「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2013・09・15

2013-09-15 07:50:00 | Weblog
今日の「お気に入り」は、久世光彦さん(1935-2006)のエッセー「夕暮れの町にたたずんで」より。

「昔もいまも、都心から離れた住宅街に棲んでいる。昔――昭和十年代は杉並の阿佐ヶ谷、いまは東玉川である。いずれも住宅が建ちはじめたころは、新興住宅街と呼ばれていたところである。似たような洋風の造りの家が数軒並んでいたり、露地へ入る角に小さな煙草屋があったり、界隈でいちばん瀟洒な建物は歯医者の家だったり、半世紀以上も経っているのに、秋の日暮れの風景なんか、びっくりするくらい似ている。だから、いま棲んでいる家を、私はたいそう気に入っている。」

(久世光彦著「むかし卓袱台があったころ」ちくま文庫 所収)

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