映画とライフデザイン

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映画「沈黙」 マーチンスコセッシ&アンドリュ―・ガーフィールド

2017-02-03 21:55:11 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「沈黙」を映画館で見てきました。

ハリウッド映画の巨匠マーチン・スコセッシ監督が遠藤周作の「沈黙」を映画化したという。自分は原作を読んでいないし、篠田正浩監督の「沈黙」も見ていない。どちらかというと、宗教系の映画は観念的なセリフが多く、苦手なクチである。そんな自分が一昨年同郷のノンフィクション作家星野博美女史の「みんな彗星を見ていた」を読んで感動した。「踏み絵」という言葉自体は知っていても、数万人の日本人キリシタンが殉死していたという事実は知らなかった。


その迫害が映像として見れる。しかも、マーチンスコセッシが監督ということでスパイダーマンのアンドリュー・ガーフィールドやリーアムニーソンの大物が出演している。3時間近くの上映時間は長いので、見るのを一瞬ためらう。でも日本史の中でも悲しい事実を、日本人だったらつくれないかもしれない湾曲の事実を映像化してくれてよかったと思う。もう少し短い方がいいとは思うけど、完成度は高い。

17世紀、江戸時代初期幕府による激しいキリシタン弾圧がおこなわれていた。イエズス会の宣教師ロドリゴ(アンドリュ―・ガーフィールド)とガルペ(アダム・ドライバー)は司祭フェレイラ(リーアム・ニーソン)が日本で捕えられ棄教したといううわさを聞き、まずマカオに向かう。そこで日本人キチジロー(窪塚洋介)に出会う。キリスト教徒ではないとキチジローは言っているが、日本に帰りたがっていると聞き、一緒に船で旅立ち日本のトモギ村に密入国する。


そこでは「じいさま」と呼ばれる村長のイチゾウ(笈田ヨシ)、敬虔な信者モキチ(塚本晋也)を中心にした隠れキリシタンが信仰を捨てずにいた。2人は村人達と交流を交わし、布教活動を行っていく。キチジローは自分の村である五島列島にも2人の宣教師を招き、布教を広める。


それも束の間、キリシタンがトモギ村に潜んでいることを嗅ぎ付けた奉行が村に訪れ、2人の宣教師の身柄を要求した。そして幕府の取締りは厳しさを増し、やがてキチジローの裏切りによってロドリゴもガルペも追われる身となり、信仰を守って処刑に甘んじようとする信者のもとにゆこうとしたガルペは死んでしまう。ロドリゴは長崎奉行井上筑後守(イッセー尾形)に棄教を迫られ、信仰を捨てれば捕らわれた日本人信者の命を助けようと告げられる。



1.拷問

いきなり雲仙の火山口のそばで、熱湯を次から次へとキリシタンにかけるシーンが映る。その横にはリーアムニーソンが演じる司祭が処刑を待っている。改心させるのが大きな目的である。そのあとに映るのは海の中に十字架を置き、そのには張り付けられたキリスト教信者がいる。満潮になっていくと、海の水が波に乗って容赦なく信者たちを苦しめる。これは実写でうつされる。これを演じる方もつらい。当然一発撮りというわけでないだろうからきついなあ。


ほかにも藁でくるわれた身体の逆さづりや火あぶりの刑などいやいやすごい拷問だ。戦前共産党員や小林多喜二のようにプロレタリア小説を書く社会主義者などが憲兵に引っ張られて、拷問の上転向させるなんてことはくりかえしおこなわれていたと聞くが、人数的にはキリシタンの拷問よりも少ないかもしれない。

2.踏み絵

殺されるくらいなら、踏み絵しちゃえばいいじゃないと無宗教の自分は思うけど、このころの日本人キリシタンってずいぶん頑固だし、ばかだよね。なんて言ったらおこられるか?

星野博美著「みんな彗星を見ていた」を読むとすごい話がたくさん出てくる。「死や拷問に際して恐怖に脅えたり、痛がったり、逃げようとしたりしてはいけない。」 (p238)ので「直火でなく緩慢な火で長時間苦しませ、棄教しやすくする手段を使いはじめている」 (p238)すごい拷問だ。殺されたのは外国人宣教師だけでなく、30万人いたキリスト教徒のうち4万人ちかくが亡くなっている。たかが踏み絵という問題ではなくなる。

ここでは宣教師たちが改心を余儀なくされる。そこには村人たちが迫害を受けるのが見ていられないからという理由もある。そうなったときに、改心した宣教師たちは日本人として生きていく道を選んでいくのだ。むごい仕打ちの前半戦もあるが、日本人になり、妻をめとって生きていく宣教師たちの生きざまに強い関心を持った。

3.俳優たち
アンドリューガーフィールド、リーアム・ニーソンと一流スターも登場するが、外人さんたちは慣れない土地で、普通の演技をしているという感じだ。ここではイッセー尾形演じるのらりくらりの演技が際立つ。緩急のつけ方が巧みなイッセー尾形アンドリューガーフィールドをからかうのが滑稽

今回は台湾で撮影されたという。九州と比較すると南になり、気候や風景も変わるだろうが、不自然ではなかった。改心した宣教師たちを寺で映すシーンがある。こういう寺が台湾では残っていると思えないので、日本国内なのかな?

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