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東京都宛仮設住宅間の転居に関する要望書

2013年04月24日 16時51分00秒 | とすねっとの要望書

PDF→ http://goo.gl/4evRv

 

            要 望 書
 
                  とすねっと要望書第36号
                   平成25年 4月24日
東京都知事 猪瀬直樹 殿
 
            東京災害支援ネット(とすねっと)
            代 表(弁護士)  森 川   清 
              (事務局)
         東京都豊島区駒込 1- 43- 14 SK90 ビル 302
         森川清法律事務所内 (連絡先電話)080-4322-2108
 
 
第1 要望の趣旨
1  東京都は、別紙世帯目録記載の世帯について、当該世帯の規模からみて適切な東京都内の他の応急仮設住宅(いわゆる「みなし仮設住宅」)への転居を認めてください。
2  東京都は、都内の応急仮設住宅に避難する方に対して、①世帯員の増加などの事情で、世帯人数からみて狭隘な住宅でないか、②世帯員の就業場所への交通の便、保育、教育、治療、介護等の需要の変化がないか、を調査して、転居することが避難世帯の環境改善ないし生活向上に資する場合には、他の応急仮設住宅への転居を促し、これを認めてください。
 
第2 要望の理由
1  東京都は、平成24年12月31日以降、応急仮設住宅間の転居を全く認めていないと聞いています。しかし、そもそも仮設住宅間の移動を認めないとする法的根拠はありません。
確かに、これまでも長い間、応急仮設住宅間の移動を認めないとする運用が行われ来ました。しかし、東日本大震災においては、広域かつ甚大な被害であったことを鑑み、国は、平成23年5月18日、「東日本大震災に係る応急仮設住宅等について」(厚生労働省社援総発第0518第1号)において、「県外など遠方の応急仮設住宅等に一時的に入居されている方々について、避難者の具体的事情を勘案し、県がやむを得ないと認める場合には、地元の応急仮設住宅への入居を認めることとして差し支えない。」と通知し、仮設住宅間の移動を認めています。
さらに、政府見解では、「東日本大震災については、被害が甚大で広範囲にわたったため、遠方の応急仮設住宅に入居せざるを得なかった被災者がいたこと等の事情に鑑み、岩手県、宮城県又は福島県において、被災者の具体的事情を勘案した上で、やむを得ないと認める場合には、現に応急仮設住宅に入居している被災者が他の応急仮設住宅に転居することを認めて差し支えないと考えている。」(秋葉賢也衆議院議員の質問に対する野田佳彦内閣総理大臣の平成24年5月18日付け答弁書)とされており、上記通知にある「地元仮設住宅へ」という制限がありません。
加えて、実務においては、より広く、避難先の仮設住宅間の移動も事実上認められています。福島県では、みなし仮設住宅である借上げ住宅について、平成23年6月、生活再建や居住環境の改善のために転居の必要があった場合、一度に限り、他のみなし仮設住宅(借上げ住宅)または建設型の仮設住宅に住み替えることができることを発表し、「住み替えの事務フロー」をホームページ上に掲載し、一般的に住み替えを認めています。また、報道によれば、山形県でも、平成23年9月10日、福島県からの借上げ住宅に避難している避難者について、(1)健康上の理由、(2)契約を更新しないなど家主の都合、(3)入居者が著しく多くなり生活に支障が出る、(4)その他避難者に著しい不利益または危険が生じるといった事情のある場合には、借上げ住宅の住み替えを認めるとの基準を定め、現に住み替えを認めています。
また、平成24年3月31日まで「避難所」とされてきた雇用促進住宅については、同日まで他のみなし仮設住宅への入居が認められていたことになります。しかし、雇用促進住宅も公務員宿舎も集合住宅という点では異なるところはありません。みなし仮設住宅間の移動を認めないことは、過去の雇用促進住宅の扱いと比較して、極めて不公平な結果となります。
また、避難世帯が応急仮設住宅以外に住む家を求めることは経済的に困難であることを考えれば、応急仮設住宅間の移動を認めない東京都の姿勢は、法的根拠がない「運用」によって、憲法22条1項で保障されている居住の自由に事実上制限を加えることにもなりかねず、決して好ましいものではありません。住み替えによって避難世帯の環境改善ないし生活向上に資する場合にまで、頑なに応急仮設住宅間の移動を認めないことは、上記の憲法上の要請に反するおそれが大きいといわざるをえません。
したがって、各都道府県知事は、避難世帯が入居する応急仮設住宅について、住居の狭隘であったり、世帯員の就業場所への交通の便、保育、教育、治療、介護等の事情の変化が生じたりしたことにより、転居することが避難世帯の環境改善ないし生活向上に資する場合には、他の応急仮設住宅への転居を柔軟に認めるべきです。
2  東京都は、当該世帯に対し、仮設間の移動を認めない根拠として、福島県の要請がないと説明をしているようですが、福島県の要請は要件ではありません。確かに、平成24年12月3日福島県は、平成24年末をもって、各都道府県に対して、新規の避難者に対する応急仮設住宅の受付を停止するよう要請していますが、応急仮設住宅入居者の移動について、これを認めないことを要請しているものではありません。むしろ、帰還支援として、県外避難者に対しての県内の借上げ住宅への転居を推進するなど、既に応急仮設住宅に入居している方の他の仮設住宅間への移動を否定していません。
したがって、応急仮設住宅の新規受付を停止するという福島県の要請は、転居を認めない根拠とはなりません。
3  さらに、当該世帯については、特別の事情が勘案されなければなりません。
 東日本大震災が甚大広域な被害であること、これに加えて東京電力原子力事故は収束の目処すら立っていないことなどから、これまでの大規模震災に比して格段に、世帯員の就業場所への交通の便、保育、教育、治療、介護等の事情で、仮設住宅を転居する必要に迫られることがあります。また、長期化する避難生活中に、世帯員の増員することも当然ありえます。
 そもそも、応急仮設住宅の床面積は一戸あたり29.7㎡を基準としていますが、当該世帯が居住する国家公務員宿舎東雲住宅の単身世帯用1Kの居室は上記の基準に達していません。当該世帯は、この単身用住宅に多人数世帯が居住せざるを得ない状況にあります。にもかかわらず、転居を認めないのであれば、被災者に対し必要な救助を行い、保護するという災害救助法の目的(災害救助法1条参照)が達成できず、不合理な行政対応と言わざるをえません。
 当該世帯の厳しい生活の状況をみれば、生活再建や居住環境の改善のために他の適切な住居に転居する必要があることは明らかであるという点で、前記福島県のみなし仮設住宅の住み替えの要件を充たしています。また、居室の広さに比べて入居者が多く、生活に支障が出ており、避難者に著しい不利益が生じていることも明らかなので、前記山形県のみなし仮設住宅の住み替えの要件も充たしています。本件は福島県や山形県では住み替えの要件を充たしている事例であることを考えても、当該世帯の住み替えを認めないとする東京都の対応には合理性を認めることができません。
 以上のとおり、当該世帯が入居している応急仮設住宅は避難者の数に比べて狭隘であって、より広い住宅に転居することが避難世帯の環境改善ないし生活向上に資することは明らかなので、東京都は、速やかに、他の応急仮設住宅への転居を柔軟に認めるべきです。
4  ところで、驚愕すべきは、当該世帯の生活の実態です。当該世帯は、被災地では普通に7人の家族で助け合いながら生活していました。しかし、福島原発事故が起き、居住地は緊急時避難準備区域に指定され、避難先を転々としました。その過程で、父及び祖母並びに成人した2人の子どもは、それぞれ別の仮設住宅に避難することを余儀なくされたため、1つの家族が5世帯に分離させられています。そのあげく、東雲住宅に避難する母と高校に就学する2人の未成年者からなる世帯は、1Kの東雲住宅に2組の布団に3人で就寝するという通常あり得ない生活を余儀なくされています。
 しかも、家族で暮らせる他のみなし仮設住宅に転居させてほしいとの当該世帯の切実な要請に対し、東京都は、ことごとくこれをはねつけられています。さらに、東京都の上記の対応により、当該世帯は、都外に離ればなれに避難している母や長男と合流することも事実上できなくなり、家族の分断は固定化されています。
なお、当該世帯の事情及び状況は、次のとおりです。
 
===具体的事情は省略===
 
 避難者の「救助に万全を期す」(災害救助法22条)べき東京都知事として、このような異常な状況を放置することはできないはずです。
5 以上より、当該世帯の環境改善及び生活向上の必要があるのですから、東京都は、まず、当該世帯が直ちに人間らしい生活ができる環境の仮設住宅に転居できるようにしてください。
 さらに、東京都は、ニーズ調査をして、現在居住する仮設住宅について、狭隘、就業場所への交通の便、保育、教育、治療、介護等の需要の変化その他の事情があって、他のみなし仮設住宅への転居が適切であると考えられる世帯がある場合には、人間らしい生活ができる環境の仮設住宅に転居できるように支援してください。
                                   以上
 
世帯目録
 
====省略====
 

【集会宣言】動き出そう!第2回3・20広域避難者集会 in 東京

2013年03月20日 23時30分34秒 | とすねっとの要望書

平成25年3月20日に開催しました「動き出そう!第2回3・20広域避難者集会 in 東京」において採択された集会宣言です。

 

集会宣言

 東京電力の福島原発事故から2年がたちました。

 今も、福島県、栃木県などの幅広い地域が、放射能によって汚染され、その空間放射線量は高いままです。また、福島第1原発4号機などの使用済み核燃料プールも不安定で、停電や地震などをきっかけとして臨界事故が起きる可能性があります。

 被ばくや事故の危険から逃れるため、15万人以上が全国各地に広域避難を続けています。しかし、避難者や放射能汚染地域の住民に対する公的な支援は十分ではありません。原発事故子ども・被災者支援法は昨年6月に成立しましたが、支援の前提となる基本方針の策定はストップしたまま。逆に、高速道路の有料化や、新しく避難する人に対する住宅の提供の打切りなど、支援の打切りが進んできました。

 こうした状況の中、昨年の広域避難者集会では、区域外の避難者・住民に対する高速道路の無料措置の継続を求める声が上がり、これをきっかけとして無料措置を求める動きが全国に広がりました。政府は、今月15日、ついに一部の区域外避難者に対して無料措置を再開するとの発表を行いました。1年間にわたって署名活動、集会や申入れを行い、動き続けたことで、重い扉が少し開いたのです。

 原発事故が起きた責任は、政府と東京電力にあります。半恒久的な避難住宅の提供、国による健康・被ばく検査、医療費の公費負担、避難先での住民並みサービスの拡大など、支援の扉はもっと大きく開かせなければなりません。東京電力の不十分で頑な賠償の姿勢も、裁判に追い込むことで、改めさせなければなりません。十分な支援と賠償を実現させるためには、ひとりひとりが、政府やマスコミ・一般市民に対して働きかけを強めていく必要があります。

 きょうは、避難世帯の皆さんから、たくさんの声が上がりました、次は動き出す番です。来月には政府に要望書を提出します。黙っていては何も変わりません。みんなで一緒に、動き出しましょう!

                           平成25年3月20日

       「動き出そう!第2回3・20広域避難者集会in東京」参加者一同


【要望書】原発事故賠償の時効問題に関する要請書

2013年03月16日 12時11分36秒 | とすねっとの要望書

平成25年3月12日付で、内閣府、東京電力、原子力損害賠償支援機構宛執行しました。


原発事故賠償の時効問題に関する要請書

 

平成25年3月12日

 

内閣総理大臣 安倍晋三 殿

東京電力株式会社 代表執行役社長 廣瀬 直己 殿

原子力損害賠償支援機構 理事長 杉山武彦 殿

 

東京災害支援ネット(とすねっと)

代表 弁護士 森 川  清

(事務局) 〒170-0003東京都豊島区駒込1-43-14

SK90ビル302森川清法律事務所

TEL0120-077-311  FAX03-6913-4651

 

要請の趣旨

1 東京電力及び原子力損害賠償支援機構に対し,時効の起算点,中断事由を表明した特別事業計画を撤回し,時効主張をすることはないことを表明することを求める。

2 主務大臣(内閣府機構担当室及び経済産業省資源エネルギー庁)に対し,特別事業計画認定の取消を求める。

3 政府に対し,閣法で,原発事故による損害賠償については民法の時効規定を適用しないとする特別法の制定を求める。

 

要請の理由

1 政府は,2013年2月4日,東京電力株式会社及び原子力損害賠償支援機構が提出していた原子力損害賠償支援法46条1項に基づいて申請した総合特別事業計画の変更を認定した。そして,東京電力は,同日,「原子力損害賠償債権の消滅時効に関する弊社の考え方について」と題する見解を発表した。

 これらによれば,福島第一原発事故(以下「本件原発事故」という。)に関する損害賠償請求について,「中間指針等に基づき賠償請求の受付をそれぞれ開始した時」を起算点とし,「請求を促す各種のダイレクトメールや損害額を予め印字する等した請求書を受領した時点」を時効中断事由とし,再び時効期間が開始するとしている。

2 本件原発事故による被害は,財産的損害のみならず,社会経済生活,生まれ育ったコミュニティ・地域社会の破壊,放射能による健康被害の危険など,広範かつ多種・多様なもので,未だにその全貌が明らかでなく,その収拾の見通しすら立っていない。

 ところが,加害企業である東京電力は,加害者であるにもかかわらず,自ら策定した賠償基準に固執し,被害者らに押しつけ,被害者の要求を拒み続けた。原子力損害賠償紛争解決センターも裁定機能がないことなどが影響して,解決が遅々と進まない状況にある。

 こうしたなかでの今回の東京電力及び原子力損害賠償支援機構の動きは,本件原発事故の加害者が自ら時効の起算点を設定し,援用することを宣言したに等しい。

 これは,自らの被害の全体像を把握していない被害者に対して,「時効」で動揺させ,自ら定めた低額な賠償基準による解決を押しつけようとするものであり,到底許されるものではない。また,今後,訴訟等の手続において東京電力から消滅時効の主張がなされることになれば,争点が余計に増えることとなり,訴訟手続の遅延を招き,被害救済を遅らせることとなる。

 総合特別事業計画の変更を申請した東京電力及び原子力損害賠償支援機構,これを認可した政府は,被害者を切り捨てることを表明したに等しい。

 東京電力らは,民法146条を盾に時効利益の事前放棄は出来ないとしている。しかし,そもそも本件原発事故は終結しておらず,損害の全体像が明らかとなっていない現状では,時効期間は進行していないのであり消滅時効の主張はしないと表明すれば足りるはずであるし,本件原発事故の被害の特質や加害企業である東京電力の悪質性からすれば消滅時効の主張自体が信義則に反するのである。また,立法で民法146条の例外として時効利益の事前放棄を認める特別法を制定するよう東京電力及び原子力損害賠償支援機構は働きかけをすべきである。

 なお,東京電力の現会長は,東京弁護士会の元会長であり,原子力損害賠償支援機構には日本弁護士連合会の推薦で元事務総長が理事となっていることは,両者において最後まで被害救済を行なう姿勢を堅持する指導的役割が期待される。

3 よって,本件原発事故による被害者をひとりでも切り捨てないためにも,東京電力及び原子力損害賠償支援機構に対し,時効の起算点,中断事由を表明した特別事業計画を撤回し,時効主張をすることはないことを表明することを求める。また,主務大臣(内閣府機構担当室及び経済産業省資源エネルギー庁)に対し,認定の取消を求める。そして,原発事故による損害賠償については民法の時効規定を適用しないとする特別法の制定を求める。

以上


【要望書】会津若松市教育委員会に、公立小中学校就学拒否問題についてさらなる意見書を提出しました

2012年12月08日 13時47分35秒 | とすねっとの要望書

 区域外避難者の公立小中学校の就学拒否問題について、会津若松市教育委員会に対してさらなる要望書を提出しました。

公立小中学校での就学拒否についての要望書

 

とすねっと要望書第32号

平成24年12月8日

会津若松市教育委員会 殿


              東京災害支援ネット(とすねっと)
                代 表   森 川   清 

              (事務局)
              東京都豊島区駒込 1- 43- 14 SK90 ビル 302

               森川清法律事務所内 (連絡先電話)080-4322-2108


 私たちは、東日本大震災の被災者及び福島原発事故の被害者の支援をしている法律家と市民等のグループです。御庁に対しては、平成24年10月29日、意見書を提出し、原発事故の区域外避難者が会津若松市内の公立小中学校等に就学することを認めることなどを求めました。

 その後、御庁は、同年11月28日に視聴が記者会見をし、福島県が原発事故の区域外避難者(政府から避難等の指示が出ている区域の外の地域から避難している方々をいう。いわゆる「自主的避難者」。以下同じ)に対する民間借上げ住宅を通じた家賃補助を開始したことから、民間借上げ住宅の適用を受けた区域外避難者のみを対象に公立小中学校での就学を認めることとしました。しかし、この対応は、児童・生徒の就学機会を確保する観点において、全く不十分であることから、再度、下記のとおり要望いたします。

第1  要望の趣旨

 1 民間借上げ住宅の適用を受けない原発事故の区域外避難者についても会津若松市内の公立小中学校に就学することを認めるよう求める。

 2 これまで御庁が就学を拒否した避難者全員に対して、速やかに就学を認める旨の通知を発するよう求める。

 3 御庁が就学を拒否したことにより、私立学校など、会津若松市立でない学校への就学を余儀なくされた世帯に対しては、入学金・授業料、通学定期代等の就学に関する費用の全額を損害賠償として支払うよう求める。


第2 要望の理由

御庁に対して、御庁が就学を拒否した避難者に対して就学を求める概括的な理由は、平成24年10月29日付け意見書のとおりですが、本要望に当たり当団体では避難者から事情を聴取するなどしており、そのことを踏まえて以下のとおり理由を付加します。

1 「特別な事情」についての解釈の誤り

  御庁は当団体に対して区域外避難者の就学を拒否する理由として住民登録を異動できない事情が、DVのような「特別な事情」に当たらないと説明しました。しかし、文部科学省の「公立小学校・中学校における学校選択制等についての事例集 3.区域外就学」によれば、児童が実際に当市町村に居住していることを前提条件として、教育委員会は児童の教育を受ける権利を保障するため就学を最優先に考えるべきであることが示唆されています。あくまで住民票を異動できない理由は「特別な事情」の一要素にすぎず、教育を受ける権利から制約的に検討されるべきものです。多くの区域外避難者はいつまで続くかわからない中での母子だけで一時的に避難をしており、地元に残っている父及びその他の世帯員と離ればなれの生活を余儀なくされていることからすれば、就学のために住民登録の異動を事実上強制することは、あまりに非人道的な対応と言わざるを得ません。

2 民間借上げ住宅対象者について「特別な事情」を認めていること

御庁は、今回、民間借上げ住宅の適用を受けた区域外避難者のみを対象に公立小中学校での就学を認めることとしました。しかし、多くの区域外避難者は会津若松市に避難するために住宅を借りようとしても、すでに政府から避難等の指示が出ている区域からの避難者のために民間借上げ住宅の適用の対象となる月額6万円以下の家賃の住宅が確保されていたため、同様の住宅を借りることが困難でした。よって、このままでは、区域外避難者の多くが、民間借上げ住宅の適用を受けられなくなり、ひいては御庁によって公立小中学校での就学を拒否されることとなります。

御庁のしていることは、月額家賃6万円を超える賃貸住宅に居住する区域外避難者と月額家賃6万円以下の賃貸住宅に居住する区域外避難者とを差別的に取り扱うものであって、これが日本国憲法14条1項、26条1項に違反することは明らかです。

また、御庁が否定する「特別な事情」について、月額家賃6万円を超える賃貸住宅に居住する区域外避難者と月額家賃6万円以下の賃貸住宅に居住する区域外避難者において相違がないことも明らかです。

区域外避難者は、避難のために家賃や二重生活の生活費の増加の負担を強いられています。さらに、違憲というべき御庁による公立小中学校への就学拒否によって、私立学校での学費負担が重くのしかかります。

3 このようなことが許されるべきではなく、当団体は要望の趣旨のとおりの要望をします。御庁は即刻対応を改めてください。

                                 以上


羽田国交相へメッセージを送り 、高速道路無料措置を復活させよう

2012年11月08日 08時22分34秒 | とすねっとの要望書

平成24年11月6日

 

原発事故で警戒区域等の外から避難されているみなさま

原発事故で週末や長期休暇を利用した一時避難を考えているみなさま

 

東京災害支援ネット(とすねっと)

代表 弁護士  森 川   清

 

「羽田国交相へメッセージを送り 、高速道路無料措置を復活させよう」作戦

 

 

朝夕冷え込む季節になりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

さて、ご承知のとおり、今年3月末で原発事故の区域外避難者等に対する高速道路の無料措置が打ち切られました。

これは避難世帯の親子の絆を破壊し生活費増を強いるものであり、とすねっとでは無料措置の復活に向けて署名運動や集会等を行ってまいりました。

この問題について、羽田国土交通大臣は10月19日の記者会見で高速道路の無料措置について対象拡大(復活)を検討することを明らかにしました。

「(無料対象が一部であることに)私もこのまま放置しているつもりはありません。やはり子供達は、なるべく遠くに行って、お父さんが福島県内で働いていて週末会いたい、というご希望もあるというようなお話も伺っております。」「私としては何とかしてあげられないのかなという想いは強く持っておりまして、復興大臣と調整ができればいいなと思っております。」

羽田大臣は、区域外避難者等の高速無料措置の復活に「チャレンジしていきたい」と言っているそうです。しかし、まだ実現を約束したわけではありません。あと、ひと押しが必要です。

今こそ、子どもも大人も、みんなそろって、大臣に無料化の早期実現を改めて訴えようではありませんか。

みなさまの声こそが、腰の重い政治を変えると思います。

とすねっとでは、みなさまの声を取りまとめ11月下旬に羽田大臣へ手渡す予定です。羽田大臣へのメッセージを、下記まで郵送もしくはFAXいただけますよう是非お願いいたします。

 

1.しめきり   11月21日(水)必着

 

2.送り先

(1) FAXの場合

03-6913-4651(とすねっと事務局)

(2) 郵送の場合

〒170-0003

東京都豊島区駒込1-43-14  SK90ビル302

森川清法律事務所内 とすねっと事務局

 

3.メッセージの書きかた

・書式はなんでも構いません。紙に書いてくださいますようお願いいたします。

・お手数ですが、ご家族ひとりひとり1枚ずつのメッセージをお願いいたします

・メッセージには、氏名、連絡先、避難元の市町村名、避難先の都道府県名、おおよその年齢(中学生、40代など)、性別を添えてください。

 

4.使用方法

・メッセージ本文は、政府・大臣・政党・議員への申し入れ、マスコミやFBで公表します。

・政府・大臣等に提出する際に、名前を出したくない方は「匿名希望」と書いてください。

・メッセージ本文の公表に際しては、避難元の市町村名、避難先の都道府県名、おおよその年齢、性別についてのみ公表させていただきます。

 

【意見書】区域外避難児童の就学について(会津若松市教育委員会あて)

2012年10月29日 10時53分12秒 | とすねっとの要望書

会津若松市教育委員会が、転入届を出さない区域外避難者児童の就学を認めない件について、同教育委員会宛に意見書を執行しました。

 

平成24年10月29日

会津若松市教育委員会 殿

 

              東京災害支援ネット(とすねっと)
                代 表   森 川   清 (弁護士)

              (事務局)
              東京都豊島区駒込 1- 43- 14 SK90 ビル 302

               森川清法律事務所内 (連絡先電話)080-4322-2108

 

意 見 書

 

 私たちは、東日本大震災の被災者及び福島原発事故の被害者の支援をしている法律家と市民等のグループです。平成24年10月24日付け「河北新報」の記事(以下、「本件記事」という。)において報道された、御庁が会津若松市に転入届を提出しない原発事故の区域外避難者(政府から避難等の指示が出ている区域の外の地域から避難している方々をいう。いわゆる「自主的避難者」。以下同じ)の就学を拒否しているとの事実に関し、児童・生徒の就学機会を確保する観点から、下記のとおり意見を述べます。

 

第1  意見の趣旨

 1 本件記事が事実であれば、従前の取扱いを直ちに改め、原発事故の区域外避難者が会津若松市内の公立小中学校等に就学することを認めるよう求める。

 2 これまで御庁が就学を拒否した避難者全員に対して、速やかに就学を認める旨の通知を発するよう求める。

 3 御庁が就学を拒否したことにより、私立学校など、会津若松市立でない学校への就学を余儀なくされた世帯に対しては、入学金・授業料、通学定期代等の就学に関する費用の全額を損害賠償として支払うよう求める。

 

第2 意見の理由

 文部科学省の平成23年3月14日付通知「平成23年東北地方太平洋沖地震における被災地域の児童生徒等の就学機会の確保等につい て」(以下、「文科省通知」という。) によれば、被災した児童生徒等の就学の機会を確保する等の観点から、当該児童生徒等に係る事務の取扱い等に当たり、被災した児童生徒等が域内の公立学校への受入れを希望してきた場合には、可能な限り弾力的に取り扱い、速やかに受け入れることとしております。

 これは、未曾有の災害により、多大な困難を抱えた被災地域の児童生徒等の就学の機会を最大限確保するため、受入れ対象を可能な限り広くした上で、できる限り弾力的な受入れを行うよう、各教育委員会等に求めるものです。

 現在、被災した生徒等やその家族等の多くは、今後の生活の目途が立たないまま、予測ができない極めて不安定な状況下での避難生活を余儀なくされており、かかる状況は、今後も相当期間続くことが予想されます。当然ながら、今後、どこでどのようにして生活するかは、多くの被災者にとって未だ見通しの立たないことがらです。

 これは、区域外避難者にとっても同じことです。避難区域の外であっても、空間放射線量が通常より高かったり、4号機の状態などから明らかなように万全な状況とはいえない福島第1原発に比較的近い所に居住していたりすることから、区域外でも避難をする人が多く、その一部は会津地方に避難しています。区域外からの避難もやむをえない行動として社会的に認められており、公的な支援の対象とすべきことは、今年6月に制定された原発事故子ども被災者支援法1条の趣旨からも明らかです。

 しかし、本件記事によれば、御庁は転入届を提出しない約30人に及ぶ多数の区域外避難者の公立小中学校への受入れを拒んでおります。これは、せめて避難元に住民票を残し、避難元の自治体の構成員の資格を残しておこうという多くの区域外避難者の思いと相容れません。避難元の住民であり続けかつ学校に通おうとすれば、避難をあきらめて避難元に戻るか、避難先の私立学校に通うかしなければならないという事態を招きます。避難を優先して学校に通うのをあきらめるという判断をする方々も出てくるものと思われます。そうすると、子どもは未就学児になってしまい、教育を受ける機会が奪われるという異常な事態が生じます。あきらめて転入届を出した方々も66人という多数にのぼりますが、就学のために避難元の自治体の構成員の資格を失うという選択を事実上強いられたというのは実に不当な事態です。

 就学の機会を確保する必要性は、区域外避難者にも同様に存在します。放射線の影響をおそれて、現に多くの区域外避難者が地元を離れて避難している中で、会津若松市内に転入届を出した者に限るという縛りをかけるのは、極めて不合理であり、 ただでさえ不安な生活を続けている被災者の不安を更に増長する危険があります。

 以上のように、区域外避難者の公立学校への受入れを拒むことは、文科省通知の予定する受入れの対象を不当に狭め、会津若松市に避難してきた児童生徒等の就学の機会を奪うことになります。これは、憲法26条の教育を受ける権利、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約13条、児童の権利に関する条約28条、国内強制移動に関する指導原則の原則23、自然災害時における人々の保護に関するIASC 活動ガイドラインB.1.3、B.2.6などに反します。

 さらにいえば、他の多くの市町村では、避難元に住民票を残したままの避難者であっても、文科省通知や憲法26条等に反することのないよう、義務教育についてはほぼ全面的に避難者を受け入れているのが実情です。他の市町村に避難した子どもたちと会津若松市に避難した子どもたちとの間の不公平も、非常に大きな問題です。原発事故子ども被災者支援法において被災者に対するいわれなき差別が生ずることのないよう、適切な配慮をなすことが強く要請されることからすれば、役務を提供する地方公共団体がこのような差別をし、就学の機会を奪うことは許されないことです。

 よって、御庁は、文科省通知、ひいては憲法や、その他の国際的な取り決めに反することのないように、区域外避難者の公立学校への受入れを全面的に認めるよう取扱いを改めるよう強く求めます。

 そのうえで、これまで拒否した方々には個別に通知をして。従前の取扱いを謝罪し、これを改めて、公立学校への児童・生徒の受け入れを行う旨を明らかにする必要があります。

 さらに、御庁の就学拒否により私立学校への入学を余儀なくされた方々に対しては、その入学金、授業料等の就学に関する諸費用の全額について、会津若松市が填補することによって、その被害を回復するようよう求めます。

                                 以上


【とすねっと】避難生活の実態に関するアンケート調査結果報告

2012年09月28日 08時12分47秒 | とすねっとの要望書

避難生活の実態に関するアンケート調査結果報告

とすねっとが平成24年8月8日から8月30日までに集めた生活実態等に関するアンケート結果です。

⇒ 避難生活の実態に関するアンケート調査結果報告(PDF)


Q:住宅設備で困っていることはありますか?

A:ある55%
Q:避難されていて健康状態(精神的な状態を含む)に不安な点はありますか? 
A:ある72%
Q:生活費の増加はありますか?
A:ある68%
Q:高速有料化に伴い家族と会う回数は?
A:減った51%

など、

メール等での呼びかけ分も含まれていますので分母は正確ではありませんが、234通の発送に対して88の回答がありました。

このアンケートは9月6日に開催した「区域外も高速無料に!原発被害者支援の具体化を求める院内集会」において速報として発表し、高速無料化など基本方針の策定前でもできる支援は直ちに実施するよう要請していますが、未だ実現していません。

アンケートのご協力いただいた被災者・被害者のみなさん、 院内集会に参加いただいた国会議員、報道関係者には、間もなく印刷物としてお届けする予定です。

【院内集会】政府に対する要望書2012年9月6日

2012年09月06日 21時49分41秒 | とすねっとの要望書

    「区域外も高速無料に!原発被害者支援の具体化を求める院内集会」

政府に対する要望書

                               平成24年9月6日

 

内閣総理大臣 野田 佳彦 殿

復興大臣   平野 達男 殿

財務大臣   安住  淳 殿

国土交通大臣 羽田雄一郎 殿

厚生労働大臣 小宮山洋子 殿

文部科学大臣 平野 博文 殿

経済産業大臣 枝野 幸男 殿

その他関係閣僚 殿

 

東京災害支援ネット(とすねっと)

                           代表  森 川   清

 

                      福島原発被害者(避難者)有志一同

 

 

 原発事故による避難生活が長期化し、避難生活は厳しさを増している(後述の8月調査によると、世帯の生活費の増加額の平均は1か月約65,500円にも上る。)。原発周辺の住民の不安も大きい。原発事故の被害者支援は緊急の課題である。

 平成24年6月21日、原発事故子ども・被災者支援法(以下「支援法」という)が成立した。支援法第3条にも指摘されているように、この事故を引き起こした責任は国にもある。国は、原発事故被害者に率直に謝罪すべきであるし、支援法のほか、福島復興再生特別措置法、原発避難者特例法、放射性物質汚染対処特措法、その他の法律を駆使して、必要であれば新たな立法措置を講じる等して、原発事故被害者の支援に万全を尽くすべき責務がある。

 支援法に基づく政府の施策の大本となる「基本方針」には、原発事故被害者の意見を反映させることとなっている。とすねっとは、原発事故被害者に対してアンケートを行い、どのような支援が必要であるかを調査した(以下「8月調査」という。)。この要望事項は上記アンケート結果等に基づいた被害者の声である。これを盛り込んだ支援法の基本方針を速やかに策定し、適切な予算措置を講じて早急に施策を実施するよう求める。

 支援法には多々不備があり、支援法に規定のないことや、支援法の基本方針が未定であることを支援の実施を遅らせる口実にすることは許されない。したがって、緊急性の高い重要な施策については支援法の基本方針の策定を待たずに直ちに実施するよう求める。

 よって、院内集会参加の総意として、以下の施策の実施を要望する。 

 

第1 支援法の支援対象地域の指定

1 要望の趣旨

  支援法8条の支援対象地域は、福島県全域に加え、少なくとも、1年に換算して1ミリシーベルト以上に相当する空間放射線量が観測された地点を有する市町村を指定するよう要望する。

  この際、住民個人の権利を保護するため、自治体の意見を参考にすることなく、機械的に地域指定を行うべきである。

  なお、上記の空間放射線量の観測地点においては、政府・地方自治体・その他の公的機関・電力会社が測定した空間放射線量の数値だけでなく、一定の基準以上の装備を持った民間の団体または個人が測定した空間放射線量の数値も参照すべきである。

2 要望の理由

  原発事故により政府の避難等の指示が出ていない地域(以下「区域外」という。)から、多数の住民が避難している。その数は2万人を超えると言われている。区域外からの避難者(以下「区域外避難者」という。)は、「自主避難者」等と呼ばれているが、実際は避難区域等からの避難者と同様に被ばくをおそれて避難を余儀なくされた者である。一方区域外にとどまる住民(区域外住民)も、政府の避難指示がないため仕事の都合等からやむなく現地にとどまっている者がほとんどであり、被ばくをおそれて、被ばくを最低限に抑えるよう注意を払いながら生活することを余儀なくされている。支援法1条にもあるように、低線量被ばくの健康への影響・危険性については科学的に十分解明されていない。避難区域の内外を問わず、低線量被ばくのおそれがある地域は広がっている。支援法2条5項の「健康被害を未然に防止する観点」は予防原則の採用を表明したものであり、これに従い、避難区域の内外を区別することなく、幅広く被害者支援を行うべきである。

  そこで、支援対象地域の指定にあたっては、まず、被ばくの苦難を最も受けた福島県の全域を指定して県民の分断を防ぐべきである。また、福島県外の地域においても、公衆の被ばく限度の国際基準に鑑み、少なくとも、年1ミリシーベルト以上の空間放射線量が観測された地域においては、公衆の被ばく限度を超えないよう避難その他の防護措置を取る者を国が支援すべきである。そうでなければ、公衆の放射線防護を十分に図ることはできないからである。

  また、政府・自治体等の観測地点における観測結果に対する国民の信頼が十分でないことに鑑み、一定の装備を持った民間の団体または個人が測定したものであれば、支援対象地域指定のために参照すべきである。

  支援対象地域の指定にあたっては、被害者個人の権利を擁護する支援法の精神に従い、自治体の意見によって指定か不指定かが左右されることのないよう、参照すべき観測結果に従って指定を行うべきである。汚染状況重点調査地域の指定は自治体の意見を参考にしたが、これによって、一部の自治体では風評被害をおそれて地域指定を拒むという現象が生じている。こうしたことでは住民を被ばくから十分に守ることはできないから、自治体の意見は参考にすべきではない。

  なお、福島第1原発4号機の建屋の使用済み核燃料プールの状況が不安定であるから、使用済み核燃料の運び出しの完了までの間に建屋が地震等により倒壊して使用済み核燃料による臨界の生ずるおそれが払拭できない。したがって、空間放射線量が比較的低くても、福島第1原発から80キロ以内(原発事故直後に多くの外国が自国民に避難を促した距離)の地域においては臨界事故発生時の初期避難に困難が伴うことに鑑み、現時点で避難を選択する合理性が非常に高いことを付記する。本質的には、線量だけの問題ではないのである。

 

第2 支援法の基本方針策定に関わらず、前倒しで実施すべき施策

1 高速道路料金緊急支援

 (1) 要望の趣旨

   国土交通大臣は、福島県内の区域外避難者及び区域外住民に対する高速道路の無料措置を再開し、これを長期的に継続するよう求める。

 (2) 要望の理由

   被災証明書を有する原発被害者に対する高速道路の無料化は平成24年3月まで行われていたが、4月以降は区域外避難者・区域外住民に対する支援が打ち切られた(対象は警戒区域等からの避難者に限定され、期間も今年9月末までとされた。)。

しかし、区域外避難者は、生計維持者を地元に残し、母子のみが避難しているケースが多く、二重生活による生活費増に加え、週末の家族再会を支えていた高速道路の無料措置が打ち切られ、家族の存立までも危うくされている。無料措置のころと同様の頻度で行き来をしようとすると、生活費の増加は著しい。現実には会う頻度を減らしている。とすねっとの8月調査によると、無料措置の支援打切り後は、その前と比べ、二重生活世帯で再会する回数が1か月平均1.4回も減っている(1か月2.92回から1.52回へ減少。)。にもかかわらず、再会のための交通費は今年4月の支援打切り以降、平均15,786円も増加している。お金がかかるので、無理して一般道で長時間ドライブしてくる人も少なくない。無料措置の復活は区域外避難者の切望である。夫婦が、親子が、バラバラにされている。これはもはや、人道上の問題である。

   また、区域外住民も被ばくを最小限に抑えるため、週末や長期休暇に子らとともに自家用車で県外に避難することが多かったが、高速道路の支援打切りにより、こうした「週末避難」「短期避難」も経済的に難しくなっている。

   高速道路無料措置は、二重生活家族にとっては支援法9条1項の「支援対象地域からの移動の支援に関する施策」または「家族と離れて暮らすこととなった子どもに対する支援に関する施策」に当たり、区域内住民の週末避難にとっては支援法8条1項の「放射線量の低減及び生活上の負担の軽減のための地域における取組の支援に関する施策」とも考えられるし、避難先で自由に野外に出ることに意義があるとすれば「自然体験等を通じた新進の健康の保持に関する施策」にも当たる。このように支援法の支援対象施策となることは明らかである上、避難者・住民の要望が強く、緊急に対応が必要な事項であるから、基本方針の策定を待つことなく直ちに実施しなければならない。

   無料措置は、国土交通大臣が高速道路利用料金を徴収しない車両として原発事故避難者の車両を加える旨の告示(道路整備特別措置法施行令第11条)さえあれば可能である。早急に措置を講じるよう求める。

   また、原発事故被害者は、原発事故のために避難せざるを得なくなり、そのために高速道路を利用するものであるから、これらの者は原発事故がなければ高速道路を利用しなかった者である。これらの者から料金を徴収しなかったとしても高速道路会社に原発事故前と比べて経済的不利益はない。したがって、道路会社に対する予算措置は不必要である。

   福島県内の住民(県外避難者を含む)のすべてを対象とすれば、証明書類の発行の手続きにも支障は生じない。

なお、この無料措置は、週末避難を容易にすることにより、観光産業の振興にも資するものであり、早期に実施することが避難者受入自治体の地域住民のためにもなることを付記する。

 

2 住宅緊急支援

 (1) 要望の趣旨

  ア 国は、現在福島県内にいる区域外避難者に対し、災害救助法に基づき、直ちに住宅を無償で提供する施策を講ずるよう求める。そのため、厚生労働大臣は、福島県知事に対し、必要な行政指導を行い、職権発動を促すべきである。

  イ 国は、これから避難する新しい避難者にも避難先で住宅を無償で提供する施策を講ずるよう求める。そのため、厚生労働大臣は、新たな避難者受入れを打ち切っている各都道府県知事に対し、災害救助法に基づいて新規受入れを進めるよう指示を行うべきである。

  ウ シャワー・冷暖房器具などの付帯設備・備品が不足した住宅が存在する(特に雇用促進住宅において目立つ)ので、国は、それらの設備の設置状況の調査を行うとともに、不足している住宅には備えることを求める。

 (2) 要望の理由

   区域外避難者に対する住宅の提供は、支援法9条の「移動先での住宅の確保に関する施策」として実施すべきことは明らかである。しかし、福島県内では区域外避難者に対し住宅の無償提供がなされていない。これは生活費の増加を招いており、緊急に対策が必要であり、災害救助法に基づいて、基本方針を待たずに直ちに実施すべきである。方法は、民間借上げなど、いくらでもある。

   また、避難が遅れれば被ばくが蓄積するおそれがあるから、これから避難しようとする新しい避難者には基本方針の策定を待たずに、直ちに災害救助法に基づいて住宅を無償で提供すべきである。方法は、民間借上げなど、いくらでもある。厚生労働大臣は、各都道府県知事に対し。災害救助法31条の応援の指示を行うべきである。

   設備の不足についていえば、8月調査によれば、シャワーがほしい、冷暖房器具が不足している、広さ、部屋数が世帯人数に見合わない、お風呂の追い焚きができないため冬にとても寒い、設備が古いまま放置されている、などの声が上がった。特に雇用促進住宅での設備の不備が顕著である。シャワー、給湯器、エアコンは、公営住宅では設備が整っているところが多い(61~92%)が、雇用促進住宅ではこれらが整っているのはわずかである(17~33%)。避難者の世帯人数や年齢などに見合った住宅を提供し、日常生活を送る上で不便が生じないよう生活必需品・付帯設備を備えることが必要だ。付帯設備の設置、生活必需品の給付・貸与に遺漏がないようにするため、全戸調査を行い、不足がある場合には、早急に措置を講じることを要望する。

 

3 医療緊急支援

 (1) 要望の趣旨

  ア 国は、原発事故当時に福島県内に居住していた子どもの医療費を直ちに無料とするよう求める。

  イ 国は、原発事故当時に福島県内に居住していた成人を含むすべての者が、直ちに、甲状腺検査、ホール・ボディ・カウンター検査、血液検査、尿中セシウム等の尿検査、定期健康診断及び異常があった場合(例えば、甲状腺検査では結節やのう胞の所見のある者等)の2次検査を受けられるようにするよう求める。

  ウ 国は、イを可能にするため、上記の検査機器を購入する自治体に補助金を交付すべきである。

 (2) 要望の理由

   8月調査によれば、今後の健康に不安を感じる人は60%、将来の医療費に不安を感じる人は61%。

   福島県内の子どもの医療費を無料にすることは、福島県が政府に求めて実現しなかったものである。しかし、支援法では、13条3項によって一律の医療費無料化はできないようになっているが、支援対象地域に滞在する住民について「医療の確保に関する施策」(8条1項)として行うことも可能であり、支援対象地域からの避難者についても「その他の施策」(9条)として講ずることができると解される。

   子どもの医療費の無料化は既に各自治体である程度行われているが、避難者が制度を利用するには立替金が必要であったり、自治体ごとに制度が一律でなかったりするため、煩雑・不便な面が大きい。子どもに対する被ばくの影響を心配し、子育てに苦悩する原発事故被害者の暮らしを少しでも軽減するため、支援法13条3項の枠組みを超えて、原発事故当時福島県内に居住していた子どもの医療費については、直ちに無料とすることを求める。

   甲状腺検検査・ホールボディカウンタ検査についても、世帯で受けた人がいる(主に子ども)と答えたのは、いずれも3割にとどまった。甲状腺ののう胞などの異常が少なからずみられることに鑑みると、血液検査、尿中セシウム等の尿検査、定期健康診断及び異常があった場合(例えば、甲状腺検査では結節やのう胞の所見のある者等)の2次検査の無料化も必要である。8月調査では甲状腺検査等を受けた人は無料で受けており、検査費用が高額であることを考えると、これらの諸検査を国の政策で無料で受けられるように支援する必要性は高い。

 

4 放射性物質及び空間放射線量の測定のための緊急支援

 (1) 要望の趣旨

   国は、民間の団体または個人が、食品に含まれる放射性物質の測定や空間放射線量の測定を行えるよう、検査機器の購入に対し、補助金を拠出すべきである。

 (2) 要望の理由

   食品や線量に関しては、自分の目で放射能の有無を確かめたいという被害者が多い。政府が情報を隠しているのではないかという不信感もあり、民間による検査の需要は大きい。支援対象地域における食品検査や放射線測定のための機器の購入費用の支援は、支援法8条1項の「家庭、学校等における食の安全及び安心の確保に関する施策」に当たるものとして実施可能であるが、緊急の必要性があること、食費検査等は支援対象地域に限らず全国で必要であること等に鑑み、支援法の枠組みによらず、緊急に実施する必要性が高いものと考える。

   なお、この支援は、支援法の基本方針にも当然盛り込まれて実施されるべきものである。

 

5 除染の緊急改善

 (1) 要望の趣旨

  ア 国は、避難指示の出ている区域以外のずべての地域について、空間放射線量が年間1ミリシーベルトを下回るよう、放射能に汚染された地域の徹底的な除染を行う施策を講ずるよう求める。

  イ 国は、空間放射線量が年間1ミリシーベルト以上の地域について、自治体の意見にかかわらず、汚染状況重点調査地域に指定するよう求める。

  ウ 国は、専門家と自治体・住民の意見を聴いて、現在行われている除染計画及び除染方法をより効果的なものへと改め、除染によっても空間放射線量を著しく減少させることのできない地点・地域については、これを公表し、当該地点・地域からの避難を勧めるよう求める。

  エ 国は、復興の名のもとに、放射能汚染が完全に除去されていない地域に避難者を帰還するよう促す政策を取らないよう求める。

 (2) 要望の理由

   除染は、空間放射線量が公衆の被ばく限度を下回ることを目的としなければならない。しかも、被ばくは継続するので、住民の健康に対する危険のおそれを完全に除去するためには、除染に関しては緊急の対策が必要である。

   国は、避難区域以外で除染を行う市町村について汚染状況重点調査地域に指定しているが、現在は自治体が風評被害等の発生のおそれを理由に地域指定を受けることを拒否できる。現に、東京都内には指定を拒否した区があるとされている。除染の徹底という観点から、これを改善し、年間1ミリシーベルト以上となる場合は自治体の意見にかかわらず指定すべきである。

   除染方法についても、国が認める除染方法では不十分であるとの批判が栃木県那須町等の自治体からも上がっている(このため、那須町では独自の除染方法を定めるに至っている)。8月調査でも「今の除染はムダだ」という声が4割以上にも上った。一方で徹底的な除染を求める声も3割あった。こうした被害者の声を総合すると、専門家と被害者の意見を聴き、少なくとも今の除染方法を改善すべきである。また、山林のように十分な除染ができない地点を抱える地域については、その事実を明らかにし、避難を勧めるべきである。

 十分な除染ができないにもかかわらず、避難者に帰還を促して被ばくにさらすのは支援法1条の精神に反する。公衆の被ばく限度以上の被ばくをする地域からの避難者に対し、各種支援を打ち切るなどの帰還を余儀なくさせるような政策を取ってはならない。

 

第3 基本方針に盛り込み、実施すべき施策等

 1 交通費の援助

 (1) 要望の趣旨

  ア 国は、区域内及び支援対象地域からの避難者が家族と会うための交通費の全額を援助するよう求める。

  イ 国は、支援対象地域からの週末避難・短期避難・疎開等のための交通費の全額を援助するよう求める。

 (2) 要望の理由

   同じ家族の中で生計維持者と避難者が分かれて生活している被災世帯(二重生活世帯)については、家族が再会するためには高速道路料金、ガソリン代、鉄道・バス料金等の交通費が必要となる。二重生活世帯の多くは、子どもが放射能の影響を受ける事のないようにしたいとの考えから避難している。その避難している子どもが、交通費がないために生計維持者の親と会う機会が減少しているのは人道に反する。

   避難者の交通費無料化は、「支援対象地域からの移動に関する支援に関する施策」に当たり、「家族と離れて暮らすこととなった子どもに対する支援に関する施策」にも当たる(支援法第9条)ので、実施すべきである。

   この援助は、事後的に申請することによって支出額の支給を受けられるようにすべきである。支出額は国が立替え、東京電力に求償すればよい。

   滞在者の週末避難・短期避難のための交通費援助は、支援法8条1項の「放射線量の低減及び生活上の負担の軽減のための地域における取組の支援に関する施策」とも考えられるし、避難先で自由に野外に出ることに意義があるとすれば「自然体験等を通じた新進の健康の保持に関する施策」にも当たるので、実施すべきである。

   なお、上記の交通費援助は究極的には「被ばくから逃れる自由」を実効化する人権上の施策であるところ、「被ばくから逃れる自由」は子どもにも大人にも等しく認められるべきであるから、アの家族を子どもに限定したり、イの援助を子どもも限定することは許されない。

 

2 住宅に関する施策

 (1) 要望の趣旨

  ア 国は、数十年単位の長期もしくは期間を定めず、避難者向けの住宅を無償で提供するよう求める。

  イ 国は、原発被害者については、アの長期的な住宅提供が必要であることに鑑み、速やかに仮設住宅から公営住宅や民間住宅への転居を進め、その転居費用も支出するよう求める。

 (2) 要望の理由

   8月調査によれば、避難者には、帰還を考えていない人も約半数に上る。区域外でも、「子どもが大人になるまで」等、当面は帰還を考えていない人は多いのが実情だ。

   原発事故の被害を受けた地域については、原発事故前の状態に復旧するにはかなりの長期間を必要とするのだから(支援法2条6項参照)、支援法9条の「移動先における住宅の確保に関する施策」として、数十年単位の長期もしくは期間を定めず避難者向けの住宅を無償で提供すべきである。

 

3 医療支援

 (1) 要望の趣旨

  ア 国は、「原発事故被害者手帳(仮称)」を交付し、原発事故当時支援対象地域に居住していたすべての者(成人を含む。)が、甲状腺検査、ホール・ボディ・カウンター検査、血液検査、尿中セシウム等の尿検査、定期健康診断及び異常があった場合(例えば、甲状腺検査では結節やのう胞の所見のある者等)の2次検査を受けられるようにするよう求める。

  イ アの各検査は、避難先等現在の居所の近くで、無料で、最低1年に1回は受けることができるよう求める。

  ウ アの検査結果は速やかに受検者に明示し、原発被害者が被ばくの健康に対する影響・危険性に関する正確な情報を得ることができるようにするよう求める。

  エ 国は、支援法13条3項に従い、子ども・妊婦に限らず、広く原発被害者に対し、広範囲にわたって医療費の支援を行うべきである。

  オ 国は、避難生活の長期化等の影響により心の傷を負った避難者に対する精神面のケアも万全を尽くすべきである。

 (2) 要望の理由

   原発事故は国の責任による事故(支援法3条)であることから、すべての原発事故被害者の甲状腺検査・ホールボディカウンター検査、健康診断の費用は当然無料とすべきである。国は、支援法13条3項に基づき、原発事故被害者には被爆者手帳と同様の「原発事故被害者手帳(仮称)」を交付するなどして、国の責任で、被害者の健康管理を行うべきである。内部被ばくその他の健康状態に対する診査を速やかにかつ継続的に行う(支援法13条1項)ためには、診査は避難者の負担を考慮すれば、現在避難している居所の近くで、甲状腺検査・ホールボディカウンタ検査等を無料で行うべきである。

   また、子どもは成人よりも放射能の影響を受けやすいのであるが、医療支援は子どもに限るべきではない。成人も放射能の影響を受けることに違いはない。また、原発事故による放射能の影響は長期に渡るものであり、放射能の影響による発病までは相当の時間の経過を要することを鑑みれば、原発事故当時子どもであったが、成人になって発病することは当然想定される。そのため、支援法13条3項の「医療の提供のかかる必要な施策」として、子どもや妊婦に限らず成人に対しても医療費を免除すべきである。

   検査結果に関する情報は、受検者に対し、迅速かつ正確に提供し、甲状腺の結節やのう胞等少しでも異常の見つかった者には精密な2次検査を受けさせるようにしなければならない。

   また、避難者の将来の不安や二重生活などによる精神的疲労が顕著となっているため、また、災害により心の傷を負った人々に対する心のケアのために専門家による長期的な支援を求める。

 

4 雇用支援

 (1) 要望の趣旨

   ア 国は、原発事故避難者を雇用した場合、税制等の優遇措置を講ずるよう求める。

   イ 国は、国の機関や自治体に対し、原発事故避難者を積極的に正規雇用で採用させる施策を講ずるよう求める。

 (2) 要望の理由

   原発事故避難者の生活が困窮化していることに鑑み、「移動先における就業の支援に関する施策」(支援法9条)として、正規雇用によって安定した暮らしを可能にする雇用政策を取るよう求める。転職については、年齢制限による不利益のないよう、また、避難前と同条件による雇用を確保することを要望する。

   8月調査も40代以下の57%が就労支援が必要と答えている。

 

5 行政サービス

 (1) 要望の趣旨

  ア 原発避難者特例法に基づく指定市町村を支援対象地域に広げ、避難者の要望に基づいて住民並みのサービスが受けられる特例事務を広げるべきである。

  イ 国は、学校教育や社会教育において、被ばくを受けた者や被ばくから逃れようとする者の権利を積極的に擁護することを教える人権教育を推進すべきである。

 (2) 要望の理由

   避難先に住民票のない全ての避難者について、避難先の他の住民と同じ住民サービス(役務の提供)を避難先の自治体で受けられるようにするよう求める(支援法9条)。現在は特例法の範囲に限られているため、いわき市の住民は対象になるが、福島市や郡山市の住民は対象にならない等の不公平が生じている。指定範囲は、支援対象地域全部に広げるべきである。

   自治体は教育・保育等の実施主体でもあり、住民並みサービスを提供することは、原発被害者たる子どもの就学等、学習等の支援すること(支援法8条1項、9条)とも合致する。

   さらに、国は、避難先で就学した子供たちが、原発事故による避難者に対する偏見によっていじめ問題が発生しないように配慮する必要がある(支援法2条4項)ので、「その他必要な施策」(8条1項、9条)として、被ばくを受けた者や被ばくから逃れようとする者の権利を積極的に擁護することを教える人権教育を行うべきである。

以上

 


【要望書30】東北地方の高速道路の無料開放に関する要望書(その2)

2012年04月24日 16時08分01秒 | とすねっとの要望書

本日(4月24日)、避難者の皆さんとともに国会及び国土交通省を訪れ、民主党では池口修次民主党企業団体対策委員長にご対応いただき、民主党幹事長あてに、国土交通省では津島恭一国土交通大臣政務官にご対応いただき、国土交通大臣あてに、それぞれ標記要望書を提出いたしました。あわせて国土交通大臣あて、署名5832筆、「国土交通大臣にいいたいこと、お願いしたいこと」70通を提出いたしました。

 

東北地方の高速道路の無料開放に関する要望書(その2)

 

とすねっと要望書第30号

平成24年4月24日

国土交通大臣 前田武志 殿

民主党幹事長 輿石東 殿

 

東京災害支援ネット(とすねっと)

代表 弁護士 森 川  清

(事務局) 〒170-0003東京都豊島区駒込1-43-14

SK90ビル302森川清法律事務所

TEL080-4322-2018  FAX03-6913-4651

 

要 望 の 趣 旨

 

1 東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故により避難している方々の支援として行っている東北地方の高速道路の無料措置について、警戒区域等の内からの避難者に限定しない期間の延長及び走行範囲の拡大を要望します。

2 特に福島第一原子力発電所事故により二重生活等を余儀なくされている家族の絆を守るために警戒区域等の外からの避難している世帯及び子どもの健康不安から週末・長期休暇等に一時的に避難する福島県内に滞在している世帯に対して、東北地方の高速道路の無料措置を再開することを強く要望します。

 

要 望 の 理 由

 

1 当団体について

  わたしどもは、主に都内において東日本大震災の被災者を支援する活動に携わっている弁護士・司法書士・市民等のボランティア・グループです。インターネット(ブログ)やニュースレター「とすねっと通信」を通じて被災者に必要な情報を提供するとともに、中央共同募金会その他の民間諸団体の協力を得て、無料の電話相談や、避難所や被災者に提供された公営住宅や旅館・ホテルでの訪問相談、避難者等に対する物資支援・子育て支援等の活動を行っております。

2 今回の要望の経緯

  国土交通省が、平成24年3月22日、同年4月以降の東北地方の高速道路の無料措置について被災当時警戒区域等(警戒区域及び計画的避難区域に指定されている地域並びに緊急時避難準備区域に指定されていた地域)で生活をしていた方に限定して、しかも対象走行の範囲も狭めたものとすることを発表しました。

  警戒区域等の外から避難している方々(いわゆる自主避難者であるが、以下「区域外避難者」という。)から高速道路の無料延長を希望する声が多かったことから、当団体は、同年3月27日、区域外避難者とともに国土交通省を訪れ、国土交通大臣あて「東北地方の高速道路の無料開放に関する要望書」(とすねっと要望書第28号)を提出しました。

  残念ながら区域外避難者の望みは届かず、国土交通省において再考されず、同年3月31日で区域外避難者への無料措置は打ち切られてしまいました。

  しかし、区域外避難者、そして子どもの健康不安から週末・長期休暇等に一時的に避難する福島県内に滞在している方々(以下「一時的避難者」という。)の高速道路無料措置のニーズがきわめて大きいことから、当団体は、区域外避難者および一時的避難者のために実現に向けて、再度の要望を行うこととしました。

3 高速道路無料措置のニーズ

  原発事故により広域避難する家族の多くが、放射線感受性が高い子どもが母親とともに県外にやむを得ず避難し、父親が被災地・被害地にとどまり就労するという避難形態、いわゆる「二重生活」を送っています。離れ離れになった父親と子、夫と妻は、父親(夫)が週末に高速道路を利用して車で避難地を往復することにより、離ればなれになっている家族が束の間の再会を果たし、ぎりぎりのところで家族の絆を保っています。

  そのような区域外避難者世帯は、二重生活により家計の負担が大きくなっており、再会のためのガソリン代は高騰して負担が大きいところに、高速道路の無料措置が打ち切られたのが現状です。無料措置の打切りにより、高額の高速道路料金(たとえば、従前の常磐自動車道・いわき中央IC-三郷IC間の普通車の片道料金は4350円、いわき・東京間を月4回往復すると、3万4800円になる。)が避難世帯の家計を圧迫することは必至です。

  高速道路の無料措置によって、区域外避難者を始めとする広域避難者はぎりぎり家族の絆を支えてきました。無料化の打切りは、週末の父子、夫婦の再会を抑制し、再会のための負担を増やし(父親が一般道を利用することにもなります)、家計をさらに圧迫するものです。

  また、一時的避難者世帯においては、広域避難までできないが少しでも子どもの被ばくの累積量を減らしたいという思いから週末や長期休暇等に高速道路を利用して一時的な避難をしています。一時的避難者世帯においても、高速道路の無料措置打切りで家計負担が大きくなり、子どもの被ばくに不安を抱えながら一時的避難を諦めてしまわざるをえない状況になってしまいかねません。

4 家族がともにいること(家族の「絆」)

   本件では、被災者・避難者保護に関する国際基準が参考になります。

  国内強制移動に関する指導原則17において、「すべての人は、自らの家族生活を尊重される権利を有する」とし、「 この権利を国内避難民にとって実効的なものとするため、共にいることを希望する家族の構成員は、これが許可される」として避難者は家族生活を尊重される権利があります。

  そして、自然災害による被災者の保護に関するIASC運用ガイドラインD.3.1は、「救済活動は、家族をひとまとまりとして行われなければなりません。離散を望まない国内避難家族は、災害対策の全ての段階においてその希望が許容されるべきであり、またそのための支援を得るべきであり、離散は回避されるべきです。」としており、離散を望まない国内避難家族をひとまとまりとするための支援が得られるべきであると指摘しています。

  このように、家族がともにいること(家族の絆を保つこと)は避難者の権利であって、それをできる限り可能とする支援が得られなければならず、まさに高速道路無料措置がその支援に当たります。

5 まとめ

  今回の要望にあたって当団体で署名及び当事者の意見を集めましたが、規模が小さく無名の団体の呼びかけにもかかわらず、署名5832筆、意見70通という予想をはるかに上回る数が集まりました。これは、高速道路無料措置再開問題が、家族の絆と子どもの健康不安の問題であり、多くの避難者・市民の共感を呼んだからです。

  高速道路の無料措置は、国土交通大臣の告示によって再開できます。国土交通大臣が無料措置を打ち切ることは、かろうじて維持されている家族の絆を断ち切り、子どもの健康不安を増大させるもので、区域外避難者世帯・一時避難者世帯を上記のような苦境に追い込むものです。

  よって、できる限り多くの避難者・被災者が高速道路無料措置を受けられるよう要望し、特に区域外避難者および一時的避難者については無料措置の再開を強く要望します。

以上


【要望書29】雇用促進住宅にシャワー設備の設置を求める要望書

2012年04月20日 08時16分45秒 | とすねっとの要望書

すでに要望書第27号で雇用促進住宅のシャワー設備の設置を求めておりましたが、今回、アンケートを取り、再度、要望いたしました。


雇用促進住宅にシャワー設備の設置を求める要望書

 

厚生労働省 社会・援護局総務課災害救助・救援対策室 御中

福島県避難者支援課 御中

とすねっと要望書第29号

平成24年4月20日

 

東京災害支援ネット(とすねっと)

                                                代表    森   川    清

                                   (事務局)

                                   〒170-0003 東京都豊島区駒込1-43-14

                                              SK90ビル302森川清法律事務所内

                                                電話:080-4322-2018 

第1 要望の趣旨

  1. 応急仮設住宅としての雇用促進住宅にシャワーを設置してください。
  2. 応急仮設住宅としての雇用促進住宅に,付帯設備の設置,生活必需品の給付・貸与に遺漏がないか確認して,不足がある場合には,措置を講じてください。

第2 要望の理由

第2 要望の理由

1 わたしたちは、東日本大震災の被災者を支援する活動に携わっている弁護士・司法書士・市民等のボランティア・グループです。

 これまでに,主に都内等に県をまたいで避難された広域避難者を対象とした相談会等を実施し,寄せられた相談に対応して,国や東京都,福島県などに災害救助法により救助できる避難所における食事等や,応急仮設住宅に設置できる設備や,給付・貸与可能な生活必需品の提供について要望をし,または,東京電力に対して,住民登録がなかった被害者に仮払補償金の支払いや,電気料金の猶予を要請するなどの活動をしています。

2 当団体の活動の一環として,平成24年2月2日,国・福島県・山形県・独立行政法人雇用能力開発機構宛「広域避難する方に対して必要な救助を実施する要望書」(別紙参照)を提出して,本書と同趣旨の要望をしましたが,山形県は,「雇用促進住宅は避難所として扱っており,山形県の判断では設置できない。」,雇用能力開発機構は,「現時点では応急仮設住宅となっておらず,災害救助法の対象外である。また,殆どの雇用促進住宅にシャワーが設置されておらず独自予算での設置は無理である。」と,シャワーの必要性に一定の理解を示しつつ,どこも決済ができない状態にありました。

3 しかし,福島県が4月1日から全国の雇用促進住宅を借上げたとのことであり,福島県の判断でシャワーの設置が可能となりました。

 問題は,災害救助法に基づき国に求償できるかにありますが,これを検討すると,以下のとおり,求償可能です。

 ア 法は,単に第23条により「応急仮設住宅」の供与を定めるだけですが,同条3項は,救助の程度,方法及び期間に関しては政令に委任していることから,「災害救助法による救助の程度,方法及び期間並びに実費弁償の基準(平成12年3月31日厚生省告示第144号)」等,政省令により具体的な救助の内容を決することになります。

 イ 併せて,運用にあたっては,政省令の解釈を示した,「災害救助の運用と実務-平成18年度版-(第一法規)」(以下「運用と実務」という。)を参考にすべきところです。

 ウ すると,まず,応急仮設住宅は,住宅の全壊等により「居住する住家がない者であって,自らの資力では住宅を確保することができない者」に対して供与されることになるので,「その性格から,何も準備もない者が,直ぐに入居して使用できるように,最低限度の整備はなされているのが通常」であるので,応急仮設住宅設置のために支出できる費用の算定として,風呂および給湯器,電気設備及びガス設備(ガス台含む),等と建物附帯設備として設置が認められています(運用と実務279頁)。

 エ なお,ここでいう風呂及び給湯器には,必要的にシャワー機能が含まれるかについては必ずしも明確ではありませんが,応急仮設住宅は,支出の限度額の範囲内で,高齢者,障害者等の日常生活上特別な配慮をした構造・設備とするための費用も含まれる(災害救助の運用と実務59頁)とされており,当然に風呂用給湯器にシャワーを設置することは可能だと認識します。

4 また,国は,平成24年4月17日社援総発0417第2号「東日本大震災により建設した応急仮設住宅における更なる居住環境改善について」で,1.お風呂の追い焚き機能の追加について,①給湯器の交換又は追い焚き専用機の追加,②温度設定等のリモコン設置,③必要な配管(給水・給湯・ガス),配線工事,④その他必要な付帯設備工事を国庫負担の対象としました。当然にシャワーの設置は,①給湯器の交換に該当するものと思われますが,仮に①でないとしても,④その他必要な付帯設備にあたり,全額国に求償できると思料します。

5 仮に,4.に争いがあるとしても,当団体が米沢市の雇用促進住宅行った,聞き取り調査でも,①妊娠しています。赤ちゃんが産まれたらシャワーがないと本当に困ります。いまもお腹が大きくなり浴槽をまたぐこともできずに困っています。②妊娠をしています。どうかシャワーを設置してください。③3人の子どもがいます。一人は乳飲み子で,片手で幼児を抱えながら湯船から桶でお湯を注ぐのはたいへんだし,その間も上の子をずっと目で追っていなければなりません。是非ともシャワーを設置してください。など寄せられています。必要は明らかであるので,国庫負担が負担すべき付帯設備に追加されるべきです。

6 さらに,雇用促進住宅は,長らく災害救助法上の応急仮設住宅にあたらないとの見解を示しており,本来,応急仮設住宅として受けられる付帯設備(カーテン・給湯器・エアコン・暖房器具等),生活必需品(布団・炊飯器等)を給付・貸与していません。独自に電灯・ガスコンロを設置しているといいますが,それすらなされていない住宅も少なからずあり,災害救助法に基づく措置と質量とも隔たりがあります。応急仮設住宅となったのであるから,遺漏がないか確認して,不足がある場合には,措置を講じてください。

7 上記より,要望の趣旨記載の要望をしますので,至急措置を講じて下さいますようお願いします。

以上


【高速道路無料措置再開を求める意見を】広域避難している皆さまへ

2012年04月01日 21時05分24秒 | とすねっとの要望書

警戒区域等以外の地域から広域避難している皆さまへ
4月1日から高速道路無料措置の支援が打ち切られました。しかし、広域避難世帯にとって、無料措置は家族の絆を守るため、どうしても必要なものです。無料措置再開を求める意見書(画像ファイル)に皆さまの意見を書いて、とすねっと事務局までFAXまたは郵送でお送りください(4月15日必着)。国土交通大臣に提出します。


【署名運動】原発事故の区域外避難世帯に対する高速道路無料措置継続について

2012年04月01日 20時55分07秒 | とすねっとの要望書

【拡散希望】【署名運動】4月1日に打ち切られた区域外避難者の高速道路無料措置を再開させるため、とすねっとでは全国で署名運動を行っています。避難者のみなさんも、そうでないみなさんも、家族の絆を守る高速道路の無料化を再開させるため、署名簿(画像ファイルをダウンロード)に署名をお願いします。元のサイズのA4に引き延ばして使ってください。避難者のみなさんは、同時に上げた意見書と両方に記入してください。4月15日必着で、とすねっと事務局に郵送またはFAXをお願い致します。


【要望書28号】東北地方の高速道路の無料開放に関する要望書

2012年03月27日 16時14分02秒 | とすねっとの要望書

本日(3月27日)、避難されている皆さんとともに国土交通省を訪問し、広域避難の実情を訴え、警戒区域等に限定せずに高速道路の無料開放を継続するよう、要望書を提出しました。

 

東北地方の高速道路の無料開放に関する要望書

 

とすねっと要望書第28号

平成24年3月27日

国土交通大臣 前田武志 殿

 

東京災害支援ネット(とすねっと)

代表 弁護士 森 川  清

(事務局) 〒170-0003東京都豊島区駒込1-43-14

SK90ビル302森川清法律事務所

TEL080-4322-2018  FAX03-6913-4651

 

要 望 の 趣 旨

 

東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故により避難している方々の支援として行っている東北地方の高速道路の無料開放について、警戒区域等内からの避難者に限らない期間の延長及び走行範囲の拡大を要望いたします。

 

要 望 の 理 由

 

1 わたしたちは、主に都内において東日本大震災の被災者を支援する活動に携わっている弁護士・司法書士・市民等のボランティア・グループです(代表・森川清弁護士)。インターネット(ブログ)やニュースレター「とすねっと通信」を通じて被災者に必要な情報を提供するとともに、中央共同募金会その他の民間諸団体の協力を得て、無料の電話相談や、避難所や被災者に提供された公営住宅や旅館・ホテルでの訪問相談、避難者等に対する物資支援・子育て支援等の活動を行っております。

 

2 さて、先日わたしたちは広域避難者集会を開催し、東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故により東京に避難している家族に多く参加していただきました。その集会では、避難者から、高速道路の無料化として、平成24年3月31日までとなっていた東北地方の高速道路の無料開放期間の延長を要望する声が上がりました。また、普段から交流のある避難者の皆さんも同様に高速道路無償化を強く要望しております。

 

3 御省は、原発事故避難者の支援についてのみ高速道路の無料措置の期間を延長することを発表しましたが、その発表された内容は、平成24年3月22日付け報道発表資料によりますと、対象者が、被災当時警戒区域等(警戒区域及び計画的避難区域に指定されている地域並びに緊急時避難準備区域に指定されていた地域)で生活をしていた方に限られ、区域外からの避難者は対象とされておりません。また、対象走行の範囲も平成24年4月1日以降せばめられてしまいます。

 

4 原発事故により広域避難する家族の多くが、放射線に対する感受性が高いとされる年少者や妊婦を県外にやむを得ず避難させながら、生計を維持する者が被災地や被害地にとどまり就労するという避難形態を取っています。このため、本来一緒に暮らすべき家族は、離ればなれにさせられ、被災地・被害地と避難地との二重生活を送らざるを得なくなっています。こうした避難形態は、警戒区域等以外の地域から避難している家族(区域外避難者)に多くみられます。二重生活の家族の多くは、週末に高速道路を使って車で行き来することにより、離ればなれになっている家族が束の間の再会を果たしています。高速道路は、広域避難者の家族の絆を結ぶものであり、これまでの無料措置によって辛うじて家族の絆が支えられてきたのです。しかし、無料措置が終了すれば、高額の高速道路料金(たとえば、従前の常磐自動車道・いわき中央IC-三郷IC間の普通車の片道料金は4350円、いわき・東京間を月4回往復すると、3万4800円になる。)が避難世帯の家計を圧迫することは必至です。避難世帯は、二重生活に伴い、ただでさえ、食費・光熱費・日用品費・通信費などの出費がかさんでいます。これに高速道路料金の負担がのしかかることは大打撃となります。高速道路料金を節約するために週末の再会を控える家族も出てくることでしょう。そうなれば、家族の絆は揺らいでしまいます。こうした影響は、家族そろって避難している場合が多い警戒区域等内からの避難家族よりも、むしろ区域外避難者の家族のほうが深刻です。無料措置を警戒区域等からの避難者に限ることは、このような原発事故避難の実情を無視し、区域外避難者とその家族に経済的にも精神的にも辛い仕打ちを与えるものとなります。高速道路の無料措置は、国土交通大臣が告示を出すことによって継続できます。国土交通大臣が無料措置を打切ることにより、区域外避難者とその家族を上記のような苦境に追い込むことは許されません。

 

5 よって、少しでも避難している家族の負担を減らし、離ればなれの家族が少しでもいっしょにいられる時間を増やすため、東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故により避難している方々の支援として行っている東北地方の高速道路の無料開放期間の、対象者の範囲、対象走行の範囲を警戒区域等内からの避難者に限らない形での延長を要望いたします。なお、特に福島第一原子力発電所事故による区域内外の避難者の高速料金については、各高速道路会社から東京電力に請求することとしていただきたく存じます。

 

以上


【要望書27】広域避難する方に対して必要な救助を実施することの要望書

2012年02月03日 11時43分45秒 | とすねっとの要望書

とすねっとでは、山形市での相談活動を踏まえて、福島県から山形県に避難している皆さんに必要な救助について、要望書を執行しました。

 

広域避難する方に対して必要な救助を実施することの要望書

 

厚生労働省 社会・援護局総務課災害救助・救援対策室 御中

福島県災害対策本部 御中

山形県 建築住宅課・住宅宅地担当 御中

独立行政法人雇用・能力開発機構 御中

とすねっと要望書第27

平成2422

 

                  東京災害支援ネット(とすねっと)

                                                代表    森   川   

                                   (事務局)

                                   170-0003 東京都豊島区駒込1-43-14

                                              SK90ビル302森川清法律事務所内

                                                電話:080-4322-2018

  

第1 要望の趣旨

1.      国は,福島県と連携して,各都道府県に対して,応急仮設住宅の付帯設備の設置,生活必需品の給付・貸与に遺漏がないか確認して,不足がある場合には,措置を講じるように要請してください。

2.      山形県は,応急仮設住宅の付帯設備(電灯・ガス台・カーテン・給湯器・エアコン・暖房器具等)を設置し,生活必需品(布団・炊飯器等)を給付・貸与してください。

3.      山形県は,応急仮設住宅に,シャワー設備を設置してください。

4.      独立行政法人雇用・能力開発機構は,応急仮設住宅としての雇用促進住宅に,付帯設備(電灯・ガス台・カーテン・給湯器・エアコン・暖房器具等)を設置し,生活必需品(布団・炊飯器等)を給付・貸与してください。

5.      独立行政法人雇用・能力開発機構は,応急仮設住宅としての雇用促進住宅に,シャワー設備を設置してください。

6.      山形県は,仮に,雇用促進住宅が応急仮設住宅でない場合には,福島県及び独立行政法人雇用・能力開発機構に対して,雇用促進住宅を借り上げ,民間借り上げ住宅と同様の救助が行えるようにしてください。

 

第2 要望の理由

1.       わたしたちは、東日本大震災の被災者を支援する活動に携わっている弁護士・司法書士・市民等のボランティア・グループです。

これまでに,主に都内等に県をまたいで避難された広域避難者を対象とした相談会等を実施し,寄せられた相談に対応して,国や東京都,福島県などに災害救助法により救助できる避難所における食事等や,応急仮設住宅に設置できる設備や,給付・貸与可能な生活必需品の提供について要望をし,または,東京電力に対して,住民登録がなかった被害者に仮払補償金の支払いや,電気料金の猶予を要請するなどの活動をしています。

2.       この度,山形県に避難する福島県民の要請により,相談会を実施したところ,山形県内に避難する福島県民に対して,災害救助法で設置可能な付帯設備や給付・貸与できる生活必需品が提供されていないことから,ますます生活に支障をきたしているとの相談が多数寄せられました。

3.       災害救助法は,単に第23条により「応急仮設住宅」の供与を定めるだけですが,同条3項は,救助の程度,方法及び期間に関しては政令に委任していることから,「災害救助法による救助の程度,方法及び期間並びに実費弁償の基準(平成12331日厚生省告示第144号)」(以下「平成12年省令」という。)等,政省令により具体的な救助の内容を決することになります。

併せて,運用にあたっては,政省令の解釈を示した,「災害救助の運用と実務-平成18年度版-(第一法規)」(以下「運用と実務」という。)を参考にすべきところです。

4.       すると,まず,応急仮設住宅は,住宅の全壊等により「居住する住家がない者であって,自らの資力では住宅を確保することができない者」に対して供与されることになるので,「その性格から,何も準備もない者が,直ぐに入居して使用できるように,最低限度の整備はなされているのが通常」であるので,応急仮設住宅設置のために支出できる費用の算定として,風呂および給湯器,電気設備及びガス設備(ガス台含む),等と建物附帯設備として設置が認められています(運用と実務279頁)。

 なお,ここでいう風呂及び給湯器には,必要的にシャワー機能が含まれるかについては必ずしも明確ではありませんが,応急仮設住宅は,支出の限度額の範囲内で,高齢者,障害者等の日常生活上特別な配慮をした構造・設備とするための費用も含まれる(災害救助の運用と実務59頁)とされており,当然に風呂用給湯器にシャワーを設置することは可能です。一般に子どもは放射線感受性が高いと評価されており,原発事故による被曝の危険から避難する世帯の多くは,子どものいる世帯となっていますので,子どものいる世帯にシャワー設備は不可欠と言えます。

5.       次に生活必需品は,応急仮設住宅供与の有無にかかわらず認められています(平成12年省令4条)が,避難所においては,生活必需品の内,炊き出しその他食品の給付により,食事の需要を満たしていたことから,鍋・釜(炊飯器)等は,避難所で直ちに給付・貸与されていなかったものと思われます。したがって,仮設住宅に入居する際に,他施策(日赤6点セット)で給付された物品を除き給付されるべきです。

6.       なお,雇用促進住宅は,災害救助法上の応急仮設住宅にあたらないとの見解を聞くことがありますが,被災者・被害者に対しては,借り上げ住宅と同様に割り当て,説明がなされているのであるから応急仮設住宅に該当します(この点,当団体が,平成2399日厚労省社援総務災害対策室に電話確認に対して,「雇用促進住宅は,機構から求償請求はないが仮設住宅である。」と明確に回答しています。)。したがって,独立行政法人雇用・能力開発機構は,独自に,応急仮設住宅として付帯設備の設置及び生活必需品の給付・貸与をすることができると思料しますので,要望の趣旨記載の要望を履行してください。

 仮に,雇用促進住宅が応急仮設住宅でない場合には,山形県が借り上げを実施する必要があります。山形県は,至急借り上げの手続きを行って,民間借り上げ住宅と同様の救助が可能な状態に置いてください。

7.       上記より,要望の趣旨記載の要望をしますので,至急措置を講じて下さいますようお願いします。

以上


【要望書26号】応急仮設住宅(借上げ住宅)に関する要望書

2011年10月24日 16時12分42秒 | とすねっとの要望書

世田谷区に対して、本日執行しました。

応急仮設住宅(借上げ住宅)に関する要望書

とすねっと要望書第26

平成23年10月24日

世田谷区長 保坂展人 殿

東京災害支援ネット(とすねっと)

代表 弁護士 森 川  清

(事務局) 〒170-0003東京都豊島区駒込1-43-14

SK90ビル302森川清法律事務所

TEL03-6913-4650  FAX03-6913-4651

 

要 望 の 趣 旨

応急仮設住宅(借上げ住宅含む)に入居する被災者に対して,災害救助法で定める建物附帯設備雇(ガス台,電球・電灯等)及び生活必需品(寝具,鍋・炊飯器・食器等)の給付・貸与の徹底を求めます。

 

要 望 の 理 由

1 当団体は,主に都内で東日本大震災の被災者を支援する活動に携わっている弁護士・司法書士・市民等のボランティア・グループであり,インターネット(ブログ)やニュースレター「とすねっと通信」などを通じて,被災者に必要な情報を提供したり,避難所や電話での相談活動を行ったりしています。

  ところで,当団体に寄せられる相談の中に,「1025日に借上げ住宅に入居することになったが,布団がなく,入居にあたって困っている」という趣旨の相談が寄せられ,貴区に対して口頭で給付を要望してきましたが、貴区は物品の給付について裁量権がある旨を述べて給付しようとしません。しかし,布団は災害救助法における基本的な給付又は貸与の対象であるので,速やかに生活必需品については給付・貸与を徹底するよう求めます。特に1025日に貴区の借上げ住宅に入居予定の被災者に対しては、本日中に速やかに給付してください。

 災害救助法は,231項に「被服,寝具その他生活必需品の給与又は貸与」の供与を定め,同条3項は,救助の程度,方法及び期間に関しては政令に委任し,さらに同法施行令9条で厚生労働大臣が定める基準に従うこととし,「災害救助法による救助の程度,方法及び期間並びに実費弁償の基準(平成12331日厚生省告示第144号)」(以下「平成12年省令」という。)等が定められ,政省令等により具体的な救助の内容を決することになります。

  「寝具」(布団)は,生活必需品の基本的なものであって,同法231項及び平成12年省令4条が基本的なものとして給付対象としており,布団を欠くことは日常生活から考えられないものであって、現実に避難所として生活している旅館・ホテルにおいても布団は実質的に貸与されています。そうであれば、入居と同時に給付されるべきことは明らかです。

3 この生活必需品に関する法令は,当然に借上げ住宅にも及ぶので,1025日に入居予定の被災者に対する布団の給付を含めて、貴区の設置する借上げ住宅について、直ちに「要望の趣旨」記載の物品の給付を徹底するよう求めます。

以上


書籍のお申し込み

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