京都市右京区御室大内に門を構える真言宗御室派:総本山「大内山仁和寺(にんなじ)」。『阿弥陀如来』を本尊とします。皇室とゆかりが深く、出家後の宇多法皇が住んでいたことから、「御室(おむろ)御所」と称されていました。

「仁和2年(886)第58代光孝天皇によって「西山御願寺」と称する一寺の建立を発願されたことに始まります。しかし翌年、光孝天皇は志半ばにして崩御されたため、第59代宇多天皇が先帝の遺志を継がれ、仁和4年(888)に完成。寺号も元号から仁和寺となり、後に宇多天皇が出家し仁和寺第1世 宇多(寛平)法皇となります。以降、皇室出身者が仁和寺の代々住職(門跡)を務め、平安〜鎌倉期には門跡寺院として最高の格式を保ちましたが、応仁の乱で一山のほとんどを兵火で焼失。そのような中、本尊の阿弥陀三尊をはじめ什物、聖教などは仁和寺の院家であった真光院に移され、法燈とともに伝えられていきました。『仁和寺御伝』によれば、寛永11年(1634)7月、第21世 覚深法親王は、上洛していた徳川家光に仁和寺再興を申し入れ、承諾されるのです。さらには慶長度の御所造替とも重なり、御所から紫宸殿(現 金堂)、清涼殿(御影堂)など多くの建造物が下賜され、正保3年(1646)に伽藍の再建が完了。ようやく創建時の姿に戻ることが出来たのです。」公式HPより

参拝者を出迎えてくれるのは、京都では珍しく道路に面した「二王門」。高さ18.7m、重層、入母屋造、本瓦葺。寛永18年(1641)から正保2年(1645)の建立とされ、京都3大門のひとつとも言われています。

門正面の左右に阿吽の二王像


後面には同じく左右に木造の神殿狛犬一対が安置。


仁王門を潜って左手に見えてくるのは、『亀岡末吉』の設計によって大正2年(1913)に建立された「勅使門(登録有形文化財) 」。檜皮葺屋根の四脚唐門で前後を唐破風、左右の屋根を入母屋造としています。

鳳凰の尾羽根、牡丹唐草、宝相華唐草文様、雅であり荘厳でも有る彫刻装飾の数々・・・見飽きる事はありません。

「拝殿中門(重要文化財)」は寛永18年(1641)から正保2年(1645)の建立。切妻造・本瓦葺・柱間三間の八脚門で、側面の妻部には二重虹梁蟇股が飾られています。

中門、向かって左側。「龍神、富単那」を従え邪鬼を踏みつけるのは、西牛貨洲を守護する「広目天」。右側に「乾闥婆、毘舎闍」を従え、東勝神洲を守護する「持国天」。


中門内の西側一帯は、大正13年に国名勝に指定された「御室桜」。実は今日の参拝はこの桜がお目当てだったのですが・・いくら遅咲きで有名とは言え流石に四月も半ばを過ぎると・・😓

江戸時代の儒学者『貝原益軒』が書いた「京城勝覧」に「春はこの境内の奥に八重桜多し、洛中洛外にて第一とす、吉野の山桜に対すべし、…花見る人多くして日々群衆せり…」とあるそうですが、確かにこんな状況でも「花見る人多く」・・😅

ちなみに背丈の低い事で知られる「御室桜」。俗謡に「わたしゃお多福御室の桜 鼻が低ても人が好く」、背丈の低い桜を鼻の低さに掛け合わせるなんて、何と洒落た事。ついでに物凄く親近感😊

散りての花はともかく、境内の建造物はいずれも国宝・重要文化財に指定されており、それらを拝観できるだけでも、足を運んだ甲斐が有るというもの。まずは国宝指定の「金堂」。慶長18年(1613)に建立された京都御所・紫宸殿を移築、現存する最古の紫宸殿です。

宮殿から仏堂への用途変更に伴い、檜皮葺から瓦葺に変更された屋根の上。下界を見下ろす鬼はさすがの迫力!

と共に、何とも不思議な飾瓦を見つけて、しばらくはその正体の詮議に花を咲かせました。結局、玄武の背中の人物は「蓬莱山(ほうらいざん)」に住むと言う仙人の誰か・・という事で一件落着。

金堂の西に建つのは、重要文化財の「鐘楼」。入母屋造、本瓦葺の 建物で、階上は朱塗で高欄を周囲に廻らせ、下部は袴腰式と呼ばれる板張りの覆いが特徴。

鐘楼の左手に建つのは、「御影堂中門」と「御影堂」。いずれも重要文化財の指定。

檜皮葺の小堂は、慶長年間造営の内裏 清涼殿の一部を賜り、寛永年間に再建されたもの。「宗祖:弘法大師」、「開基:宇多法皇」、「仁和寺第2世:性信入道親王」の像を安置します。

金堂の東に建つのは重要文化財の「経蔵」で、寛永〜正保年間の建立。宝形造、本瓦葺。正面に両開きの板唐戸、左右に花頭窓を付け、禅宗様で統一されています。

重要文化財:五重塔は寛永21年(1644)建立。塔身32.7m、総高36.18m。東寺の五重塔と同様に、上層から下層にかけて各層の幅にあまり差が見られない姿が特徴的です。

初重西側に掛けられた『大日如来』を示す梵字の額。

すっきりと美しい塔形にしばし時を忘れて。

五重塔裏手には仁和寺の伽藍を守る「九所明神」が鎮座。こちらの社殿もまた、重要文化財の指定。今回は時間の関係で参道半ばからの参拝となりました。

社殿は本殿・左殿・右殿の三棟。『八幡三神』を本殿に、東の左殿には『賀茂上下・日吉・武答・稲荷』を、西の右殿には『松尾・平野・小日吉・木野嶋』の計九座の明神が祀られます。

明日は蓮華寺~御室八十八ヶ所霊場の紹介です。
参拝日:2008年4月19日