特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第319話 一億円と消えた父!

2007年06月11日 23時28分59秒 | Weblog
脚本 長坂秀佳、監督 天野利彦

銀行員が1億円を持ち逃げするという事件が発生。行方不明となった銀行員の娘に、マスコミが殺到する。「私に責任ということを教えた父が、そんなことをするはずはありません」と、父親の無実を訴える娘。「それじゃあ答えになってない」となおも追及するマスコミに、娘は「父の犯行だと証明されれば、死んでお詫びします」と宣言する。娘の言葉に真実を見た船村は、銀行員の無実を証明すべく捜査を開始する。
娘の立会いのもと、現場検証で当日の模様を再現する特命課。銀行員は、金庫からジェラルミンケースで1億円を持ち出した。次長から車を借りて銀行を出た。その後、奪った車に乗り捨てて逃走し、故郷である九州に逃走したものと思われた。
乗り捨てられた車や、残されたジェラルミンケース、さらには車を乗り捨てた現場からも指紋が検出され、銀行員の犯行は明白だった。それでも船村は「指紋なんか、つけようと思えばいつでもつけられる」と、銀行員の無実を主張。「銀行員の持っていたジェラルミンケースは空だったのでは?」「銀行員を装った別人だったのでは?」など、さまざまな仮説を立て、目撃者一人ひとりの証言を検証する。
しかし、銀行員が後輩の保証人となったために借金を背負っていることや、その借金が事件後に九州の銀行から返済してされていることが明らかになり、銀行員の犯行は確実なものに。マスコミからそのことを知らされ、絶望して自殺を図る娘。娘を思い止まらせたのは、叶の「おやっさんが真犯人をつかまえた」という一言だった。船村に詫びる叶。だが、今はその言葉を真実にするしかない。船村は銀行員の潔白を証明する最後の手段を明かす。それは、銀行員の死体を捜すことだった。
船村の仮説では、銀行員は犯人の指示で金庫から1億円を持ち出した後、銀行内で犯人に殺された。「他人から物を借りるのが嫌いな彼が、車を借りにくるはずがない」と次長に詰め寄る船村。「だったら指紋はどうなる?」と反論する次長。「あんたは死体からある物を持ち去った。死体が発見されれば明らかになる」船村が見抜いた死体の隠し場所とは、次長室の窓の真下に空いていた下水道工事の穴だった。埋め立てられた工事跡を掘り返した結果、発見された銀行員の死体には右手がなかった。次長は横領の穴埋めのために1億円を奪い、銀行員の右手を切り取って指紋を残し、さらに九州から借金を振り込むという偽装工作を行っていた。ようやく父の無実が証明されると同時に、娘は父の死という哀しい事実を知らされるのだった。

長坂秀佳が復帰記念に4本連続で脚本を務めた第3作。いわゆる本格推理路線を追求した1本ですが、死体の隠し方が強引なら、おやっさんの推理も強引で、説得力に欠けることは否めません。さらに、メインテーマである「父親と娘」の絆の描き方がおざなりのため、あまり感情移入できない(特に父親に対して)ため、正直言って今ひとつな印象でした。
それはともかく、今回、最も不愉快だったのが、銀行員の娘に対して飢えた獣のように殺到するマスコミどもです。自分を社会正義の代弁者でもあるかのように振舞う鬼畜のようなレポーターどもは、まさに万死に値する。貴様らは視聴率を取るためなら自分の身内の不幸ですらネタにするのだろう。この人でなしども!人の不幸をセンセーショナルに煽りさえすれば視聴者は喜ぶと思っているのか?視聴者をバカにするな!と言いたいところだが、実際のところバカを対象にするような番組でなければ視聴率を取れないのだから、それもしょうがない。そう思えば、貴様らも哀れな犠牲者だと言えるが、だからと言っていささかの同情も覚えない。己の言動を振り返ってみて、恥ずかしいと思う感覚すら麻痺している貴様らに、もはやつける薬などない。勝手にいつまでもバカに向けたバカな番組を作っていろ。こちらは見なければいいだけなのだから。

第318話 不発弾の身代金!

2007年06月11日 00時25分30秒 | Weblog
脚本 長坂秀佳、監督 藤井邦夫

都内の工事現場から、終戦間際に米軍の落とした不発弾が発見された。その不発弾が忽然と姿を消したため、捜査に乗り出す特命課。同型の不発弾が展示されている資料館を訪れた特命課の面々は、その威力に戦慄する。「戦争ってやつが、まだ生きていたんだよ」と怯える船村。「盗まれたとはいえ、まだ殺戮のために使われると決まったわけじゃ・・・」となだめる桜井に、船村は静かに答えた。「人間を殺すために作られた兵器が、他の目的に使われたことは、ただの一度もない」
そんななか、不発弾を持ち去った犯人から、特命課にフロッピーディスクが送られてくる。表示される質問に答えていくと、爆破予告が現れる。半信半疑ながらも予告された現場に赴くと、花火をほぐした火薬による小規模な爆発が起こる。悪質な悪戯かとも思えたが、翌朝、その狙いが明らかになる。不発弾が発見された工事現場の工員が、数名の男が不発弾を運び出すのを目撃していた。犯人は、不発弾を持ち去ったと見せかけ、現場深くに埋め直し、爆破予告で注意をそらした間に改めて掘り出したのだ。
再度フロッピーディスクの質問に答えていくと、「身代金を用意せよ」との要求が表示された。拒否した場合は、明日の午後1時に184人の子供が犠牲になるという。犯人は身代金の引渡し方向を記したメッセージを特命課に届けるが、受付の手違いでロッカーにしまい込まれてしまう。
その間、不発弾を持ち去ったのが単独犯だとの確証をつかんだ特命課は、「数名の男が運び出した」と偽証した工員を逮捕する。取調べに神代を指名した工員は、「エリートのあなたが、工業高校中退にすぎない僕の顔色を窺っている」と勝ち誇る。「日本では、親も、学歴も、金もない、僕のような人間は、いくら才能があっても身動き一つ取れない。あなたのようなエリートには分からないんだ」屈折した論理を振りかざす工員を「そんな理屈は負け犬の遠吠えでしかない」と一喝する神代。工員は不適な笑みを浮かべ「朝7時のニュースを見せろ」と要求する。要求に応じ、工員の様子を見守るなか、犯人のメッセージがようやく特命課に届く。「身代金10億円を用意し、朝7時のニュースで見せろ」との文面に、慌てる特命課。何ごともなくニュースが終わり、工員は激昂する。「手違いで今届いたばかりなんだ」と弁解する特命課だが、工員は「もう間に合わない。子供たちが死ぬのは貴様たちの責任だ!」と叫ぶ。工員の計画では、身代金を持って国外に脱出した上で、爆弾の所在を教えるはずだった。その計画が崩れた今、工員に爆弾のありかを教える義理はなかった。
最後の手段として、工員を泳がせる特命課。「俺のせいじゃない」と呟きながら、うつろな表情で街をさ迷う工員。自分の不運を罵った末に「止めなきゃ」と決心するものの、特命課の尾行に気づくと、当てつけのように高架から飛び降りる。死に際に呟いた「軽トラの・・・」という言葉を頼りに、空と陸から捜査網を引く特命課。爆破1時間前、ようやく河川敷に乗り捨てられていた軽トラを発見する。しかし、140人もの子供はどこにいるのか?軽トラに残されていた不発弾は、火薬を抜かれた展示品だった。資料館の不発弾とすり返られていたのだ。折りしも、資料館には小学生140人が見学に訪れていた。避難するよう電話する神代だが、見学の対応に追われる職員は電話に出ない。タイムリミット寸前、駆けつけた桜井の手で爆弾は処理される。そのとき、タイマーの秒針は、1時2秒前を指していた。

長坂秀佳の特捜復帰第2作。“爆弾の長坂”の集大成とも言える一本ですが、なんといっても主役は西田健演じる工員です。学歴コンプレックスに由来する自己憐憫と被害妄想、その裏返しとも言える肥大した自尊心が、工員の心の中にエリートの象徴である特命課への憎悪を募らせ、挑戦的な犯罪へと駆り立てます。取調室で神代に対して滔々と語りかける姿からは、何一つ誇りを持てなかった哀れな男の怨念が見て取れます。子供を死なせることに良心を苛まれながらも、エリートへの敗北を認めたくないがゆえに、破滅への道を選ぶ工員。死に瀕しながらも、不発弾の真のありかを語ることなくミスディレクションを誘う執念は、何に由来するのか。それは、最後の最後に呟いた「行きたかった。大学に・・・」という言葉からも明らかです。学歴が無いという、ただそれだけのことが、これほどまで心に闇をもたらすものなのか、正直言って私には分かりません。ただ、西田健という名優の存在が、そんなこともあるのだろうと、見る者を納得させるのです。恐るべし、西田健。