶれた船に悪の巣があるというパターンである。それなので、水上生活者に強い関心を持っていた。当然普通の教育を受けずに育った人ばかりだろう。この映画の主人公は実際運がいいとしか言いようにないラッキーでのし上がった男である。


日本ではほとんど聞かないが、映画「女経」若尾文子が演ずる男をたぶらかす女は川の船で暮らす水上生活者の娘という設定だった。昭和30年代半ばくらいまではいたのであろう。

2.アーロン・クォック
成り上がりの役だが、端正な顔をしているのでハイソサエティの香港人役にも合う。今回はアニー・リウとの恋がいい感じだ。
「コールド・ウォー 香港警察」での警察幹部の役がなかなかピッタリ合っていた。もともと「香港四天王」と言われたアーロンもむしろ30代半ば過ぎてからの活躍が著しい。


3.香港の東インド会社
主人公の勤める会社は、ジャーディンマセソン社がモデルになっている気がする。中国とのアヘン交易の利権を得ようと英国政府をそそのかした悪徳商社のように高校の「世界史」の教科書にも出てくる名前だ。ジャーディン社というと、英国あたりの著名な学校で高等教育を受けた人だけが香港人で偉くなれるイメージがあるので、この映画が実話に基づくというとたいへんな立身出世である。

(参考作品)

コールド・ウォー 香港警察 二つの正義
アーロン・クオック演じる警察幹部がかっこいい


浮城
香港の水上生活者の成り上がり物語


慕情
1950年代の香港水上生活

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