久しぶりの珈琲談義です。
新しい焙煎機を入手し、またまた私らしいオリジナルな検討を始めたところです
Ⅰ.旧焙煎機
今までここ6年来愛用していた焙煎機は、auvercraft社の「遠赤外珈琲焙煎キット」
というものです。
簡単に言うと「手回し式金網焙煎機」と言えるもので、本機による焙煎回数は300回を
超え、焙煎した生豆の総量は50kgにも及んでいます。
この焙煎機については本blogでも前に何回か紹介していますが、その画像を左に再掲
します。(図1)
より詳細は、auvercraftをご覧ください。
歳のせいで手回しが苦痛になってきたこともあり、今回もう少し本格派に近い
焙煎機にチャレンジしたい思いが強くなってきたのです。
ここで多分皆さんは焙煎機には詳しくないでしょうから、簡単に説明することに
したいと思います。
Ⅱ.本格的焙煎機
本格的な焙煎機は、大別すると「直火式」と「半熱風式」があります。
その簡単な図解を下に示します(図2)。(堀口俊英著「珈琲の教科書 新星出版社 2010年発行)
本格的なものは、極く小規模な店舗用の1kg程度の生豆を焙煎するものでも100万円以上、家庭用で
200g程度を処理するものでも57万円(富士ロイヤルのDiscovery機)します。
ここで良い焙煎機とは、上記書によると次の2点です。
① 容量の70%程度の生豆を20分以内にフレンチローストまで焙煎出来る火力がある事。
② その際に排出される煙をコントロールして排気できる能力がある事。
Ⅲ.Kaldi焙煎機
しかし、上記の本格的なものは今の私には高価すぎるので、出来るだけ安価なものを見付け、それに
改良を加えて本格的なものに近づける試みをする事としました。
選んだのは、Kaldi社(韓国)のコーヒーロースター(電動) [並行輸入品] 48720円です。
200gの生豆を処理できるもので、その画像をご覧に入れます。(図3)
左図は、ホッパーをつけたところで、ここから生豆を投入します。
右図は、焙煎中で温度計で釜の内温を測定しているところです。実際は熱源であるガステーブルの上に
セットされます。
本機は、直火式に属するもので、使用している釜(ドラム)と給排気の概念図もご覧にいれます。(図4)
左上に2種類の釜の画像がありますが、購入機に付いているのは両端のみ穴が開いている右側のものです。
給排気(右図)は、ハウジング内部の円滑な給排気のための通風口が、上下に配置され、新鮮な空気と、
温まった空気の効率的循環と保温ができるよう設計されているとしていますが、上記②の条件を十分
満足しているかは疑問がありました。
本機についてのより詳細な説明は下記をクリックすればご覧頂けす。
Kaldi 詳細
本機に付いてきたマニュアル(A5 6頁)はハングルでさっぱり分からず、A5 2頁の簡単な日本語の説明と
上記「Kaldi 詳細」の中にも操作の簡単な説明がありますが、それらを頼りに何回か試行錯誤の後、
どうやら焙煎が出来るようになりました。
Ⅳ.「空気吹き込み焙煎法」の開発
そこで、次に上記②の条件対策を試みる事にました。
田口護のスペシャルティコーヒー大全 NHK出版 2011年発行
には、本格的焙煎機の操作の詳細が記されていますが、その中で特に大切にしているのは、
排気量の制御であるようです。
特に2ハゼのあたりから猛烈に発生する煙の排出が不十分だと煙かぶりやガスこもりにより著しく
風味を害する事を説いています。
そこで排気の制御の為の実験を試みましたが、最終的に次の方法が良さそうという事になりました。
その為に付け加えた部分の画像をご覧に入れます。(図5)
図5で電子温度計に括り付けられているのはアルミ管(内径4mm 長さ20cm)です。
別に風量40L/分のエアポンプ(日本電興製NIP-40L 8800円)を求めて、これから上記アルミ管を通して
風を釜の中に吹き込ませ発生する煙などを強制的に排出させると言うアイデアです。
実際は、40/分を3分割し、一つは上図のアルミ管、他の二つにも空気抵抗を揃えるため同じ長さのアルミ管
に繋ぎます。
そして、状況に応じて、40L/minの1/3、1/2、全量を吹き込ませるようにしました。
そして今回開発した焙煎法を「空気吹き込み焙煎法」と名付ける事にしました。
尚、実際に吹き込まれた風量を測定/推定するのは簡単ではありません。
私の持っているガスメーターにNIP-40Lを繋いで測定すると、その内部抵抗の為約20L/min の値しか得られません。
実際に行われた焙煎の一例についてやや詳細に説明します。
1.図3.の焙煎機をガステーブルの上にセットします。
但し温度計には上述の様にアルミ管が括りつけられています。
2.図3.右の状態で点火し釜は回転させます。
火力は、上述の試行錯誤の中でほぼ最適の条件が選ばれています。
3.約7分で釜内温度が200℃に達したら火を止め、図3.左の様にポッパーをセットし、
用意した生豆200gを投入します。
豆は、ブラジル/イェロー・ブルボン16up で2kg 2730円(私が利用しているワイルド社の最安値)
で購入、本機立ち上げの為に使用しました。本例がその10回目(最後)の焙煎です。
4.そして直ちに図3.右の状態に戻し再点火し、ここから改めて時間を計測します。
それをtrとし、また釜内温度をTとしましょう。
5.tr=1min T=140℃ tr=6min T=180℃ ここで煙が出始めます。
6.tr=9min T=200℃ ここで風量1/3でエアーを吹き込む。
7.tr=10.5min T=215℃ で「一ハゼ」開始 ここで吹き込み風量を1/2にする。
8.tr=14min T=240℃ で「二ハゼ」開始 ここで吹き込み風量を全開(40L/min)にする。
煙の吹き出しが激しい。
9.tr=15.5min で火止め、豆の排出。排出は取っ手とモーターを持って本体を傾けて
冷たい金属製ボールに取り出す。
焙煎結果はフレンチ・ローストとして良いと思いますが、豆は、見たところ油脂の出が、
従来の手回し機と比べて可成り少なく、空気吹き込みによって本機が「半熱風式」的
になっているらしい事を示していると思われます。
又興味深いのは、焙煎による豆の重量減が24.9%で、従来の手回し式によるフレンチ・ロースト
の値22~23%と大きく異なっていることです。
これは、焙煎過程の化学反応が両者で可成り変化している事を示していると思われます。
見渡したところでは、「直火式」と「半熱風式」で焙煎による重量減の値が異なるとの
記載は見つかっていません。
これは新しい現象かも知れません。
肝心の抽出液の風味ですが、私は従来の手回し式によるものに比べて香りが強いように
感じています。
これは、図2.に記載された利点・欠点の表現と異なるもので、これは今回私の開発した
「空気吹き込み焙煎法」の特徴になればと秘かに思っているところです。
これで本「空気吹き込み焙煎法」の骨格は出来上がったとして、現在もう少し高価(1kg当たり2000円台)
な豆を使って焙煎し、従来法との比較を行っているところです。
分かった事1.焙煎による重量減
焙煎条件 従来法(auvercraft機) 「空気吹き込み焙煎法」
1ハゼ+2分(ハイ・ロースト) 14.0%(豆:ケニア/AA) 14.7%(豆:パナマ/SHBママエステート)
2ハゼ直後(シティ・ロースト) 16.9%(ドミニカ) 17.6%(エチオピア/イルガチェフ)
2ハゼピーク(フレンチ・ロースト) 22.3%(ブラジル/ブルボン) 24.0%(インドネシア/マンデリンG-1)
これより、焙煎法による重量減の差は、フレンチ・ローストの辺りで際立ってくるらしい事が解りました。
分かった事2.その他
上記焙煎のエチオピア/イルガチェフ(所謂「モカ」)で、従来法には無かった独特の強い香りが
出ている事が分かりました。
以上、私の新しい焙煎に対する取り組みについてお話ししました。
この「空気吹き込み焙煎法」を思いついた時は、それほど期待していた訳でもありませんでしたが、
想定以上の効果が期待出来そうに思えてきました。
この方式の検討をもう少し進めてゆきたいと思っているところです。
新しい焙煎機を入手し、またまた私らしいオリジナルな検討を始めたところです
Ⅰ.旧焙煎機
今までここ6年来愛用していた焙煎機は、auvercraft社の「遠赤外珈琲焙煎キット」
というものです。
簡単に言うと「手回し式金網焙煎機」と言えるもので、本機による焙煎回数は300回を
超え、焙煎した生豆の総量は50kgにも及んでいます。
この焙煎機については本blogでも前に何回か紹介していますが、その画像を左に再掲
します。(図1)
より詳細は、auvercraftをご覧ください。
歳のせいで手回しが苦痛になってきたこともあり、今回もう少し本格派に近い
焙煎機にチャレンジしたい思いが強くなってきたのです。
ここで多分皆さんは焙煎機には詳しくないでしょうから、簡単に説明することに
したいと思います。
Ⅱ.本格的焙煎機
本格的な焙煎機は、大別すると「直火式」と「半熱風式」があります。
その簡単な図解を下に示します(図2)。(堀口俊英著「珈琲の教科書 新星出版社 2010年発行)
本格的なものは、極く小規模な店舗用の1kg程度の生豆を焙煎するものでも100万円以上、家庭用で
200g程度を処理するものでも57万円(富士ロイヤルのDiscovery機)します。
ここで良い焙煎機とは、上記書によると次の2点です。
① 容量の70%程度の生豆を20分以内にフレンチローストまで焙煎出来る火力がある事。
② その際に排出される煙をコントロールして排気できる能力がある事。
Ⅲ.Kaldi焙煎機
しかし、上記の本格的なものは今の私には高価すぎるので、出来るだけ安価なものを見付け、それに
改良を加えて本格的なものに近づける試みをする事としました。
選んだのは、Kaldi社(韓国)のコーヒーロースター(電動) [並行輸入品] 48720円です。
200gの生豆を処理できるもので、その画像をご覧に入れます。(図3)
左図は、ホッパーをつけたところで、ここから生豆を投入します。
右図は、焙煎中で温度計で釜の内温を測定しているところです。実際は熱源であるガステーブルの上に
セットされます。
本機は、直火式に属するもので、使用している釜(ドラム)と給排気の概念図もご覧にいれます。(図4)
左上に2種類の釜の画像がありますが、購入機に付いているのは両端のみ穴が開いている右側のものです。
給排気(右図)は、ハウジング内部の円滑な給排気のための通風口が、上下に配置され、新鮮な空気と、
温まった空気の効率的循環と保温ができるよう設計されているとしていますが、上記②の条件を十分
満足しているかは疑問がありました。
本機についてのより詳細な説明は下記をクリックすればご覧頂けす。
Kaldi 詳細
本機に付いてきたマニュアル(A5 6頁)はハングルでさっぱり分からず、A5 2頁の簡単な日本語の説明と
上記「Kaldi 詳細」の中にも操作の簡単な説明がありますが、それらを頼りに何回か試行錯誤の後、
どうやら焙煎が出来るようになりました。
Ⅳ.「空気吹き込み焙煎法」の開発
そこで、次に上記②の条件対策を試みる事にました。
田口護のスペシャルティコーヒー大全 NHK出版 2011年発行
には、本格的焙煎機の操作の詳細が記されていますが、その中で特に大切にしているのは、
排気量の制御であるようです。
特に2ハゼのあたりから猛烈に発生する煙の排出が不十分だと煙かぶりやガスこもりにより著しく
風味を害する事を説いています。
そこで排気の制御の為の実験を試みましたが、最終的に次の方法が良さそうという事になりました。
その為に付け加えた部分の画像をご覧に入れます。(図5)
図5で電子温度計に括り付けられているのはアルミ管(内径4mm 長さ20cm)です。
別に風量40L/分のエアポンプ(日本電興製NIP-40L 8800円)を求めて、これから上記アルミ管を通して
風を釜の中に吹き込ませ発生する煙などを強制的に排出させると言うアイデアです。
実際は、40/分を3分割し、一つは上図のアルミ管、他の二つにも空気抵抗を揃えるため同じ長さのアルミ管
に繋ぎます。
そして、状況に応じて、40L/minの1/3、1/2、全量を吹き込ませるようにしました。
そして今回開発した焙煎法を「空気吹き込み焙煎法」と名付ける事にしました。
尚、実際に吹き込まれた風量を測定/推定するのは簡単ではありません。
私の持っているガスメーターにNIP-40Lを繋いで測定すると、その内部抵抗の為約20L/min の値しか得られません。
実際に行われた焙煎の一例についてやや詳細に説明します。
1.図3.の焙煎機をガステーブルの上にセットします。
但し温度計には上述の様にアルミ管が括りつけられています。
2.図3.右の状態で点火し釜は回転させます。
火力は、上述の試行錯誤の中でほぼ最適の条件が選ばれています。
3.約7分で釜内温度が200℃に達したら火を止め、図3.左の様にポッパーをセットし、
用意した生豆200gを投入します。
豆は、ブラジル/イェロー・ブルボン16up で2kg 2730円(私が利用しているワイルド社の最安値)
で購入、本機立ち上げの為に使用しました。本例がその10回目(最後)の焙煎です。
4.そして直ちに図3.右の状態に戻し再点火し、ここから改めて時間を計測します。
それをtrとし、また釜内温度をTとしましょう。
5.tr=1min T=140℃ tr=6min T=180℃ ここで煙が出始めます。
6.tr=9min T=200℃ ここで風量1/3でエアーを吹き込む。
7.tr=10.5min T=215℃ で「一ハゼ」開始 ここで吹き込み風量を1/2にする。
8.tr=14min T=240℃ で「二ハゼ」開始 ここで吹き込み風量を全開(40L/min)にする。
煙の吹き出しが激しい。
9.tr=15.5min で火止め、豆の排出。排出は取っ手とモーターを持って本体を傾けて
冷たい金属製ボールに取り出す。
焙煎結果はフレンチ・ローストとして良いと思いますが、豆は、見たところ油脂の出が、
従来の手回し機と比べて可成り少なく、空気吹き込みによって本機が「半熱風式」的
になっているらしい事を示していると思われます。
又興味深いのは、焙煎による豆の重量減が24.9%で、従来の手回し式によるフレンチ・ロースト
の値22~23%と大きく異なっていることです。
これは、焙煎過程の化学反応が両者で可成り変化している事を示していると思われます。
見渡したところでは、「直火式」と「半熱風式」で焙煎による重量減の値が異なるとの
記載は見つかっていません。
これは新しい現象かも知れません。
肝心の抽出液の風味ですが、私は従来の手回し式によるものに比べて香りが強いように
感じています。
これは、図2.に記載された利点・欠点の表現と異なるもので、これは今回私の開発した
「空気吹き込み焙煎法」の特徴になればと秘かに思っているところです。
これで本「空気吹き込み焙煎法」の骨格は出来上がったとして、現在もう少し高価(1kg当たり2000円台)
な豆を使って焙煎し、従来法との比較を行っているところです。
分かった事1.焙煎による重量減
焙煎条件 従来法(auvercraft機) 「空気吹き込み焙煎法」
1ハゼ+2分(ハイ・ロースト) 14.0%(豆:ケニア/AA) 14.7%(豆:パナマ/SHBママエステート)
2ハゼ直後(シティ・ロースト) 16.9%(ドミニカ) 17.6%(エチオピア/イルガチェフ)
2ハゼピーク(フレンチ・ロースト) 22.3%(ブラジル/ブルボン) 24.0%(インドネシア/マンデリンG-1)
これより、焙煎法による重量減の差は、フレンチ・ローストの辺りで際立ってくるらしい事が解りました。
分かった事2.その他
上記焙煎のエチオピア/イルガチェフ(所謂「モカ」)で、従来法には無かった独特の強い香りが
出ている事が分かりました。
以上、私の新しい焙煎に対する取り組みについてお話ししました。
この「空気吹き込み焙煎法」を思いついた時は、それほど期待していた訳でもありませんでしたが、
想定以上の効果が期待出来そうに思えてきました。
この方式の検討をもう少し進めてゆきたいと思っているところです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます