特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第257話 母・・・・

2006年10月17日 01時00分23秒 | Weblog
脚本 阿井文瓶、監督 辻理

紅林のもとに、かつて恐喝で逮捕した男から電話が入る。男は、紅林が5歳の頃に生き別れて以来、30年も探し続けてきた母親の居所を知っているという。半信半疑ながら呼び出された場所に向かった紅林だが、男は現れない。住所を調べ、男のもとに向かった紅林が見たものは、男の死体と、現場から逃げるように立ち去る老婦人の姿だった。
恐喝相手に殺害されたものとにらんだ特捜課は、男の残した手帳に記された名前のリストをもとに、捜査を開始した。紅林が向かったのは、ある田舎町で診療所を開く老医師だった。老医師は、紅林に自分が偽医師だと打ち明け、男に脅迫されていたこと、そして数日前から妻が行方をくらましていることを明かす。紅林は、老医師の妻が男を殺した犯人であり、そして自分の母親ではないのか、と考える。
一方、リストに残った他の名前は、いずれも高名な医学関係者だったが、恐喝された理由が分からない。やがて、彼らはいずれも戦時中に関東軍731部隊(森村誠一の「悪魔の飽食」で有名)で細菌兵器の実験に関係したいたことが判明。その中の一人、医家大学教授の助手が捜査線上に浮かび上がる。彼は教授の指示で恐喝犯と交渉していたのだが、教授が指示した以上の大金を自らかき集めていたことや、血の付いた衣服を焼き捨てていたことなどが判明。特命課は重要参考人として拘留するが、助手は犯行を否認する。
そんな矢先、紅林のもとに老医師の妻が現れ、自分が男を殺した犯人であり、紅林の母親であると告げる。「自分の母親が殺人を犯すはずがない」と思う気持ちと、「たとえ犯人でも、探し求めていた母親であって欲しい」と願う気持ち。相反する思いを抱えながら、紅林は彼女の過去を追った。30年という月日は、捜査を困難なものにしたが、紅林はついに彼女が働いていた病院を探し当てる。ようやくつかんだ真相。それは、彼女は母親ではなく、母親の同僚だというものだった。紅林と同じ年頃の息子を人手に譲り渡したため、幼い紅林を我が子のように可愛がっていたのだという。
すべてを悟った紅林は、かたくなに犯行を否認する助手に、老医師の妻を引き合わせる。「彼女は私に嘘をついていた。だが、人間には、嘘をついても許される時がある。親が子供を守るためにつく嘘だ。」助手こそが、彼女が手放した実の息子だったのだ。我が子が恐喝犯を殺すところを目撃した彼女は、身代わりになるために、紅林の母と偽って名乗り出たのだった。母の想いを知り、泣き崩れる助手。母親に抱きつく助手を遮って、紅林は言う。「甘ったれるな。お前にお母さんの気持ちが分かるのか。貴様の汚れた手で、この人に触るな。」実は、教授が731部隊に所属していたことを恐喝した男に漏らしたのは、助手の仕業だった。恐喝をうまく処理することで教授に認められ、助教授への道を開こうとしたところが、かえって自身が恐喝される破目になり、やむなく恐喝者を殺害したのだ。
事件解決後、紅林は釈放された老医師の妻を見送る。彼女は住民の嘆願によって執行猶予となり釈放された夫の元へと帰っていく。いつか、積みを償った息子とともに、田舎の診療所で働ける日を夢見ながら。

珍しくタイトルに「!」がつかない本編は、紅林の出生の秘密、生き別れの母親、731部隊など、語りどころが多いのですが、正直言って今ひとつな印象。紅林と助手、実の母親と生き別れた者同士の内面を対比するなり、老医師と妻の関係を掘り下げるなり、もう一ひねりできなかったものか、と少し残念に思います。それでも、紅林が涙をこらえて助手を諭すシーンや、ラストの紅林のモノローグなどは、思わず目をうるませずにはいられないのですが。


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