ジッタン・メモ

ジッタンは子供や孫からの呼び名。
雑読本の読後感、生活の雑感、昭和家庭史などを織り交ぜて、ぼちぼちと書いて見たい。

【2012 暮らし雑感】<本> 【国難】 石破 茂 新潮社

2012年10月23日 | 鳶魚と江戸歩き

【国難】 石破 茂 新潮社


国難の時期を預かる政治家。
野田首相も石破幹事長も新宿の頑固親父を自慢する石原伸晃も、みんな昭和32年生まれだそうだ。
私は小学5年生だった。
彼らとは年がひとまわり以上違う。


石破茂。
国会中継でよく見かけるお顔だが、論拠を積み上げた上で質疑論駁に臨んでいるので、自民党嫌いだった私もこの人には好感を持てた。
注目していた議員だから、彼の「国難」は読んでみたいと思った。
本の自身肖像写真はアンパンマンになんとなく似ているが、眼が笑ってないところが違う。
すこし凄みまである。

タイトル「国難」といえば、私は3.11の時に感じた。
千年に一度の大震災と津波が同時に東日本を襲った。そして原発事故が発生。
ねじれ状態の政治状況下で、先行きの暗さへの想いがつのった。
まさに日本の「国難」と思ったし、これらの戦いと復興を「大戦争」と受け止め戦後初のオールニッポン非常時体制を国がとって臨むべきと思った。
非常事態に対する法の整備はまだないのだ。

しかし戦争といっても、そのものを体験していない世代が殆どだ。
4人に一人は65歳以上といっても戦争体験派はもはや少数派だ。
。だから自然大災害と原発事故への「戦争」という非常時体制もその対処もムリだったのかもしれない。
非常時という時局認識があれば容易に大連合は組めたし、組んでいればもう少し改革は進展を見ただろう。

「谷垣さんがダメなら石破さんという声がある」
震災直後、はじめて自民党本部宛にメールを出した。

ねじれてる場合かよ、大連立を組むべきと提言もしてみた。
何かをしなければ、という一庶民の痛切な想いもあった。



昭和32年生まれの石破さんたちは、東京オリンピックを小学校1年で体験してる。
職はあって、食べられ、やる気さえあれば苦学して高い教育も受けられる環境が育ってきた。
経済は右肩上がりにぐんぐん進み、冷戦はあっても日本を巻き込んだ戦争はなかった。
日本の治安は世界一で、安全であり長寿国でもあった。
そうした50年代の夢の時代を彼らが体験して今の日本がやってきた。

石破は今の日本の現状を

「narrow path」と捕らえた。

道は狭い。
選択肢の幅は狭い。
日本に残された時間は長くない。
だから今やるべきことをやらなければならない。


と状況を認識しその決意を語っていた。

非正規雇用で日本が覆われ、経済的理由から結婚もできず、経済展望も以前として先細りのトンネルの暗さだ。
また原発炉廃棄といってもその方法さえみつからない現実と共存している。
まっしぐらに進む高齢化社会の現実がある。
世界経済も欧州問題など袋小路に向かっている感じだ。

ご指摘の如くこれからの道は狭く、残された時間はない。
こどもたちや孫にツケをまわさないための、やるべきことをやらなければならない。
がんばって欲しいと石破にエールを送りたい。


彼は集団安全保障問題にかなりの頁を割いて持論を展開していた。
ここは、彼の持論が展開され説得性もあった。
「戦争を知っている世代がいなくなったなかでの未来の国の自衛をどうしていくのか。」で種々語っている。

たしかに昭和50年代には、北朝鮮のテポドンはなかった。
この北朝鮮の世襲三代国家を笑ってはいられない。
テポドンは日本の4分の3を射程下に置いている。核問題もある。
また尖閣、竹島、北方領にと領土問題など風雨強まる高浪を持って迫ってきている。
巨大な軍事力を背景にした隣の大国中国。

我々の世代が平和憲法9条を金科玉条として唱えても中国や北朝鮮に通じるか。
後世代の日本の平和が守れるのか。
共産党も宮本体制の頃に、国の中立自衛権はあるべきと主張していたことがある。
民主連合政権ができたときにはの、但し書きがあったように記憶するが・・・。

日米安保があるから現状でいいのか。
すわ鎌倉の時、米国が日本の領土問題のために本気になって軍事協力するとは到底思えない。
誰も信じていないだろう。
日本国としての党派を超えて今日的な集団自衛権を論議し自立自衛で一致できる道を模索する道はないものか。

3・11の時、自衛隊の必死の活動には眼を見張るものがあり被災地をはじめ多くの人が感謝を示したはずだ。
だがその自衛隊は、いまだに憲法上の規定を持たない。
これでいいのか。

この手の本には概して政治記者がアルバイトを兼ねたゴーストライターになっていることがよくあるが、この「国難」は違っていたようだ。
自身の筆になっている感じがする。


ただ読後には、少し不満も残った。
綱領を持っている自民党と綱領を持たない民主党の強さ、弱さの今日的比較はあまり新鮮味はなかった。
石破は2009年から政調会長の職にあって幹事長となっている時の人だ。
今後の原発政策をはじめ、TPO、景気・雇用問題など懸案を石破自身で斬り込んで整理をし、大いに語ってもらいたかった。









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