石川啄木は、短歌の添削をしていた時期がありました。全国から送られてくる短歌に赤字をいれ、指導をしていたのです。
啄木は平山良子という女性に目をつけます。
彼女から啄木に「短歌の指導をしてほしい」という手紙が来たのです。
24歳の独身ということで、啄木はときめきを覚えてしまいました。
「写真を下さるという事で、首を長くして待っています」
そんな浮かれた手紙を添えて返信しました。
返事を待ちわびていると、2週間後に良子から写真とともに手紙が届きます。
啄木は良子のことを一発で気に入り、こんな返事を書いています。
「私はあなたをこの上なく美しい人だと思います」
短歌の指導から目的が逸脱してきました。その後ふたりのやりとりは続き、啄木は平山良子にどんどん惹かれていきます。
啄木はどんな女性か知りたくなったので、短歌の指導仲間を使って探りを入れました。調査を終えた仲間が啄木に告げた真実はあまりにも衝撃的なものでした。
なんと平山良子は良太郎という男だったのです。
良太郎は女性の名前を語れば丁寧に見てもらえるだろうと踏んだのです。
啄木は、すべてがばれたことを知った良太郎から謝罪の手紙と羊羹を受け取ります。
啄木からすれば悔しいやら恥ずかしいやらで、なんともいえない胸中だったのでしょう。
そこで宛名に嫌味をこめて返信しました。
「平山良子殿」
因みに啄木が受け取った写真の人物は祇園でナンバーワンの芸者でした。美しいはずですよね。