リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

★お知らせ★




思うところがあってFC2ブログに引っ越しました。 引越し先はこちらで新規の投稿はすべて引越し先のブログのみとなります。

アルコール依存症者の自助グループの現状

2011年09月03日 | Weblog
依存症(アルコール、薬物、摂食障害、ギャンブルなど)の回復に最も有効な手段は当事者の自助グループだ。

依存症のため健康や仕事、人間関係などを失い、アル中のろくでなしというスティグマのために余計に素面ではいられずまた飲んでしまうという悪循環から脱するためには、当事者が集まり仲間どおしで助け合い支え合う場が必要だ。

しかし残念ながら地域の断酒会やAA(アルコホリック・アノニマス、匿名のアルコール依存症者のグループ)が維持できず次々と消滅しつつある。
依存症の背景に発達障害や気分障害、統合失調症などをかかえた方も多く、断酒会などのグループにはうまくとけ込めない方も増えているのも原因の一つだろう。
以前のように入院してアルコールのリハビリテーションのプログラムに参加し、退院してからは断酒会に繋ぐといういわゆる「久里浜方式」にはまる典型的なアルコール依存症者はめっきり少なくなった。(それでもニーズはあるが。)

あちこちに断酒会やAA、その他様々なの自助グループがある都市部なら、本人にあった自助グループにめぐり会える可能性が高いが、過疎地の地方ではなかなか困難だ。
人間関係に不器用なためグループの中での人間関係が上手くいかなくなり、それが嫌でいけなくなってしまう人も多い。
そういう意味で専門家がサポートにまわって良い雰囲気になるように支援したセルフヘルプグループやピアカウンセリングには意義があるのだろう。(サポーテッドピアサポートというそうだ。)
そういったこともうけて病院のアルコールリハビリテーションプログラムでも卒業生が外来受診のついでなどに参加する事を推奨している。

安曇総合病院の診療圏でも豊科の断酒会はまだ盛んでだそうだが、白馬村の断酒会は消滅し、池田町の断酒会も中心となっていた方が引退され、残されたメンバーでは県断連(長野県断酒会連合)の会費も払うのも困難な状況で、長野や松本の大会に代表をおくる事も困難な状態となり、「断酒会」は消滅した。アルコール依存症の方は障害年金や生活保護もなかなか受けられないなど経済的にも厳しく、飲酒運転や事故などで免許を失って地方での移動の足がない方も多いのだ。
それでも病院のアルコールリハビリテーションプログラムに協力し(入院中の患者が院外の断酒会にでかけることをすすめ、スタッフ付き添いで出かけている。)、地元の断酒仲間の集まれる場をつくろうと「有志の会」として細々と続けている。

地域によっては保健所や市町村保健師が中心となり「酒害者クラブ」を運営しているところもある。
医療者や行政はこういったセルフヘルプグループの活動を、もう少し裏に表に積極的に支援することが求められていると思う。