せっかち散歩

ゆっくり急げ、時間がないから

シナマンサクとマンサク

2013-02-24 | 日記
三島由紀夫『金閣寺』を読んだ。読み終わった後、まるでストレートパンチを食らったような衝撃、感動が長く続いた。生来吃音の主人公が美の象徴である金閣寺に陶酔し、しかしながら、ついにそれを焼き払おうと決めるに至る心的遍歴を描いている。醜い主人公と同じように内反足という醜いハンディキャップをもった柏木の登場と彼のすさまじいキャラクターは印象的。女との関係を持つことを主人公は人生と呼び、人生への参加を金閣寺の存在が障害していると感じる主人公は鏡湖池の前で「いつかお前を支配してやる。二度と私の邪魔をしに来ないように、いつかはお前をわがものにしてやるぞ」と叫んだ。金閣寺放火という破壊的行為に及ぶまでの主人公の心理状況は、吃音や貧しさというコンプレックスを持つ人間の苦悩とこの世の中に存在する最高絶対の美に対する憧れから狂気が生じることの不偏性、必然性をすら感じさせるところがある。最高傑作だなあとつくづく思う。



シナマンサク マンサク科

県立公園のシナマンサクの一品種と思っている低木を見にいってみた。毎年いい花をつけるのを知っているから楽しみにしている。案の定朝日を浴びて満開の花を美しく咲かせていた。目立たない場所のせいでひっそりと咲いているものの花は派手だから十分に存在を主張している。


冬の空は青空で風は刺すように冷たい。


梅園のウメはまだ咲いていないけれどもこのシナマンサクだけはよく咲いている。


公園咲いている花はまだロウバイとマンサクくらいのものだろう。サンシュユもまだまだだった。



マンサク マンサク科

前からマンサクとシナマンサクの花の違いをじっくり見てみたいと思っていたところ、近くの公園にマンサクとシナマンサクが並んで植栽されていた。しかも名札まで付いている。日が沈みかけて花弁の色は少し薄く見える。マンサクはシナマンサクに比べると花数が少なく花の大きさも小さくて貧弱な感じがする。それだけ趣があるともいえる。


左がシナマンサクで右がマンサク。花弁もがく片も大きさが2倍くらいシナマンサクのほうが大きい。

オオベニゴウカン

2013-02-21 | 日記
三島由紀夫『潮騒』を読んだ。この短編小説は漁村の若い男女の素朴な恋愛を綴ったものでまるで映画化されるために作ったような作品。伊勢湾の入口に浮かぶ神島がこの舞台。もちろんこの島には行ったことがないけれども学生時代の春休みに行ったことのある宮古島を思い出した。宮古島の民宿でスーパーカブ90を借りそこでもらった地図を頼りに古墳を探したり岬へ行ったりして島内を一周した。生ぬるい春風を受けてほとんど車も通らない道を疾走した。黒砂糖工場からあふれてくる甘い匂いがその道を覆っていた。白い砂浜ではもう海開きで数人の若者が水に入ろうとしているのが見えた。トックリヤシが夕日に照らされ始めたころ宿に帰ると南国の強い日差しで顔も手も赤く焼けていた。



オオベニゴウカン Calliandra haematocephara マメ科

まだまだ寒い日が続く。こんな冬は温室の植物を見て歩くのが一番いい。その木を見上げるとネムノキに似てしかしもっとボンボンのような花がいくつも咲いていた。


名札にはマメ科カリアンドラ属オオベニゴウカンとあった。ネムノキの羽状複葉とは違い何対もの羽片があるのではなく一対の羽片からなる羽状複葉だから変わっている。こんな葉は初めて見た。


花も雄しべが長く突き出ていてとても美しい。


ボリビア原産の熱帯性常緑低木。


すぐ隣には白い花のものが植えてある。


赤と白とどちらも素晴らしい。

パキスタキス・コッキネア

2013-02-17 | 日記
三島由紀夫『愛の渇き』『真夏の死』を続けて読んだ。三島由紀夫は行動、事件、心情に意味を与え論理的に敷衍し、あるいは人生哲学、格言を演繹して一つ一つの言葉を美しく表現する天才だと思う。三島の文章には逆説的表現を用いた警句や箴言が散りばめられている。『愛の渇き』ではそんな文章の後ろで一途な女に潜む狂気が進行していき彼女はついに密かに心惹かれていた若い使用人を殺してしまう。恐ろしい結末だった。



パキスタキス・コッキネア(Pachystachys coccinea) (キツネノマゴ科パキスタキス属) 

公園にある温室で緑色の苞に真っ赤な花をつけたパキスタキス・コッキネアを見つけた。別名ベニサンゴバナ。


coccineaは紅色のという意味。目の覚めるような深紅に見とれてしまう。



パキスタキス・ルテア

こちらは同じキツネノマゴ科パキスタキス属で黄色い苞に白い花が咲く。

冬に咲くビワの花

2013-02-12 | 日記
夏目漱石『三四郎』を読んだ。三四郎池はよく知っていたが小説は初めて読んだ。三四郎の青春時代の新しい仲間や先輩とのかかわりあいとある女性に対するほのかな恋を描いたものだった。三四郎には三つの世界ができたと述べている。一つは懐かしい故郷の田舎の世界、第二は静かな尊い学問の世界、そして第三の世界は春のごとくうごめく恋の世界。三四郎と同じように自分もまたこの三つの世界の入り混じる時の渦を泳いでいったなとあ振り返りながら思った。誰もが同じような経験をするものなんだ。期待は落胆に変わり、努力は徒労に帰し、喜びと楽しみは怒りと悲しみに変わっていったとしても当時の自分は情熱の嵐の燃えるような激しさを抱いて生きていたのは確かだった。



広い公園のビワの大木が倒れていた。

先月の大風の時に倒れたのだろうか?無残にも根こそぎ引き抜かれて人の手を入れなければ生存は不可能に思われる。しかしその木はまだ生きて花を咲かせていいる。花はその強烈な匂いを放つ。


枝先に付いた円錐花序から芳香のある白花が多数咲く。


ミツバチなどの昆虫が集まってきている。


萼片、花弁ともに同数で5個あり,雄しべが約20個ある。花柱は2-5個。



先日神社の裏山を歩いて下りていくとビワが花をつけている。写真を撮り始めると老夫婦がどこからともなく横を通り過ぎて行きながらビワですねと声をかけてきた。「はい、花がきれいですから」と言うと本当だと感心してじっと見ていた。

ふとベビーパウダーの匂いに似ていることに気が付いた。



名前は似ているけれどもイヌビワはクワ科イチジク属の落葉低木で雌雄異株であるのに対してビワはバラ科ビワ属の常緑高木で雌雄同種。イヌビワとビワは全く異なるものだった。

紅白のウメ

2013-02-11 | 日記
映画『始皇帝暗殺』(1998年/中国・日本・仏・米)を見た。ちょうど小説十八史略で始皇帝の暗殺失敗のくだりを読んだばかりだったので内容が割とスムーズに理解できた。刺客である荊軻(けいか)は易水(えきすい)のほとりで知人との別れに際し易水の歌を詠じた。「風蕭蕭(しようしよう)として易水寒し、壮士ひとたび去って復(また)還らず」 司馬遷の『史記』の「刺客列伝」には荊軻による秦王・政(のちの始皇帝)の暗殺失敗の場面がいきいきと描かれているらしい。始皇帝の出生の秘密も後宮での母太后とにせ宦官との関係も歴史はあまりにも小説的で驚き。



今年は近所のウメがまだ全然咲いていない。寒い日が多かったせいかなあ。それでも近くを歩いてみると白梅の名のついた公園には早咲きのピンクのウメが咲き始めていた。



一回りして神社に行くと大きな松と狛犬の間に背の低いウメの木を見つけた。長い雄しべの紅梅が満開。


品種の名札を付けておいてくれたらなあ。


後ろ姿も素晴しい。



こちらは先日見つけた白梅。


いい香りが漂っていた。

コブクザクラとジュウガツザクラ、そしてフクジュソウ

2013-02-09 | 日記
陳舜臣の「小説十八史略」第一巻を読んだ。面白くてどんどん読み進んだのはいいが内容が多くて人物が覚えられない。気に行った話には印をつけたので後でまた読み返してみよう。第六巻 まで古本を購入した。歴史書にあることだから内容は事実なのだろうが誇張や修飾もあるだろう。歴史に学ぶことはとても多いと感じる。



とにかく寒い日が続く。サクラが見たくなっていたら今時分に咲いているサクラがあった。

コブクザクラ

名札にはコブクザクラとある。


コブクザクラは八重咲きにもかかわらず1つの花に複数の雌しべをつけ複数の実をつけるので、子宝に恵まれるという意味で子福桜という名がついている。


シナミザクラとジュウガツザクラの雑種あるいはエドヒガンの雑種と考えられている。




ジュウガツザクラ

コブクザクラの近くに植えられていたジュウガツザクラ。花は全体にピンクっぽくてよく目立つ。この季節にサクラを見るとほっとする。


萼筒はつぼ型。


八重の花弁の辺縁がピンクに色付いていて美しい。コヒガンザクラの雑種と考えられている。




フクジュソウ キンポウゲ科

フクジュソウが地面すれすれに咲いていた。キンポウゲ科特有の輝く花弁が美しい。

ペーパーホワイトとニホンズイセン

2013-02-04 | 日記
川端康成の「山の音」「千羽鶴」を続けて読んだ。どちらも素晴らしく余韻の残る作品だった。「山の音」には鎌倉の景色や自然を背景に登場人物たちの恋愛と心情が描かれている。千葉市検見川の弥生式古代遺跡の丸木舟のなかから発見された大賀蓮の記事や長谷寺の大仏と与謝野晶子の歌の石碑、新宿御苑の記述も楽しい。「千羽鶴」は男女の関係の美しさと不思議な誘惑、後悔、妖艶さなどが絡んだ何とも言えない雰囲気を持っている。茶会を舞台に父の愛人と関係を持ったことから起こる悲劇とそれがもとに主人公はその愛人の娘との関係も深まっていく。





公園にはスイセンのいい匂いが漂っている。ロウバイも咲いているからロウバイの香も交じっているのだろうか?ここには2種類のスイセンが植栽されている。真っ白なスイセン、ペーパーホワイトと中心が黄色のニホンズイセン。



ニホンズイセンがその香りは最高だが、ペーパーホワイトは少し香りがきついせいかちょっと公衆トイレのような臭いにも似ていてあまり良いとはいえない。匂いというのは不思議なもので薄いと香水のようにいい香りでも濃いと嫌な臭いにもなるものだから。



それでも今の季節ではスイセンの花は最高に美しい。



これはニホンズイセンの群生。