敏翁のシルバー談義

敏翁の興味のスパンは広いのですが、最近は健康談義から大型TVを含むITと「カラオケ」「珈琲」にシフトしています。

脱酸素処理による珈琲抽出速度の制御

2011-07-26 06:48:17 | お酒とコーヒー
 前回、焙煎24時間後に挽いた珈琲粉を『高機能ガス袋に
 脱酸素剤と共に封入』(これを以下「脱酸素処理」と呼ぶ事にします)
 すると、エスプレッソ機による抽出の速度が大幅に遅くなる現象を
 発見した事をお話しました。

 その後、この現象をより詳細に検討し現象論としてですがほぼ全貌を把握
 できたと思うので、一部不備な点もありますが、お話する事にします。

 実験結果を表に纏めたものをご覧に入れます。

 実験1、3.1、3.2、3.3を除き、エスプレッソ機に掛ける粉の量は 8.0~8.2gに制御。

 実験当初初は、チャージする粉の量も、抽出量も目見当でした(表中<>内
 の数字の部分)が、途中からチャージする量の制御も抽出量の測定も
 電子天秤でかなり精密に行いました。
 時間の制御にはストップウオッチを使用しています。

 
 デロンギ社のマニュアルによると、8~10gの珈琲粉を抽出時間20秒で、
 30ccの抽出液を得るのが標準とあります。
 
 表より分かった要点を列挙すると次のようになるかと思います。
 ① 私の使っているミル カリタC-90では最も細挽きにしても
   粉量8gでは抽出速度が速すぎる。(メッシュ調整が不十分? 実験2)
 ② 焙煎後10~24時間大気中保存後、脱酸素処理を行うと
   粉量8gでも標準に近づくようだ。(この辺りの実験は精度不十分だが)
 ③ 粉挽き後の脱酸素処理の抽出速度減少効果は、豆の処理効果より
   極めて大きく、且つ焙煎後の大気中保存時間が短いほど効果が
   大きい。
 ④ 焙煎後の大気中保存が長時間になると、脱酸素処理の効果は
   大幅に減少する。(実験3.5&4.5)
 ⑤ 粉挽き後の脱酸素処理の効果は、脱酸素状態を中止しても
   暫くは保存される。(実験4.2の備考)
   
 
 本報告は、今までは抽出速度の制御は、粉量、挽きの細かさ、
 粉のプレスの強さによるとされていた(上記マニュアルによる)のだが、
 それに加えて、脱酸素処理がある事を発見、その現象のほぼ全貌が
 明らかになった事の報告です。

 この現象の物理化学的解釈の見通しは全く立っていませんが、
 実用上の応用範囲はかなり広いのではないかと思われます。
 
 最後に以上の実験条件のエスプレッソ抽出液をいずれもアイスコーヒー
 にして呑んで見たが(ちょっと呑みすぎ)、
 私の好みには、焙煎後24時間後に細挽き後脱酸素処理した粉8gを
 エスプレッソ抽出したものが一番合っているように感じています。




ガスバリア袋(3) 珈琲粉の保存/処理

2011-07-18 15:58:10 | お酒とコーヒー
 前回お話した高機能ガスバリア袋「ハイバリア彊美人」と
 脱酸素剤を使って珈琲粉の保存/処理の検討を行っています。
 まだ検討途中ですが、既に新しい現象を発見していますので
 それらについてお話したいと思います。

 上記袋に珈琲粉と脱酸素剤を封入した一例をご覧にいれます。
 これは「ハイバリア彊美人」XV-1420一袋に各8g強の粉と脱酸素剤を
 4つ封入した写真です。



 珈琲粉は、ブラジル豆(詳しくはセントンアマレロ)をフレンチ
 ローストしたもので、ロースト約24時間後()エスプレツソ用に
 細挽きし、直ちに封入したものです。
 手順は
 1.袋を縦にシール
 2.左右下部に各8g強の粉と脱酸素剤1袋を入れ、横にシール。
   シール部分に粉が付く事に注意が必要、
   付き過ぎるとシールの防気性が保障できなくなる。
 3.上部左右に同様に粉と剤を入れ、シールすれば完了。
   (写真では上部は脱酸素剤が見えませんが入っています)

 :前に焙煎後、大気中の酸素と焙煎で生じた中間生成物との
   反応が約48時間程度は続く事をお話しました。
   今回は、その途中で酸素を遮断する事で上記反応を阻止
   した場合に起こる現象も見てみたいと思っていました。

 この封入した粉を24時間後から半日に一回程度、
 エスプレッソ機(デロンギ社EC200N)にて抽出を行い
 その結果、新しい現象を発見したのです。
 
 焙煎豆を細挽きし、直ちにエスプレッソ機に掛けた場合は
 標準抽出時間25秒で約40cc程度の抽出液
を得る事が出来ます。
 これは、市販の「ポッド」を用いても同様です。
 それが、上記封入粉を用いると、抽出速度が極端に遅くなり、
 50秒抽出しても30ccしか抽出液を得る事が出来なかったのです。
 この現象は、3回繰り返してもほぼ同様なので再現性は確かな様です。

 何が起こっているのか、今のところは全く見当がつきません。
 焙煎から封入までの時間を変えるなどこれから種々検討を
 計画中です。
 また忙しくなりそうです。

 ただ、この効果の効用について実行している事があるので
 それについて触れてみます。
 真夏の珈琲は、アイスコーヒーとしたいものです。
 この場合、なるべく濃厚な抽出液約40cc程度をアイスキューブを入れた
 タンブラーに直接注ぎ、急冷と氷の融解量の最適化が求められるのですが、
 それには、この「ガスバリア袋+脱酸素剤」処理した珈琲粉
 とエスプレッソ機の組み合わせは最適のように思えます。
 標準的なエスプレッソより濃厚な抽出液を得る事が出来ると思うからです。

 若干アイスコーヒーについて補足します。
 焙煎は、フレンチロースト以上が望ましいとされていますが、
 それに耐えられる豆の種類には限定がある様です。
 私の手持ちでは、ブラジルとマンデリンが良いとされています。
 エチオピア(イルガチェフ)は、手持ちの書籍では可としていますが、
 購入した店の情報では、シティローストまでとしています。
 この豆を、ペーパードリップでも豆量を15g程度に増やし、少量の
 湯で抽出すればOKとしているところも多いようですが、
 私は、8g程度でエスプレッソにする方が、氷の融解量のコントロール
 の点でも、経済性の点でもベターだと思います。
 ただエスプレッソ機が無くてはなりませんが。

ガスバリア袋(2)

2011-07-10 15:39:34 | お酒とコーヒー
 掲題に関し、前回お話したものより高性能のものを見つけました。
 橘屋商事㈱(高知にある)が取り扱っているもので
 「ハイバリア彊美人」という商品です。
 大きさはいろいろ有りますが、最小単位ではその中のタイプ
 XV-1420 200枚を販売しているのです。
 外形は140mm x 200mm の3方シール、一端開放の袋です。
 この構造は NY/EVOH/NY/接PE/PE で全厚は80μです。
 NYはナイロンですが、ポイントはEVOHエチレン-ビニルアルコール共重合体
 で、プラスチックの中で最高の気体遮断性をもつ機能性樹脂です。 

 酸素透過度の値を、商社経由でメーカー(クロリン化成㈱)
 に問い合わせたところ、
 4.8cc/m2・24hr・atm という値を得ました。
 この単位は広く使われているものですが、今まで私が勝手に
 使っていた単位に換算するとこの値は
 4.2x10^-6 cc/cm2・hr from air
 となります。
 前回お話したKOPガス用袋の 6.3 x 10^-5と比べると
 一桁以上優れている事が分かります。

 それで、既にお話した私の開発した測定法で測定してみました。
 非常に小さな値なので、測定系の残留酸素に細心の注意を払いながら
 測定してみましたが、私の測定法では値が小さすぎて測定限界を超えて
 いて、ここはメーカーの言う値を信用して良いものとしました。
 もう少し細かく、やや専門的な説明を加えると、使い捨てカイロ粉を入れた
 減圧フラスコに測定対象であるガスバリア袋から透過された酸素を含む窒素
 ガスを導入する際に気体の断熱膨張が起こり温度が一時的に変動するために
 気圧の値が安定しない問題があります。それらを考慮すると一日程度の透過
 実験では測定限界は~1x10^-5cc/cm2・hrあたりになると思われます。


 この4.2x10^-6という値は、この袋に大気から一年間に透過する酸素は15cc程度
 である事を示していて、酸素吸収能力50ccの脱酸素剤を一袋入れれば、封入時20ccの
 酸素が混入したとしても2年間は脱酸素状態を保持出来る事に相当するものです。

 これだけガスバリア性がある袋ではいろいろと応用は考えられますが、
 考え付いたものを一つ紹介しましょう。
 それは、脱酸素剤の取り扱いに関するものです。
 脱酸素剤は、少量購入したとしても100袋~200袋を大きなガス袋に入れた形で
 販売して居ます。(私のは200袋)
 それを私のように少しづつ使うには、ガス袋のシールを切って使用量(私の場合は
 多くても数個)を取り出し手早くガス袋を再シールする必要があります。
 それを少量の脱酸素剤を区切ってシールした形で保存するようにするというものです。
 試作したものをご覧に入れます。
 これは「ハイバリア彊美人」XV-14201袋に脱酸素剤2個づつ6つに区分けして入れヒートシール
 で袋を6分割したものです。
 これで、使う時他に影響を与えずに脱酸素剤二つづつを取り出す事が出来るようになりました。

 








ガスバリア袋

2011-07-03 21:25:06 | お酒とコーヒー
 前回、ポリエチレンとポリプロピレン・フィルムの酸素透過性の測定
 (独自に開発した測定法による)の結果、これらのフィルムで作られた
 袋では、脱酸素剤と組み合わせても長期(一ヶ月以上)の脱酸素状態を保つのは
 困難な事をお話しました。
 
 その後の調査で、
 酸素などのガスの透過を抑制・防止する袋を「ガスバリア袋」と称し、
 いろいろな構造が開発されている事が分かりましたが、販売されているのは
 大口(例えば千枚単位)のものが殆どでした。
 しかし小口販売している店をやっと一つ見つけたので、そこで入手した
 製品についてその評価結果についてお話します。
 
 http://item.rakuten.co.jp/mamapan/508277
 楽天に出店している「ママの手作りパン屋さん」と言う店で販売している
KOPガス用袋<92 x 63 x 400mm> 20枚、価格 546円 (税込) 送料別 と言うものです。
 本来の目的は、パウンドケーキを脱酸素剤と共に包装するためのもののようです。
 袋の材質は KOP20/PE15/LLDF35 と表記されていますが、a)調査結果を踏まえて若干補足説明
 いたします。
 これは、KOP 20μ / ポリエチ 15μ / LLDF 35μ のラミネートフィルム
 を意味しているものと思います。
 KOPは、OPPの片面または両面にポリ塩化ビニリデン(PVDC樹脂、サラン樹脂)をコートしたもので、
 これを KコートOPP、つまりKOPと呼んでいます。
 PVDC樹脂をコートすることでガスバリアー性、防湿性、保香性などが優れたフィルムになります。
 OPPについても説明が要りますね。
 『ポリプロピレンフィルム(PPフィルム)
 オレフィンの一種ポリプロピレン(PP)を成型したフィルムは、比重の小ささや耐熱性・透明性
 などに優れ、さらには防湿性や燃焼による有毒ガス発生がない点などが評価されている。
 ただしガスバリア性には劣り、バリア層がコーティングまたはラミネートされている場合が多い。
 またヒートシール性にも劣るため、袋状に成型する際には接着部分にのみポリエチフィルムなどを
 コーティングする。
 延伸していないフィルム(CPPまたはIPPフィルム)は、パンや果物類、雑貨などの軽包装分野
 で採用されている。
 二軸延伸したフィルム(OPPフィルム)のうち熱固定を経ていないものは、熱により収縮する
 傾向が強いため、シュリンクフィルムとして使用される。
 一方で熱固定を行ったものは寸法安定性や耐水性・耐摩耗性などに優れ、1988年に
 オーストラリア建国200周年記念として初めて発行され、以後各国でも採用されたプラスチック
 製紙幣にも使用されている。PVDC樹脂を片面または両面にコーティングし、ガスバリア性や
 防湿性などを向上させたKコート(KOP)フィルムは包装用にて多用されている。』
 (ウィキペディアの「フィルム」より)
 LLDFは不明です。L-LDPEと言うのがあり、リニア低密度ポリエチレンの事で
 これではないかと思います。安価でヒートシール性に優れているとされています。
 
 この袋を長さ15cmほど切り取って、前回同様ガス口を付け、ヒートシール後大気からの
 酸素の通気性を測定しました。
 その結果を、前回のポリエチ、ポリプロのデータと合わせて示します。
            厚さ(μ)   大気からの酸素通気性(cc/cm2・hr)
 ポリエチフィルム  45      1.54 x 10^-3
 ポリプロフィルム  50      1.03 x 10^-3
 KOPフィルム    70      6.3 x 10^-5

上表の様に、KOPフィルムの酸素通気性は大幅に向上されている事が分かります。
 
 例えば、これを15cm角に切り取りヒートシールしたものの酸素通気性は、
 一ヶ月当たり約20ccとなり、脱酸素剤(酸素吸収能力 50cc)を一個封入すれば、2ヶ月程度は
充分脱酸素状態を保持出来る事が分かります。
私の取りあえずの用途は、珈琲焙煎豆の保存や、珈琲粉の輸送当たりですから、
これで充分な訳です

 尚、ガスバリアフィルムの中には数年程度のバリアに対応するものも開発されています。
 使い捨てカイロ(ホカロン、ホッカイロなど)の外袋などに使われているのはその種のもの
 だと思います。
 上記酸素の通気性測定にはホッカイロの粉を使っているのですから、ここでも既に
 ガスバリア袋にはお世話になっているわけです。