映画とライフデザイン

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映画「春を背負って」松山ケンイチ&蒼井優

2014-06-18 08:53:10 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「春を背負って」を映画館で見た。
名カメラマンとして名高い木村大作監督が「劔岳 点の記」に引き続いてメガホンをとった。
監督として撮った前作は雪山を美しく捉えてすばらしい映像だった。70過ぎてもそのカメラワークは冴え渡る。
当然のごとく映画館に足を運ぶ。

今回も山を映し出す映像コンテが素晴らしい。春の桜を映し出し、夏山の爽快感、秋の紅葉、雪に埋もれた立山を最高のアングルで映し出す。その木村監督のもとへ集まったのは、松山ケンイチと蒼井優の若手に加えて豊川悦司だ。久々に檀ふみが登場する。3000m級の高地で撮影するわけだから、これはしんどい。出演者には敬意を表したい。
脇役として登場するのもベテランがそろう。

ただし、映画のストーリーはちょっと単調でプロットが弱い。緊迫感がない。
もっともこれは原作があっての映画なので必ずしも木村監督のせいではない。
しかも、音楽が池辺晋一郎の音楽がちょっとうるさすぎるという難点はあるが木村大作の技をじっくり堪能できた。

長嶺亨(松山ケンイチ)は外資系金融機関につとめるトレーダーだ。運用成績が落ち込み上司から叱咤激励をうけている。そんな時母(檀ふみ)から父の訃報の連絡があった。
亡き父(小林薫)は、立山連峰で山小屋〝菫小屋〟を営んでおり、小さい頃から亨は父に厳しく育てられていた。父は雪山から転落した登山者を助けようとして、頭を岩にぶつけて亡くなった。
亨が母(檀ふみ)のもとへかけつけると、地元の山仲間が大勢葬儀に参列していた。その中には親友(新井浩文)と前年から山小屋を手伝っていた高澤愛(蒼井優)の姿があった。
葬儀のあと始末をしながら、亨は久々に母や愛とともに雪に埋もれた山小屋に向うことにした。小屋でたたずみながら、母は山小屋を誰かに譲らねばという話をした。亨はとっさに自分がやると言い出す。都会での生活を捨て小屋を継ぐことを決意する。
愛も一緒にやるということになった。

トレーダーをやめて、山小屋の主として重い荷物を抱えて登山する途中で、ゴロさんこと多田悟郎(豊川悦司)が現れる。
父親の山岳部の後輩であるゴロさんは慣れない亨を手伝うためにやってきたのだ。
3人の山小屋生活が始まった。

1.池辺晋一郎の音楽
ともかく不必要にうるさい。全部がそうではないが、映像とあっていない。木下恵介監督の作品で、木下忠司の音楽がうるさすぎてうんざりすることがある。同じようなものだ。例えばティムバートン監督の「バットマン」で、マーラーの交響曲を思わせるダニーエルフマンの音楽が高らかに鳴り響いている。これもうるさいが、映像にはあっている。
それとはちがうのだ。フェリーニが「音楽、音響効果はイメージの強化を目指すべきである」といっている。逆に池辺は映像のイメージをつぶしている。残念である。

2.過酷な撮影条件
標高の高いところでの撮影は大変だったよなあ。ここでも松山ケンイチが60kgの荷物を担ごうとして悪戦苦闘するシーンが写る。スタッフ一同に厳しい登山に音を上げたのではないか?長身で体格のいい豊川を松山や新井がおんぶするのも大変そうだ。あとは激しく降る暴風雨の中のシーンも、きつそうな映像だなあ。
そんな中夕日を見つめながらたたずむシーンや岩のテラスで松山と豊川が映し出されるショットも美しい。


3.演技巧者が集まる
個性的な実力派の俳優たちが揃っているけど、井川比佐志、石橋蓮司というあたりの起用がうまい。
いつもながら井川比佐志の笑顔っていいなあ。味がある。昔から木村大作と縁が深いのでは?
市毛良枝を映す映像も解像度を落としているのでふけて見えない。
吉田栄作、仲村トオルなど二枚目はそれなりに適役だけど、現代の名優安藤サクラはせっかく出ているのに力が発揮できる役柄ではない。いつもは不良の匂いをプンプンさせる新井浩文もこういう役だと不自然な感じがする。

4.蒼井優
不倫の恋に破れ、1人で立山登山を目指し遭難しかけたところを亨の父に助けられた。義に感じ、山小屋で働くようになったという設定だ。ここでの蒼井は笑顔がかわいい。ベリーショートに近いショートカットだ。でも、若い2人が山小屋という閉鎖空間にいるのに何にもないのはおかしい。
70歳を過ぎた木村大作には恋愛の映像コンテは苦手なんだろう。ちょっともったいない。

5.檀ふみ
久々に映画でみた。もしかして、監督の好みなのであろうか?民宿の女将としての着物のいでたちが素敵だ。
登山ルックに長身の身を包んだ姿もいい。もう60になったのね。「青春の蹉跌」のお嬢さん役がなつかしい。
昔はキャンパスで何回か見かけたことがある。たしか、2年くらい留年していたのではないかな?
本来であればキャンパスで出会うことがないはずなのにね。
もう30年以上経つので時効だけど、深夜六本木の居酒屋T坊で男と深夜2人でいるところも見かけた。
やさしそうな好男子だったけど結局縁がなかったみたい。父親の血はついでいないようだ。


6.物語の構造
主人公 亨
依頼者 亡き父 母
援護者 ゴリさん  愛    大勢の山の仲間たち
主人公の使命 山小屋の管理

プロットに意外性がない。何でなんだろう
出演者をこうやって整理すると、主人公に敵対する人物がいない。それなので単調なのであろう。
亨にはライバルがいない。「劔岳 点の記」のときは登頂を競い合うライバルがいて緊張感があった。
例えば東京にいる亨に恋人がいる設定にすると、愛との間で敵対する葛藤が生まれる構図ができるのにそうしていない。
山小屋で3つの逸話を通じて、亨に「難題」を与える。それ自体は大きな難題ではない。
原作の問題なのか?ちょっとものたりない。

この映画は74歳になった木村大作監督が、自身の集大成のつもりで作ったのではなかろうか?
プロットが弱いといったが、そんなことはどうでもいいのかもしれない。
ここで見せるリアルな高山での映像それ自体はこれから30年たっても語り継がれる気がする。


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