いよいよオバマ氏が民主党の大統領候補になりました。
その前に、コリン・パウエルやコンドリーザ・ライスも活躍しています。
その米国における人種問題、米国は移民の国だから多々人種問題はありますがここでは
黒人問題、の変遷を米画(主としてアカデミー作品賞とその候補作品)から見てみました。
アカデミー作品賞とその候補作品も全部見たわけでは有りませんが、最近のものから
遡ってほぼ1955年あたりまでの殆どを見た上でのお話です。
”そのはじめに「手錠のままの脱獄(1958)」があるのには象徴的な意味を感ずる事が出来ます。
即ち、米国に於ける白人と黒人は言わば鎖で繋がれた存在で、好きでも嫌いでも繋がれた
状態で生きていかなければならない存在なのです。”(敏翁)
1.手錠のままの脱獄(1958)
豪雨のハイウェイで1台の囚人護送車がハンドルを切り損ない崖から転落した。
死者はなかったが白人のジャクソン(トニー・カーティス)と黒人のカレン(シドニー・
ポワチエ)の2囚人が脱走した。2人は互いに手首と手首を4フィートの鎖でつながれて
いたが、心は双方とも相手に対する人種的偏見と憎悪で固まっていた。
この二人が最後に和解するまでを描いた作品。
(以下 ■=受賞、□=ノミネートを意味する。"allcinema" から採ったもの)
アカデミー賞 1958年
□ 作品賞
□ 主演男優賞 トニー・カーティス
シドニー・ポワチエ
□ 助演男優賞 セオドア・バイケル
□ 助演女優賞 カーラ・ウィリアムズ
□ 監督賞 スタンリー・クレイマー
■ 脚本賞 ネイサン・E・ダグラス
ハロルド・ジェイコブ・スミス
■ 撮影賞(白黒) サム・リーヴィット
□ 編集賞 Frederic Knudtson
次の「アラバマ物語」については既に何回か語っていますので、感想などは省略します。
1930年代のディープ・サウスの状況が良くわかる作品です。
2.アラバマ物語(1962)
不況の風吹く1932年、南部のアラバマ州。幼い息子と娘を抱える弁護士フィンチに、
暴行事件で訴えられた黒人トムの弁護の任が下る。だが偏見根強い町の人々は黒人側に
付いたフィンチに冷たく当たるのだった……。映画はフィンチの子供たちを通して、父親
の苦難や町の横暴を極めて客観的に描く事に成功しており、問題意識を振りかざさず、
しんみりと心に染み入らせるものになっている。
アカデミー賞 1962年
□ 作品賞
■ 主演男優賞 グレゴリー・ペック
□ 助演女優賞 メアリー・バダム
□ 監督賞 ロバート・マリガン
■ 脚色賞 ホートン・フート
□ 撮影賞(白黒) ラッセル・ハーラン
□ 作曲賞 エルマー・バーンスタイン
■ 美術監督・装置賞(白黒) Alexander Golitzen 美術
Henry Bumstead 美術
Oliver Emert 装置
次の作品は、進歩的と言われる白人でも自分の娘が黒人を選んだときの戸惑いが
良く描かれています。
3.招かれざる客(1967)
世界的にその名を知られる黒人医師ジョン(ポワチエ)はハワイで知り合った白人女性
ジョーイ(C・ホートン)と人種の壁を越えて結婚を誓い合い、互いの両親の許しを得る
ためサンフランシスコのドレイトン家を訪れる。最初戸惑っていた母も、娘の喜ぶ様子を
見て次第に祝福する気になるが、だが父マットはそうはいかない。彼は人種差別反対を
自ら経営する新聞の論調としてきたが、いざ自分の娘が黒人と結ばれるとなると心境は
複雑だ。
アカデミー賞 1967年
□ 作品賞
□ 主演男優賞 スペンサー・トレイシー
■ 主演女優賞 キャサリン・ヘプバーン
□ 助演男優賞 セシル・ケラウェイ
□ 助演女優賞 ビア・リチャーズ
□ 監督賞 スタンリー・クレイマー
■ 脚本賞 ウィリアム・ローズ
□ 音楽(編曲賞) フランク・デ・ヴォール
□ 美術監督・装置 Robert Clatworthy 美術
Frank Tuttle 装置
□ 編集賞 Robert C. Jones
次は時代がだいぶ飛んで、公民権法制定直前のディープ・サウスの状況を
描いた作品。
4.ミシシッピー・バーニング(1988)
時代設定は公民権法が制定される前の1964年。アメリカ南部のミシシッピ州で3人の
公民権活動家が行方不明となる。それを調査するために、2人のベテランFBI捜査官
(ウオードとアンダーソン)が公民権運動家の失踪した田舎町に捜査に行く。
ところが、その町では人種差別が公然と行われており、さらに事件の捜査を開始した二人
に対し街のKKKや警察等が捜査の妨害を図ろうとする。しかし、2人は失踪した3人の行方
を究明しようと試みるのと同時に、人種差別主義者も追いつめていく。
この映画では、ウィレム・デフォー演じる米北東部出身のFBI捜査官が、ロバート・ケネディ
の命により人種差別の根強く残る南部の田舎町へ救世主のごとく現れて孤軍奮闘するが、
これは史実に反するとハワード・ジンら歴史学者に批判された。
実際にはFBIも司法省も公民権運動家の保護にはあまり積極的ではなく、むしろ公民権運動家
がリンチされているのに遭遇しても干渉せず黙って見ていることが多かったという批判もある。
”それが歴史の真実だろうが、「アラバマ物語」の時代とは明らかに変わってきている事が
分かります。”(敏翁)
アカデミー賞 1988年
□ 作品賞
□ 主演男優賞 ジーン・ハックマン
□ 助演女優賞 フランシス・マクドーマンド
□ 監督賞 アラン・パーカー
■ 撮影賞 ピーター・ビジウ
□ 音響賞 Robert Litt
Elliot Tyson
Richard C.Kline
Danny Michael
□ 編集賞 Gerry Hambling
次は、ほのぼのとした友情の物語。
5.ドライビング Miss デイジー(1988)
白人の老婦人と黒人の運転手の心の交流と友情を25年の時の流れの中で描くドラマ。
「完全に白人側の視点で語られたこの物語を“友情”として描くということで、白人には
いかに物事を自分たち中心に考える者が多いのかがよくわかる。」(allcinema)という批判
”もあるが、白・黒融和を模索する一つの道と言える”(敏翁)。
アカデミー賞 1989年
■ 作品賞
□ 主演男優賞 モーガン・フリーマン
■ 主演女優賞 ジェシカ・タンディ
□ 助演男優賞 ダン・エイクロイド
■ 脚色賞 アルフレッド・ウーリー
□ 美術(監督)賞 Bruno Rubeo
□ 美術(装置)賞 Crispian Sallis
■ メイクアップ賞 Manlio Rocchetti
Lynn Barber
Kevin Haney
□ 編集賞 Mark Warner
最後に、これはアカデミー賞とは全く関係の無い映画だが、大きな歴史の転換点
となったキング牧師活躍の始まり、即ちアラバマ州モントゴメリー に於ける
「バス ボイコット事件」を描いた映画を挙げる事とする。
6.ボイコット/キング牧師の闘い(2001)
1955年12月1日、アラバマ州モントゴメリーにて一人の女性が逮捕された。
その女性の名前はローザ・パークス、罪は黒人の彼女がバスにて白人の客に席を譲ら
なかった為。モントゴメリーの活動家や聖職者の黒人がすぐに集まり、逮捕に反対する
為バスボイコットをする事に決定した。そしてモントゴメリー改善協会を設立し、一年前
にモントゴメリーの教会に来たばかりの若いマーティン・ルーサー・キング・ジュニア
(ジェフリー・ライト)を代表に就任させて、差別との戦いを始めたのだった.
ローザ・パークスという健全で強い女性と、マーティン・ルーサー・キングという雄弁
でカリスマのある人が、同じモントゴメリーに居た。
しかもわずか27歳のキング牧師は、バスボイコットが起きるたった1年前にモントゴメリー
に来ている。
”これこそが現代の「奇跡」というものだろう。
これが公民権運動のスタートとなり、現在のオバマの登場にまで発展していく契機となって
行ったのだと思う。「アラバマ物語」と比べて見るとその変化は、驚くべきものである。
この映画はTV放映のみのものらしいが、この問題に関心を持たれる人にとっては必見の映画
だと思う。”(敏翁)
その前に、コリン・パウエルやコンドリーザ・ライスも活躍しています。
その米国における人種問題、米国は移民の国だから多々人種問題はありますがここでは
黒人問題、の変遷を米画(主としてアカデミー作品賞とその候補作品)から見てみました。
アカデミー作品賞とその候補作品も全部見たわけでは有りませんが、最近のものから
遡ってほぼ1955年あたりまでの殆どを見た上でのお話です。
”そのはじめに「手錠のままの脱獄(1958)」があるのには象徴的な意味を感ずる事が出来ます。
即ち、米国に於ける白人と黒人は言わば鎖で繋がれた存在で、好きでも嫌いでも繋がれた
状態で生きていかなければならない存在なのです。”(敏翁)
1.手錠のままの脱獄(1958)
豪雨のハイウェイで1台の囚人護送車がハンドルを切り損ない崖から転落した。
死者はなかったが白人のジャクソン(トニー・カーティス)と黒人のカレン(シドニー・
ポワチエ)の2囚人が脱走した。2人は互いに手首と手首を4フィートの鎖でつながれて
いたが、心は双方とも相手に対する人種的偏見と憎悪で固まっていた。
この二人が最後に和解するまでを描いた作品。
(以下 ■=受賞、□=ノミネートを意味する。"allcinema" から採ったもの)
アカデミー賞 1958年
□ 作品賞
□ 主演男優賞 トニー・カーティス
シドニー・ポワチエ
□ 助演男優賞 セオドア・バイケル
□ 助演女優賞 カーラ・ウィリアムズ
□ 監督賞 スタンリー・クレイマー
■ 脚本賞 ネイサン・E・ダグラス
ハロルド・ジェイコブ・スミス
■ 撮影賞(白黒) サム・リーヴィット
□ 編集賞 Frederic Knudtson
次の「アラバマ物語」については既に何回か語っていますので、感想などは省略します。
1930年代のディープ・サウスの状況が良くわかる作品です。
2.アラバマ物語(1962)
不況の風吹く1932年、南部のアラバマ州。幼い息子と娘を抱える弁護士フィンチに、
暴行事件で訴えられた黒人トムの弁護の任が下る。だが偏見根強い町の人々は黒人側に
付いたフィンチに冷たく当たるのだった……。映画はフィンチの子供たちを通して、父親
の苦難や町の横暴を極めて客観的に描く事に成功しており、問題意識を振りかざさず、
しんみりと心に染み入らせるものになっている。
アカデミー賞 1962年
□ 作品賞
■ 主演男優賞 グレゴリー・ペック
□ 助演女優賞 メアリー・バダム
□ 監督賞 ロバート・マリガン
■ 脚色賞 ホートン・フート
□ 撮影賞(白黒) ラッセル・ハーラン
□ 作曲賞 エルマー・バーンスタイン
■ 美術監督・装置賞(白黒) Alexander Golitzen 美術
Henry Bumstead 美術
Oliver Emert 装置
次の作品は、進歩的と言われる白人でも自分の娘が黒人を選んだときの戸惑いが
良く描かれています。
3.招かれざる客(1967)
世界的にその名を知られる黒人医師ジョン(ポワチエ)はハワイで知り合った白人女性
ジョーイ(C・ホートン)と人種の壁を越えて結婚を誓い合い、互いの両親の許しを得る
ためサンフランシスコのドレイトン家を訪れる。最初戸惑っていた母も、娘の喜ぶ様子を
見て次第に祝福する気になるが、だが父マットはそうはいかない。彼は人種差別反対を
自ら経営する新聞の論調としてきたが、いざ自分の娘が黒人と結ばれるとなると心境は
複雑だ。
アカデミー賞 1967年
□ 作品賞
□ 主演男優賞 スペンサー・トレイシー
■ 主演女優賞 キャサリン・ヘプバーン
□ 助演男優賞 セシル・ケラウェイ
□ 助演女優賞 ビア・リチャーズ
□ 監督賞 スタンリー・クレイマー
■ 脚本賞 ウィリアム・ローズ
□ 音楽(編曲賞) フランク・デ・ヴォール
□ 美術監督・装置 Robert Clatworthy 美術
Frank Tuttle 装置
□ 編集賞 Robert C. Jones
次は時代がだいぶ飛んで、公民権法制定直前のディープ・サウスの状況を
描いた作品。
4.ミシシッピー・バーニング(1988)
時代設定は公民権法が制定される前の1964年。アメリカ南部のミシシッピ州で3人の
公民権活動家が行方不明となる。それを調査するために、2人のベテランFBI捜査官
(ウオードとアンダーソン)が公民権運動家の失踪した田舎町に捜査に行く。
ところが、その町では人種差別が公然と行われており、さらに事件の捜査を開始した二人
に対し街のKKKや警察等が捜査の妨害を図ろうとする。しかし、2人は失踪した3人の行方
を究明しようと試みるのと同時に、人種差別主義者も追いつめていく。
この映画では、ウィレム・デフォー演じる米北東部出身のFBI捜査官が、ロバート・ケネディ
の命により人種差別の根強く残る南部の田舎町へ救世主のごとく現れて孤軍奮闘するが、
これは史実に反するとハワード・ジンら歴史学者に批判された。
実際にはFBIも司法省も公民権運動家の保護にはあまり積極的ではなく、むしろ公民権運動家
がリンチされているのに遭遇しても干渉せず黙って見ていることが多かったという批判もある。
”それが歴史の真実だろうが、「アラバマ物語」の時代とは明らかに変わってきている事が
分かります。”(敏翁)
アカデミー賞 1988年
□ 作品賞
□ 主演男優賞 ジーン・ハックマン
□ 助演女優賞 フランシス・マクドーマンド
□ 監督賞 アラン・パーカー
■ 撮影賞 ピーター・ビジウ
□ 音響賞 Robert Litt
Elliot Tyson
Richard C.Kline
Danny Michael
□ 編集賞 Gerry Hambling
次は、ほのぼのとした友情の物語。
5.ドライビング Miss デイジー(1988)
白人の老婦人と黒人の運転手の心の交流と友情を25年の時の流れの中で描くドラマ。
「完全に白人側の視点で語られたこの物語を“友情”として描くということで、白人には
いかに物事を自分たち中心に考える者が多いのかがよくわかる。」(allcinema)という批判
”もあるが、白・黒融和を模索する一つの道と言える”(敏翁)。
アカデミー賞 1989年
■ 作品賞
□ 主演男優賞 モーガン・フリーマン
■ 主演女優賞 ジェシカ・タンディ
□ 助演男優賞 ダン・エイクロイド
■ 脚色賞 アルフレッド・ウーリー
□ 美術(監督)賞 Bruno Rubeo
□ 美術(装置)賞 Crispian Sallis
■ メイクアップ賞 Manlio Rocchetti
Lynn Barber
Kevin Haney
□ 編集賞 Mark Warner
最後に、これはアカデミー賞とは全く関係の無い映画だが、大きな歴史の転換点
となったキング牧師活躍の始まり、即ちアラバマ州モントゴメリー に於ける
「バス ボイコット事件」を描いた映画を挙げる事とする。
6.ボイコット/キング牧師の闘い(2001)
1955年12月1日、アラバマ州モントゴメリーにて一人の女性が逮捕された。
その女性の名前はローザ・パークス、罪は黒人の彼女がバスにて白人の客に席を譲ら
なかった為。モントゴメリーの活動家や聖職者の黒人がすぐに集まり、逮捕に反対する
為バスボイコットをする事に決定した。そしてモントゴメリー改善協会を設立し、一年前
にモントゴメリーの教会に来たばかりの若いマーティン・ルーサー・キング・ジュニア
(ジェフリー・ライト)を代表に就任させて、差別との戦いを始めたのだった.
ローザ・パークスという健全で強い女性と、マーティン・ルーサー・キングという雄弁
でカリスマのある人が、同じモントゴメリーに居た。
しかもわずか27歳のキング牧師は、バスボイコットが起きるたった1年前にモントゴメリー
に来ている。
”これこそが現代の「奇跡」というものだろう。
これが公民権運動のスタートとなり、現在のオバマの登場にまで発展していく契機となって
行ったのだと思う。「アラバマ物語」と比べて見るとその変化は、驚くべきものである。
この映画はTV放映のみのものらしいが、この問題に関心を持たれる人にとっては必見の映画
だと思う。”(敏翁)