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暇と退屈の倫理学 國分功一郎さんの哲学本が面白い 人間は気晴らしと退屈が入り混じった中を生きている

2021年12月31日 | 本と雑誌

今年もあと1日・・・本当に早いものです。

今年の最後の一冊は、哲学本。

文庫本ながら508ページある大作です。

暇と退屈の倫理学

國分功一郎著  新潮文庫  800円+税

 

著者は、東大大学院准教授。

ドゥルーズやスピノザなどの西洋哲学の研究者・・・博覧強記な哲学者です。

「暇と退屈の倫理学」というタイトルから興味を持って読みはじめましたが、内容は、知の巨匠ハイデッカーからキルケゴール、ヴェブレン、パスカルなどが登場・・・なかなか重たいコンインツになっています。

 

同書には、目次がないので、あえて目次を作ってみました。

おそらく著者が、最終章の結論に達するまで、ネタバレにならならいように目次を掲載していないのだと思います。

 

序章 「好きなこと」とは何か?

第1章 暇と退屈の原理論 ウサギ狩りに行く人は本当は何がほしいのか?

第2章 暇と退屈の系譜学 人間はいつから退屈しているのか?

第3章 暇と退屈の経済史 なぜ「ひまじん」が尊敬されてきたのか?

第4章 暇と退屈の疎外論 贅沢とは何か?

第5章 暇と退屈の哲学 そもそも退屈とは何か?

第6章 暇と退屈の人間学 トカゲの世界をのぞくことは可能か?

第7章 暇と退屈の倫理学 決断することは人間の証しか?

結論

 

「人間の不幸などというものは、どれも人間が部屋にじっとしていられらないがために起こる。部屋でじっとしていればいいのに、そうできない。そのためにわざわざ自分で不幸を招いている。」

パスカルの言葉だそうです。

なぜ、人はチョロチョロするのか?

それは、遊動生活(狩猟採集生活)から定住生活(農耕生活)に入ったことが転機になったと指摘します。

そういえば、アフリカ大陸で人類の先祖が誕生し、歩いて歩いて5つの大陸に移動・・・。

人間は常に動き回り、遊動生活、狩猟採集生活を400万年続けてきました。

それば10万年ほど前に農耕、定住生活になっても、人間は何かをしていないと落ち着かない状況に・・・。

農耕で生活が安定し、時間、余裕が生まれる・・・そこに「暇」や「退屈」が出てきたと著者言います。

なるほど、です。

サルトルとともに実存主義の巨匠マルティン・ハイデッカー。

退屈について研究していたことを初めて知りました。

退屈を第一形式、第二形式、第三形式の3つのパターンに分類し、深い探究を行ったことが解説されています。

第二形式の退屈から抜け出すために、「気晴らし」をする人間。

「なんとなく退屈だ」という第三形式=第一形式。

退屈をここまで分解してロジカルに探究するハイデッカーと著者、恐るべしです。

 

人間は世界そのものを受け取ることができるから退屈するのではない。人間は環世界を相当な自由度を持って移動できるから退屈するのである。

 

「環世界」と言うコンセプト・・・同書のキーワードでもあります。

 

知が凝縮された500ページの本がわずか800円。

内容も濃く読み応え十分・・・実にコスパの高い一冊です。


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