敏翁のシルバー談義

敏翁の興味のスパンは広いのですが、最近は健康談義から大型TVを含むITと「カラオケ」「珈琲」にシフトしています。

脱酸素剤能力の温度依存性の測定

2011-08-27 20:11:00 | お酒とコーヒー
 掲題のテーマの私にとっての実用上の意味は次の通りです。
 ① 脱酸素処理
   (焙煎珈琲豆またはそれをグラインドした粉を高機能ガス袋に
   脱酸素剤と共に封入し、一定時間保持する事)
   は、豆には余り効果がなく、粉にして処理する必要がある事が
   分かった。
 ② しかし、粉の長期保存には問題があり、出来るだけ
   低温(実用的には冷凍庫)で保存したい。
 ③ 以上に関係して、常温と冷凍温度(-18℃)における
   脱酸素剤の酸素吸収速度を知りたかったのである。
   ガス袋に粉を脱酸素剤と共に封入し、直ちに冷凍庫に入れても
   酸素は吸収されるのか? 脱酸素剤には水分が入っていてそれが
   酸素吸収反応に重要な役割を果たしているのだが、
   -18℃では水分は完全に氷になっているはずでそれでも
   酸素吸収能力はあるのか? が問題意識の発端であった。

 測定法 
予備的な2,3の検討の後、下記実験を行った。
   
  ガス口付きバリア袋に脱酸素剤2袋を封入し、
   チェックバルブと注射器システムで空気を300CC導入、
   a.常温で数時間放置後、再び上記システムで残存気体の量を測定し
     その差から酸素吸収速度を求める。
     測定値:~19cc/hr
   b.直ちに冷凍庫に入れ、22時間後に取り出し、直ちに別のバリア袋
     (脱酸素剤封入無し)に中味を移し変え、常温に復帰後、再び上記
     システムで残存気体の量を測定しその差から酸素吸収速度を求める。
     測定値:~2.0cc/hr
途中の移し変えは、常温に復帰する間(30分程度)の酸素吸収による
     測定誤差発生を低減するために念のため行ったものである。
     

   ガス口付きバリア袋に脱酸素剤2袋を封入しチェックバルブと注射器システム
   を連結した状態の写真をご覧にいれます。
 


 考察
  .ガス袋に珈琲粉60グラムを脱酸素剤2袋と共に封入した場合の袋中の
    空気の量は~50cc、酸素の量は~11cc程度と推定できる。
  .これから、ガス袋に粉を脱酸素剤と共に封入し、直ちに冷凍庫に入れても
    6時間程度で袋中は完全な脱酸素状態になる事が推定される。
   




脱酸素処理による抽出速度の制御(2)

2011-08-15 15:24:28 | お酒とコーヒー
 前報(7月26)後も種々試行錯誤を重ねながら検討
 を行ってきましたが、現象的にはどうやら全体を把握できたように
 思える段階にきましたので、ここまでを纏めてお話する事にしたいと思います。
 以下に記す
  a.「脱酸素処理」は焙煎豆またはそれをグラインドした粉を高機能ガス袋に
   脱酸素剤と共に封入し、一定時間保持する事を意味し、
  b.「抽出量」は、エスプレッソ機(デロンギ社EC200N)のフィルターに8.0~8.5gの
   珈琲粉(カリタセラミックミルC-90の最小目盛りで細挽き)を押し固め、
   25秒間に抽出される液の量を意味します。

Ⅰ.分かった事
 ① この現象は、豆種には依らない。
   ブラジル、マンデリン、エチオピア種で確認。

 ② この現象は、エスプレッソ機による抽出で見られるが、
   ペーパードリツプでは、この場合は注入した湯の通過時間を
   観測する事になるが、通過時間にさして変化は見られない。
   
 ③ 焙煎後の豆に対する脱酸素処理の効果は極めて少ない。
   一例:ブラジル豆、フレンチロースト
      焙煎24時間後の抽出量=59.0cc
      この豆を脱酸素処理48時間後の抽出量=56.1cc
 ④ 焙煎豆をグラインドした粉に対する脱酸素処理の効果は極めて大きい。
   一例:豆と焙煎度は同上
      焙煎24時間後直ちにグラインド-->脱酸素処理
      それから24時間後の抽出量=17.3cc
      それから更に24時間後の抽出量=13.9cc
      それから更に48時間後の抽出量=15.1cc

Ⅱ.考察
  1.②より
   この現象はエスプレッソのフィルターに粉を押し固める
   状態が関係しているらしい事が分かる。
   多分、脱酸素処理によってバインダーになる物質(油脂?)が発生し
   それが粉を結合しているのではないかと思われる。
  2.③、④より
   「焙煎豆の保存中の物理化学的変化」(5月11日)に
   『炭酸ガスの発生の大部分は大気中の酸素と豆中の炭素の反応で発生しているが、
   そうでない反応、豆中種同士の反応によっても発生している可能性もある。』
   と記したが、その一つの傍証になっていると思われる。
  
   即ち、豆中種のひとつはフリーな酸素ガスで、ポーラスな焙煎豆にある
   空孔中に酸素ガスも存在し、それが豆中のある種(ある種の不飽和有機酸?)
   と反応する。
   その空孔は殆ど表面には繋がって無く、脱酸素処理は利かないが、グラインド
   により空孔の殆どは粉の表面に顔を出す事になり、空孔中の酸素ガスも
   脱酸素剤に吸収されるという仮説である。
   酸素と結合されないある種の物質はそのまま、又は脱酸素状態の下で他の種に
   変化し1.で言うバインダーの役割を果たす事になると思われる。
   
  3.できるだけ焙煎豆で保存したいと思い、焙煎豆を24時間後に脱酸素処理、
    これを冷凍庫(-18℃)に保持したが、常温保持と変わりは認められなかった。
    これはこの程度の低温化により酸素ガスとの反応速度を大幅に減少させることは
    出来ない事を意味している。
    本現象を利用するには、粉で脱酸素処理をするしか無さそうである。

  4.以上を踏まえて、美味しいアイスコーヒーにチャレンジしてみた。
    今のところベストは、焙煎24時間後にグラインドし直ちに脱酸素処理、
    24時間後(これはもっと短くても良いかもしれない)から
    10g程度の粉をエスプレッソ機に掛け、カップに目印をつけて約30ccを
    抽出するのが良さそうである。
    以後は、タンブラーに氷を入れたものにこの抽出液と冷たいミルクを注ぎ
    甘味料を適宜(私はパルスイート2袋)加えれば出来上がりである。