特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
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第486話 涼子・夢に縋った女!

2009年07月31日 03時07分03秒 | Weblog
脚本 桃井章、監督 北本弘
1986年10月16日放送

【あらすじ】
深夜スーパーに押し入った強盗が現金強奪に失敗し、店員を殺害して逃走した。捜査に乗り出した特命課は、防犯カメラの映像を手掛かりに犯人を割り出す。犯人の住むアパートを訪れた桜井は、インコを逃がしかけた女と出会う。その女こそ、犯人の妻だった。
妻によれば、犯人はギャンブル狂いで定職にも就かず、多額の借金を抱えており、妻がキャバレーで働いて生計を立てていた。犯人はここ1週間ほど戻ってなく、連絡もないという。夫が殺人犯として追われているにも関わらず、どこか他人事のような妻の態度に、疑惑を抱く桜井。その後の捜査で、妻が犯人の購読していたスポーツ紙の契約を打ち切っていたことが分かる。妻は犯人がもう戻って来ないと確信しているのだろうか?
犯人の立ち回り先を調べる特命課だが、犯行以来、足繁く通っていたギャンブル場にも現れず、完全に消息を絶っていた。一方、犯人の出身地に向った橘の調べで、犯人と妻が駆け落ちしていたことが判明。前夫の暴力に悩まされていた妻は、勤め先のスナックでバーテンをしていた犯人と深い仲になったという。そのスナックには、犯人からの手紙が届いていた。「近いうちに顔を出すから、金を貸してくれ」との文面にも関わらず、犯人が現れた形跡は無い。手紙の消印は群馬・水上温泉であり、時田が捜索に向かう。
同じ頃、叶の聞き込みから、妻が近所のラーメン屋の店員と密会を繰り返していることが判明する。妻の気持ちはすでに犯人から離れていたのだ。
そんななか、犯人から電話で呼び出された妻が、特命課に協力を申し出る。待ち合わせ場所に張り込む特命課だが、結局、犯人は現れない。アパートまで送っていく桜井に、妻は夫である犯人を見捨てた心情を明かす。「いつか二人で小さな居酒屋を持つという夢のために、死ぬ思いで溜めたお金まで、あの人はギャンブルで使ってしまった。あの人も、前の亭主と変わらなかったんです・・・」「それで、さっさと自分の前から消えてもらいたいというわけか・・・」桜井の痛烈な言葉にも、妻はひるまない。「いけませんか?そんな風に思っては・・・」女にとっては、その小さな夢だけが、生きる糧だというのか・・・そんな感慨を抱く桜井に、意外な報せが入る。水上山中で犯人の死体が見つかったというのだ。
死因は青酸性毒物によるもので、死後一週間は経っていた。では、スナックへの手紙や妻を呼び出した電話は、一体誰からのものだったのか?「主人だと思い込んでいました」と困惑する妻とともに、桜井は水上に向かう。死体は死後数時間経って運ばれていることから、他殺の線が濃厚だった。特命課は妻とラーメン屋の店員による共謀と見て取り調べる。二人は犯行を否定するが、店員の筆跡が手紙のものと一致する。だが、桜井は死体の側に薬の空き瓶が残っていたことに違和感を覚え、自殺ではないかと直感する。解剖の結果、自殺と判明し、桜井の直感が裏付けられる。では、誰が、何のために死体を運んだのか?
桜井は、妻と店員が犯人を生きているかのように工作した理由を追う。それは、約1年前に契約した犯人の生命保険にあった。1年未満の自殺であれば、保険金は支払われないが、犯人が自殺したのは期日の3日前。妻が保険金を得るためには、犯人が生きていると思わせる必要があったのだ。
その後、店員の部屋から強盗犯人の遺書が発見され、妻も事実を認める。「いけませんか?あんな男のために、せっかく溜めた金を使い切られた女が、夢を買い戻そうとしては?」妻は保険金を、男とのラーメン屋の開店資金にするつもりだった。だが、妻は知らない。店員もまた借金まみれで、保険金はその返済に充てるつもりでいたことを。

【感想など】
ラストの桜井のモノローグを借りれば「哀れな女の哀れな犯罪」の顛末を描いた一本ですが、ぶっちゃけ盛り上がりに欠けるのは否定できません。「好きな男と二人で店を持ちたい」という女の夢も、保険金を得るために死体を隠すという犯罪も、よく言えば現実味があるのですが、悪く言えばドラマ性に乏しく、そのせいで「いけませんか」との女の開き直りにもインパクトがなく、あまり視聴者の印象には残らなかったのではないでしょうか?また、桜井の言動もどこか傍観者的というか、活躍といえる場面が自殺と直感するくだりぐらいなので、それも印象の薄さに拍車をかけています。
脚本の意図としては、男運の悪さゆえに、夢のために犯罪に走るしかなかった女の哀れさを描きたかったのでしょうが、視聴者からすれば、ろくでもない男ばかり寄ってくるこの女にも問題があるとしか思えず、「もっとまともな男を探せよ」と忠告するほかありません。それにしても、わざわざ手紙を出して水上に捜査の目を向けさせたりしなければ、少しは死体の発見が遅れたと思うのですが、一体何を考えていたのでしょうか?

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