映画とライフデザイン

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映画「6才のボクが大人になるまで」 リチャード・リンクレイター

2014-11-23 21:40:08 | 映画(自分好みベスト100)
映画「6才のボクが大人になるまで」を映画館で見てきました。


大好きな映画スクールオブロック」のリチャード・リンクレイター監督が、同じ4人の俳優と12年間作り上げてきた映画だということは知っていた。前評判もいい。やっている映画館も少ないので、満席で立ち見も出る始末だ。この映画ってミニシアターでなくても見る人多いと思うんだけど、興行主は何考えているんだろう。

ストーリーに大きな起伏があるわけではない。どんでん返しがあるわけでもない。
母親は離婚、再婚を繰り返すが、それに伴って子供2人の家庭環境が変わる。アメリカでは特殊な話でもない。しかし、単なる1つの家族の歴史を描くドキュメンタリーにしないところが、この映画の脚本だ。味のあるセリフをそれぞれの登場人物にごく普通にしゃべらせる。それがこの映画のいいところだ。

2時間45分というのは若干長いし、なくてもいいような逸話もあるけど楽しめた。
まずは、12年間演じ切った4人の俳優と監督やスタッフに敬意を表したい。画期的な作品だ。

主人公メイソン(エラー・コルトレーン)は、6歳でママのオリヴィア(パトリシア・アークエット)と姉さんのサマンサ(ローレライ・リンクレイター)と一緒にテキサス州で暮らしている。ママは大学へ行くためにヒューストンへ引っ越す。ママと離婚してアラスカに行ったパパが僕たちの居場所を探せなくなるのではないかと心配だった。でも1年半ぶりに戻って来たパパ(イーサン・ホーク)は、2人の子供をボーリングに連れて行ってくれた。ママはそれが気に入らず、2人が家の外で言い争う姿を窓から見ていた。


大学へ通うママはビル・ウェルブロック教授と親しくなり、再婚した。ビルにはミンディとランディという子どもがいた。2人と子供同士気が合ったけど幸せは長く続かない。ビルは口うるさく子どもたちに家の雑用を命令する。やりきれないと怒鳴りまくった。アル中のビルは乱暴になって、僕は有無を言わさず頭を五分刈りにされた。ビルは次第にママに暴力をふるい始め、部屋の中で物を投げたりし始める。意を決したママはサマンサと僕を連れて友達の家に逃げた。

オバマが黒人初の大統領候補になったとき、パパに誘われて民主党の選挙運動の手伝いをする。パパは保険会社に勤めている。15才になったサマンサにパパは避妊について突っ込んだ質問を浴びせたり、会話の内容も変わってきた。
修士号を取ったママの勤務する大学が決まり、オースティン近郊の町に引っ越した。新しい中学校では軽いイジメも受けるが、男の友達もできたし、夜遊びもするようになった。


主人公が15才になったとき、ママは教え子たちを呼んだ感謝祭のパーティで、イラクとボスニアに派兵された元陸軍兵ジムと仲良くなる。そして、堅物のジムと一緒に暮らすようになる。一方、パパは、アニーという女性と再婚し、弟である男の赤ん坊も生まれた。パパはマイホーム主義に変わっていった。

高校生になった僕は、写真に夢中になる。夢はアート系の写真家になろうとしている。仲のいい彼女もできた。高校2年の夏、彼女を連れて、大学生になったサマンサのいるオースティンへ遊びに行った。夜はシーナと一緒にサマンサの寮に泊まった。サマンサもルームメイトも留守のはずだったけど突然ルームメイトが帰ってきたのであるが。。。

1.パトリシア・アークエット
名前を忘れていたが、映画を見始めてしばらくしてデイヴィッドリンチ監督「ロストハイウェイで主人公の女性を演じていたことに気づいた。いかにも巨乳好きのデイヴィッドリンチらしく、その映画ではビックリするようなバストを露出させていた。


この映画の撮り始めが2002年でロストハイウェイが1997年だから5年の差なので、最初のころは似たような感じだけど、途中で腹が出てきたり、若干ふっくらしたりする。ところが、しばらくするとすごくきれいに変身したりする。見事な七変化で恋多き12年間の月日を演じている。エンディングロールではトップクレジットは彼女だった。まあそうだろうなあ。


2.イーサンホーク
リチャード・リンクレイターとのコンビで「ビフォア・ミッドナイト」シリーズを撮っている。相性がいいのだろう。でもこの作品はあまり自分は好きでない。どちらかというとデンゼルワシントンがオスカー主演男優賞をとった「トレーニングデイ」での若い相棒刑事役とシドニールメットの遺作「その土曜日、7時58分」で故フィリップシ―モアホフマンの弟役を演じた2作が大好きな作品だ。いずれも未熟な若輩者といった弱い印象をもつキャラで、そういうのがうまい。


ここでは気のいいお父さんを演じている。女の子と1対1になったとき、いったい何を話したらいいの?息子から聞かれる。そうしたら「彼女を質問攻めにしてその答えを熱心に聞いてやるんだ。そうすりゃライバルを引き離せる」なるほど妙に納得してしまう。この映画こういう気のきいたセリフが盛りだくさんだ。
日本ではここまで別れた父親と仲がいいわけもなかろう。最後の卒業記念パーティでのふるまいが素敵だと感じさせる。

3.エラー・コルトレーンとローレライ・リンクレイター
この2人は幼いころからずっと撮られているが、一番変化の大きな2人だ。主人公のエラー・コルトレーンの髪型が次から次へと変わり、思春期の時はちょっと醜いくらいだ。姉の方も一旦醜くなってから、あとで復活。
2人が活躍するのはむしろ思春期になってからだ。思春期の男の子が経験する「Y談」の場面やイジメを受ける場面が印象的だ。女とやっていないのにやっていると言い切るような仲間内の会話は、思春期の自分も経験しただけにたのしい。それにしてもこの姉弟仲いいよね。姉とつるんで恋人を連れ込むシーンが笑えるなあ。


4.音楽好きの監督とビートルズ「ブラックアルバム」
音楽好きのリチャード・リンクレイターだけに映画の中でかかる音楽のセンスは抜群だ。リチャード・リンクレイター監督による2003年のスクールオブロックは主演のジャックブラックの強い個性が活きる世紀の傑作だと自分は思っている。ジャックブラックが子供たちに「ロックの歴史」を講義する場面やレッドツェッぺリンの「移民の歌」に合わせて歌う場面は目について離れないシーンである。ここでもその楽しさが充満している。

一番印象に残るのはイーサンホーク演じる父親が自分のオリジナル編集と言ってビートルズの「ブラックアルバム」をプレゼントするシーンだ。もちろん「ホワイトアルバム」にひっかけたジョークのようなアルバムだけど、メンバー4人の解散後のベストを集めたオリジナルアルバムというのがニクイ。選曲としてポールが「バンドオンザラン」、ジョンが「ジェラスガイ」、ジョージが「マイスウィートロード」、リンゴが「想い出のフォトグラフ」としたところでニクイセリフをイーサンホンクがしゃべっていた。書きとれなくて残念だけど、DVD化したらここに書いておきたいくらい素敵な言葉だった。



見ている人は女性の方が多いようだったけど、男性の方が楽しめる映画だと思う。
主人公にとっての「ヰタ・セクスアリス」がそんなにいやらしくなく語られる。学校の同級の女の子と帰り路の会話をドリーショットで映しだすシーンが凄く素敵で印象に強く残る。
最近は高校生への飲酒が随分とうるさくなっているので、今の生徒たちはかわいそうだけど、この主人公と同じようにビールを飲んだり、エロ話をしたりした時期が思い出されて本当に楽しい。


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