Ⅰ.サンタマウラのゲイシャ
久しぶりの珈琲「ゲイシャ」に関する新しいお話です。
昨年5月、東芝材遊会の友人たちと珈琲屋バッハで、パナマのドンパチ農園の
ゲイシャを呑み、大いに気に入り、100g3090円で焙煎豆を購入し種々の検討を
致しました。本ブログ2014-05-25掲載 『「バッハ」de「ゲイシャ」』
この検討は更に続けたいと思っていたのですが、この豆は高価過ぎるので何か
方法は無いかと探していたところ、今年になって掲題のニカラグアのサンタマウラ農園
のゲイシャがワイルド珈琲から発売されている事を発見しました。
500g 2590円(税込)と通常のもの(例えばブラジルのブルボン種)の3倍以上の価格ですが、
バッハの価格の1/5程度(昨年スターバックスから発売した豆も300g1万円とほぼ同価格)で
この程度ならお買い得かもしれないと思い500g購入してみたのです。
ワイルド珈琲によると、これはパナマのゲイシャ種を譲り受けたもので
「30年前のブルーマウンテンにそっくりな風味と煎り豆の形状で、浅煎りで甘酸っぱさと
マスカットのような風味がブルーマウンテンを超える美味しさです。」
とあります。
尚、調べてみるとサンタマウラ農園はニカラグァにある大きな農園で、数種類の
スペシャルティ・珈琲を生産している名の通ったところの様です。
この生豆を使って、最適焙煎の検討を行ってみました。
イメージは、既にご覧に入れている図(図1)です。
(田口護のスペシャルティ珈琲大全」NHK出版 2011発行に掲載)
Ⅱ.検討方法
図1のピーク(図中 ベストポイント 中煎り①)を、拙い私の焙煎技術(装置を含む)で探って見ようと言う試みです。
ワイルド珈琲によるこの豆に対するお勧めの焙煎度合いは、ミディアムロースト~シティーロースト です。
焙煎の度合いは通常は色で判断するのですが、今回は定量的に微細に制御するために
焙煎による重量減(%)で表わすこととしました。
私は常々焙煎の前後の豆の重量を電子天秤で測定して重量減%を求めています。
その結果は、大凡次のようになっています。
浅煎り<------------------------------------------------------>深入り
ミディアム ハイ シティ フルシティ フレンチ イタリアン
重量減(% ) 12 15 17 19 21
また焙煎度合いの細かい制御の為に今回行った新しい試みは、再焙煎、再々焙煎
を多用した事です。
これは浅目に焙煎後、重量減%を測定し、目標とする重量減%まで短い焙煎を1回、
それでも足りないときは更に1回追加するものです。
そのようにして焙煎した豆は少なくとも24時間放置後、11gをレギュラー・グラインド、
150cc~90℃の湯で抽出し、甘みとしてのパルスイートとクリープをいずれも小匙半分
加えてテイスティングしました。
また、このような特殊な珈琲の焙煎には、2年ほど前に工夫した焙煎機にダンパー機能
を付加した効果が現れるのでないかという気がしたのでそれも実行してみました。
(これは技術者の勘ともいうべきもので、大当たりでした。私の勘はまだ確かだと自信を深めた次第です)
尚、ダンパー機能の検討については、私のブログに掲載してあります。
主なものは
ダンパー付き手動焙煎機 2012-10-28掲載
焙煎機のダンパー機能 アウベルクラフト社の考え方など 2012-12-26掲載
Ⅲ.結果
検討結果を纏めて下図(図2)に示します。
横軸は正確な値ですが、縦軸は感覚だけを頼りにした評価で全くの任意単位によるものです。
結果の説明
①図1のピークをバッハで飲んた記憶としてそれに比べると見劣りしますが、焙煎を
最適化すると、可成り良質な酸味を得られる事が分かりました。
②私の使っているアウベルクラフト社の遠赤コーヒー焙煎キット
をそのまま使った場合と、アルミ箔でダンパー機能を付加した場合で
大きな差が表れる事を発見しました。
これは驚くべき事で、簡易型の焙煎機にダンパー機能を付けても大した効果は
見いだされないことが定説になり、そのような試みも下火になっていた現状
(ワイルド珈琲もダンパー付き手網焙煎器の宣伝は止めたらしい)
を見直す契機になるかもしれないと思います。
③私からの一番のお勧めは。ダンパー付重量減~12%あたりの焙煎です。
これは1ハゼ後約1分で冷却したものです。
バッハで飲んだものに最も近い(と言っても見劣りはします。値段が1/5ですから)
ものでしょう。
④通常の焙煎では~16%当たりのもので、これは程よい苦みも加わっていて
この方が好みと言う人も多いと思います。
これは再々焙煎品で1ハゼ後、20秒、30秒、25秒と焙煎を繰り返したものです。
一回でここへ持っていく条件は再度テストする必要があります。
Ⅳ.ゲイシャの謎
謎が二つあります。
a)図2において、酸味・焙煎度関係がダンパーの有無で大きく異なる理由。
通常は焙煎が浅いほど酸味が強いとされています。
珈琲店にあるような本格的焙煎機は当然ダンパー付ですから、本検討での
ダンパー付は正常と言えるものです。
ダンパーなしの場合に酸味のピークが深煎りにシフトする物理化学的モデルが
解りません。
b)ゲイシャの抽出液の酸味は液温が冷えてくると際立ってきます。
前にお話ししたこともありますが、
「ゲイシャ」の検討(1)酸味 2014-06-02掲載
クエン酸を使って酸味を合わせる事は出来ます。しかしこの液では酸味の
温度特性が異なりよりフラットです。
このゲイシャ抽出液酸味の温度特性の物理化学的モデルが分かりません。
いずれの謎もゲイシャ豆が極めて特異な成分を持っていることを示唆しているように
思えます。
この謎の究明は、精密評価装置(クロマトグラフとか質量分析機とか)を使えない
と不可能と思うので、専門家の解明を待つ次第です。
久しぶりの珈琲「ゲイシャ」に関する新しいお話です。
昨年5月、東芝材遊会の友人たちと珈琲屋バッハで、パナマのドンパチ農園の
ゲイシャを呑み、大いに気に入り、100g3090円で焙煎豆を購入し種々の検討を
致しました。本ブログ2014-05-25掲載 『「バッハ」de「ゲイシャ」』
この検討は更に続けたいと思っていたのですが、この豆は高価過ぎるので何か
方法は無いかと探していたところ、今年になって掲題のニカラグアのサンタマウラ農園
のゲイシャがワイルド珈琲から発売されている事を発見しました。
500g 2590円(税込)と通常のもの(例えばブラジルのブルボン種)の3倍以上の価格ですが、
バッハの価格の1/5程度(昨年スターバックスから発売した豆も300g1万円とほぼ同価格)で
この程度ならお買い得かもしれないと思い500g購入してみたのです。
ワイルド珈琲によると、これはパナマのゲイシャ種を譲り受けたもので
「30年前のブルーマウンテンにそっくりな風味と煎り豆の形状で、浅煎りで甘酸っぱさと
マスカットのような風味がブルーマウンテンを超える美味しさです。」
とあります。
尚、調べてみるとサンタマウラ農園はニカラグァにある大きな農園で、数種類の
スペシャルティ・珈琲を生産している名の通ったところの様です。
この生豆を使って、最適焙煎の検討を行ってみました。
イメージは、既にご覧に入れている図(図1)です。
(田口護のスペシャルティ珈琲大全」NHK出版 2011発行に掲載)
Ⅱ.検討方法
図1のピーク(図中 ベストポイント 中煎り①)を、拙い私の焙煎技術(装置を含む)で探って見ようと言う試みです。
ワイルド珈琲によるこの豆に対するお勧めの焙煎度合いは、ミディアムロースト~シティーロースト です。
焙煎の度合いは通常は色で判断するのですが、今回は定量的に微細に制御するために
焙煎による重量減(%)で表わすこととしました。
私は常々焙煎の前後の豆の重量を電子天秤で測定して重量減%を求めています。
その結果は、大凡次のようになっています。
浅煎り<------------------------------------------------------>深入り
ミディアム ハイ シティ フルシティ フレンチ イタリアン
重量減(% ) 12 15 17 19 21
また焙煎度合いの細かい制御の為に今回行った新しい試みは、再焙煎、再々焙煎
を多用した事です。
これは浅目に焙煎後、重量減%を測定し、目標とする重量減%まで短い焙煎を1回、
それでも足りないときは更に1回追加するものです。
そのようにして焙煎した豆は少なくとも24時間放置後、11gをレギュラー・グラインド、
150cc~90℃の湯で抽出し、甘みとしてのパルスイートとクリープをいずれも小匙半分
加えてテイスティングしました。
また、このような特殊な珈琲の焙煎には、2年ほど前に工夫した焙煎機にダンパー機能
を付加した効果が現れるのでないかという気がしたのでそれも実行してみました。
(これは技術者の勘ともいうべきもので、大当たりでした。私の勘はまだ確かだと自信を深めた次第です)
尚、ダンパー機能の検討については、私のブログに掲載してあります。
主なものは
ダンパー付き手動焙煎機 2012-10-28掲載
焙煎機のダンパー機能 アウベルクラフト社の考え方など 2012-12-26掲載
Ⅲ.結果
検討結果を纏めて下図(図2)に示します。
横軸は正確な値ですが、縦軸は感覚だけを頼りにした評価で全くの任意単位によるものです。
結果の説明
①図1のピークをバッハで飲んた記憶としてそれに比べると見劣りしますが、焙煎を
最適化すると、可成り良質な酸味を得られる事が分かりました。
②私の使っているアウベルクラフト社の遠赤コーヒー焙煎キット
をそのまま使った場合と、アルミ箔でダンパー機能を付加した場合で
大きな差が表れる事を発見しました。
これは驚くべき事で、簡易型の焙煎機にダンパー機能を付けても大した効果は
見いだされないことが定説になり、そのような試みも下火になっていた現状
(ワイルド珈琲もダンパー付き手網焙煎器の宣伝は止めたらしい)
を見直す契機になるかもしれないと思います。
③私からの一番のお勧めは。ダンパー付重量減~12%あたりの焙煎です。
これは1ハゼ後約1分で冷却したものです。
バッハで飲んだものに最も近い(と言っても見劣りはします。値段が1/5ですから)
ものでしょう。
④通常の焙煎では~16%当たりのもので、これは程よい苦みも加わっていて
この方が好みと言う人も多いと思います。
これは再々焙煎品で1ハゼ後、20秒、30秒、25秒と焙煎を繰り返したものです。
一回でここへ持っていく条件は再度テストする必要があります。
Ⅳ.ゲイシャの謎
謎が二つあります。
a)図2において、酸味・焙煎度関係がダンパーの有無で大きく異なる理由。
通常は焙煎が浅いほど酸味が強いとされています。
珈琲店にあるような本格的焙煎機は当然ダンパー付ですから、本検討での
ダンパー付は正常と言えるものです。
ダンパーなしの場合に酸味のピークが深煎りにシフトする物理化学的モデルが
解りません。
b)ゲイシャの抽出液の酸味は液温が冷えてくると際立ってきます。
前にお話ししたこともありますが、
「ゲイシャ」の検討(1)酸味 2014-06-02掲載
クエン酸を使って酸味を合わせる事は出来ます。しかしこの液では酸味の
温度特性が異なりよりフラットです。
このゲイシャ抽出液酸味の温度特性の物理化学的モデルが分かりません。
いずれの謎もゲイシャ豆が極めて特異な成分を持っていることを示唆しているように
思えます。
この謎の究明は、精密評価装置(クロマトグラフとか質量分析機とか)を使えない
と不可能と思うので、専門家の解明を待つ次第です。