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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「その花は夜に咲く」

2025-03-25 21:14:09 | 映画(アジア)

映画「その花は夜に咲く」を映画館で観てきました。

映画「その花は夜に咲く」はベトナムのホーチミンに暮らすトランスジェンダーとボクサーの彼氏の物語。女性監督のアッシュ・メイフェアの前作「第三夫人と髪飾り」は昔のベトナムを舞台にしたよくできた作品だった。ベトナムの名監督トラン・アン・ユンも参画していた。今回ホーチミンが舞台だが、前回は北部の名勝チャンアンがでていた。

男色映画は正直言って苦手だが、トランスジェンダーの作品で気の合う作品も多い。自身もトランスジェンダーであるチャン・クアンはいかにも女っぽい。女性監督なのにボクシングや地下格闘技の世界もストーリーに組み込まれていて面白そうだと感じて映画館に向かう。

90年代後半のホーチミン(サイゴン)の片隅で、ナイトクラブのダンサーであるサン(チャン・クアン)とボクサーのナム(ヴォー・ディエン・ザー・フイ)が同棲している。サンはナムのために女性への性転換手術費を貯めていた。そんな時、街のフィクサー、ミスター・ヴーン(井上肇)がナイトクラブに現れ、ステージのサンに注目して指名する。アフターでお相手するようになる。金満家のヴーンがスポンサーになるとサンは喜びナムにも伝えるが、ナムはやきもちを妬いていた。

ナムは金の稼げる地下格闘技で闘うようになる。連日傷だらけになりながら弱肉強食の世界に浸る。その一方で川の小舟のサンは彼氏ヴーンとの生活に疲れてきた後、自殺未遂事件を起こす。精神不安定な状態だったが、思い切って性転換の手術をするために渡航する。

アジアンテイストのムードには魅せられるが、ストーリー立てが強引で不自然さを感じた。

2015年の秋に東南アジア出張でホーチミン(旧サイゴン)で2泊した。深夜ホーチミンの空港に到着して,ホテルに向かう時、道路に面した店舗がほとんど外に露店のようにテーブルを出して若者がたむろっていた。昼間は大量のバイクが道路を走り回っている。テレビで見ていた光景が目の前で繰り広げられると圧倒される。ベトナム戦争後、月日を経てかなり近代化されている。一方で路地の多い猥雑な街中の雰囲気が個人的に好きだ。この映画を観て渡航時の雰囲気を最初から最後まで視覚的に楽しめた

ダンサーのサンは普通に見ると、美しい女性にしか見えないトランスジェンダーだ。日本の女装オカマクラブにしばらく行っていないけど、レベルは高い。彼氏への気持ちは普通の女性よりやさしい。金満家の社長を見つけて2人だけで逢うようになってからも、自宅に帰ると嫉妬心で燃える彼氏と交尾してしまう。そんなメイクラブシーンがたびたび出てくる。

モロには見せないが、まだサンにはチン◯がある。後ろ姿で股の間からわずかに見せる。サンを演じるチャン・クアン本物のトランスジェンダーで映画初出演だ。そうは見えない演技の巧さがある。金満家を演じるのは日本の名脇役井上肇だ。ベトナム語のセリフは大変だったろう。

彼氏のナムはボクサーだ。プロのボクサーなら素人とトラブルがあっても拳は出してはいけない。でも、ナムはそうはいかない。サンが女装だとからかわれると放っておけない。ボコボコにしてしまう。腕っぷしに自信があるから、金網の中でガチのケンカをする地下格闘技で荒稼ぎしようと試みる。そこでも連戦連勝だ。しかし、ストレスも溜まるんだろう。川に浮かぶ小舟の中で水上生活する18歳にも満たない少女のもとへも寄ってメイクラブする。これが後で尾を引く。

途中まで、こんな感じでネタが少ないなあと思っていたら、サンの自殺未遂、性転換手術、少女の妊娠など次々にネタを放出する。ラストに向けては強引に事件を起こしストーリーを作るが、少し無理がある。

昭和30年代までは日本映画でも水の都東京の水上生活者がでてくることがある。大阪が舞台の小栗康平の名作「泥の河」では加賀まりこが水上の小舟で客をとる美貌の娼婦を演じた。説明が少ないので微妙だが、この少女も同じだろう。ところが、その少女が妊娠してしまう。ナムの祖母はひ孫ができると大喜び。普通だとサンが嫉妬で大爆発してもおかしくないのだがそうならない。大好きなナムの子だからと言って、少女を大切にする。

これって、古き時代の日本の子どもができない正妻と愛人の関係のようだ。自分がお世話になったご婦人もいわゆる昔の金持ち社長さんの娘だけど、夫が芸者に作らせた子を正妻が自分の子のように育てた。娘は中年以降に初めて自分の出生の経緯を知り、育ての母を尊敬していた。そんな話も思い出す。


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