今日の「お気に入り」は、久世光彦さん(1935-2006)のエッセー「夕暮れの町にたたずんで」より。
「昔もいまも、都心から離れた住宅街に棲んでいる。昔――昭和十年代は杉並の阿佐ヶ谷、いまは東玉川である。いずれも住宅が建ちはじめたころは、新興住宅街と呼ばれていたところである。似たような洋風の造りの家が数軒並んでいたり、露地へ入る角に小さな煙草屋があったり、界隈でいちばん瀟洒な建物は歯医者の家だったり、半世紀以上も経っているのに、秋の日暮れの風景なんか、びっくりするくらい似ている。だから、いま棲んでいる家を、私はたいそう気に入っている。」
(久世光彦著「むかし卓袱台があったころ」ちくま文庫 所収)
「昔もいまも、都心から離れた住宅街に棲んでいる。昔――昭和十年代は杉並の阿佐ヶ谷、いまは東玉川である。いずれも住宅が建ちはじめたころは、新興住宅街と呼ばれていたところである。似たような洋風の造りの家が数軒並んでいたり、露地へ入る角に小さな煙草屋があったり、界隈でいちばん瀟洒な建物は歯医者の家だったり、半世紀以上も経っているのに、秋の日暮れの風景なんか、びっくりするくらい似ている。だから、いま棲んでいる家を、私はたいそう気に入っている。」
(久世光彦著「むかし卓袱台があったころ」ちくま文庫 所収)