2週間ほど前のマスコミ報道では、「セルビア・モンテネグロ」から「モンテネグロ」
が、独立を問う国民投票の結果、分離独立することになったと報じていました。僕も
それに便乗してブログネタとしました。
「世界週報」でもまず間違いなく記事になるはず、とにらんでいましたところ、早速、
6/13号で特集が編まれていました。
その中の記事の一つをお書きになった東大教授の柴宣弘氏によると、
まず、
①何故分離独立を達成できたのか?
『与党勢力である「独立派」は、モンテネグロがユーロを通貨として、近年はセルビ
アより一人当たりの国内総生産が200ユーロほど高く2638ユーロであること、
インフレ率も2%で18%のセルビアよりかなり低く、失業率も19%でセルビアよ
り8%もポイントが低いことを挙げて、経済的な自立状態を国民に訴えかけ、これが
功を奏した』
『「独立派」はセルビアから離れた方がEUとの関係を推進できるといったムードを作
り上げ、これも功を奏した』
『国外にいるモンテネグロ出身者が大量に故郷に帰り、独立ムードを盛り上げ、独立賛
成票に大きく作用した』
といういくつかの運動の相乗効果で、有権者の投票行動が独立へと流れていった、と
いうことが言えるらしいです。
十数年前からの旧ユーゴスラビアの解体に際して、数々の無差別暴力手段を働いたセ
ルビアの民兵組織も、EUやNATOの圧力の前では、平和裏に国民投票をさせざる
を得なかったので、結果、旧ユーゴスラビアを構成した共和国間での最後の分離が、
穏便に決定された、と言えると思います。
ではそもそも、
②何故分離独立をしなければならなかったのか?
この疑問に対し、柴氏は明確には述べておられません。上に書いた様に、「セルビア」
より「モンテネグロ」の方が、わずかに豊からしいのですが、だからと言って、数十年
一緒にやってきた、ほぼ同じ宗教・文化・価値観を持った、民族同士です。それでも
あえて、袂を分かつほどの何かがあったとでもいうのでしょうか?
スロベニア人やクロアチア人が、セルビア人と離れたい気持ちは判らなくもありませ
ん。元々、文字や宗教・風俗が違うのですから。でも、モンテネグロ人とセルビア人
は、ほとんど同じ価値観・生活風習を持っているはずです。それが何故、分離独立な
のでしょうか?
やはり、5/22のブログでも述べた様に、現在、東ヨーロッパとバルカン半島では、地
域間や民族間に遠心力が強烈に働いていて、傍からみるとほんの少ししか異なってい
ないと思われる様なエスニックグループでさえも、それぞれのグループごとにおのお
の民族国家を標榜するべき、との流れが出来上がっている様です。例えば、チェコと
スロバキアの様に。または、ロシアとベラルーシの様に。
さらに
③今後の2国間関係と周辺への影響は?
まず、2国間関係の今後について柴氏は以下の様に述べておられます。
『モンテネグロの独立後、セルビアはセルビア・モンテネグロの継承国家として国連
や国際機関の議席を確保し、セルビア・モンテネグロ軍を継承することになる。これ
に対して、モンテネグロは近隣諸国の承認を得た後、国際機関への加盟をすべて申請
しなければならない。在外公館などの両国の共有資産の相続交渉と並んで、海への出
口をなくしたセルビアにとって重要なのは、セルビア・モンテネグロ海軍とアドリア
海へのアクセス権の問題である。恐らく、モンテネグロはセルビアで生活するモンテ
ネグロ人やベオグラード大学などで学ぶ学生、セルビアの病院などの施設にいるモン
テネグロ人の保護と引き換えに、アクセス権をセルビアに認めるものと思われる』
次にこの地域に与える影響を、
『(この)分離は93年1月のスロバキアとチェコの合意によるチェコ・スロバキア
の解体と同様に、セルビアとの合意による「ビロード離婚」といえる。今後、言語・
宗教・文化を共有する両国がチェコとスロバキアのように、主権国家として安全保障
や経済の観点から積極的な協力関係を築いていければ、むしろ連合国家の解体がこの
地域の安定化にプラスに働く可能性がある』と述べておられます。
さらにモンテネグロのすぐ隣、セルビア領内の「コソヴォ自治州」の独立問題への影響
については、
『モンテネグロの独立に対して、コソヴォ政府代表団は歓迎の意を表し、コソヴォも
モンテネグロと同じ道を進むといったコメントを出した。一方、セルビア政府代表団
は、コソヴォの問題とモンテネグロの独立とは別問題であり、~』との事実の元で、
『モンテネグロの独立がコソヴォの独立を進めるアルバニア人の追い風になることは
大いに考えられる』
しかし、さらに
『問題は、少数者としてコソヴォに点在しているセルビア人をいかに保護するのかで
あり、この問題を中心として地方分権・セルビア人難民避難民の帰還・文化財の保護
などを議論~』
していく必要があること、
こうした民族国家の乱立が、
『ヨーロッパにおいて62万人の小国が独立したことは、スペインで分離・独立運動
を進めるバスクやカタルーニャ地方、モルドバからの独立を求めるトランスドニエス
トル地方にも反響を呼んでいる』
と、周辺地域への波紋についても書いておられました。
僕が聞き及んでいる範囲でも、旧ユーゴスラビア諸国の中の一つ、クロアチアの中で、
セルビア人が多く居住している「スラボニア」地域の帰属を、セルビアとクロアチア
両国が、平和裏に交渉できるのか否か、さらにその中の「東スラボニア」「西スラボ
ニア」それぞれが、モスレム人も含めた微妙な民族構成比率を保ちつつ、安定した地
域社会を形成していけるのかどうか、等々、まだまだ数多くのモメゴトの種を抱えて
おり、全く持って、バルカン半島という地域のナーバスさ加減を、今回の一連の分離
独立の報道から、改めて感じ入っている次第です。
それと、完全に蛇足ではありますが、「スロバキア」「スロベニア」「スラボニア」
「セルビア」という国名・地域名は、全て「スラブ」という言葉に端を発しており、
「スラブ人の土地」という意味を含んでいるのだそうです。
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または、TEL:0942-34-1387 へお願い致します。
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円筒形状機械部品のクロムめっき再生が得意です。
● 窒化クロム・窒化チタンアルミ・酸化クロム・窒化チタンクロム・
窒化チタン他、各種高硬質被膜をアークイオンプレーティングで
生成します。
● ローター・ファン・クランクシャフト等のバランシング(回転体釣合せ)
● ラジアルクラウン研削を始めとした円筒研削加工や、内面研削・
平面研削も行います。
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その中の記事の一つをお書きになった東大教授の柴宣弘氏によると、
まず、
①何故分離独立を達成できたのか?
『与党勢力である「独立派」は、モンテネグロがユーロを通貨として、近年はセルビ
アより一人当たりの国内総生産が200ユーロほど高く2638ユーロであること、
インフレ率も2%で18%のセルビアよりかなり低く、失業率も19%でセルビアよ
り8%もポイントが低いことを挙げて、経済的な自立状態を国民に訴えかけ、これが
功を奏した』
『「独立派」はセルビアから離れた方がEUとの関係を推進できるといったムードを作
り上げ、これも功を奏した』
『国外にいるモンテネグロ出身者が大量に故郷に帰り、独立ムードを盛り上げ、独立賛
成票に大きく作用した』
といういくつかの運動の相乗効果で、有権者の投票行動が独立へと流れていった、と
いうことが言えるらしいです。
十数年前からの旧ユーゴスラビアの解体に際して、数々の無差別暴力手段を働いたセ
ルビアの民兵組織も、EUやNATOの圧力の前では、平和裏に国民投票をさせざる
を得なかったので、結果、旧ユーゴスラビアを構成した共和国間での最後の分離が、
穏便に決定された、と言えると思います。
ではそもそも、
②何故分離独立をしなければならなかったのか?
この疑問に対し、柴氏は明確には述べておられません。上に書いた様に、「セルビア」
より「モンテネグロ」の方が、わずかに豊からしいのですが、だからと言って、数十年
一緒にやってきた、ほぼ同じ宗教・文化・価値観を持った、民族同士です。それでも
あえて、袂を分かつほどの何かがあったとでもいうのでしょうか?
スロベニア人やクロアチア人が、セルビア人と離れたい気持ちは判らなくもありませ
ん。元々、文字や宗教・風俗が違うのですから。でも、モンテネグロ人とセルビア人
は、ほとんど同じ価値観・生活風習を持っているはずです。それが何故、分離独立な
のでしょうか?
やはり、5/22のブログでも述べた様に、現在、東ヨーロッパとバルカン半島では、地
域間や民族間に遠心力が強烈に働いていて、傍からみるとほんの少ししか異なってい
ないと思われる様なエスニックグループでさえも、それぞれのグループごとにおのお
の民族国家を標榜するべき、との流れが出来上がっている様です。例えば、チェコと
スロバキアの様に。または、ロシアとベラルーシの様に。
さらに
③今後の2国間関係と周辺への影響は?
まず、2国間関係の今後について柴氏は以下の様に述べておられます。
『モンテネグロの独立後、セルビアはセルビア・モンテネグロの継承国家として国連
や国際機関の議席を確保し、セルビア・モンテネグロ軍を継承することになる。これ
に対して、モンテネグロは近隣諸国の承認を得た後、国際機関への加盟をすべて申請
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海へのアクセス権の問題である。恐らく、モンテネグロはセルビアで生活するモンテ
ネグロ人やベオグラード大学などで学ぶ学生、セルビアの病院などの施設にいるモン
テネグロ人の保護と引き換えに、アクセス権をセルビアに認めるものと思われる』
次にこの地域に与える影響を、
『(この)分離は93年1月のスロバキアとチェコの合意によるチェコ・スロバキア
の解体と同様に、セルビアとの合意による「ビロード離婚」といえる。今後、言語・
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さらにモンテネグロのすぐ隣、セルビア領内の「コソヴォ自治州」の独立問題への影響
については、
『モンテネグロの独立に対して、コソヴォ政府代表団は歓迎の意を表し、コソヴォも
モンテネグロと同じ道を進むといったコメントを出した。一方、セルビア政府代表団
は、コソヴォの問題とモンテネグロの独立とは別問題であり、~』との事実の元で、
『モンテネグロの独立がコソヴォの独立を進めるアルバニア人の追い風になることは
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しかし、さらに
『問題は、少数者としてコソヴォに点在しているセルビア人をいかに保護するのかで
あり、この問題を中心として地方分権・セルビア人難民避難民の帰還・文化財の保護
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こうした民族国家の乱立が、
『ヨーロッパにおいて62万人の小国が独立したことは、スペインで分離・独立運動
を進めるバスクやカタルーニャ地方、モルドバからの独立を求めるトランスドニエス
トル地方にも反響を呼んでいる』
と、周辺地域への波紋についても書いておられました。
僕が聞き及んでいる範囲でも、旧ユーゴスラビア諸国の中の一つ、クロアチアの中で、
セルビア人が多く居住している「スラボニア」地域の帰属を、セルビアとクロアチア
両国が、平和裏に交渉できるのか否か、さらにその中の「東スラボニア」「西スラボ
ニア」それぞれが、モスレム人も含めた微妙な民族構成比率を保ちつつ、安定した地
域社会を形成していけるのかどうか、等々、まだまだ数多くのモメゴトの種を抱えて
おり、全く持って、バルカン半島という地域のナーバスさ加減を、今回の一連の分離
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