vagabond の 徒然なるままに in ネリヤカナヤ

エメラルドグリーンの海,溢れる太陽の光,緑の森に包まれた奄美大島から,乾いた心を瘉す写真をお届けします。

廃線に惹かれて

2004-10-31 22:37:39 | 
寂寥感漂う素敵な風景だと思いませんか?
今年の夏に訪れた旧士幌線のタウシュベツ川橋梁の風景です。場所は,北海道の帯広から自動車で1時間強の糠平湖の湖畔です。
1988年3月まで電車が走っていたそうなのですが,まるで古代ローマの水道橋の遺跡のようですよね。糠平湖は人造湖で,水位が低い時には,橋の全貌が見渡せ,高くなったときには湖面に水没するらしいのですが,私が訪れたときには,中ぐらい。


近くから見るとこんな感じで


橋の上部は相当崩落していました。

周囲は,いつクマが出てもおかしくないような大自然の真っ直中で,訪れたときには,人っ子一人おらず,吸い込まれるような静けさでした。
つい十数年前まで鉄道が走っていたというのが信じられないぐらいの「廃墟振り」でした。
大自然の前には,人間が作ったものは,微弱なものだなあとしみじみ思いました。

モノクロ写真を満載して日本各地の廃線を紹介した「日本列島廃線紀行」(文春文庫 PLUS)を読んで,シミジミした気分になり,フトこの夏のことを思い出したのでアップしてみました。
私は,鉄道ファンではないのですが,「廃墟」が結構気になるたちなので,機会があれば「廃墟」を紹介してみたいと思います。

芸術新潮11月号~マティスの冒険

2004-10-31 00:29:05 | 美術
芸術新潮 の11月号は,マティス特集。国立西洋美術館で開催されているマティス展とのタイアップ企画。美しい印刷と洗練された解説で,マティス展の「予習」「復習」には格好の材料になりそうです。今回の出品作品の写真の下には「◆」マークが付いています。これを読んで,来週金曜日の夕方には,もう一度マティス展に行こうっと
特集の後半には,晩年に手がけ,マティス自身が「全生涯の仕事の到達点」と読んだヴァンスのロザリオ礼拝堂の紹介もされています。これがまた美しい!覚めるような青空,そしてこれとぴったりマッチした青色基調のステンドグラス。ため息モノ...
いつかはヴァンスへ行きたいな~ それまでは写真で我慢,我慢(夢のまた夢)

★★★マティス展の感想は,赤,赤,赤!~マティス展を鑑賞してをご覧ください★★★

未来少年コナンが復活!

2004-10-30 22:34:33 | 日記
時は西暦2008年,第3次世界大戦が勃発した後の地球を舞台にした冒険ファンタジーで,宮崎駿監督の初期の名作。11月4日(木)からNHK教育テレビであの名作「未来少年コナン」が再放送されます!

「天空の城ラピュタ」で描かれた未来世界の原点,「カリオストロの城」の冒険活劇の原点がここにはあります。何せ,コナンは,運動神経が抜群で,垂直の壁を走って登ったり,突きつけられた槍の上には登ったり,も~最高!一番好きな場面は,沈んで行く船の中に閉じこめられたラナちゃんを助けに行くシーン。感動ものですよ。木曜日まで待ちきれない~
「コナン」というと,私より少し若い世代は,「名探偵」の方を思い浮かべるようですが,こちらが本家なんですよ。
コナンの声は,のび太くんでお馴染みの小原乃梨子さん。でも,のび太くんと違って勇ましいんですよこれが。
それと,音楽,N響アワー等でご活躍の池辺晋一郎先生なんですね。先生は,本格作品の作曲,教育・啓蒙活動だけじゃなく,こういう分野でもご活躍されてたんですね。

それにしても,20数年前,「2008年」というと遠い未来のように感じながら,テレビにかじり付いていたものですが,もう4年先のことなのですね。局地戦は相変わらず頻発していますが,今のところ,世界大戦は起きておらず何よりです。

卵酒の作り方

2004-10-27 22:39:57 | 日記
ここ数日風邪気味で,声はガラガラ,鼻はズルズル,頭はボンヤリの状態で,ブログはおさぼり状態でした。一方,仕事はなぜか急に多忙になって,ようやくたった今帰艦しました
というわけで,明日からの復活を期して,卵酒の作り方について...
これまで,お鍋で,日本酒を沸騰させてから溶き卵を入れていましたが,この方法だと,茶碗蒸しのように,卵が固まってしまいがちです。ということで,最近は,電子レンジでお酒1合を2分ほどチンしてから,そこへ,砂糖をたっぷり入れた溶き卵を流し込んで,ほんの少しだけかき混ぜます。そうすると,卵も固まらず(底の方は半熟状態),なかなかのお味に仕上がります。
お酒も,おいしい純米大吟醸だとなおさら美味なのですが,とりあえず今日は病人ということで,安酒で我慢します。
それでは,今日も卵酒を飲んでぐっすり眠ることにします
明日からは本格復活したいなあ,書きたいこと色々あるんですよ

アンジェリーナのモンブラン

2004-10-24 21:09:18 | 味わい
アンジェリーナには,大きなサイズのモンブラン(1903年創業のパリ本店と同じサイズのもの)もありますが,今回は,初挑戦ということで,「モンブラン デミ」と「ごま風味のモンブラン」(マロンペーストにゴマを練り込んだもの。写真で黒っぽく見えるのがこちら)を食しました。
国産栗を練りに練った,濃厚かつ芳醇なマロンペーストの中には,一転,生乳の香り高く,甘みを抑えた爽やかな生クリーム。そして,その下には,パリパリの焼きメレンゲ。
イナムラショウゾウの「上野の森のモンブラン」も濃密な味でしたが,アンジェリーナのモンブランもこれに勝るとも劣らぬ濃密さ。マロンペーストの粘りは相当高く,デミ1つを食す間に,コーヒーを3杯も飲んでしまいました
もちろん,ごまモンブランは,ごまの香りが高くより味は濃厚。

実は,私にとっては,最高のモンブランといえば,京都の北山通りにある マールブランシュ だったのです。この店のモンブランは,さらりと,しっとりと上品な味で,甘すぎず出しゃばらず,そして,マロンペーストの中に栗のツブツブがほのかに入っています。
が,しか~し,イナムラショウゾウ,アンジェリーナと,人気を二分する名店のモンブランを食べて,衝撃を受けました。マロンペーストの濃密さにノックアウトされそうなのです。
う~ん,奥が深いぞ,モンブラン
もしかして,うどんの汁,おでん等のように,関東風と関西風といったものがあるのですかね~

追記 イナムラショウゾウは,「上野の森...」なのか「上野の山...」なのか,どちらが正しいのでしょうかね?個人的には,「森」の方が風情がある気がするのですが(「山」というと彰義隊を思い出してしまって...)。

秋空に...

2004-10-23 20:21:02 | 日記
不順な天候のこの秋,東京では珍しい快晴です。
写真は,校庭にはためく子供たちの手書きの国旗です。
国内では,度重なる台風の被害が相次いだところへ,新潟県中越地震の大惨事。
世界に目を向けると,大小の紛争,飢餓や病気に苦しむ人々が後を絶ちません。
少しでも,人間の苦しみが少なくなるよう,青空に祈りました。

今年の秋の新蕎麦がピンチ

2004-10-23 20:01:44 | 味わい
朝日新聞の本日の夕刊によると,台風の影響で,国内産そば粉のほぼ半分を生産する北海道が大きな被害を受けて,供給が逼迫しているとのこと。価格の急騰を受けて,多くの蕎麦店で輸入のそば粉に頼らざるを得ない状況に陥っているそうだ。新蕎麦は秋の楽しみの一つなのですが...

台風23号の影響も死者80人、行方不明12人に及んだようですし,夕方から,新潟を震源に地震が続いています。皆さん気を付けてください。

写真は,蕎麦の花(今年の夏に行った北海道新得町の蕎麦畑)の写真です。
一面真っ白で,息をのむぐらい綺麗でしたよ。
町内で食べた蕎麦も,薫り高く美味でした。

People have the power~ザ・ボスの復活とアメリカの行方

2004-10-21 23:39:17 | 音楽
アメリカでは,大統領選が最終コーナーへ差し掛かろうとしている。大統領選の争点は,三つ子の赤字,イラク問題,同姓結婚等,多岐にわたっているようだ。そんな折,昨日のNews23によると,ザ・ボスこと,ブルース・スプリング・ティーン,REMらが”Vote for change”と題して,反ブッシュ,ケリー支持の旗印を立てて,大統領選の激戦区を中心にコンサートツアーを行っているという。
イラク問題については,フランスはいうまでもなく,イギリス,イタリアと方向転換を始めており,もはやベトナム同様の泥沼は絶対に避けようとの機運が高まっていると思われる。そんなタイミングとはいえ,有名ロックミュージシャンたちが,政治的なメッセージを前面に出して,コンサートを行うというのは,いかにもアメリカらしい(他にも,ジャクソン・ブラウン,トレイシー・チャップマンらが賛同している模様)。
番組内では,パティ・スミスの”People have the power”の演奏情景も流していた。ロックは,ウッドストックを挙げるまでもなく,感情的,感傷的,情熱的に流れる嫌いもあるが,その時々の「時代」の本当の気持ちを表しているという側面も間違いなく持っている。
「博士の異常な愛情」の評でも書いたが,やはり,アメリカは,こういった「表現の自由」で成り立っている国なんだなと改めて感じた。
敬愛するジョン・レノンが生きていたら,この問題に対して,どんな行動をとっただろうか?

「記憶」の欺瞞~映画「メメント」を観て

2004-10-21 01:39:03 | 映画
 数年前に話題になった映画「メメント」を漸く観た。妻の「殺害」を目の当たりにして,そのショックで10分間しか記憶ができなくなった主人公が,復讐を果たすべく奮闘するという物語である。彼の頼りは,要所要所で撮ったポラロイド写真とそこにかき込んだメモ,キーポイントを書き込んだ模造紙,そして,体に彫り込んだ事件解決のキーワード(タトゥー)。一体,何が真実なのか??是非,メモを片手に見て欲しいお奨めできる映画である。面白い!!!
 この作品は,「映画」の可能性をまたひとつ生み出したものであること間違いない。以下,ネタバレだが,おそらく予備知識を持った方が絶対に楽しめると思うので,敢えて少しだけネタバレする。

 映画は,2つの系統を辿る。1つは,カラーの系統で時系列とは「逆転」,もう1つは,モノクロの系統で時系列の「順転」。これだけは押さえておいた方がよい。あとは,メモ(特に,日本人にとっては覚えにくい,登場人物の名前)をとりながら,映画の流れに身を委ねる。そうすると,必ずや,「シックス・センス」ばりのトリックに陥ること間違いない。『記憶』の曖昧さを補うものが,「メモ(記録)」だと言われている。しかし,本当に,『記録』が『記憶』を補完し,真実を凍結保存することができるのか。
 この映画は,上質のエンターテイメントでもあると同時に,「記憶」の欺瞞,そして,結局はその時点時点の人間の恣意にコントロールされたものに過ぎない「記録」の揺らぎをえぐった作品である。
 私は,この映画を見終わって,芥川龍之介の「藪の中」(黒澤明監督の「羅生門」の原作)を思い出した。
 一体,何が真実なのか?この映画では,そのキーは,タトゥー”I’ve done it (殺(や)ったぜ)”にある(と思う)。
 このDVDには,物語の進行が時系列の順に並び替えられたヴァージョンもオマケで収録されている。見終わった後,とてつもなく疲れる映画ではあるが,是非,何度も見直して,「記憶」の欺瞞と「狂気」を味わって欲しい。知的好奇心が刺激されること間違いない。
 良かったら,「真実」が何だと思うか,コメントしてください。

追記 私は,最初に見たときに,思わず3回見てしまった。事実関係を掘り下げたいのなら,2回目以後は,日本語吹き替えで見た方が良いかも知れない。字幕だとどうしても情報量に限界があるので…
 
メメント(2001・米)

【評価】8点(10点満点)(残虐な場面(殺人シーン)が出てくるので2点減)

衝動買い(その2)~伊藤若冲のペットボトル(Jakuchu)

2004-10-20 19:31:33 | 美術
 噂の若冲のペットボトルをゲット。普段はコンビニをほとんど使わないので,いまだ若冲印のペットボトルに相見えることはなかったけど,いざ,コンビニにズラッと並んでいる若冲仕様の「まろ茶」を見たら,感動そのもの。思わず,4本を衝動買い
若冲は生存時はさぞキッチュな存在だったと思うが,コンビニの店頭に並んでしまうとは,いまや押しも押されぬ存在ですな(若冲の魅力を知っている人間は少ない筈!と思っていた人間にとっては,少し寂しい気もしますが…)。
この4種の中で,皆さんのお気に入りはどれですか?
私は,文句なく,樹花鳥獣図屏風です。このゾウさんの表情と,エキゾチックな雰囲気,そして,銭湯のタイル絵のような描画がたまりません。

【樹花鳥獣図屏風(静岡県立美術館所蔵)】

数年前,京都の若冲展で初対面でしたが,もう一度会いたい!静岡まで行こうかな,と考えている今日この頃です。

衝動買い~地下鉄ルービックキューブ

2004-10-19 23:25:22 | 日記
いつもは寝ぼけまなこの地下鉄の駅で,「ルービックキューブ」とは懐かしい文字。や,や,地下鉄,都電,モノレールで構成された簡易版ルービックキューブではあ~りませんか!これは即買い!!と思いきや,既に各駅ともに売り切れ続出。何個めかの駅で漸く手に入れたのでした。
2×2×2の構成は,3×3×3の構成よりも断トツにカンタンだけど,意外と楽しめます(この表し方って,もっとカンタンにできなかったでしたっけ?「3!」じゃないしなー数学の得意な人ヨロシク!)。
でも,オーナメントとしてはなかなかにクールかな,と思ったのでありました。
詳しくは,東京都交通局HPへ。

魅惑の牛タン

2004-10-18 21:19:07 | 味わい
 本日のランチは,ra-gooさんのBlogで教えて頂いた「味 太助」にて。ランチにしては少し贅沢だけど,迷わず,牛タン定食1,260円を選ぶ。
 炭火で焼いた牛タン,テールスープ(牛さんのシッポ)そして麦飯がセット。何と言っても,楽しみにしていたのは,牛タン。ra-gooさんのいうとおり,肉厚で,ジューシー,丁度良い焼き具合のホンモノの牛タンは感動もの!焼肉屋へ行くと,てっさ(ふぐさし)かと見まごうほどの薄さの牛タンが出されることも多いけれど,この厚みは正に「タン」そのもの。自分で焼いて食べられれば,雰囲気がもっとアップするのだけれど,それは贅沢というもの。さらに,全く予期していなかったテールスープの旨いことといったら!!余分な脂肪が削ぎ落とされたテールを煮込んだスープは文句のない旨さ。もちろん,コラーゲンたっぷりのテールについたお肉もいただきました。白菜の御新香もほどよく,同じく付け合わせの唐辛子のこうじ味噌漬けもほどよいピリ辛。う~んビールが飲みたい,というのをグッとこらえて,麦飯をかき込むのでありました。
 厨房にうずたかく積まれた牛タンの山が次々と無くなっていく様は壮観でした
 なんじゃこりゃというランチも多い中,この値段でこの内容とは恐れ入りました。次はタンシチュー目指して行くぞー!!!

この秋の上海蟹

2004-10-17 20:48:01 | 味わい
 今日は久々の快晴。こんな天高く馬肥ゆる秋の日には,とびっきりの贅沢をしたくなってしまう。というわけで,今日は,上海蟹を食べに行った。陽澄湖産の「大閘蟹(ドゥ・ザ・ハ)」がいわゆるホンモノの「上海蟹」だが,最近は偽物が多数出回っているようである。例えば去年の場合,陽澄湖の水揚げ量はわずか800トンだが,市場には合計8000トンもの「陽澄湖産蟹」が出回っているなどと言われていた。それで,昨年当たりから,レーザーで「陽澄湖」との刻印をするようになったそうだ(それでも刻印を偽造する業者が後を絶たない模様)。
 上海蟹を食べるのは,ほぼ10年ぶり。その時は,老酒に漬けた「酔っぱらい蟹」で食べたが,今日は,「姿蒸し」を細かく切った生姜を入れた中国赤酢で食した。気になるお味の方だが,蟹味噌の部分が,日本の蟹では感じられない,独特の甘みと深い味わいがあり,しばし絶句。酔っぱらい蟹よりも本来の味が味わえた。ただし,2,300円という値段の割りには,信じられないぐらいの小ささで,夢見心地は長くは続かなかった!後は,細い足のお肉をホジホジして黙々と蟹味噌の余韻を味わったのであります まあ,毛蟹の方が旨いのは間違いのないところで,上海蟹は一つの雰囲気を味わうものかも知れませんね
 それでも,久々に上海蟹を味わえて幸せな気分。今度は,浜松町の新亜飯店の蟹味噌入り小籠包を食べに行きたいな

素敵な絵本の玉手箱~The 20th Century Children's Book...

2004-10-16 21:41:09 | 英語
 この秋読んだ本の中で絶対のお奨めは,"The 20th Century Children's Book Treasury: Picture Books and Stories to Read Aloud (Treasured Gifts for the Holidays)"
「絵本はどうも」「洋書はちょっと」という声も聞こえてきそうだけど,名作中の名作ばかり集めた絵本のアンソロジーであり,当然のことながら子供向きの英語で書かれているため,英語に自信のない人でも簡単に読めます。そして,絵本好きには信じられないような凝縮した内容で,収録作品の日本語版を持っている人でも,是非,手許に置いておきたくなるはず(日本語の絵本3冊分の値段・3,900円で買えてしまう!)。

 アメリカで長年にわたって児童書の編集,出版に携わってきたジャネット・シュールマンが,集めた44編の名作絵本がギュッと一冊にまとめた。もちろんカラー,サイズはA4版で約300ページのハードカバーだが,良い紙を使っているせいか,見た目ほどには重くはありません。赤(幼児向け),青(未就学児童向け),緑(就学後の児童向け)と色分けされており,レベルもバランス良く配置されています。

 オープニングはMadeline「げんきなマドレーヌ」」(お茶目なマドレーヌが盲腸にかかるお話。オチがまた可愛い。)。
 その他,私の好きなお話だけ挙げても,Swimmy「スイミー―ちいさなかしこいさかなのはなし」(教科書にも取り上げられている感動的な話。力を合わせることの尊さよ。),Frog and Toad Are Friends「ふたりはともだち」から”The Letter”(友情って素晴らしい!), Millions of Cats「100まんびきのねこ」(少しだけ怖いお話),Curious George「ひとまねこざるときいろいぼうし」(おさるのジョージシリーズの1作目。いたずらの大好きなジョージの物語はここから生まれた),The Story of Babar「ぞうのババール―こどものころのおはなし」(ババールシリーズの1作目。冒頭は何度読んでも泣けます),Petunia「がちょうのペチューニア」(可愛くてシニカルな物語だけど最後は「真実」が分かります),Ferdinand「はなのすきなうし」(自分らしく生きることの大切さ)…ときりがない。最後には,出版がやめられた「ちびくろさんぼ」を改訂したThe Story of Little Babaji「トラのバターのパンケーキ― ババジくんのおはなし 」(ホットケーキが食べたくなります。読んでいて香ばしい香りを感じられるのはこの本だけ!)が掲載されている。すごいでしょ。

 なかでも,印象的だったのは,雅子さまも幼少の頃愛読されていたというGoodnight Moon「おやすみなさいおつきさま」。日本語版を何度読んでも腑に落ちなかったのが,「くしとぶらし」と「おかゆが ひとわん」とが並んでおいてある場面。何かの意味があるに違いないと思っていたのですが,英語版で読むと,すっきり解決。”comb and a brush”と”a bowl full of mush”だったんですね。きっちり「韻」を踏んでいます。その他にも,音読すれば,美しい韻と静謐な情景が浮かんできます。きっと,雅子さまは,英語で朗読されていたのでしょうから,この「韻」の世界を幼少のみぎりから堪能されていたのでしょうね。

 もちろん,アンソロジーということは,短所もあって,作品によっては,挿絵が相当カットされているため,文字だらけという印象も否定できませんし,美しい絵も縮小されています(例えば,Where the Wild Things Are「かいじゅうたちのいるところ」も,挿絵の全てが掲載されているものの,縮小のため「ダンス」の迫力は若干低下しています)。とはいえ,これだけの作品を集めた絵本のアンソロジーが出版されるのは驚異です。まずはこの本を読んでみて,気に入ったものは日本語版で読んでみるというのもよいかもしれません。

 最近話題の英語の「多読」にも向いているし,「赤」のグレードならば,幼児への読み聞かせにも適していると思います。私は,TOEICだけでは身に付けられない英語の地力を付けるため,まずは,この本,そして,同じくジャネット・シュールマンの手によるYou Read to Me & I'll Read to You: 20th Century Stories to Shareを読もうかと思っています(「ビジネス英会話」も継続中!!)。この秋,このとっても素敵な絵本の玉手箱から,夜ごと夢の世界へ入っていこうと思います。
 日本の絵本でもこの手の企画を打って欲しいと思うのは,私だけでしょうか?

The 20th Century Children's Book Treasury: Picture Books and Stories to Read Aloud (Treasured Gifts for the Holidays)Janet Schulman

追記 日本の絵本で44編選ぶとすれば,何を選びます?私なら,「こんとあき」は外しませんね。絵本で泣いちゃいましたよ。

水俣病の行政責任が認められた日

2004-10-15 21:49:57 | 日記
 水俣病は,高度成長の過程で生じた公害である。1956年の公式発見から48年という長い長い年月を経て,この水俣病に関して行政にも責任があることが確定した。昨日は,ダイエーと高度成長について書いたが,水俣病という高度成長の過程で日本人が背負った「業」の中でも最も深い部類に属するものが,このような形で一つの区切りを迎えたことには,喜びを感じる。
 1970年代に私は小学生だった。そのころは既に,四大公害(水俣病,イタイイタイ病,四日市ぜんそく,新潟水俣病)の惨禍は明らかになっており,いかに患者を救済するか,いかに公害の発生を防止するかに焦点が絞られつつあった。そして,学校でも,例えば,小学校の社会科の授業で,これら公害の問題点と将来的な課題等について,子供ながらに研究したりしたものだ。当時は,テレビ,メディア等でも頻繁に取り上げられ,京葉地域の六価クロムの問題等とあわせて,現在進行形の課題として,多くの国民が認識していたように思う。が,その後,歳月は流れ,徐々に風化しつつあった。
 水俣病が,現在も進行中の大問題であるとの思いを深めたのは,恥ずかしながら,先週,NHKの人間ドキュメント「いのちの舞~石牟礼道子のメッセージ」を見てからである。石牟礼氏は,水俣病の苦しみと人間の「業」を描いた不朽の名作「苦海浄土―わが水俣病」の作者である。同氏は,現在,パーキンソン病を病んでいるが,その最後の仕事として,新作能「不知火」を創ることを決意した。その「不知火」の上演場所は,水銀廃棄物の詰まった2,000本のドラム缶の埋まった埋立地の上で行う。そして,「加害者」でもある「チッソ」の社員にも上演への参加を呼びかける。その姿を負ったドキュメンタリーであった。老齢化の進む患者の姿,患者一人ひとりが抱える思い,そして病を抱えながら事業を進める石牟礼氏の情熱には,心が大きく揺るがされた。
 そこへ,今日の最高裁の判決。認容された金額は多額ではないものの,おそらく患者の方々にとっては,行政の責任が認められたこと自体が,とても大きな意義を持つのだと思う。一方,世界に眼を向ければ,未だ大小の公害は発生しており,その被害に苦しむ人々もいる。産業や技術の発展に伴い,人間に有毒な物質が排出されることは避けられないとは思うが,何とか,人類全体が持続的に発展できるように模索しなければ,と久々に思った。さて,何から始めるか,それが問題である。


関西水俣病訴訟、国と県の責任認定…最高裁 (読売新聞) - goo ニュース