私は,神戸で育った。神戸が生み出したものは多々あるが,戦後産業のうち神戸発の代表格はダイエーであった。第二次大戦で捕虜となった後復員した中内氏が,神戸市三宮に薬局を開店したのがその前身である。その後,「主婦の店ダイエー」を展開し,高度成長とともに,拡大路線を突き進む。その成長と衰退の過程は,かつては元気のあった日本全体の姿,さらに,ダイエー発祥の地,神戸市の盛衰とも重なる。
神戸市は,ご存知のとおり,六甲山系を切り崩してベッドタウンを開発する一方,開発で出た土砂をベルトコンベアで海へ運び,人工島(ポートアイランド,六甲アイランド)を創造し,港湾施設,商業施設,流通機関等を誘致するといった政策をとった。さらには,ドイツマルクを運用して,人工島の開発等の原資の相当部分を調達した(財テクの走りである。)。70~80年代には「株式会社 神戸市」とも揶揄された。しかし,バブルの崩壊,続いて阪神淡路大震災が追い打ちをかける。この震災を契機に,ミナト神戸の港湾施設は,大阪へと移転してしまい,相当悲惨な状況になっていると聞く。産業は,漸く発展しつつあるものの,観光スポットから少し離れると未だに震災の傷跡の散見される町の姿には痛々しさを感じる。
この大震災では,幹線道路,ライフラインがズタズタにやられ,市民の生活は経験した人しか分からない悲惨な状況にあったと聞く。そのとき,陣頭指揮をとって,「店から生活必需品を切らさない」との号令の下に,採算を度外視した商品調達を行ったのが,中内功氏である。中内氏の進めた拡大路線の行き過ぎ,価格破壊路線の失敗等,幾多の批判はある。しかし,インフレが急激に進行する高度成長期に「よい物をより安く」とのモットーのもと,「定価販売」の常識の壁を打ち破り,庶民のために尽くした姿勢,そして,大震災という危機的状況でも庶民のニーズを忘れないという有り様には,神戸っ子の心意気を感じる。
その中内氏が創出したダイエーが,自主再建を放棄し,産業再生機構を活用することになったという。経産省のぐらつき,大手銀行の不甲斐なさ等,腹立たしく感じる部分も多々あるが,ビジネスとして,日本全体として,見た場合,おそらく今年度中にダイエーの再生の目鼻を付けるという選択は正しいのだろうと思う。ただ,神戸のそして日本の繁栄と歩調を合わせ,一時期は売上高5兆円を誇ったダイエーが,税金を使って,食料品のみに特化して,そして恐らく球団も手放して,小さな小さな所帯になって再出発を図るのであろうことは,とても,寂しい。さながら神戸の落日を感じる。
神戸は,今でも山と海とが手に手をとり,美しく少しエキゾチックな町並みを誇る。レストランも洋菓子店も最高級のものが軒を連ねる。しかし,開港以来の往事の勢いを失ってしまった気がするといえば大げさだろうか。大好きな町はこれからどうなっていくのだろうか。
ダイエーのニュースを聞き,そんなことを考えた。
頼みの経産省ゆらぎ ダイエー、迷走の裏側 (朝日新聞) - goo ニュース
神戸市は,ご存知のとおり,六甲山系を切り崩してベッドタウンを開発する一方,開発で出た土砂をベルトコンベアで海へ運び,人工島(ポートアイランド,六甲アイランド)を創造し,港湾施設,商業施設,流通機関等を誘致するといった政策をとった。さらには,ドイツマルクを運用して,人工島の開発等の原資の相当部分を調達した(財テクの走りである。)。70~80年代には「株式会社 神戸市」とも揶揄された。しかし,バブルの崩壊,続いて阪神淡路大震災が追い打ちをかける。この震災を契機に,ミナト神戸の港湾施設は,大阪へと移転してしまい,相当悲惨な状況になっていると聞く。産業は,漸く発展しつつあるものの,観光スポットから少し離れると未だに震災の傷跡の散見される町の姿には痛々しさを感じる。
この大震災では,幹線道路,ライフラインがズタズタにやられ,市民の生活は経験した人しか分からない悲惨な状況にあったと聞く。そのとき,陣頭指揮をとって,「店から生活必需品を切らさない」との号令の下に,採算を度外視した商品調達を行ったのが,中内功氏である。中内氏の進めた拡大路線の行き過ぎ,価格破壊路線の失敗等,幾多の批判はある。しかし,インフレが急激に進行する高度成長期に「よい物をより安く」とのモットーのもと,「定価販売」の常識の壁を打ち破り,庶民のために尽くした姿勢,そして,大震災という危機的状況でも庶民のニーズを忘れないという有り様には,神戸っ子の心意気を感じる。
その中内氏が創出したダイエーが,自主再建を放棄し,産業再生機構を活用することになったという。経産省のぐらつき,大手銀行の不甲斐なさ等,腹立たしく感じる部分も多々あるが,ビジネスとして,日本全体として,見た場合,おそらく今年度中にダイエーの再生の目鼻を付けるという選択は正しいのだろうと思う。ただ,神戸のそして日本の繁栄と歩調を合わせ,一時期は売上高5兆円を誇ったダイエーが,税金を使って,食料品のみに特化して,そして恐らく球団も手放して,小さな小さな所帯になって再出発を図るのであろうことは,とても,寂しい。さながら神戸の落日を感じる。
神戸は,今でも山と海とが手に手をとり,美しく少しエキゾチックな町並みを誇る。レストランも洋菓子店も最高級のものが軒を連ねる。しかし,開港以来の往事の勢いを失ってしまった気がするといえば大げさだろうか。大好きな町はこれからどうなっていくのだろうか。
ダイエーのニュースを聞き,そんなことを考えた。
頼みの経産省ゆらぎ ダイエー、迷走の裏側 (朝日新聞) - goo ニュース