映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

東京物語  小津安二郎

2009-07-08 19:49:06 | 映画(日本 昭和34年以前)
穏やかな気持ちになれる映画が見たかった。
ちょっと疲れ気味なので、しっとりと「東京物語」を見た。

世間では小津安二郎監督の最高傑作といわれる。年老いた笠智衆、東山千栄子夫婦の東京見物のときに、東京在住の実の息子、娘がそっけないのに、戦死した次男の嫁原節子が心を込めてお相手する。血のつながらない嫁との特別な感情のやりとりを淡々と描いていく。

昭和28年、尾道に住む笠智衆は役所勤めを定年で終え、今は妻の東山千栄子と娘で小学校の教員をしている香川京子と暮らしている。その老夫婦二人が東京に住む開業医の長男山村聡、美容院を経営する杉村春子が相手をする。開業医の山村宅に泊まるが、休みも往診でなかなか東京見物もできない。そこで戦死した次男の嫁原節子がお相手をさせられる。その後忙しい山村、杉村は老夫婦を熱海の温泉に滞在してもらおうとする。しかし、泊まった旅館は宿泊客の騒がしい声が部屋に響いて寝られない。熱海から早々に帰ってくるが、杉村は迷惑そう。。。。

個人的にはこれよりもいい小津作品はあると思う。しかし、笠智衆、原節子の演技がいちばんさえているのは「東京物語」だと思う。
笠智衆は元市役所勤務という設定である。今の役所よりもかなりのんびりしていたと思われる田舎役人OBっていう役の性格を笠はよくつかんでいる。何を言われても「柳に風」の会話で、変にあくせくしていない。自分が自分がという匂いをまったく出さない。東山千栄子もいかにもその奥さんという役を上手にこなしている。
原節子の役は、戦争未亡人。このときはありえても、いまどきはありえない設定である。お上品で、育ちのよさを芯からにおわせる言葉遣いが上手な俳優はもう日本では現れないのではないか?小津自身が言っている。「娼婦を演じる方が良家のお嬢さんを演じるよりもやりやすい。」確かにそうだ。

この映画は海外で評価されているといわれる。美しさ、表情はともかく、原節子の使う言葉遣いの素晴らしさは伝わるのであろうか?例えば「お姉さま」という言葉一つをとっても、原節子の話す「お姉さま」のニュアンスは英訳できないと思う。他の国の言葉で適切な訳語があるであろうか?それだけは疑問を感じる。
銀座の松屋?か松坂屋?のデパートに老夫婦を原節子が案内するシーンがある。屋上から国会議事堂がくっきり見える。昭和40年代はともかく今は見えないだろうなあ?小津の前作「お茶漬の味」よりは東京ロケは少ないが、ノスタルジックな場面も多い。尾道の和瓦屋根の町並みと海を走る船のロケも素敵だ。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 官僚たちの夏  テレビドラマ | トップ | 加山雄三  エレキの若大将 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
原節子の役にはモデルがあるのです (さすらい日乗)
2015-01-25 19:12:58
この映画で原節子が演じた紀子役にはモデルがあるのです。晩年の小津の愛人で、大船でアコーディオンを弾いていた村上茂子さんんです。『東京物語』で、熱海で流しをやっている3人組の真ん中の女性です。
実は私は、一度だけお会いしたことがあるのですが、大柄の美人で、彼女は戦争未亡人だったそうです。
ラストで、彼女は「あの人を思い出さない日もあるのです」と言いますが、それは当然で小津の愛人だったのですから。
返信する
紀子役モデル (wangchai)
2015-01-26 05:38:32
おはようございます。

>原節子が演じた紀子役にはモデルがあるのです。晩年の小津の愛人で、大船でアコーディオンを弾いていた村上茂子さんです。『東京物語』で、熱海で流しをやっている3人組の真ん中の女性です。

自宅にある「東京物語」のdvdで今確認しました。熱海の旅館で2人の老夫婦がまわりがうるさくて寝つけない有名なシーンの一角に10秒ほどでてきますね。
この当時にこの年齢というと、原節子と同じくらいなのかなあ?大正の終りから昭和の初めの生まれでしょうね。その年頃のお方にはよくありがちな顔立ちですね。でもこの紀子のような両親への振る舞いをやっていらっしゃったとすれば、尊敬するしかないです。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画(日本 昭和34年以前)」カテゴリの最新記事