珈琲焙煎豆は、焙煎後保存中も状態が緩やかに
変化している。
それは、焙煎豆の香りも徐々に変化していくし、
フレンチローストあたりでは日につれて油が浮かんで
くることからも感ずる事が出来る。
それをもう少し定量的に評価できないかと思い、
焙煎豆をフラスコに密閉してその圧力変化を測定
してみた。
用いた試料は次の二つである。
①豆種:マンデリン、焙煎度:フレンチロースト
生豆200gを焙煎し、冷却後焙煎豆80gをフラスコ#1に入れた。
②豆種:ブラジル、焙煎度:ハイシティロースト
生豆200gを焙煎し、冷却後焙煎豆80gをフラスコ#2に入れた。
Ⅰ.圧力変化の測定
圧力変化の様子を次に示す。
上の青線が①、下の赤線が②である。
線は、単調増加とは異なるが、これは圧力計の読みをプロットしたもので
室温、大気圧の補正を加えていない事が主因と思う。
但し、これらも測定はしてあり(大気圧は簡易アネロイド気圧計)、
第Ⅱ節の計算では使用している。
これより、48時間当たりでは変化は落ち着くように見える。
これは、焙煎後48時間あたりが旨いという定説とも合致する
ように思える。
Ⅱ.放出ガス量の計算と、放出ガス種の検討
2.1 放出ガス量
細かい計算は煩雑なので省略するが、
フラスコの空隙の値を得るために前回のお話で得た焙煎豆の
比重を用いている。
結果だけ記すと、放出ガス量は焙煎豆10gあたり
① 2.42x10^-4 mol/10g
② 1.61x10^-4 mol/10g
となる。
2.2 放出ガス中炭酸ガスの割合
炭酸ガス用のガス検知管は手持ちがなくなってしまっている。
これは「テック・ジャム」で購入できるが(10本入り2000円)
検知管を使わない評価法を開発した。
そのアレンジを下図に示す。
小フラスコに入っている白い粉は「バラライム」(R)である。
これは、水酸化カルシウム及び水酸化バリウムからなるCO2吸収剤で
笑気麻酔循環システムで呼気中のCO2吸収などに用いられるもので
これもかって簡易代謝測定器の開発で購入したものの残りである。
バラライムによる炭酸ガスの吸収速度は極めて早く、小フラスコを
振りながら吸収させると10秒程度で完了する。
この大きいフラスコに焙煎豆を入れ約70時間後に測定した事になる。
手順は
1. 小フラスコを減圧にする。
2. コックの操作で大フラスコ中の気体を小フラスコに移送し、
直ちに移送をストップする。
移送直後の圧力は、大フラスコで測定する。p0
(小フラスコ中の圧力変化は非常に早い)
3. 小フラスコを振りながらCO2を吸収させ、圧力が落ち着いたら
その値p1 を求め、p0-p1 からCO2濃度を推定する。
少し操作が煩雑なのが欠点で、①の測定は旨く行ったが、②では
コックの操作ミスでガスを放出させてしまい失敗している。
これも計算過程は省略し、①の測定結果のみ記す。CO2放出量は
7.1x10^-5 mol/10g
これより、放出ガス中のCO2 の割合を求める事が出来る。
0.71/2.42 = 29.3%
放出ガスの残りの成分は、測定手段を持ち合わせていないので
諦めるしか無さそうだ。
2.3 当初存在していた酸素の消費量
これは、酸素用のガス検知管(北川式 159SA)がまだ残っていたので
それで測定した。
①のO2濃度は、17%の値を得ている。
大気中のO2濃度は23%であるから、6%消費された事になる。
これを10gの焙煎豆あたりに換算すると
6.05x10^-5 mol/10g
となる。
この値を2.2の値と比較すると85%の値が得られ、次の事が言えると思う。
酸素1mol が豆中の炭素(多分不飽和脂肪酸など活性化されたもの)
と反応して炭酸ガス1molを発生させると仮定すると、
炭酸ガスの発生の大部分は大気中の酸素と豆中の炭素の反応で発生しているが、
そうでない反応、豆中種の反応によっても発生している可能性もある。
Ⅲ.要約
1.焙煎後の保存中にもガスの発生は続くが、48時間あたりでほぼ
発生は落ち着く。
2.発生ガス中炭酸ガスの割合は、フレンチローストの場合、29.3%の値を
得ている。
3.この炭酸ガス発生の大部分は大気中の酸素と豆中種との反応によるもの
である。
4.発生ガスの約70%は、豆中種同士の反応によるもので、
その発生種の解明は興味のあるところだが、今回の検討はココまでとする。
変化している。
それは、焙煎豆の香りも徐々に変化していくし、
フレンチローストあたりでは日につれて油が浮かんで
くることからも感ずる事が出来る。
それをもう少し定量的に評価できないかと思い、
焙煎豆をフラスコに密閉してその圧力変化を測定
してみた。
用いた試料は次の二つである。
①豆種:マンデリン、焙煎度:フレンチロースト
生豆200gを焙煎し、冷却後焙煎豆80gをフラスコ#1に入れた。
②豆種:ブラジル、焙煎度:ハイシティロースト
生豆200gを焙煎し、冷却後焙煎豆80gをフラスコ#2に入れた。
Ⅰ.圧力変化の測定
圧力変化の様子を次に示す。
上の青線が①、下の赤線が②である。
線は、単調増加とは異なるが、これは圧力計の読みをプロットしたもので
室温、大気圧の補正を加えていない事が主因と思う。
但し、これらも測定はしてあり(大気圧は簡易アネロイド気圧計)、
第Ⅱ節の計算では使用している。
これより、48時間当たりでは変化は落ち着くように見える。
これは、焙煎後48時間あたりが旨いという定説とも合致する
ように思える。
Ⅱ.放出ガス量の計算と、放出ガス種の検討
2.1 放出ガス量
細かい計算は煩雑なので省略するが、
フラスコの空隙の値を得るために前回のお話で得た焙煎豆の
比重を用いている。
結果だけ記すと、放出ガス量は焙煎豆10gあたり
① 2.42x10^-4 mol/10g
② 1.61x10^-4 mol/10g
となる。
2.2 放出ガス中炭酸ガスの割合
炭酸ガス用のガス検知管は手持ちがなくなってしまっている。
これは「テック・ジャム」で購入できるが(10本入り2000円)
検知管を使わない評価法を開発した。
そのアレンジを下図に示す。
小フラスコに入っている白い粉は「バラライム」(R)である。
これは、水酸化カルシウム及び水酸化バリウムからなるCO2吸収剤で
笑気麻酔循環システムで呼気中のCO2吸収などに用いられるもので
これもかって簡易代謝測定器の開発で購入したものの残りである。
バラライムによる炭酸ガスの吸収速度は極めて早く、小フラスコを
振りながら吸収させると10秒程度で完了する。
この大きいフラスコに焙煎豆を入れ約70時間後に測定した事になる。
手順は
1. 小フラスコを減圧にする。
2. コックの操作で大フラスコ中の気体を小フラスコに移送し、
直ちに移送をストップする。
移送直後の圧力は、大フラスコで測定する。p0
(小フラスコ中の圧力変化は非常に早い)
3. 小フラスコを振りながらCO2を吸収させ、圧力が落ち着いたら
その値p1 を求め、p0-p1 からCO2濃度を推定する。
少し操作が煩雑なのが欠点で、①の測定は旨く行ったが、②では
コックの操作ミスでガスを放出させてしまい失敗している。
これも計算過程は省略し、①の測定結果のみ記す。CO2放出量は
7.1x10^-5 mol/10g
これより、放出ガス中のCO2 の割合を求める事が出来る。
0.71/2.42 = 29.3%
放出ガスの残りの成分は、測定手段を持ち合わせていないので
諦めるしか無さそうだ。
2.3 当初存在していた酸素の消費量
これは、酸素用のガス検知管(北川式 159SA)がまだ残っていたので
それで測定した。
①のO2濃度は、17%の値を得ている。
大気中のO2濃度は23%であるから、6%消費された事になる。
これを10gの焙煎豆あたりに換算すると
6.05x10^-5 mol/10g
となる。
この値を2.2の値と比較すると85%の値が得られ、次の事が言えると思う。
酸素1mol が豆中の炭素(多分不飽和脂肪酸など活性化されたもの)
と反応して炭酸ガス1molを発生させると仮定すると、
炭酸ガスの発生の大部分は大気中の酸素と豆中の炭素の反応で発生しているが、
そうでない反応、豆中種の反応によっても発生している可能性もある。
Ⅲ.要約
1.焙煎後の保存中にもガスの発生は続くが、48時間あたりでほぼ
発生は落ち着く。
2.発生ガス中炭酸ガスの割合は、フレンチローストの場合、29.3%の値を
得ている。
3.この炭酸ガス発生の大部分は大気中の酸素と豆中種との反応によるもの
である。
4.発生ガスの約70%は、豆中種同士の反応によるもので、
その発生種の解明は興味のあるところだが、今回の検討はココまでとする。