vagabond の 徒然なるままに in ネリヤカナヤ

エメラルドグリーンの海,溢れる太陽の光,緑の森に包まれた奄美大島から,乾いた心を瘉す写真をお届けします。

素敵な絵本の玉手箱~The 20th Century Children's Book...

2004-10-16 21:41:09 | 英語
 この秋読んだ本の中で絶対のお奨めは,"The 20th Century Children's Book Treasury: Picture Books and Stories to Read Aloud (Treasured Gifts for the Holidays)"
「絵本はどうも」「洋書はちょっと」という声も聞こえてきそうだけど,名作中の名作ばかり集めた絵本のアンソロジーであり,当然のことながら子供向きの英語で書かれているため,英語に自信のない人でも簡単に読めます。そして,絵本好きには信じられないような凝縮した内容で,収録作品の日本語版を持っている人でも,是非,手許に置いておきたくなるはず(日本語の絵本3冊分の値段・3,900円で買えてしまう!)。

 アメリカで長年にわたって児童書の編集,出版に携わってきたジャネット・シュールマンが,集めた44編の名作絵本がギュッと一冊にまとめた。もちろんカラー,サイズはA4版で約300ページのハードカバーだが,良い紙を使っているせいか,見た目ほどには重くはありません。赤(幼児向け),青(未就学児童向け),緑(就学後の児童向け)と色分けされており,レベルもバランス良く配置されています。

 オープニングはMadeline「げんきなマドレーヌ」」(お茶目なマドレーヌが盲腸にかかるお話。オチがまた可愛い。)。
 その他,私の好きなお話だけ挙げても,Swimmy「スイミー―ちいさなかしこいさかなのはなし」(教科書にも取り上げられている感動的な話。力を合わせることの尊さよ。),Frog and Toad Are Friends「ふたりはともだち」から”The Letter”(友情って素晴らしい!), Millions of Cats「100まんびきのねこ」(少しだけ怖いお話),Curious George「ひとまねこざるときいろいぼうし」(おさるのジョージシリーズの1作目。いたずらの大好きなジョージの物語はここから生まれた),The Story of Babar「ぞうのババール―こどものころのおはなし」(ババールシリーズの1作目。冒頭は何度読んでも泣けます),Petunia「がちょうのペチューニア」(可愛くてシニカルな物語だけど最後は「真実」が分かります),Ferdinand「はなのすきなうし」(自分らしく生きることの大切さ)…ときりがない。最後には,出版がやめられた「ちびくろさんぼ」を改訂したThe Story of Little Babaji「トラのバターのパンケーキ― ババジくんのおはなし 」(ホットケーキが食べたくなります。読んでいて香ばしい香りを感じられるのはこの本だけ!)が掲載されている。すごいでしょ。

 なかでも,印象的だったのは,雅子さまも幼少の頃愛読されていたというGoodnight Moon「おやすみなさいおつきさま」。日本語版を何度読んでも腑に落ちなかったのが,「くしとぶらし」と「おかゆが ひとわん」とが並んでおいてある場面。何かの意味があるに違いないと思っていたのですが,英語版で読むと,すっきり解決。”comb and a brush”と”a bowl full of mush”だったんですね。きっちり「韻」を踏んでいます。その他にも,音読すれば,美しい韻と静謐な情景が浮かんできます。きっと,雅子さまは,英語で朗読されていたのでしょうから,この「韻」の世界を幼少のみぎりから堪能されていたのでしょうね。

 もちろん,アンソロジーということは,短所もあって,作品によっては,挿絵が相当カットされているため,文字だらけという印象も否定できませんし,美しい絵も縮小されています(例えば,Where the Wild Things Are「かいじゅうたちのいるところ」も,挿絵の全てが掲載されているものの,縮小のため「ダンス」の迫力は若干低下しています)。とはいえ,これだけの作品を集めた絵本のアンソロジーが出版されるのは驚異です。まずはこの本を読んでみて,気に入ったものは日本語版で読んでみるというのもよいかもしれません。

 最近話題の英語の「多読」にも向いているし,「赤」のグレードならば,幼児への読み聞かせにも適していると思います。私は,TOEICだけでは身に付けられない英語の地力を付けるため,まずは,この本,そして,同じくジャネット・シュールマンの手によるYou Read to Me & I'll Read to You: 20th Century Stories to Shareを読もうかと思っています(「ビジネス英会話」も継続中!!)。この秋,このとっても素敵な絵本の玉手箱から,夜ごと夢の世界へ入っていこうと思います。
 日本の絵本でもこの手の企画を打って欲しいと思うのは,私だけでしょうか?

The 20th Century Children's Book Treasury: Picture Books and Stories to Read Aloud (Treasured Gifts for the Holidays)Janet Schulman

追記 日本の絵本で44編選ぶとすれば,何を選びます?私なら,「こんとあき」は外しませんね。絵本で泣いちゃいましたよ。