特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第316話 ベートーベンを聴く刑事!

2007年06月04日 03時27分54秒 | Weblog
脚本 永井龍一、監督 天野利彦

名曲喫茶に勤める女に熱を上げる吉野は、橘を伴って女を食事に誘い出す。迎えに来た吉野に背を向け、チンピラ風の男とともに去って行く女。「彼女は嫌がっているようにも見えたぞ」と慰める橘。そこに「交番勤務の巡査が殺害され、拳銃が奪われた」との連絡が入る。
同僚の若い巡査の証言によると、死んだ巡査は「違法駐車の車がある」との電話に呼び出されたという。巡査がメモしたナンバーを手掛かりに、逃走した車を探す特命課。死体の様子から「動機は怨恨ではないか」と主張する船村は、吉野とともに死んだ巡査の妻を訪ねる。「警察官とは人に恨まれる仕事。誰か心当たりはないか」を尋ねる船村に、巡査の妻は「あの人が逮捕したのはただ一人。私だけです」と告白。「出世を棒に振ってまで、前科者の私を妻にしたあの人が、誰かに恨まれるはずはない」と語る。
男との関係を確かめようと、改めて女を食事に誘う吉野。吉野が刑事だと知り、煙たそうな態度を見せる女。吉野は失恋を悟るしかなかった。
一方、桜井と叶は、逃走した車の運転手を逮捕。運転手は「刑務所で一緒だった男に頼まれただけ」だと告白する。その男の写真を見た吉野は顔色を変える。女を連れ去ったチンピラ風の男だったのだ。女の自宅を訪れた吉野は、男の消息を問い質す。「昔の男で、迷惑している。昨日も『もう絶対会わない』といっただけ」という言葉を信じて引き下がる吉野だが、橘は「あの女を調べるぞ」と宣言する。その後の調べで、女が売春や覚醒剤の常習犯だったという過去が明らかになる。「俺は彼女と一緒になります。捜査から外してください」と言う吉野に、神代は「安っぽい同情はやめろ」と一喝する。
「犯人が狙ったのは、死んだ巡査ではなく、若い巡査の方だったのでは?」と船村が推測したとおり、若い巡査が男に呼び出され、銃撃を受ける。通りがかった吉野と橘に救出された巡査は、女との関係を語る。「前科のある女とは知らずに付き合っていたが、出世の妨げになると思い別れた」という巡査の言葉を、吉野は苦々しい思いで聞くしかなかった。
男が立ち寄るのではないかと、名曲喫茶を見張る特命課。様子を見るべく店内に入った吉野が見たものは、拳銃を手にした女が、男の死体の前で立ち尽くす姿だった。男に打ち込まれた銃弾は2発で、1発目で即死していた。「女は1発目を撃った犯人をかばって、2発目の引き金を引いた」と推測する吉野。その犯人とは、若い巡査に他ならなかった。
ラストシーン。拘置所から移送される女を、花束を持って見送りに行く吉野。間一髪で渡せなかった花束を振る吉野を、護送車の中から振り返る女。その顔には哀しげな微笑みが浮かんでいた。

ベートーベンの交響曲を背景に、好漢・吉野の悲しい恋を描いた一本。あちこちにストーリー上の矛盾や破綻が見受けられますが、今回はあくまで吉野の恋物語なので、いちいち気にしないことにします。出生を棒に振ってでも自分を愛そうとする男と、出世のために自分を捨てる男。女が選んだのは後者でした。それでいいんだ吉野。そんな女は君に似合わない。もっと素敵な出会いが待っているはずと、半ば自分に言い聞かせるように呟く私でした。