東京災害支援ネット(とすねっと)

~おもに東京都内で東日本太平洋沖地震の被災者・東京電力福島第一原発事故による避難者支援をおこなっています~

東京都宛仮設住宅間の転居に関する要望書

2013年04月24日 16時51分00秒 | とすねっとの要望書

PDF→ http://goo.gl/4evRv

 

            要 望 書
 
                  とすねっと要望書第36号
                   平成25年 4月24日
東京都知事 猪瀬直樹 殿
 
            東京災害支援ネット(とすねっと)
            代 表(弁護士)  森 川   清 
              (事務局)
         東京都豊島区駒込 1- 43- 14 SK90 ビル 302
         森川清法律事務所内 (連絡先電話)080-4322-2108
 
 
第1 要望の趣旨
1  東京都は、別紙世帯目録記載の世帯について、当該世帯の規模からみて適切な東京都内の他の応急仮設住宅(いわゆる「みなし仮設住宅」)への転居を認めてください。
2  東京都は、都内の応急仮設住宅に避難する方に対して、①世帯員の増加などの事情で、世帯人数からみて狭隘な住宅でないか、②世帯員の就業場所への交通の便、保育、教育、治療、介護等の需要の変化がないか、を調査して、転居することが避難世帯の環境改善ないし生活向上に資する場合には、他の応急仮設住宅への転居を促し、これを認めてください。
 
第2 要望の理由
1  東京都は、平成24年12月31日以降、応急仮設住宅間の転居を全く認めていないと聞いています。しかし、そもそも仮設住宅間の移動を認めないとする法的根拠はありません。
確かに、これまでも長い間、応急仮設住宅間の移動を認めないとする運用が行われ来ました。しかし、東日本大震災においては、広域かつ甚大な被害であったことを鑑み、国は、平成23年5月18日、「東日本大震災に係る応急仮設住宅等について」(厚生労働省社援総発第0518第1号)において、「県外など遠方の応急仮設住宅等に一時的に入居されている方々について、避難者の具体的事情を勘案し、県がやむを得ないと認める場合には、地元の応急仮設住宅への入居を認めることとして差し支えない。」と通知し、仮設住宅間の移動を認めています。
さらに、政府見解では、「東日本大震災については、被害が甚大で広範囲にわたったため、遠方の応急仮設住宅に入居せざるを得なかった被災者がいたこと等の事情に鑑み、岩手県、宮城県又は福島県において、被災者の具体的事情を勘案した上で、やむを得ないと認める場合には、現に応急仮設住宅に入居している被災者が他の応急仮設住宅に転居することを認めて差し支えないと考えている。」(秋葉賢也衆議院議員の質問に対する野田佳彦内閣総理大臣の平成24年5月18日付け答弁書)とされており、上記通知にある「地元仮設住宅へ」という制限がありません。
加えて、実務においては、より広く、避難先の仮設住宅間の移動も事実上認められています。福島県では、みなし仮設住宅である借上げ住宅について、平成23年6月、生活再建や居住環境の改善のために転居の必要があった場合、一度に限り、他のみなし仮設住宅(借上げ住宅)または建設型の仮設住宅に住み替えることができることを発表し、「住み替えの事務フロー」をホームページ上に掲載し、一般的に住み替えを認めています。また、報道によれば、山形県でも、平成23年9月10日、福島県からの借上げ住宅に避難している避難者について、(1)健康上の理由、(2)契約を更新しないなど家主の都合、(3)入居者が著しく多くなり生活に支障が出る、(4)その他避難者に著しい不利益または危険が生じるといった事情のある場合には、借上げ住宅の住み替えを認めるとの基準を定め、現に住み替えを認めています。
また、平成24年3月31日まで「避難所」とされてきた雇用促進住宅については、同日まで他のみなし仮設住宅への入居が認められていたことになります。しかし、雇用促進住宅も公務員宿舎も集合住宅という点では異なるところはありません。みなし仮設住宅間の移動を認めないことは、過去の雇用促進住宅の扱いと比較して、極めて不公平な結果となります。
また、避難世帯が応急仮設住宅以外に住む家を求めることは経済的に困難であることを考えれば、応急仮設住宅間の移動を認めない東京都の姿勢は、法的根拠がない「運用」によって、憲法22条1項で保障されている居住の自由に事実上制限を加えることにもなりかねず、決して好ましいものではありません。住み替えによって避難世帯の環境改善ないし生活向上に資する場合にまで、頑なに応急仮設住宅間の移動を認めないことは、上記の憲法上の要請に反するおそれが大きいといわざるをえません。
したがって、各都道府県知事は、避難世帯が入居する応急仮設住宅について、住居の狭隘であったり、世帯員の就業場所への交通の便、保育、教育、治療、介護等の事情の変化が生じたりしたことにより、転居することが避難世帯の環境改善ないし生活向上に資する場合には、他の応急仮設住宅への転居を柔軟に認めるべきです。
2  東京都は、当該世帯に対し、仮設間の移動を認めない根拠として、福島県の要請がないと説明をしているようですが、福島県の要請は要件ではありません。確かに、平成24年12月3日福島県は、平成24年末をもって、各都道府県に対して、新規の避難者に対する応急仮設住宅の受付を停止するよう要請していますが、応急仮設住宅入居者の移動について、これを認めないことを要請しているものではありません。むしろ、帰還支援として、県外避難者に対しての県内の借上げ住宅への転居を推進するなど、既に応急仮設住宅に入居している方の他の仮設住宅間への移動を否定していません。
したがって、応急仮設住宅の新規受付を停止するという福島県の要請は、転居を認めない根拠とはなりません。
3  さらに、当該世帯については、特別の事情が勘案されなければなりません。
 東日本大震災が甚大広域な被害であること、これに加えて東京電力原子力事故は収束の目処すら立っていないことなどから、これまでの大規模震災に比して格段に、世帯員の就業場所への交通の便、保育、教育、治療、介護等の事情で、仮設住宅を転居する必要に迫られることがあります。また、長期化する避難生活中に、世帯員の増員することも当然ありえます。
 そもそも、応急仮設住宅の床面積は一戸あたり29.7㎡を基準としていますが、当該世帯が居住する国家公務員宿舎東雲住宅の単身世帯用1Kの居室は上記の基準に達していません。当該世帯は、この単身用住宅に多人数世帯が居住せざるを得ない状況にあります。にもかかわらず、転居を認めないのであれば、被災者に対し必要な救助を行い、保護するという災害救助法の目的(災害救助法1条参照)が達成できず、不合理な行政対応と言わざるをえません。
 当該世帯の厳しい生活の状況をみれば、生活再建や居住環境の改善のために他の適切な住居に転居する必要があることは明らかであるという点で、前記福島県のみなし仮設住宅の住み替えの要件を充たしています。また、居室の広さに比べて入居者が多く、生活に支障が出ており、避難者に著しい不利益が生じていることも明らかなので、前記山形県のみなし仮設住宅の住み替えの要件も充たしています。本件は福島県や山形県では住み替えの要件を充たしている事例であることを考えても、当該世帯の住み替えを認めないとする東京都の対応には合理性を認めることができません。
 以上のとおり、当該世帯が入居している応急仮設住宅は避難者の数に比べて狭隘であって、より広い住宅に転居することが避難世帯の環境改善ないし生活向上に資することは明らかなので、東京都は、速やかに、他の応急仮設住宅への転居を柔軟に認めるべきです。
4  ところで、驚愕すべきは、当該世帯の生活の実態です。当該世帯は、被災地では普通に7人の家族で助け合いながら生活していました。しかし、福島原発事故が起き、居住地は緊急時避難準備区域に指定され、避難先を転々としました。その過程で、父及び祖母並びに成人した2人の子どもは、それぞれ別の仮設住宅に避難することを余儀なくされたため、1つの家族が5世帯に分離させられています。そのあげく、東雲住宅に避難する母と高校に就学する2人の未成年者からなる世帯は、1Kの東雲住宅に2組の布団に3人で就寝するという通常あり得ない生活を余儀なくされています。
 しかも、家族で暮らせる他のみなし仮設住宅に転居させてほしいとの当該世帯の切実な要請に対し、東京都は、ことごとくこれをはねつけられています。さらに、東京都の上記の対応により、当該世帯は、都外に離ればなれに避難している母や長男と合流することも事実上できなくなり、家族の分断は固定化されています。
なお、当該世帯の事情及び状況は、次のとおりです。
 
===具体的事情は省略===
 
 避難者の「救助に万全を期す」(災害救助法22条)べき東京都知事として、このような異常な状況を放置することはできないはずです。
5 以上より、当該世帯の環境改善及び生活向上の必要があるのですから、東京都は、まず、当該世帯が直ちに人間らしい生活ができる環境の仮設住宅に転居できるようにしてください。
 さらに、東京都は、ニーズ調査をして、現在居住する仮設住宅について、狭隘、就業場所への交通の便、保育、教育、治療、介護等の需要の変化その他の事情があって、他のみなし仮設住宅への転居が適切であると考えられる世帯がある場合には、人間らしい生活ができる環境の仮設住宅に転居できるように支援してください。
                                   以上
 
世帯目録
 
====省略====
 

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