敏翁のシルバー談義

敏翁の興味のスパンは広いのですが、最近は健康談義から大型TVを含むITと「カラオケ」「珈琲」にシフトしています。

日本のワイン

2014-04-05 14:59:38 | お酒とコーヒー
 前報に掲載しましたが、私が企画していた「ワインを楽しむ会」はフランスワインを
 主体としたものでしたが、昨年末の第5回で終了しました。
 しかし、会の皆さんから終了を惜しむ声も多々あり、日本のワインを主体とした
 再開の可能性について検討を始めているところです。


 
 Ⅰ. 山本 博著 「新・日本のワイン」
  その中で良い書籍に出会ったのでその紹介を含めたお話をしたいと思います。
 山本 博著 「新・日本のワイン」早川書房 2013年7月発行 2100円+税
 がそれです。

 その「はじめに」が本書の性格と日本のワインの現状を要約しているので
 添付します。
「はじめに」

 本書には日本の主要なワイナリーの紹介がありますが、私なりに大胆に要約すると
 次の様になります。
 ①本格的にワインと取り組むには資本力と忍耐が必要。
  それに充分応えてきたのは
  大手ワインメーカー、特にメルシャン(現在はキリン系列)、サントリー、
  マンズワイン(キッコーマン系列)あたり。
 ②各社日本固有の葡萄種も海外の品種(シャルドネやカルベネ・ソーヴィニヨン)
  も使った商品開発を行ってきて海外品種でもかなり良いところまで来ている。
 ③しかし、日本らしいワインとなると今のところ
  白ワイン用品種「甲州」を使ったものが世界に通用する域に達しつつある。

  その中では、
  メルシャンの「甲州きいろ香」、「甲州グリドグリ」
  サントリーの「登美の丘 甲州」
  マンズワインの 「リュナス 甲州 シュールリー」
  などがめぼしいところと思います。

  先ず「甲州」について本書は次のように解説しています。
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   甲州 Kosho
  日本古来種。 シルクロードを通して中国経由で伝来されたと考えられるヴィティス・ヴィニフェラ
 (ヨーロッパ系ワイン用ブドウ)。日本の風土で長く育ったので栽培が容易で、 耐病性がある。
  果皮は美しい薄赤紫色だが、果肉は白。生食とワイン兼用種。
  ワインにすると、おとなしいものになる。 特有の香りがあって、後味に苦味・収斂味が出てしまう
  きらいがある。勝沼の生産者の努力でこの欠点が克服され素晴らしいものが生まれつつある。
  世界に日本国産種として主張できるので、 山梨県が品質向上に努め、現在世界的に認知されるよう
  になった。
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 上記甲州ワインの中で特筆すべきは「甲州きいろ香」だと思います。
 その詳細は
 http://www.rakuten.co.jp/hidanosake/609593/1809576/ 
 をご覧になって頂きたいが、
 より要約されたものは
 https://www.chateaumercian.com/wine/koshu/kiiroka_2012.html
 で、そこから抜き出したものを掲載します。

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シャトー・メルシャン 甲州きいろ香 2012年
 Chateau Mercian Koshu Kiiroka

 日本固有のワイン用ブドウ『甲州』の隠れた香りのポテンシャルを、ワインの香りの世界的権威である
ボルドー大学デュブルデュー研究室とのプロジェクトにより引き出した、甲州ワインというジャンルに
おいて全く新しいスタイルを生み出したワインです。
あふれる柑橘果実様の香りとフレッシュな酸とのハーモニーをお楽しみください。
このワインの誕生にあたり技術指導をいただいた同研究室の故富永敬俊博士の著書『きいろの香り』
に登場する『きいろ』という名の青い鳥をラベルに描き、未来の甲州ワインの香りの象徴としました。

テイスティングコメント
淡い黄色。ライムやグレープフルーツなどの柑橘と共に、かぼす、すだちのような若干のピール感を伴う
和柑橘を連想させる香りも感じ取れる。中間には白い花や吟醸香にも似た清涼感溢れる爽やかな香りが全
を包み込む。また、アフターにはミネラル感とはじけるような微ガスを感じる。
グリーンサラダ、白身魚のお刺身はもちろんのこと、筍とワカメのあっさり煮、揚げ出し豆腐、サザエ
壷焼き、ハモや車エビなどうまみが感じられて奥行きのある味わいの料理、また、カボスなどの柑橘
をかけていただく天婦羅料理とも非常に相性が良い
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 このワインを購入して試飲しました。(ビックカメラで@2580円)
 上記テイスティングコメントどうりで飲んだ後味がさわやかで、
 皆さんにもお勧め出来るものです。

  Ⅱ. 富永敬俊著「きいろの香り」 

   上述の故富永敬俊博士の著書『きいろの香り』を横浜市立図書館から
 借りて読了しましたのでその報告です。
 富永敬俊 『きいろの香り』ボルドーワインの研究生活と小鳥たち フラグナンスジャーナル社発行
 2003-5-20 2800円+税
 カバー(左図)の裏には
 『ソーヴィニオン・ プランに秘められたカシスの芽の香り一
 そのチオール化合物をパッションフルーツからも発見!
 香りの閾値、香り量測定法の発見へと、ワインの本場フランスでその香りを科学的に紐解いていく。
   ●
 12年にわたり、ボルドー第二大学醸造学部において白ワイン独創的な研究アイデアと、
 成功と失敗を重ねる毎日がユーモラスに記されている 。 』
 とあり、
 カバー裏面の裏には
 『*書者紹介* 富永敬俊
  ◎ボルドー第二大学醸造学科修士課程入学以来、白ワイン醸造の奇才といわれるデゥ二・ デュブルデュ一
   教授に師事を仰ぎ、彼の元から日本人として初めてボルドー大学博士号(醸造学) 取得。
   博士課程での題材であったソー ヴィニオン・ プランのワイン・ アロマ研究に専念。 そしてその生成
   メカニズムの解明を通して多数の魅感的な香りを放つ物質を発見。
   ワインのフレーバー・ パイオケミストリーという新しい分野を確立した。
  ◎現在、白ワインの品種のみならず高品質なロゼ・ ワイン醸造法を探素する傍ら、
   赤ワインの香り物質の解明にも意欲的に取り組み、ボルドーの8つの第一級シャトーで組織される
   クラブ・ エイトとのプロジェクトが進行中。 (以下省略 )』
 とあります。
 
 しかし、富永敬俊博士はその後2004年からメルシャンと共同で「甲州きいろ香」の研究・開発を
 行ってきて、2008年4月、「シャトー・メルシャン 甲州きいろ香 2007」の発売に際して来日し、セミナー
 や試飲会を開いた後、8日夜(現地時間)にボルドーの自宅で突然、具合が悪くなり(心筋梗塞)、病院に運ばれて
 亡くなってしまってたのでした。

 これからと言うところでの突然の死去、博士の無念な思いを偲びつつ「甲州きいろ香」を飲みました。

 この本は勿論一般読者に解りやすく書かれていますが、研究の内容がかなり詳細に書かれていて
 我々の様な材料技術者の専門知識をある程度刺激しながら楽しめる読み物になっています。
 そういう本は滅多にはお目にかかれません。
 関心を持たれる方が居られたら図書館から借りて読まれる事をお勧めします。
 
 本書の主要部分を私なりに極めて大ざっぱに要約すると
 ①研究主体となる葡萄はボルドー白ワインの元であるソーヴィニオン・プラン。
 ②研究のツールの主体は、香り成分のガスクロによるタイムゾーン分離、特殊反応による分離精製
  と質量分析による同定。
 ③ソーヴィニオン・プランの香りの主体である
  カシスの香りの成分がメルカプト・ペンタノン(この発見は同研究室の先輩フィリップス博士)
  パッションフルーツの香り成分が、メルカプト・ヘキサノールとメルカプト・ヘキシルアセテート
  である事の発見と
  葡萄の果汁には匂わないプレカーサーの形で含まれていて、酵素の作用などで分解して上記香り成分
  となる事などの発見、
  およびそれらの知見のワイン醸造への応用開発
  ……
 などです。
 参考になるかどうかわかりませんが、本書から採った香り成分と、プレカーサーの一つの構造式を採録します。







 これらの経験が「甲州きいろ香」の開発に極めて有効だった事は容易に推定できるものです。

 書名にある「きいろ」の由来は
 http://www.rakuten.co.jp/hidanosake/609593/1809576/
 から抜き出しましょう。
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  研究がうまく進まなかった頃、小鳥の雛を拾いました。
  博士は、この雛をお家に連れて行き、夫人と共に大切に可愛がりました。
  ふわふわの綺麗な羽に包まれていることから「 きいろ 」と名付けました。
  ある時、博士の小鳥「 きいろ 」は、羽が抜けてゆき
  なんと数日後には、「 青い鳥 」に変身。 
  そして、しばらくすると「 きいろ 」から、ソーヴィニヨン・ブランの香りが
  することに富永博士は、気付きました。
  この香りを研究する博士のもとに、やってきた「きいろ」の偶然、
  かわいらしく、生活をともにした、この小鳥に勇気づけられました。
  それが、きっかけで、研究の難所を乗り切る事ができたそうです。
  幸せの青い鳥 「 きいろ 」は、富永博士に幸運を運んできたのですね。

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