東京災害支援ネット(とすねっと)

~おもに東京都内で東日本太平洋沖地震の被災者・東京電力福島第一原発事故による避難者支援をおこなっています~

【意見書】区域外避難児童の就学について(会津若松市教育委員会あて)

2012年10月29日 10時53分12秒 | とすねっとの要望書

会津若松市教育委員会が、転入届を出さない区域外避難者児童の就学を認めない件について、同教育委員会宛に意見書を執行しました。

 

平成24年10月29日

会津若松市教育委員会 殿

 

              東京災害支援ネット(とすねっと)
                代 表   森 川   清 (弁護士)

              (事務局)
              東京都豊島区駒込 1- 43- 14 SK90 ビル 302

               森川清法律事務所内 (連絡先電話)080-4322-2108

 

意 見 書

 

 私たちは、東日本大震災の被災者及び福島原発事故の被害者の支援をしている法律家と市民等のグループです。平成24年10月24日付け「河北新報」の記事(以下、「本件記事」という。)において報道された、御庁が会津若松市に転入届を提出しない原発事故の区域外避難者(政府から避難等の指示が出ている区域の外の地域から避難している方々をいう。いわゆる「自主的避難者」。以下同じ)の就学を拒否しているとの事実に関し、児童・生徒の就学機会を確保する観点から、下記のとおり意見を述べます。

 

第1  意見の趣旨

 1 本件記事が事実であれば、従前の取扱いを直ちに改め、原発事故の区域外避難者が会津若松市内の公立小中学校等に就学することを認めるよう求める。

 2 これまで御庁が就学を拒否した避難者全員に対して、速やかに就学を認める旨の通知を発するよう求める。

 3 御庁が就学を拒否したことにより、私立学校など、会津若松市立でない学校への就学を余儀なくされた世帯に対しては、入学金・授業料、通学定期代等の就学に関する費用の全額を損害賠償として支払うよう求める。

 

第2 意見の理由

 文部科学省の平成23年3月14日付通知「平成23年東北地方太平洋沖地震における被災地域の児童生徒等の就学機会の確保等につい て」(以下、「文科省通知」という。) によれば、被災した児童生徒等の就学の機会を確保する等の観点から、当該児童生徒等に係る事務の取扱い等に当たり、被災した児童生徒等が域内の公立学校への受入れを希望してきた場合には、可能な限り弾力的に取り扱い、速やかに受け入れることとしております。

 これは、未曾有の災害により、多大な困難を抱えた被災地域の児童生徒等の就学の機会を最大限確保するため、受入れ対象を可能な限り広くした上で、できる限り弾力的な受入れを行うよう、各教育委員会等に求めるものです。

 現在、被災した生徒等やその家族等の多くは、今後の生活の目途が立たないまま、予測ができない極めて不安定な状況下での避難生活を余儀なくされており、かかる状況は、今後も相当期間続くことが予想されます。当然ながら、今後、どこでどのようにして生活するかは、多くの被災者にとって未だ見通しの立たないことがらです。

 これは、区域外避難者にとっても同じことです。避難区域の外であっても、空間放射線量が通常より高かったり、4号機の状態などから明らかなように万全な状況とはいえない福島第1原発に比較的近い所に居住していたりすることから、区域外でも避難をする人が多く、その一部は会津地方に避難しています。区域外からの避難もやむをえない行動として社会的に認められており、公的な支援の対象とすべきことは、今年6月に制定された原発事故子ども被災者支援法1条の趣旨からも明らかです。

 しかし、本件記事によれば、御庁は転入届を提出しない約30人に及ぶ多数の区域外避難者の公立小中学校への受入れを拒んでおります。これは、せめて避難元に住民票を残し、避難元の自治体の構成員の資格を残しておこうという多くの区域外避難者の思いと相容れません。避難元の住民であり続けかつ学校に通おうとすれば、避難をあきらめて避難元に戻るか、避難先の私立学校に通うかしなければならないという事態を招きます。避難を優先して学校に通うのをあきらめるという判断をする方々も出てくるものと思われます。そうすると、子どもは未就学児になってしまい、教育を受ける機会が奪われるという異常な事態が生じます。あきらめて転入届を出した方々も66人という多数にのぼりますが、就学のために避難元の自治体の構成員の資格を失うという選択を事実上強いられたというのは実に不当な事態です。

 就学の機会を確保する必要性は、区域外避難者にも同様に存在します。放射線の影響をおそれて、現に多くの区域外避難者が地元を離れて避難している中で、会津若松市内に転入届を出した者に限るという縛りをかけるのは、極めて不合理であり、 ただでさえ不安な生活を続けている被災者の不安を更に増長する危険があります。

 以上のように、区域外避難者の公立学校への受入れを拒むことは、文科省通知の予定する受入れの対象を不当に狭め、会津若松市に避難してきた児童生徒等の就学の機会を奪うことになります。これは、憲法26条の教育を受ける権利、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約13条、児童の権利に関する条約28条、国内強制移動に関する指導原則の原則23、自然災害時における人々の保護に関するIASC 活動ガイドラインB.1.3、B.2.6などに反します。

 さらにいえば、他の多くの市町村では、避難元に住民票を残したままの避難者であっても、文科省通知や憲法26条等に反することのないよう、義務教育についてはほぼ全面的に避難者を受け入れているのが実情です。他の市町村に避難した子どもたちと会津若松市に避難した子どもたちとの間の不公平も、非常に大きな問題です。原発事故子ども被災者支援法において被災者に対するいわれなき差別が生ずることのないよう、適切な配慮をなすことが強く要請されることからすれば、役務を提供する地方公共団体がこのような差別をし、就学の機会を奪うことは許されないことです。

 よって、御庁は、文科省通知、ひいては憲法や、その他の国際的な取り決めに反することのないように、区域外避難者の公立学校への受入れを全面的に認めるよう取扱いを改めるよう強く求めます。

 そのうえで、これまで拒否した方々には個別に通知をして。従前の取扱いを謝罪し、これを改めて、公立学校への児童・生徒の受け入れを行う旨を明らかにする必要があります。

 さらに、御庁の就学拒否により私立学校への入学を余儀なくされた方々に対しては、その入学金、授業料等の就学に関する諸費用の全額について、会津若松市が填補することによって、その被害を回復するようよう求めます。

                                 以上


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