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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「本日公休」

2024-09-21 17:20:53 | 映画(アジア)
映画「本日公休」を映画館で観てきました。


映画「本日公休」は台湾映画。理髪店の女性店主の物語である。台湾のフー・ティエンユー監督が、自身の母親をモデルに書き上げた脚本で、台中にある実家の理髪店で撮影した。予告編で観る時からムードはやさしそうで気になっていた。日本映画はついつい社会の断層や貧困を取りいれないと気がすまない人が多く、ややこしい。貧相になってしまう。台湾映画にはそれがなく独特のムードで心が安らぐ。そんな癒しを求めて映画館に向かう。

台湾の台中で40年間1人で理髪店を営むアールイ(ルー・シャオフェン)は、常連客とのふれあいを生きがいに仕事を続けている。3人子どもがいて、台北でスタイリストをする長女シン(アニー・チェン)、街のヘアサロンで美容師をする次女リン(ファン・ジーヨウ)、定職に就かぬままの長男ナン(シー・ミンシュアイ)がいる。3人とも実家の店には寄らないのに、近くで自動車整備店を営む次女の別れた夫チュアン(フー・モンボー)が孫を連れて散髪に来る。


アールイは決まった周期に来店しない常連客に電話連絡している。ところが、引退して田舎に転居した後も散髪に来ていた歯科医の様子がおかしいようだ。アールイはお店を休み(本日公休)にしてクルマで出張散髪に向かう。

台湾の市中の人情映画、やわらかいムードで心地がいい。
孫もいる初老の理髪店のおばさんが主人公。いきなり下手な運転で愛車のボルボのバンパーをぶつけるシーンでよくいるおばさんだなと感じさせる。お店の客の大半は常連さんだ。くつろいで世間話をしている。自分がいなくなったらみんなどうするんだろうと心配する。

亡くなった妻が髪が白いと判別できないと心配して白髪染めにやって来る老人、親に内緒で前髪をたらしたヘアスタイルにして欲しいと中学生が来たり、軽い人間ドラマをいくつも積み重ねる。理髪店で常連客とのひそかな会話を織り交ぜるのは日台共通で人情劇によくあるパターン。ムードはやさしい。

街の美容院で美容師をしている次女が、「男は習慣の生き物だから(お店の)担当者をなかなか変えない」というセリフを言う。理髪店の娘だというフー・ティエンユー監督が子どもの頃から母親を見ていて実感で思うことなのだ。次女の女性常連客が別の男性美容師に担当を変える時にいみじくも言う言葉だ。女性と男性は違う。思わずなるほどと感じる。

そんな理髪店内で繰り広げられる物語に加えて、ロードムービーの色彩も残す。常連客だった歯科医の連絡が途絶えて心配になって愛用の理容道具を携えて出発するのだ。「本日公休」の札をかけて出発するが、主人公はスマホを家に忘れる。実家に立ち寄った子供たちがどうしたの?と大騒ぎ。途中で出会った農家の長髪の青年を散髪したり、道がわからなくなった時に道路で脱輪したり、いかにも運転が下手なおばさんの珍道中だ。


3人の子供たちの家庭状況にも触れる。現代台湾若者の人間模様だ。定職のない長男は高価な太陽光発電パネルを売り込みに来る。長女の彼氏がらみで不審な交通違反切符が実家に届いたり、離婚した次女と元夫が復縁しそうでしないうちに元夫に恋人ができたりいくつもの逸話を積み上げていく。


ネタバレに近いが、もう意思の疎通ができない歯科医だった顧客の病棟で頭を散髪する姿にはさすがにジーンとする。思いのほか大勢いる観客の年齢層は高く女性率も高かったが、この辺りはすすり泣く声が至るところから聞こえる。いかにも人情映画らしい観客のムードだった。

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映画「霧の旗(1977年)」 山口百恵

2024-09-19 20:42:26 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「霧の旗」を名画座で観て来ました。


映画「霧の旗」は1977年(昭和52年)に松本清張の原作を西河克己監督山口百恵が主演を演じたサスペンス映画だ。1965年に山田洋次監督、倍賞千恵子主演で製作されている。山田洋次監督では珍しいサスペンス映画でモノクロ画面に緊張感が感じられる傑作だ。倍賞千恵子の日経新聞「私の履歴書」でも悪女を演じた本人にとって「霧の旗(1965年版)」は思い入れの深い作品のようだ。今回名画座の山口百恵特集でも、山口百恵の悪女ぶりだけは観たかった。

北九州の小倉で、教員の兄柳田(関口宏)とタイピストの妹柳田桐子(山口百恵)が仲良く暮らす家に警察が来て、兄を殺人容疑で逮捕する。金貸しの老婆を殺した疑いだ。裁判では不利に展開する。そこで、妹桐子は上京して腕利き弁護士大塚(三國連太郎)の事務所に突然訪れて無罪を主張する兄の弁護を依頼する。しかし、裁判に必要なお金も用意できず、九州での裁判ということもあり断る。懇願したがダメだった。たまたま、別の取材で事務所にいた週刊誌記者阿部(三浦友和)が事情を聞きつけ、事務所を出た桐子に詳細を聞こうとするが桐子は断った。やがて兄は死刑判決を受けたあと獄中で亡くなる。

その後月日が流れ、大塚弁護士のところへ桐子から兄が亡くなった旨のハガキが届いた。気になった大塚弁護士は九州から裁判資料を取り寄せて内容を確認する。桐子は銀座のクラブでホステスになっていた。偶然阿部が客として来て桐子に気づく。桐子に一緒に真相究明しようと話をしても亡くなったあとだと取り合わない。


大塚弁護士にはレストラン経営者愛人河野(小山明子)がいた。その愛人はレストランのフロアマネジャー杉浦(夏夕介)とも関係があった。しかも、フロアマネジャーは桐子の銀座クラブの同僚信子(児島美ゆき)と付き合っている複雑な関係だった。最近つれない杉浦の様子を尾行してくれと頼まれて桐子がついていくと思わぬことに巻き込まれる。

まだ20歳になっていない山口百恵に強い色香の匂いを感じる作品だ。
前作のモノクロがカラー作品となりいくつか設定をかえている。当時コンビを組んでいた三浦友和雑誌記者を演じて、存在感を強くしているのが山田洋次版「霧の旗」と大きく違うところだ。映画の出来としては山田洋次版の方がよくできていると自分には思える。前作の興行収入はこけたそうで、逆に山口百恵全盛のこの作品はよかったそうだ。皮肉なものである。三浦友和をクローズアップするために不自然になっている場面も見受けられる。

山口百恵演じる柳田桐子はもともと兄の裁判の弁護をしてくれと懇願する田舎の女の子にすぎなかった。それが、上京して銀座のホステスになった後で、変貌をとげる。そして、兄の弁護をしてくれなかった大塚弁護士の不利益となる行動をとる悪女になるのだ。


実年齢で20歳になる前なのに、銀座ホステスの着物姿も見せて最終場面に向かっては大人の色香を放つようになる。自分にはこの当時の山口百恵河合優実に似て見える。百恵の魅力に触れられることがこの映画の見どころだろう。歌手山口百恵としての晩年は実に美しい。同世代だった自分があの当時気づいていない魅力に触れるのも古い映画のいいところだ。

⒈弁護士とその愛人
前作の弁護士役滝沢修三国連太郎の優劣はつけがたい。ともにそれぞれの個性を活かした卓越した演技を見せる。前作の弁護士の愛人役は新珠三千代で、倍賞千恵子の罠にハマる姿が実にうまかった。こんな役柄を他で演じたことが見たことない。今回は小山明子だ。悪くはないけど、新珠三千代に軍配があがる。でも、三国連太郎とのキスシーンがある。三国にとっては役得だ。大島渚夫人であることを忘れているような思いっきりを評価したい。


⒉気になった俳優
関口宏山口百恵の兄役だ。「オレがやっていない」と主張を続ける。山田洋次版では「太陽にほえろ」で人気となる露口茂だった。左翼系論者のおかしなコメントに相槌を合わせる日曜朝の番組で最近まで司会者だったあの姿を知っているだけにおもしろい。


児島美ゆきが山口百恵の銀座の店の同僚役だ。山口百恵のような銀座売れっ子らしい風格がなく場末のスナックによくいる姐ちゃんだ。ハレンチ学園一世を風靡した時代から時間がたっている。

⒊暴力表現と現代
大塚弁護士が桐子の兄が真犯人でないと確信する重要な場面がある。これが前作と違う。前作の方が前後の接続も含めてうまくつながる。弁護士事務所の大和田伸也が記者の三浦友和を殴るシーンがある。また三浦友和が山口百恵を殴る。別に悪漢を倒すためのアクションシーンでもない普通のやり取りでの暴力シーンには現代との大きなギャップを感じる。

部屋の台所に湯沸かし器があっていかにもひと時代前だ。倍賞千恵子の桐子は熊本から延々と列車を乗り継いで上京した。山口百恵は新幹線だ。このあたりのムードは新幹線前の方がムードがある。旧日劇と数寄屋橋の不二家が映る。われわれが若いころずっと見ていた風景だ。新宿の歌舞伎町ロケでは「ロンドン」をはじめとしたピンサロがたくさん映る。こんなにいっぱいあったんだと感じながら、昭和50年代前半の街の雰囲気を懐かしむ。

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映画「ぼくのお日さま」 

2024-09-16 08:44:53 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「ぼくのお日さま」を映画館で観てきました。


映画「ぼくのお日さま」フィギュアスケートを題材にした小学6年生の少年の成長物語だ。長編2作目の奥山大史監督作品で第77回カンヌ国際映画祭への出品作品だ。主役の少年少女は無名で観るのは初めて、主演級俳優であるコーチ役の池松壮亮、その恋人役の若葉竜也の2人が脇を固める。春先の雪解けの町の風景も映すが、全般的に雪国の風景をパステル調の映像にして見せてくれる。こんな町で育ったら自分はどうなったんだろう感じながら主人公の姿を追う。

雪が積もる田舎町に暮らす小学6年生のタクヤ(越山敬達)は、すこし吃音がある。アイスホッケーでケガをしたタクヤは、フィギュアスケートの練習をする少女・さくら(中西希亜良)が「月の光」に合わせ氷の上を滑る姿に目を奪われる。さくらはコーチの荒川(池松壮亮)のもと、寡黙に淡々と練習をしていた。荒川は恋人・五十嵐(若葉竜也)の住む雪国の町に越してきたのだ。


荒川はリンクの端でアイスホッケー靴のままフィギュアのステップを真似て、何度も転ぶタクヤを見つける。荒川はフィギュア用のスケート靴を貸してあげ、タクヤの練習につきあう。 徐々にうまくなったところで、荒川はタクヤとさくらにペアでアイスダンスの練習をしたらどうかと提案する。

思春期の少年少女のスケーティングを観てさわやかな印象をもつ。
フィギュアスケートを題材にしたこの映画に既視感はない。いい発想だ。奥山大史監督はフィギュアスケートを子ども時代にやっていたそうだ。男の子から少年になろうとする頃の主人公タクヤがまだかわいい。中学に入った時のシーンでは学生服がブカブカだ。同じく、少女になろうとするさくらは少しだけお姉さんでフィギュアスケートの練習をする姿が素敵だ。

雪景色と2人の少年少女がマッチした印象深いシーンがいくつもある。2人がアイスダンスをするシーンで目線を10代の感覚に落として観ると、あの時代にこんな楽しいことあればよかったなあとひたすらうらやましくなる。ドラマ仕立てとしては物足りない部分もあるが、映像美は肌に感じる。


⒈雪国の小さな町
雪がかなり降り積もる町だ。教室から校庭を見ると雪景色で、雪の積もった学校の屋上でたたずむシーンを観ていると別世界だ。そんな町にスケートリンクがある。山が見えているのに、海を見渡す坂の町が映ることもある。一緒の町には見えない。陸屋根の家も多く北海道と推測できたが、架空の街にしていいとこ取りをしているのは徐々にわかってくる。ロケハンに成功している映画だ。

映画を観終わって調べると、どうも小樽近郊のいくつかの場所を中心にロケ地にしているようだ。父が幼少期まで小樽だったのでなぜかうれしい。加えて、雪解けした春先の風景での小さな灯台や昔の赤い郵便ポストが印象的だ。


⒉ペアで踊るアイスダンス
主人公タクヤは雪国育ちでアイスホッケーをやっているので、スケートは普通にできる。ただし、フィギュアスケートは初心者である。しかも、フィギュア用の靴でないとクイックなどの技巧はできない。コーチからフィギュア用の靴を借りての基本指導よろしく徐々に熟達していく。

コーチから2人はアイスダンスをやらないかと言われた時、無口なさくらは本当はイヤだったように見える表情をした。でもだまってコーチに従った。2人の腕前には巧拙があったが、徐々に2人のタイミングがあってくる。タクヤも成長していく。

コーチが2人を凍った湖に連れていく。そこでアイスダンスを踊るのだ。池松壮亮が雪道を運転するクルマでかかるのは60年代のポップス「Goin' Out Of My Head」だ。誰しもが一度は聞いたことがあるだろう。それをバックグラウンドミュージックにして少年少女が湖で踊るアイスダンスのシーンは格別にすばらしい「Goin' Out Of My Head」の組み入れ方が絶妙だ。このシーンとスケートリンクでの2人のアイスダンスを観るだけで映画館に行った価値がある。

⒊少女の複雑な想い
さくらを演じる中西希亜良は鼻筋がきれいな美少女である。麻生久美子が12歳だったらこんな顔をしていたのかと思う顔立ちだ。清純でみずみずしい。演技は素人だけどオーディションで選ばれたようだ。さくらはフィギュアスケートの実技は何度も見せるが、セリフは少ない。自分の想いを表情で見せる。


コーチのへのひそかな恋心、仲間である少年へコーチが指導している姿への嫉妬心、ひそかに思いを寄せる先生が男同士でイチャイチャするのを偶然見た時の嫌悪感をいずれもセリフなくわれわれに表情で示す。この年齢の女の子の心理状態は複雑だ。当然演技は素人なのでむずかしいセリフが控えめでうまくまとめられていると思う。

対するタクヤも話し出すとたどたどしくしか話せない。ウブな感じで好印象を与える。コーチが男性同士のカップルだという男色系の匂いは抑えられた。それはよかった。最小限のセリフで魅せてくれた良品の映画である。
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映画「ヒットマン」 グレンパウエル&リチャードリンクレイター

2024-09-13 21:08:23 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ヒットマン」を映画館で観てきました。


映画「ヒットマン」は名匠リチャードリンクレイター監督の新作で、「恋するプリテンダー」「ツイスターズ」と主演作が続くグレンパウエルが「ヒットマン」を演じる。ヒットマンとは日本流では殺し屋だ。警察のおとり調査でグレンパウエルは殺し屋のふりをして殺しの依頼人を罠にはめて逮捕に導く。

自分と同世代のリチャードクリエンター監督「スクールズオブロック」「6歳のボクが、大人になるまで。」が最も有名だが、自分のベスト100に3作もある。正直言って作品全部が好きなわけではない。イマイチで次回に期待だなと思ってしまうこともある。俳優ストも明けようやくアメリカ映画らしいラインナップが揃った中で新作を楽しみにしていた。


ニューオーリンズで2匹の猫と静かに暮らすゲイリー・ジョンソン(グレン・パウエル)は、大学で心理学と哲学を教える傍ら、地元警察に技術スタッフとして協力していた。おとり捜査の警官が職務停止となり、ゲイリーが急遽代わりを務める。依頼者と面談して、具体的な殺害依頼を口頭で受けた時、やり取りを聞いていて待機していた警察が逮捕するパターンだ。ゲイリーは相手に合わせて変装をして接触する。意外な才能を発揮し相手を信用させて次々と依頼者を逮捕へ導く。

夫殺しを依頼してきた女性・マディソン(アドリア・アルホナ)は魅力的な女性であった。殺し屋ロンに扮して彼女に接触して事情を聞くうちに、逮捕するはずの相手に対し「この金で家を出て新しい人生を手に入れろ」と見逃す。その後意気投合した2人は会うようになる。マディソンはゲイリーを殺し屋と信じて付き合うのだ。


これは抜群におもしろい!
リチャード・リンクレイター監督らしくユーモアをたっぷり混ぜながら、ビリーワイルダー「深夜の告白」を連想する夫殺しを目論む美女を映画に放つ。フィルムノワールの要素も持たせるのもいい感じだ。セクシーな美女を登場させて往年のブライアン・デ・パルマ作品のようなエロチックサスペンスのムードも少しだす。

事前情報は少なく観た。最初は怖い男がぐだぐだ話すのを観ている時は何が何だか分からず、一体どうなるんだろうと思った。男たちの正体とストーリーの主旨がわかってからは頭にすんなり入っていける展開だ。主演作が続き絶好調のグレンパウエルがニセの殺し屋になりきって、「琴姫七変化」のようにいくつもの雰囲気を変えて登場する。Netflix「地面師たち」を観て身近に殺し屋っているんだなと感じたばかりで、世の中には裏社会でなくても殺し屋に頼む人って実際にいるんだなと感じる。


⒈巧みなストーリー展開と女への深入り
この映画ではリチャード・リンクレイターと並んでグレンパウエルも脚本にクレジットがある。映画の脚本を書くのに実際の事件報告書をじっくりと読んだらしい。わかったことも多いだろう。映画の中盤にかけていくつもの短い具体例をピックアップする。殺しの依頼主との数多くの出会いの後で美人の人妻マディソン(アドリア・アルホナ)と出会う。夫にムカついている。ゲイリーはバツイチの独身だ。いつもは情を移さないゲイリーが自分のおとり捜査に捕まったらかわいそうだと感じて、逃してしまうのだ。

ここでドラマがラブストーリーの要素も加えて一転する殺し屋「ロン」のまま付き合ってしまうのだ。大学講師としての普段の姿は無精髭を生やして、いつものグレンパウエルのようなお調子者で軟派なムードはない。離婚しようとしているマディソンとのメイクラブから面白くなっていく。もちろん警察には付き合っているとは言っていない。マディソンにも殺し屋の立場のままだ。自宅も教えない。色んな人たちにウソをつきながら交わしていく。ウソつきなのにあまりイヤな感じがしない。

外で2人がデートしている時にマディソンの夫とバッタリ出会ったりおもしろい遭遇をいくつか作って巧みにストーリーを組み立てる。ネタバレなので言わないが、こう展開するのかと仕上げに感心する。


⒉悪女映画
映画の歴史上色んな悪女を生んできた。夫殺しの題材ではビリーワイルダー監督の「深夜の告白」(原題 倍額保険)が保険金殺人を扱って映画界に影響を与えた。1944年のフィルムノワールの代表作だ。主演の人妻を演じるバーバラ・スタンウィックは同じ悪女でも「危険な情事」グレンクローズ「蜘蛛女」レナオリンとは違って正統派美女である。もちろん、「ヒットマン」はそのテイストを少しだけ入れたに過ぎないが、「夫殺し」、「保険金殺人」のキーワードでは共通する。

フィルムノワールでこういう危険な依頼をする女をファムファタールと呼ぶ。ラテンのテイストもあるアドリア・アルホナは初めて見るが、セクシーさとエロのフェロモンがムンムンするいい女で適役だ。


⒊リチャードリンクレイターとグレンパウエル
お金のかかったアメリカ映画らしい作品が増えてきたのはうれしい。でもこのリチャードリンクレイター作品はお金がかかっているというより、中ぐらいの予算で楽しい映画に作り上げるような工夫がなされている。ラブコメの要素もあり、サスペンスやフィルムノワールの要素もひっくるめた何でもありのムードがいい感じだ。終盤に向けてどう結末をもっていくのかドキドキしながら見ていた。「深夜の告白」時代ではなかった結末だろう。脚本を2人で楽しんでいる。

この2人は「エブリバディ・ウォンツ・サム」で組んでいる。80年代のミュージックで満ちあふれたこの映画が好きだ。当時は無名だったグレンパウエルも今や大スターになっている。今回はプロデューサーや脚本のクレジットにも名を連ねている。主演作が3作続いたけど今後にも期待する。
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映画「熱烈」 ワンイーボー

2024-09-09 07:51:47 | 映画(中国映画)
映画「熱烈」を映画館で観てきました。


映画「熱烈」は中国映画、若手スターのワンイーボー主演のブレイキン・ダンスを題材にした作品。監督は大鵬(ダーポン)となっていて相撲の大鵬を連想してしまう。パリオリンピック「ブレイキン」が競技種目となる。日本選手が金メダルをとり話題になった。TVではダイジェスト版しか見ておらず、ルールもよく知らない。ストリートダンスもオリンピック種目になるんだという実感だ。

ブレイキン自体と言うより現代中国の若者がダンスに歓喜する姿が予告編に映り気になる。文化大革命以降の改革路線に入る前は西洋かぶれと非難されたはずだ。今の北朝鮮みたいでありえない映像だ。世相が変わって良かったね。主演のワンイーボーは香港のトニー・レオンとの共演の「無名」、テストパイロットを演じた「ボーン・トゥ・フライ」を直近で観ている。97年生まれで古い中国は知らない世代だ。徐々に顔なじみになる。でも、日本人はあまり中国映画が好きではないからか観客の数はそれなりだ。


ブレイキンプロダンスチーム「感嘆符!」は、社長の一人息子である“カリスマダンサー”=ケビンが練習にも出ずやりたい放題。コーチ(ホアン・ボー)も形だけで口を出せず、チームは振りだけの代役を探さなければいけない状況に。コーチはかつてオーディションを受けた青年、陳爍(チェン・シュオ)(ワン・イーボー)のことを思い出す。陳爍は全国大会優勝の夢を持ってチームに加わり、仲間たちと練習を続け友情を築いていく。(作品情報 引用)

中国の若者パワーを感じさせる作品でスポーツ根性モノ的なテイストだ。
スポーツの成長物語に良くありがちな紆余屈折を途中でつくって最後につなぐ。ストーリーの基調は注目するほどでない。若者パワーに注目したい。ただ、説明の省略も多いせいか訳がわからなくなる場面もある。

ワンイーボーは主人公であっても、もともとはスターダンサーの代役的な存在だ。本大会は出れない前提でチームに加えてもらう。以前オーディションで落選しているので、本人も代役で十分だった。ところが、徐々に力をつけて来るのだ。あとは長州力に良く似ているコーチにも存在感を持たせる。


自分はダンスの巧拙がわからない。ヘッドスピンや体操のあん馬のような足の動きがすごいのだけはわかる。カメラワークもよく、ダンススピードの緩急なども含めて適切な編集をかさねて映像にしている。躍動感を感じる。ブレイキン自体中国で人気があるのだろうか?ともかくダンスバトル会場の熱気がすごい。演出もあるだろうが、日本映画ではここまでの熱気は出せないだろう。

会場の観客と演じるダンサーとに一体感があるのに好感が持てる。なぜか男女比率が男性に偏っているように見える。1人っ子政策の弊害で若者に男性が多いことも影響しているのであろうか。


⒈杭州の街にビックリ
浙江省の省都で人口約1200万の大都市だ。地図だけで見ると、比較的上海が近い。映像で映る高層ビルやショッピングセンターなど街の様子は近代的だ。2000年前後までの中国大陸の都市はここまで発展していなかった。ダンス会場の体育館もスケールが大きい。不動産市況の停滞はあまり感じられない。世界史でも習う随の時代にできた大運河の終点で、街の中心にある西湖は風光明媚で唐の時代から有名だ。映像は湖の近くでトレーニングする姿も映す。

⒉普段は副業だらけの主人公
ワンイーボー演じる主人公チェンの実家は中華料理屋で、父親はおらず母親が切り盛りする。おじさんがつくった蝋人形が置いてある。チェンは料理に使う野菜を市場に買い出しに出る。それだけでなく、商業施設のイベントでのキャラクターショーでヒーローを演じたり、クルマの洗車場で高級車を洗車したり、バリバリ副業する。その合間に乗客がいない電車の中などでヘッドスピンの稽古をするのだ。


主人公の母親も中華料理屋だけでなく、結婚式のウェディングシンガーをやったりする。自分が知っているだけでも、中国には昼夜働き詰めの中国人っていっぱいいる気がする。今の日本人が労働法の関係上副業がしづらいのとは大違いだ。楽天の三木谷社長も「早く帰れ」だけではまずいと言っているが、ユニクロの柳井社長の言うように今のままだと日本は滅びる。

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映画「ドッグマン」リュックベッソン&ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ

2024-09-08 18:00:59 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ドッグマン」は2024年公開のフランスの巨匠リュックベッソン監督作品だ。大好きなリュックベッソン監督作品なのに公開時に行けなかった。ポスターの女装の雰囲気に違和感を感じたからかもしれない。それでもAmazonプライムのラインナップに入ってきて思わず気になる。

以前2019年に同名の「ドッグマン」があり、マルチェロ・フォンテがカンヌ映画祭の主演男優賞を受賞する名演技だった。2019年度で個人的に上位に推す映画で、いじめられっ子の復讐というストーリーでスカッとした後味を残した。ストーリーはまったく違うが、主人公が虐待を受けた経験があることは共通する。


ある夜、警察に止められた一台のトラックに負傷した女装の男と荷台に十数匹の犬がいた。精神科医のデッカー(ジョージョー・T・ギッブス)は、女装の被疑者ダグラス(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)と拘置所で面談する。通称「ドッグマン」に対してデッカーは現状のダグラスを知るために生い立ちを聞き出す。


少年時代のダグラスは闘犬を生業にしている強いDVの父親に逆らい犬小屋にしばらく監禁される。そして母親は逃げていく。父が放った銃弾で倒れている時に犬に助けられ警察に保護される。しかし、脊椎を痛め歩行不能になってしまう。養護施設に預けられた時に世話をしてくれる俳優希望の女性に憧れるが、離れ離れになる。そして、再度犬と暮らすようになる。

リュックベッソン監督が投げる鋭い変化球。
一緒に暮らす犬と心を通じ合いながら犬に助けられて生きていくドッグマンの人生をたどっていく。現実離れしている犬たちの活躍があっても不自然に感じない。ダメ元で見たのに気がつくと一気に最後まで観てしまう。さすがリュックベッソンだけに波瀾万丈の人生の中に見どころをいくつもつくる。犬たちの名演技に感心する。

⒈リュックベッソンのスピード感
緊張感あふれる「レオン」を経て、「トランスポーター」「TAXI」などのスピード感あふれるアクションを90分で簡潔にまとめていく作風が好きだった。今回はそのぶっ飛ばしていくようなスピード感はない。でも、自らが足の悪いドッグマンの代わりに、意思の通じる犬に悪さをさせたり、ドッグマンを痛めつけようとする悪党に対して犬がやっつけるところにスカッと楽しめる部分を感じる。


⒉少年期の虐待と異常な家族
ドッグマンことダグラスの父親は闘犬を仕事にしているのに犬が好きでない。兄も父親の加勢をしていてまともではない。母親はダグラス寄りでも、時おり父親から強い暴力を受ける。最低なオヤジだ。犬をかばったダグラスを犬がたくさんいる犬小屋に閉じ込めてしまう。犬たちはダグラスになつくが、汚い服を着さされたままだ。母親もかばいきれずに逃げ出す。また、犬のことで父親に逆らうと銃でダグラスの指を撃つ

結局、撃たれてとれたダグラスの指の入った袋を犬がパトカーまで運ぶ。驚いた警官を犬が誘導してダグラスの家まで行き、父と兄は逮捕されてようやく保護されるのだ。こんな感じで犬が窮地を救う場面がいくつもでる。犬に人間同様の知恵を与える。

⒊犬の名演技
出演している犬を巧みに飼育する人がいるのであろう。まるで人間の心がわかるように犬が動くシーンが多い。それぞれのショットで犬を誘導しているのであろうが、これは容易ではない。カメラも絶好の瞬間をとらえる。常にダグラスは犬に助けられている。犬に悪さもさせる。ギャングも怖くない。

金持ちの豪邸の居室にある貴金属が次から次に強盗にあう。監視カメラには人が映っていない。保険会社に盗難の届出があって一体どうしたのだろうと調べると、それぞれの防犯カメラに犬が短時間映っている。保険会社がその飼い主ダグラスを追うが、犬に返り討ちに遭う。なんて話が続いていく。ギャングの親分のチ◯コを噛むシーンに笑う。発想がおもしろい。


⒋女装になっての変貌
最初に出てきた時に女装だ。男色系のゲイの話かと勘違いしてしまうが違う。少年時代から犬好きでも、むしろ女性にあこがれるくらいだ。仕事がなくなった時に、職探しでようやく見つけた男装女性のショーをやるクラブになんとか入れてくれと頼み断られる。見るにみかねたオカマの女性たちに助けられてようやく入店。


そこでエディットピアフを真似したシャンソンを堂々と披露して喝采をうけるシーンは中盤すぎの見どころだ。思わずうなる。それでオカマクラブのレギュラーになるのだ。さすがリュックベッソンだけに英語主体の作品でもフランス流の見どころも残す。

ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの怪演と犬たちの名演技が光る。
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映画「ナミビアの砂漠」 河合優実

2024-09-06 17:18:42 | 映画(日本 2019年以降主演女性)

goo閉鎖に伴いはてなブログに移動します。

移動先は

https://wangchai41.hatenablog.com/entry/22906939a83dfb0ab534fa5814ea8a82

映画「ナミビアの砂漠」を映画館で観てきました。


映画「ナミビアの砂漠」は若手女性監督の山中瑶子河合優実主演で21歳の女の子の偶像を描いた作品だ。2019年ラグビーワールドカップでニュージーランド対ナミビアの試合を特等席で観た。結果は言うまでもないが隣がナミビアの応援団がいて点が入るたびに大騒ぎしていた。ナミビアの砂漠と言っても映画のストーリーには関係ない。河合優実が動画で見ているだけだ。

以前から好きだったので河合優実の活躍が際立ってきたのはうれしい。前作「あんのこと」でも主役を張って、世の中にこんな不幸な女性がいるのかと思わせる貧困女性を演じた。その次作なので気になる。相手役の金子大地とは「サマーフィルムにのって」で共演している。TV番組「不適切にもほどがある」で一般の認知度も急激に高まった時期の公開となる。


カナ(河合優実)は脱毛サロンのスタッフとして働く21歳の女の子。ホンダ(寛一郎)と同棲しているが自由気ままに夜遊びしながら生きている。友人と会うと言ってハヤシ(金子大地)と浮気をしている。ハヤシからいったん別れを告げられるが、ホンダが出張で風俗遊びをしたのがバレたのもいい口実に気がつくとホンダの元を飛び出してハヤシと同棲することになる。
ホンダの親にも会い順調だったが、部屋の整理をしていてハヤシの秘密に気づいてしまう。その時からカナの精神が安定しなくなっていく。

河合優実を終始舐めまわすように追う映画だ。
ストーリーはどうってことがない。軽い起伏があってもビックリするほどではない。まだ若い女性監督が脚本を書いているので、人生経験も浅いからそんなに変化があるストーリーは書けないだろう。さすがに単調さにあきてしまいそうになると、河合優実に変化が生まれる。その繰り返しだ。もう少し短くまとめてもいい気もする。女性目線が強すぎてバランスは悪い。ただ、河合優実の頑張りには圧倒される。


⒈21歳の女の子
河合優実演じるカナの家庭環境は良くない。父親に反発して家を出て同棲している。喫煙者だ。鼻に穴をあけてピアスをしている。脱毛サロンで働いている時は丁寧な言葉遣いだが、普段は普通の21歳の女の子の話し方だ。ちゃっかり同棲相手に女友達と会うと言って浮気相手と会う。ホストクラブにもいく。河合優実が女性便器に座っている時に、男がまたがっておしっこするシーンが珍しい。「映画なんて観て何になるんだ」というセリフを思わず吐いてしまう。

⒉女性目線が強い。
河合優実暴言を吐くだけでなく、男性に暴力を振るうシーンがものすごく多い。急に理不尽な話をして男に突っかかる。困ったものだ。最初の同棲相手はカナに向かって土下座する。しかも、相手に中絶したとウソも言っているのにだ。男性のDVは否定しても女性の暴力は肯定する態度にしか見えない。若い山中瑶子監督が脚本書いているからそうなっちゃうのかな?そう言った意味で女性には受ける映画かもしれない。


⒊河合優実の頑張り
「あんのこと」ではシングルマザーに売春を強要されて勉強もろくにさせてくれなかった女の子で、ひたすら悲惨だった。ここでは家庭環境は良くないようでもそんな貧困さはない。大学には行かずに普通に働いている21歳の女の子を演じている印象だ。脱毛サロンでは実技も行う。ともかく終始出ずっぱりで大量のショットをこなしている。

同棲相手と取っ組み合うシーンはプロレスみたいだ。同棲相手の秘密がわかって精神も不安定になる。パワーがあるなあ。それはそれで敬意を表する。加えて、男性ファンへのプレゼントでやさしい乳首を拝めるとは予想していなかった。裸で寝て起きた時のシーンでサラッと見える。身を乗り出してしまう。


⒋唐田えりか登場
河合優実が同棲する部屋の隣室にいる女性である。幻想的なキャンプシーンで河合優実と火を囲む。この映画の中で存在感が強いわけではない。唐田えりかが出てくると思わず微笑みたい気分になる。いつもながらかわいい。次作に女子プロレスの物語を控えているという。楽しみだ。

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映画「インファナルアフェア」 トニーレオン&アンディラウ

2024-09-04 08:29:42 | 映画(アジア)
映画「インファナルアフェア」は2002年の香港映画。先週末より観たいと思う新作がない。たまにはこういう隙間時期も来る。Netflixを見ているとふと「インファナル・アフェア」が3作あることに気づく。あまりにも有名な映画だけれども2作目「インファナルアフェア 無間序曲」はブログアップしているが、1作目はアップしていなかった。

香港マフィアに警察から潜入して、逆に警察に香港マフィアのスパイが潜入する基本ストーリーはわかっていてもディテールは忘れていた。こうやって見終わると,アンディ・ラウとトニー・レオンの香港映画の2大スターにとって重要な転機になった作品と再認識する。


香港の街で育つラウ(アンディラウ)はヤンチャでサム(エリックツァン)が率いるマフィア組織に入ったが、警察内でスパイをすることを命じられて警察学校に入校する。一方で警察学校を辞めたヤン(トニーレオン)が上司のウォン(アンソニーウォン)に命じられてマフィア組織に潜入せよと言われる。成長した2人はともに組織の中で重要な存在となっていた。

マフィア側にいるヤンから大きな麻薬取引があるとウォン警視が密かに聞き厳戒態勢に入るが、逆にそのことは警察内にいるラウからサムに伝わっていた。その取引はお互いに失敗する。同時にそれぞれの内部に侵入者がいることがわかる。


不朽の名作、同時に20年以上前の香港の街を懐かしむ。
香港デモもあり、しばらく香港に行っていない。2010年くらいまで頻繁に香港に行っていた。ヴィクトリアハーバーを臨む屋上シーンとともに街中のシーンが映ると懐かしくなる。最近はずいぶんと物価が高くなったみたいで、円高で香港で安く物が買えた時期が今では信じられない。香港島と九龍エリア両方を合わせてもそんなに広いエリアではない。あ!この通り懐かしいなと思わず身を乗り出す。


こうやって観てみると、こんなシーンあったっけと思うシーンもいくつかある。最終に向けてアンディラウとトニーレオンがビルの屋上で対峙するシーンはあまりにも有名だ。でも、序盤戦でオーディオルームであっていたことは失念していた。恋人役であるケリーチャンとサミーチェンの香港を代表する美女2人とのやりとりも忘れていた。コメディ映画の盟友アンディラウとサミーチェンは近年「花椒の味」で共演した。自分が好きな映画だ。

ただ、メインストーリーである1作目よりに2作目の方が高圧電流が流れるような衝撃がある。一作目は意外にあっさりしている場面が多い。マフィア組織の闘争に激しさを感じるからであろう。また、マーチンスコセッシ監督が念願のアカデミー賞を受賞したリメイク映画「ディパーテッド」ではマット・デイモンとレオナルドディカプリオという2大スターの共演だが、何よりマフィアの親分ジャックニコルソン「バットマン」ジョーカー役と同じ狂気を感じて衝撃を受けた。だからと言って「インファナルアフェア」の存在感が低くなるわけでもない。

スパイ探しを依頼されるが実は自分がスパイだというジレンマに押しつぶされそうになる2人を観るのが映画の見どころだろう。自分の警察内での存在を知っている指示者であるアンソニーウォンが亡くなった後のトニーレオンの彷徨いやマフィアの親分エリックツァンが消えて警察の人間に成り切ろうとするアンディラウの転向など見応えのあるシーンは満載だ。


ともに還暦を過ぎた。アンディラウが1つ上だがほぼ同世代である。「インファナルアフェア」の公開時で40歳。ともに現在までキャリアを積み上げてきている。トニーレオンは昨年中国の若手スターワンイーボーとアクション映画「無名」を撮ったが、格闘シーンの激しさに驚く。まだまだやれる。

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映画「愛に乱暴」江口のりこ

2024-08-30 21:27:14 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「愛に乱暴」を映画館で観てきました。


映画「愛に乱暴」吉田修一の同名原作を江口のりこ主演で映画化したヒューマンドラマである。原作は未読。江口のりこのファンで最近では「あまろっく」「ブルーピリオド」「お母さんが一緒」と毎回出演作は欠かさず観ている。予告編から江口のりこが不穏な何かに巻き込まれている様子が伺える。とりあえず、映画館に向かう。

夫の母親(風吹ジュン)が住む母屋の離れに夫(小泉孝太郎)と住む桃子(江口のりこ)は前向きな専業主婦で子どもはいない。石鹸教室の講師もしている。ただ、近所で不審火が続いたり、かわいがっている猫がいなくなったりといやなことが続く。夫に対して懸命に愛を注いでいるのに、あまり相手にしてくれない。どうも夫は浮気をしているようだ。浮気相手のXを探り出していた。夫から彼女と一緒に会ってもらえないかと告白されて動揺する。


大好きな江口のりこの演技は上々でも、映画としては期待ハズレだ。
子どものいない夫婦の夫が浮気して、彼女に赤ちゃんができて別れてくれと言われ妻が奇怪な行動をとるという話だ。吉田修一の小説なので、何かしら凝ったストーリーなのかと予測したけれども、最終的には「もう終わっちゃうの?」という感じであっけなく終わってしまう。残念ながら物足りなかった。


主人公桃子(江口のりこ)は時おりイヤミっぽい言い方をする夫の母親(風吹ジュン)がいても、何とか今の家庭を大事にしようと懸命に頑張る女性だ。リフォームをしようと言ったり、凝った食事を出そうとしたり、寝ている時に夜の営みに誘おうとしても夫はそっけない。そして今度は香港に出張だという。夫が浮気しているのはつかんでいた。相手の女性がXをやっていて、ご丁寧に毎日のように浮気の進行状況をつぶやいていて桃子は見ていた。それでもなんとかできると頑張っていた。でもいよいよご対面だ。

子どもができたことを謝りたいと3人で会うなんてことあるかしらと思うけど、対面のシーンがある。絶対別れませんと言っても、相手は妊娠5ヶ月で母子手帳もある。それから精神的におかしくなり、奇怪な行動をとるようになるのだ。


部屋の畳の下にある構造用合板を電気ノコギリで切っていく。床下の土が露わになるのだ。しかも、そこで寝そべる。声をかけようとすると、私を変人扱いしないでくれと怒る。ただ、江口のりこの奇怪な行動は一つの見どころで、シャワーシーンでは鏡越しに江口のりこの乳輪が見えてしまう。やる気満々なのは実感するけど、これだけのストーリーでは残念としかいいようにない。
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映画「モンキーマン」 デヴ・パテル

2024-08-28 22:14:03 | 映画(アジア)
映画「モンキーマン」を映画館で観てきました。


映画「モンキーマン」はインド系俳優デヴ・パテルの初監督作品である。アカデミー賞作品「スラムドッグミリオネア」以来天才数学者ラマヌジャンを演じた「奇跡がくれた数式」をはじめデヴパテルとは相性がいい。前英国首相のスナクは同じくインド系で英国生まれのデヴパテルとよく似ていると思っていた。殺された母親の仇をうつ復讐劇だが、強烈なアクション映画だ。これまでのデヴパテルのイメージを一掃する作品で長年構想をあたためてきたのがよくわかる脚本だ。

キッド(デヴ・パテル)は幼い頃に故郷の村を焼かれ、母を汚職警察官のラナ(シカンダル・ケール)に殺された。孤児として生き抜いた彼は地下格闘技の世界で猿のマスクを被った「モンキーマン」として暮らす。
ある日、キッドはラナが高級秘密クラブに出入りすることがわかり、無理やりクラブの女性経営者に頼み込んで厨房の皿洗いとして潜り込む。現場を仕切る男と仲良くなりVIPルームのウェイターとして上客と接触する機会を持つ。復讐するチャンスを淡々と待つ。


インドテイストが充満する大画面での迫力あるアクションに圧倒される。
モンキーマンと言っても、類人猿が出てくるわけではなく、ルール無用の地下格闘技で猿のマスクをしたレスラーというわけだ。強くはなく、コテンパンにやられるが、平気な顔をしている。いかにもハングリーだというのを示す。でもギャラはアップくれない。


きっとデヴパテルがこれまで観てきた映画のアクションシーンの良いとこどりをしてきたのではと思わせる格闘シーンやカーチェイスが続く。カメラはアップを多用しているので、大画面で観ると迫力が増す。カメラワークがよく、加えてたくさんのカットを連続的に繰り出す編集も適切でスピード感を感じる。手ブレカメラでの緊張感も出す。序盤戦にスリのシーンがあって、その財布が次から次へと猥雑な街の中を手渡しで渡って行って最後に主人公が手にするスピード感あるシーンに思わずうなる。

最近は日本でもインド人と思しき観光客を見ることが多い。きっとリッチなんだろうなあという連中も目立つ。そんな富裕層と下層階級の両方がでてくる。高層ビルが立ち並ぶすぐ横で猥雑なスラム街がある。金持ちが集うVIPルームインテリアもゴージャスでセンスがある。一方でごちゃごちゃした細い路地が連なる街角得体の知れない雰囲気を持つ。その街でのインド独特の軽自動車でのカーチェイスも見応えがある。インドだけでなくインドネシアでもロケしたというが、高層ビルが立ち並ぶ街はどこなんだろう?ムンバイ?

自分は宗教面特にヒンズー教には疎いが、その昔世界史で習ったような固有名詞がいくつかでてくる。神秘的な雰囲気も漂うシーンも多い。ウェイターとして侵入して仇討ちしかかって失敗した後に、助けてくれたのはヒジュラのコミュニティーだ。男女のどちらでもない両生類でも、男性を去勢している状況だ。戦闘力は持っていて主人公をかばう。


スタントは使っているだろうが、デヴパテル自らのアクションは多い。けがも絶えなかったのでは?監督も兼任のハードワークに思わず大丈夫?と言ってあげたくなる。ただ、映画も最後まで来ると、ちょっともうアクションはお腹いっぱいと思ってしまう。
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