敏翁のシルバー談義

敏翁の興味のスパンは広いのですが、最近は健康談義から大型TVを含むITと「カラオケ」「珈琲」にシフトしています。

映画 真夏の夜話(「フロストXニクソン」)

2009-08-26 10:43:48 | テレビ/メディア
 今年のアカデミー賞作品賞(候補作品を含めて5タイトル)のDVDがやっとレリースされ始めました。
 未だ本タイトル「フロストXニクソン」と「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」の2本ですが、
 いずれもtsutayaにレンタル予約してありましたが、本タイトルが昨日到着、深夜まで鑑賞しました。
 深夜までと言う意味は、映画そのもの(122分)とロン・ハワード監督による解説で2回見たからです。(解説は1.4倍速で見る事にしていますが)
 本タイトルは、今年のアカデミー賞では、
 □ 作品賞
□ 主演男優賞  フランク・ランジェラ
□ 監督賞     ロン・ハワード
□ 脚色賞      ピーター・モーガン
□ 編集賞
 と候補になりましたが、いずれも受賞する事は出来なかった作品ですが、今年のアカデミー賞関係では、一番見たかった作品でした。

 
『ウォーターゲート事件で辞任に追い込まれ、その後罪を認めることなく沈黙を守り通したニクソン元米国大統領。しかし辞任から3年後の77年、一人の英国人司会者デビッド・フロストが彼の単独TVインタビューを敢行する。
本作は全米中が注視したこの伝説のTVインタビューをテーマに、その舞台裏で繰り広げられた両者のブレーンを巻き込んでの熾烈な駆け引きと緊迫のトーク・バトルの模様を、名匠ロン・ハワード監督がスリリングに描き出した実録ドラマ。
原作は、本作の脚本も手掛けたピーター・モーガンの舞台劇で、同舞台でそれぞれニクソンとフロストを演じた「スーパーマン リターンズ」のフランク・ランジェラと「クィーン<ブレア首相を演じた>」のマイケル・シーンが映画版でもそのまま同じ役に起用された。』(allcicema)

 私の感想は、次のようなものです。
 ① 本タイトルは近来にない傑作でしよう。
   私は、本タイトルは、米英伝統のディスカッション・ドラマの一つで
   傑作だった「12人の怒れる男たち」、「バージニア・ウルフなどは怖くない」、などに並ぶとも劣らぬ傑作だと思います。
 ② フランク・ランジェラはあまり馴染の無い俳優(舞台俳優としてトニー賞を3回受賞しています。その一つはこの舞台劇で2007年主演男優賞)で、顔もニクソンには似ていないのですが、似させる努力はせず そんな事より表情などによる心理描写でニクソンを表現しているのに感心しました。
   しかし、主演男優賞が獲れなかったのは、もしかすると似ていない点にあったのかとも思ったりしました。ここが演劇と映画の表現の差かもしれません。
   演劇では観客との距離からそれほどの違和感に繋がらないのが、映画のアップではやはり気になると言う事があると思います。
   そっそりに似せてアカデミー主演賞を取った俳優は沢山居ますので。
   例えばみんな主演女優賞ですが思い浮かぶのは次の人たちです。
   マリオン・コティヤール  『 エディット・ピアフ~愛の讃歌~ 』 (2007)
   ヘレン・ミレン 『クィーン』(2006)
   ニコール・キッドマン『めぐりあう時間たち』(2002)
   
 ③ 監督の解説から、本タイトルと舞台と実際にあったトーク・バトルとの差が
   良くわかります。
    その例を一つお話します。
   その功績については最近再評価が進んでいるニクソンですが、その心の闇は
   伺い知れないものがあり、それを旨いエピソートで描いています。
   それが作品と解説両方を見る事で良くわかりました。
   その話を紹介します。
   バトル・トークは4回に分けて行われたのでしたが、その3回終了後、深夜ニクソンがフロストに長電話をかけ、心の中にある上流階級に対するコンプレックスと闘争心などをぶちまける(例えばライバルであったケネディを「セックス中毒」と罵ったり)のだが、その事を記憶していないとのエピソードです。
   解説によるとこれは実際には無かったのですが、ニクソンの現役時代深夜に電話を例えばキッシンジャーなどにかけ、翌朝には覚えていないという事がしばしば有ったのは事実だそうで、それをピーター・モーガンが舞台にも映画にも取り入れて成功したという事です。

  今回はこの辺にしておきます。

映画 真夏の夜話(ゴルフの映画)

2009-08-24 06:23:08 | テレビ/メディア
 私の今年の8月は、ゴルフも休みにし、TVとレンタルDVDでの
映画鑑賞の時間が増えていますが、今回は、ゴルフの映画のお話をしましょう。

 スポーツ映画では、ボクシングに傑作が多いようです。
 例えば
 「傷だらけの栄光」(1956)ポール・ニューマンの熱演が光りますが、主演男優賞の
             候補にも上がらなかったのが不思議です。
 ○「レイジング・ブル」(1980) ロバート・デ・ニーロ主演男優賞。
 ◎「ロッキー」(1976)     シルヴェスター・スタローンの出世作。
 ◎「ミリオンダラー・ベイビー」(2004)  ヒラリー・スワンク主演女優賞。
                     クリント・イーストウッド監督賞。
  などがあります。
  尚、◎はアカデミー作品賞受賞作品、○は同候補作品

 また、野球も傑作がいくつかあります。
 ○「打撃王」(1942)  ルー・ゲーリックをゲーリー・クーパーが主演。
 ○「フィールド・オブ・ドリームス(1989)
 「夢を生きた男/ザ・ベーブ」 (1992)など
 
 しかし、ゴルフでは傑作と言われるようなものは見当たらないようです。
 そのゴルフで最近放映された映画が2本あります。
次の2本です。

①ティン・カップ(1996)WOWOW
監督: ロン・シェルトン
出演: ケヴィン・コスナー
挫折したゴルファーが、愛する女性のために再生を賭けて全米オープンに挑戦する姿
を描いたラブ・ストーリー。主演は「ボディガード(1992)」以来5年ぶりに恋愛もの
に挑んだケヴィン・コスナーで、代役は一切なしでこなした見事なスウィングが見もの。(以上goo映画)

②バガー・ヴァンスの伝説(2000)NHKBS2
監督: ロバート・レッドフォード
出演: ウィル・スミス、マット・デイモン
参戦した戦争でのショックから、ゴルフから離れ荒んだ生活をしていた
青年ゴルファーが、不思議なキャディーとの交流を通して、再びゴルフと向き合い、
失った人生を取り戻すまでを描いたドラマ。(以上allcinema)

 いずれも傑作にはやや程遠いと言わざるをえませんが、ゴルフ好きの方には
一見の価値はあると思います。

 私は、①のケヴィン・コスナー のスイングがアマチュアとしてはまあまあですが、
映画の中で7番アイアンで220ヤード飛ばすシーンがあるのですが、あのスイングでは
とても無理にしか見えないなどと気にしながら見ていました。


映画 真夏の夜話(キネマ旬報世界ベスト100-②)

2009-08-23 06:47:13 | テレビ/メディア
 今回も長文の掲載になります。
 ゴルフ好きの私も、友人から後期高齢者が猛暑の中でのゴルフは極めて危険
 との忠告をしばしば頂いていて8月中は大人しくしています。
 それで暇を持て余し、今まで鑑賞した映画について少し纏めて見る時間が
 出来たと言うわけなのです。

 さて今回は、「ヌーヴェルヴァーグ」から「アメリカン・ニューシネマ」のお話をする事に
 しましょう。
 ヌーヴェルヴァーグ(Nouvelle Vague)は1950年代末に始まったフランスにおける映画運動
 です。はじめは短編映画などから始まったようですが、
 『ヌーヴェルヴァーグの評価をより確固たるものにしたのはゴダールの『勝手にしやがれ』
(1959年)でした。即興演出、同時録音、ロケ中心というヌーヴェルヴァーグの作品・作家に共通した手法が用いられると同時にジャンプカットを大々的に取り入れたこの作品は、その革新性により激しい毀誉褒貶を受け、そのことがゴダールとヌーヴェルヴァーグの名をより一層高らしめることに結びつきました。1959年には『勝手にしやがれ』を始めとするヌーヴェルヴァーグを代表する公開されたため、この年は「ヌーヴェルヴァーグ元年」と言われています。』(ウィキペディア)
 
以下◎:アカデミー作品賞受賞作品、●:アカデミー作品賞候補作品、
   ★:パルム・ドール受賞作品、☆:キネマ旬報世界ベスト100
 を示します。


ジャン=リュック・ゴダール(勝手にしやがれ<13位>、気狂いピエロ<41位>)


☆勝手にしやがれ(1959)
主演はジャン=ポール・ベルモンドとジーン・セバーグ。
商業的娯楽映画という概念をひっ繰り返し、これまでの映画文法や常識といったものまでもことごとくブチ壊した、映画史の分岐点とも言える記念碑的作品。映画公開時には、驚きと困惑を持って日本でもセンセーショナルを呼び、それはアメリカのニュー・シネマにまで様々な影響を及ぼした。本作品でゴダール監督はヌーヴェル・ヴァーグの旗手として、不動の地位を築くに至る。またこの作品でのジャン=ポール・ベルモンドの演技は、ヌーヴェル・ヴァーグ作品の持つ頽廃的な雰囲気と非常にマッチし、それは同じくゴダールの傑作「気狂いピエロ」へと引き継がれる事となる。(allcinema)


☆気狂いピエロ(1965)
アンナ・カリーナ、ジャン=ポール・ベルモンド主演
映画的文法に基づいたストーリーというものはなく、既成の様々な映画の要素を混ぜ合わせ、光・色・音等を交差させて、引用で組み立てられた作品。「勝手にしやがれ」のジャン=ポール・ベルモンドを主演にして、ただただ破滅へと向かってゆく主人公の姿を描いた本作は、今にしてなおファンの間では“伝説”とされる、最も過激で刹那的なアナーキー映画である。
主人公が顔中にダイナマイトを巻き付けて自爆するラストシーンは圧巻であり、同時に“美しい”映画史に残る名場面。(allcinema)


 このヌーヴェルヴァーグの発生は「実存主義」的な考えと深く関連していると言われていますが、私は、特に
 アルベール・カミュ(Albert Camus, 1913年11月7日 アルジェリア - 1960年1月4日パリ)の小説『異邦人』(仏: L'Etranger 1942年刊)の与えた影響に着目したいと思っています。
 
 カミュが46歳の若さでノーベル文学賞を受賞したのは、この作品によるところが大きいと言われます。邦訳は窪田 啓作(くぼた けいさく、1920年 - )新潮社 1951年
 但し、カミュはジャン=ポール・サルトルと共同で文学活動を行ったが、1951年に刊行した評論『反抗的人間』における共産主義批判を契機として雑誌『現代』においてサルトルらと論争になったことで決裂した。かつて実存主義者とみなされることが多かったが、実際には実存主義提唱者サルトルなどと文学的内容は異なっており、本人も実存主義者とみなされることを強く否定していた。(ウィキペディア)


 私も「異邦人」を1951年邦訳発売直後に読みましたが、
 その主人公が殺人の理由を取調べ官に問われて「太陽のせい」と答えるなど、新しい人間像の出現にこれからはこんな人間の世界になってゆくのかと強い衝撃を覚えた事を記憶しています。
 それは現在では秋葉原の通り魔事件など、当たり前になってしまっているわけですが。
 「勝手にしやがれ」や「気狂いピエロ」の主人公はまさしく「異邦人」の主人公の後続者でしょう。
 尚、「異邦人」は、1967年に監督ルキノ・ヴィスコンティ、主演マルチェロ・マストロヤンニで映画化されているそうですが、ビデオ化はされてなく見る事が出来ないのが残念です。

 ヌーヴェルヴァーグでは、キネマ旬報世界100にはさらに次の作品が入っています。
フランソワ・トリュフォー(☆突然炎のごとく<51位>)1961
 この作品はレンタル予約中なのでここでは内容には触れないで置く事にします。


 このヌーヴェルヴァーグは、ベトナム戦争などで社会が揺らいでいた米国にも強い影響を与え、所謂「アメリカン・ニューシネマ」が作られていきます。
 アメリカン・ニューシネマ(英: New Hollywood)とは、1960年代後半 - 70年代にかけてアメリカで製作された、反体制的な人間(主に若者)の心情を綴った映画作品群を指す日本での名称で、以下のような作品群です。


●☆<32位>『俺たちに明日はない』- Bonnie and Clyde (1967)
(監督:アーサー・ペン 出演:ウォーレン・ベイティ/フェイ・ダナウェイ)
世界恐慌時代の実在の銀行ギャング、ボニーとクライドの無軌道な逃避行。
ニューシネマ第1号作品。
●☆<51位>『卒業』- The Graduate (1967)
(監督:マイク・ニコルズ 出演:ダスティン・ホフマン/アン・バンクロフト)
サイモン&ガーファンクルの『ミセス・ロビンソン』や『サウンド・オブ・サイレンス』も印象的。
☆<41位>『ワイルドバンチ』- The Wild Bunch (1968)
(監督:サム・ペキンパー 出演:ウィリアム・ホールデン/アーネスト・ボーグナイン/ロバート・ライアン) 西部を荒らしまわる盗賊団ワイルドバンチの壮絶な最期。
☆<51位>『イージー・ライダー』- Easy Rider (1969)
(監督:デニス・ホッパー 出演:ピーター・フォンダ/デニス・ホッパー/
ジャック・ニコルソン) 社会的束縛を逃れて旅を続ける若者たちに迫る迫害の手。
●☆<51位>『明日に向って撃て!』- Butch Cassidy and the Sundance Kid (1969)
(監督:ジョージ・ロイ・ヒル 出演:ポール・ニューマン/ロバート・レッドフォード/キャサリン・ロス) 西部を荒らしまわった実在のギャング、ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドの友情と恋をノスタルジックに描く。 (ウィキペディア)
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 ヌーヴェルヴァーグでは、そのほかあまり作品を知りませんが、
 アメリカン・ニューシネマではその後も傑作が続いています。
 ◎『真夜中のカーボーイ』(1969) 、★●『M★A★S★H マッシュ』 (1970)
 ◎『フレンチ・コネクション』 (1971) 、『ダーティハリー』 (1971)
 ★☆<94位>『スケアクロウ』 (1973) 、◎☆<51位>『カッコーの巣の上で』 (1975)

 しかし、その活動はまた社会の落ち着きが戻ってくるのに対応して終焉を迎えます。
 最後の作品は1976年の★●☆<32位>「タクシードライバー」だとされています。
 この映画は同年パルムドールを取ったのですが、アカデミー賞では作品賞、主演男優賞(ロバート・デ・ニーロ)、助演女優賞(ジョディ・フォスター)と候補になりながら何も取れなかったのです。
 そして同年の◎「ロッキー」が作品賞を取っていますが、これは正しくアメリカ・ドリームの復活を意味するものといえると思います。

 今回はこの辺で終わりとしましょう。



映画 真夏の夜話(キネマ旬報世界ベスト100-①)

2009-08-22 09:45:14 | テレビ/メディア
 既にお話しました(2月21日掲載「アカデミー賞とパルム・ドール」)パルム・ドール受賞作品も見られるものは総て鑑賞完了してしまいました。
 やや細かく言うと、アカデミー賞では作品賞は第一回(1928)以降の全作品(今年の作品賞「スラムドッグ$ミリオネア」はまだDVDがレリースされていないので未鑑賞)、候補作品も第13回以降はDVD化されるかTV放映されたもの総てを鑑賞完了しました(今年の4候補作品は未鑑賞)。
 次にカンヌ映画祭の最高賞であるバルム・ドールも同様DVD化されるかTV放映されたもの総てを鑑賞完了しております。

 それで今年春以降、世界全体の映画(邦画を除く)を比較的公平な立場でランキングしていると思われるキネマ旬報が1999年10月に発表した「世界ベスト100」(実際は同一ランキングがあり、130作品)のリストで、アカデミー賞とパルム・ドールから抜けている作品の鑑賞に向かいました。
 これはまだ鑑賞を完了していませんが、現状を含めたリストを添付します。
 このリストには、アカデミー賞やパルム・ドールとの関係も記入しておきました。
 下記下線部をクリックすればご覧頂けます。

 
キネマ旬報世界ベスト100



 今回から、このキネマ旬報のリストの中から選んだ作品(赤☆を付けておきました)を中心に2~3回に分けてお話をする事にしたいと思います。
 
 今回は、先ず中国の陳凱歌(チェン・カイコー)監督の2作品から話を始めましょう。
 
 上表の中で非ヨーロッパの作品として最高位を獲得しているのが、陳凱歌の
「さらば、わが愛/覇王別姫」<21位>である事が分かります。

 気がついた事は、本表には日本ではファンの多い韓国の作品は選ばれていない事です。
 韓国の作品は未だ、パルム・ドールも獲って居ませんからこの好みは日本人選者の偏見に依るものではないと思います。
 私は個人的には、韓国作品は表現にあまりに通俗文学的な匂いが強すぎる点に評論家などに嫌われるポイントがあるように思っております。


チェン・カイコー(「さらば、わが愛/覇王別姫」<21位>、「黄色い大地」<68位>)


「さらば、わが愛/覇王別姫」(1993)
 日中戦争や文化大革命などを背景に、近代中国の50年を、時代に翻弄される京劇役者の小楼や蝶衣の目を通して描いた大作。
覇王別姫とは、四面楚歌で有名な項羽と虞美人を描いた京劇。
1993年の第46回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した。(以上ウイキペディア)

 演ずることに全てを捧げた二人の男の波乱に満ちた生涯を、京劇『覇王別姫』を
軸に描いた類稀なる傑作。(中略)
全編に漂う何とも言えない遣り切れなさに、胸はかきむしられる。(allcinema)

 という事で、本作品は私も素晴らしいと思いましたが、次の作品はもっとお勧めです。

「黄色い大地」(1984)
本作品は陳凱歌監督のデビュー作です。
 第5世代監督の旗手である陳凱歌監督が、1982年に北京電影学院を卒業した直後の、1984年に監督デビューし、世界に衝撃を与えた最も有名な作品がこの『黄色い大地』。
そして1985年にロカルノ国際映画祭で銀豹賞を受賞し、「中国映画のニューウェーブここにあり!」と世界に知らしめた意義深い作品。私はこの話を何回も聞き、本でもいろいろなもので読んでいたが、劇場でこの映画を観たのはこれがはじめて。そして、今まで私がもっていたイメージどおりの力強さと美しさに感動!(映画評論)

地方に伝わる民謡の収集に陝西省を訪れた八路軍の兵士。世話になる農家には唄のうまい少女がいた。いつしか彼女は兵士に幼い恋心を抱くのだが……。'30年代の山村を舞台に、まだ見ぬ世界とその世界の存在を知らせてくれた男に対する少女の憧憬を、中国映画のヌーヴェルヴァーグ陳凱歌が詩情豊かに描く。荒涼とした風景の中にこだまする少女の唄、その哀感と情感の響きがなんとも言えない切なさで胸に迫る。(allcinema)

 この作品は見ていない人が多いと思いますが、お勧めします。
 
 以上の清清しい作品のあとに、どろどろとした異常性愛を含む退廃の美を
追求したルキノ・ヴィスコンティの作品群を取り上げる事にしたいと思います。


ルキノ・ヴィスコンティ(「地獄に堕ちた勇者ども」<51位>、「ベニスに死す」<68位>)


「地獄に堕ちた勇者ども」(1969)
ヴィスコンティの「ドイツ三部作」(*)の巻頭を飾る作品。

(*)「ドイツ三部作」とは本作品、「ベニスに死す」(1971)、及び「ルートヴィヒ 」(1973)
出演: ダーク・ボガード、ヘルムート・バーガー
ナチス勃興期のドイツを舞台にした鉄鋼財閥エッセンベック一家の退廃と没落の物語。
鉄鋼王の孫の役で,近親相姦・女装・幼女姦など特異なキャラクターでヘルムート・バーガーの名を世界中に知らしめた出世作。
ディートリッヒばりの女装で登場し,映画『嘆きの天使』の主題歌「ローラ」を歌う。
ラストでは死においやった母親の醜悪な姿の前で,ナチス式の敬礼をする軍服姿のバーガーの容貌は狂気に満ちている。(「Filmography of Helmut Berger」より)

「ベニスに死す」(1971)
1971年度第24回カンヌ国際映画祭で、25周年記念賞を受賞した。
トーマス・マン作の同名小説の映画化。
静養のためヴェネツィア(ベニス)を訪れることにした老作曲家(ダーク・ボガード)は、その道中、船の中でふと出会った少年・タジオ(ビョルン・アンドレセン)に理想の美を見出す。
ある日ベニスの街中で消毒が始まる。尋ねると疫病が流行しているのだという。やがて自らも感染した彼はまるで死に化粧のように白粉と口紅を施し、タジオの姿を求めてヴェニスの町を徘徊する。
疲れきった彼は体を海辺のデッキチェアに横たえながら友人とはしゃぐタジオの姿を見つめ、波光がきらめく中笑みを浮かべつつ死んでゆく。流れた涙で化粧は醜く落ちていく…。
輻輳するビスコンティの表現を紐解かないと、この映画は『単なる同性愛を扱った映画』でしかない。
(ウィキペディア)

 私の見た印象も上記『』を大きく超える事は出来ないものでした。


 最後に本表にも、パルム・ドールにも無いが、「ドイツ3部作」の中では私は最高だと思う「ルートヴィッヒ」についても触れる事にしたい。

「ルートヴィヒ」(1973)
バイエルン王ルートヴィヒ2世(ヘルムート・バーガー)の生涯を史実に沿った形で描く歴史大作。
中期以降のヴィスコンティ作品に見られる絢爛豪華な貴族趣味を極限まで高めた作品で、一切妥協のない舞台装置は観客の目を奪う。
独善的な芸術家ワーグナーとの不安定な繋がりや、ホモセクシュアルを含めた耽美的な愛憎劇も織り込まれた非常に重厚な作品である。(ウィキペディア)

 19世紀半ば,美と芸術とデカダンスを愛し波乱に満ちた生涯を送り狂死したといわれる、ババリアのルートヴィヒ2世。「バーガー以外にこの役を理解して演じられる者は誰もいないだろう」とヴィスコンティをして言わしめた。
バーガーの為だけに作られたような絢爛たる大作であり彼もまたヴィスコンティの寵愛と期待に鬼気迫る演技で応えた。(「Filmography of Helmut Berger」より)


 ヘルムート・バーガーの「地獄に堕ちた勇者ども」における演技もこの「ルートヴィヒ」における演技も鬼気迫るものがありますが、これからバーガーとヴィスコンティの仲の異常さも伺えるものがあります。

 ヴィスコンティは、生涯に渡りバイセクシュアルであることをオープンにしており、アラン・ドロンとの関係の噂もあり、ヘルムート・バーガーに至っては、死後に自らを実質的な未亡人と称したことすらある。父親もバイセクシュアルであったという。

ヘルムートとヴィスコンティの仲は公然に知られる事で、ヘルムート曰く、ヴィスコンティを誰よりも師として尊敬し、時に父親以上に父親的な存在であり、そして恋人でもあったという。あまりの仲の深さに、特にヘルムートが姉として慕ってたロミー・シュナイダーからは”バーガー嬢”、あるいは”バーガー夫人”とからかわれた位であったという。(ウィキペディア)

 以上から私がヴィスコンティの作品から一つを選ぶなら「ルートヴィヒ」になります。
 これは、私がワグナー好きであったり、西独に行った時(昭和54年)、当時駐在していた東芝のMさんにポルシェに乗って「ノイ・シュバンシュタイン城」(ルートヴィヒ2世が建てたもの)につれて行ってもらった事や、57年「ルートヴィヒ」が岩波ホールで公開されたとき会社を抜け出して見に行ったりした追憶も関係しているのかも知れません。