せっかち散歩

ゆっくり急げ、時間がないから

ウラシマソウ~悲しみのトンネル

2010-04-03 | 日記
一人娘が亡くなった人がいる。今日が49日目だという。娘さんは21歳だった。瀬戸内寂聴も以前テレビで、わが子を亡くした悲しみで立ち直れずに相談に来る事例が一番多いと言っていた。
恋人や親しい友人との別れ、わが子や家族の死は人間の感じる最も大きい悲しみの体験だろう。大きな喪失のあとに来るショック、そしてその喪失を認識するにつれて悲しみ、怒り、罪悪感、後悔などの感情の嵐がやってくる。眠れない日が続き、精神的、肉体的に消耗していく。この時期には引きこもり、うつ状態となりがちで、しっかりと休息をとることが必要なようだ。この時期をうまく乗り切らない場合、精神不安定は複雑化、長期化していく。このプロセスはまるで出口不明の真っ暗なトンネルに踏み込んだようなもので、悲しみのトンネルと呼んでもいいだろう。手探りでも静かに真っ直ぐに進んでいければいつか遠くに出口の光が見えてくるはず。心身がうまく癒されて自己コントロールができるようになると、その喪失を受け止め前向きに生きていけるようになる。

先日、中学校下の公園の林で奇妙な植物を見かけた。葉が傘のように直立してその脇から濃紫色の花らしきものを付けその中から細長い糸状のものが外へ向かって伸びている。これはサトイモ科ウラシマソウ。長い紐状突起物を浦島太郎の釣り糸に例えて名付けられたらしい。


上からみると10数枚の小葉をもつ鳥足状複葉がよくわかる。実は一枚の葉であった。

  
細長い糸状のものをたどると、濃紫色の仏炎苞に包まれた肉穂花序が現れる。雌雄異株なのでどちらかと思い筒の中を覗くと、雄しべが付属体の基部にびっしり付いていた。花弁はない。これは雄株のようだ。


美しい白と濃紫のストライプのトンネルの奥底に明るい光が見えて、これが悲しみのトンネルならばそろそろ終リが近いと知らせたい。