能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

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日本型ジョブディスクリプション ジョブ型雇用は成果主義の二の舞か?魚屋さんで生まれたジョブ型人事制度

2021年05月28日 | 本と雑誌

政府の働き方改革の同一労働同一賃金、生産性向上から、ジョブ型雇用にスポットが当てられています。

人に仕事をつけるという日本型人事制度・・・新卒一括採用、年功序列、終身雇用・・・組織、チームで仕事をしていくため従業員のチームワークを機能させるための建てつけになっています。

メンバーシップ雇用・・・社員みんな仲良くチカラを合わせて頑張ろう!というのが日本の会社。

 

これに対して、仕事に人を付けるという仕事基準の人事がジョブ型雇用。

欧米では当たり前の雇用制度です。

メンバーシップ型雇用は、ほとんど日本独自の制度、ガラパゴスであり、シーラカンスです。

日本におけるジョブ型雇用は、病院。

医師や看護師、医療技術者など別々に賃金が設定されています。

人事異動はありませんし、ドクターの賃金が別格に高くても誰も異議を唱えません。

これが日本の普通の会社で導入できるかというと、???です。

メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への転換は、かなりの難問です。

1300社が導入した日本型ジョブディスクリプション

この人事制度が日本企業を強くする

松本順市著  日経BP社  1600円+税

 

著者は、64歳のコンサルタント。

魚屋さん「魚力」のアルバイトから始まり、社長の参謀役として現場発の人事制度を築き上げます。

小難しい話を飛ばして、現場で本当に活用できるジョブ型人事制度を提唱、1300社への指導をされているとのことです。

 

目次

第1章 ジョブ型雇用の限界

第2章 日本型雇用の問題の本質

第3章 日本型ジョブディスクリプションのすすめ

第4章 既存の人事制度をパワーアップする

第5章 不毛な人事制度論争との決別

 

同書で語られるジョブ型人事制度のキーワードは、社員の「成長」、そして「褒める人事」。

マグレガーのY理論に立脚した性善説、従業員を信じた制度です。

 

著者の提唱する「日本型ジョブディスクリプション」は、いたってシンプルな職務記述書。

多大な工数を要する職務分析もありません。

現場視点で、経営者の想いを活かした「日本型ジョブディスクリプション・成長シート」にまとめ上げていきます。

社員は、みんな「優秀になりたい」「スキルをあげたい」と思っているという前提で、従業員の努力、頑張りが報われる仕組み。

 

通常、ジョブ型では、自分のスキル、雇用を守るために、人に教えたり、人材育成することはありません。

また、ジョブローテーションもありえません。

仕事に賃金が紐づいているので、人事異動はゼロ、シロウトからのスタートになるからです。

 

著者の提唱いる人事制度は、ポイント制が入っていますが、査定のためというよりは、本人の「成長」を見える化するための工夫です。

去年より1ポイント上がっただけで、自分の成長、効力感を感じさせることが出来るというものです。

各評価項目とも「他の社員に教えている」が最高評価になっています。

なるほど。

著者は言います。

絶対正しい人事制度があるわけでなく、会社ごとに違って当然。

経営者の考え、想いを人事制度に込めろ。

現場視点で進めろ。

 

ジョブ型雇用といえば、精緻な職務分析が必要で面倒だという先入観があります。

同書は、それを乗り越えるための一冊ということが出来ます。

CHRO、人事労務担当者必読の一冊です。


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