vagabond の 徒然なるままに in ネリヤカナヤ

エメラルドグリーンの海,溢れる太陽の光,緑の森に包まれた奄美大島から,乾いた心を瘉す写真をお届けします。

イナムラショウゾウ

2004-10-11 03:28:20 | 味わい
 マティス展,興福寺国宝展とめぐった後,cherry_jam69さんにご紹介頂いた,「パティシエ・イナムラ・ショウゾウ」(台東区上野桜木2-19-8)でケーキを購入。昼食抜きで美術館のハシゴをしてしまったので,今日は沢山食べるぞー(半分冗談です。同居人の人数より若干多めに購入しただけです。)。苺のロールケーキを2個,上野の森のモンブラン,マロンミルフィーユともう一品(名前を忘れてしまった)。
 ロールケーキは,生クリームは軽めで,挟み込まれている苺ジャムは濃厚な味わい。ほのかに子供の頃を想い出させる懐かしい味。ミルフィーユは,生地が香ばしく,マロン味も濃密で,秋らしい一品。特筆すべきは,モンブラン。これは,今まで,食べたことのない食感。まず,上に乗っているマロンクリームが,「こしあん」状で,結構重い。その下に入っているのは,生クリームとカスタードクリームの分離独立した層。こういった構成,私,モンブランでは初めてです。恐らく,好みが分かれるという気がしますが,フルボディの味わいで,「ケーキを食べた!」という感じは十分にします。私自身は,朝から歩き回って疲れていたので,ちょっと重く感じてしまいました。ロールケーキが一番良かったかな。

 いずれにしても,お店は今日も相変わらずの行列で,お買い上げまで20分ほどかかりました。以前から気になっていたお店のケーキをやっと食べられてホント幸せです。上野の森の人気店,美術館巡りの帰りには,また利用させてもらいます。今度は,パウンドケーキにも挑戦しようっと!

カルロ・ドルチと松方コレクション

2004-10-11 02:32:25 | 美術
 TakさんのHPで,カルロ・ドルチという画家の「悲しみの聖母」という作品があると知って,マティス展に引き続いて,西洋美術館の常設展にはじめて行った。「悲しみの聖母」は,Takさんご紹介のとおり素晴らしい作品。ビロード様の濃い青のベールを被り,深く澄んだ悲しげな表情を見せている。神秘的ですらある。今まで,なぜこの作品と出会わなかったのだろう,なぜこの画家の存在を知らなかったのだろうと思った。と同時に,Blogを通じて,こういった作品を知ることができて幸せにも思った。
 同時に,常設展の全容とその設立の経緯を知り,またまた感動してしまった。常設展は,行かれた方はご存知のとおり,ヴァザーリ,ヴェロネーゼ,ティントレットといった17世紀以前のイタリアの画家から,ブリューゲル,ルーベンス,それから,マネ,モネ(10点以上!),クールベ,それからそれから,ピカソ,ルオー,ミロまで網羅している。要するに,それぞれの画家の最良の一品が展示されているかどうかはともかくとして,常設展さえ見れば,美術史が一通り把握できるという優れたラインナップになっているのである。
 そして,これを構成する大半があの松方財閥の関係者 松方幸次郎のコレクション(いわゆる松方コレクション)である(昔,教科書で習った気がするがすっかり忘却の彼方であった。)。松方は,「日本の若者に本物の西洋美術を見せたい」との一心で,破格の大金を投じて欧州で美術品を収集したという。その後,経済恐慌による松方の本業(川崎造船)の不振,第二次世界大戦の勃発等で,収集した美術品が日本に来るのは戦後になるわけだが,この心意気は見上げたものだ。あの時代だからできたというのは簡単だろう。しかし,今の日本に,これだけの心意気を持った実業家が果たしてどれぐらい居るのだろうか。後進の育成を真剣に考え,そして実行した松方の行動に心から敬意を払う。
 松方コレクションと出会えたこと,それは,今日の大きな喜びであった。まだまだ世の中凄いものがありますね。もっと勉強しなくっちゃ!

興福寺の復活に向けて~興福寺国宝展

2004-10-11 00:30:37 | 美術
 今日は,マティス展に引き続き,「興福寺国宝展」を鑑賞した。
 『秋風や 囲いもなしに 興福寺』と正岡子規は詠んだそうだ。
奈良公園に行くと,寺同士がシームレスに繋がっていると強く感じる。
どこまでが寺の所有地で,どこからが公有地なのか不明確なのである。
その象徴が,あちこちに自由に出入りする「鹿」である。よく言えば,敷居が低いのだが,見方によっては,権勢の衰えを感じる。これは京都では感じられない感覚だ。

 それでも,東大寺には,(少なくなったとはいえ)ひっきりなしに修学旅行生等が訪れるので,それほどの衰えは感じない。しかし,興福寺は,奈良公園の中にほとんど埋れかかっているようにさえ思う。
子規が「囲いもなしに」と詠んだのも,幾度もの災に見舞われながらも,その都度復活を遂げてきた興福寺が,子規来訪の当時には凋落しきっていた,そう感じたからではなかろうか。
「古寺巡礼」(和辻哲郎)も繰ってみたが,やはり興福寺は正面からは取り上げられていない。「阿修羅像」「乾漆十大弟子立像」「銅造仏頭(旧山田寺講堂本尊)」等の素晴らしい仏像を山のように所蔵しているにもかかわらず,である。

 と,前置きが長くなったが,「法相宗」の大本山興福寺は,創建当初(和銅3年(710))の「天平の文化空間」を再構築するため,創建1300年の大きな節目を迎える平成22年(2010)を目途に,中金堂再建(享保2年(1717)に焼失後,仮金堂のまま)をはじめとする境内の整備事業に取り組んでおり,その一環として,興福寺国宝巡回展を計画したとのこと。これは行かねばなるまい。今回の展覧会のコンセプトに合わせて,出品作品は,鎌倉期大復興の折りに制作された仏像が中心となっている。
 治承4年(1180),源平の争乱の中,興福寺は平重衡によって焼き討ちにあい,壊滅的な打撃を被る。そして,康慶,運慶らが文字通り総力を結集して仏像を作り上げた。今回の展覧会では,その諸仏のご尊顔を拝することができ,全てに力が漲っており実に素晴らしい。

 入口のフロアには,曼荼羅図等があるが,これは前座。メインは,3階で,まず,木造無著・世親立像が出迎えてくれる。無着と世親は,4世紀のインドで法相教学を確立した兄弟で,運慶が,表情等を日本風にアレンジし,日本彫刻史上の最高傑作ともいわれる両立像を創造したとのこと。衣文の力強さ,両腕と両袖の作り出す懐の深さが素晴らしい。そして,表情については,兄・無着像(老年期。右側)は,老いた表情の中にも一徹な厳しさを醸し出し,弟・世親像(壮年期。左側)は,覇気と自信・頑固さを見事に映し出している。西洋美術とはまたひと味違った求道者の姿がそこにある。他にも,チケットに使われている龍燈鬼立像(玉眼に注目!)も素晴らしく,仏像のパワーが,そして当時の復興に向けた情熱が満ち満ちている(木造十二神将立像の勢揃いを望むのは高望みというものだろう。)。そんな中でも,注目したのは,木造金剛力士立像の衣の文様。かなり色あせているが,よく見ると,蓮の葉や鳳凰のようなものが見えるが,そのタッチは繊細極まりない。力強さと細部での繊細さのミスマッチに感動した。

 ところで,治承4年の焼き討ちの翌年,平清盛が死に,平氏は衰退の一途を辿っていく。これと逆行するかのように,興福寺の鎌倉期大復興が始まり,今回の出品作をはじめとする大傑作群が生まれるわけである。諸仏を見ながら,今回の2010年に向けての復興作業の成功を祈らずにはいられなかった。

 本Blogを読んで関心を覚えたら,是非,興福寺国宝展に足を運んでみてください。歴史的な経緯と現状を知ると,何かを感じますよ。そして,もし感動したら,是非,奈良へも足を運んでください。秋の奈良,裏寂れた興福寺国宝館で,阿修羅像や千手観音像を見ると,更なる感動間違いありませんよ。