マクロ経済そして自然環境

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景気政策史 42  1907年恐慌-3  FRS(FRB)の成立

2010-10-02 10:19:19 | 景気政策史

 前回まで1907年恐慌の一般的展開の概略及び日本でのその金融的対応を述べさせて頂きましたが、今回はアメリカでの対応及び、この恐慌を切欠として制度変化(FRS、FRBの成立)が起きましたが、その点を含めて述べさせて頂きたいと思います。

1907年春にアメリカで証券市場の暴落が起きたわけですが、夏ごろには鉄鋼生産等にも影響が出始めユーエス・スチールでは需要が25%下落した。10月に入りアメリカ、欧州では恐慌状態になりアメリカでも取付等が起きたが、英銀行では公定歩合を4.5→5.5→6→そして11月7日には、7%にまで上げた。これにより独、仏から金が英国に流入した。

 アメリカではイギリスから前述したように手形の割引制限を受け、今までの恐慌時と同様(1884、1890、1893の恐慌は”手形交換所の貸付証書”の発行で激化を阻止してきた、但しメンデリソンによれば1893年恐慌では手形交換所の証書は発行されたが恐慌は極度の、未曾有の厖大な失業と物価低落、消費の不断の収縮とし”19世紀の歴史でもっとも深刻な恐慌であった”とし”証書”の発行の効果は限られていた事を示していますが)に各地で”手形交換所の貸付証書”を発行し、それにより緩和を図った。
また、政府の国庫資金を一時預金の形式で銀行に融通した(メンデリソン)


アメリカに於けるこれらの状態は翌年になり、豊作による国際収支の改善により徐々に収拾した(ドルの歴史 A.ヌスバウム)





★★★FRS(FRB)の成立

 これらからも分かるように当時はアメリカに”中央銀行”と呼ばれるものは無く、国全体の政策的方向性を取るのが困難であった。
この1907年恐慌を契機に金融制度の改革の機運が高まったのはある意味当然であった。

ここで若干、概括的にアメリカの金融制度の歴史を述べその改善方向が出された経過を述べるのは無駄ではないと思われますので(この分野の方からすればある意味常識とも思われますが)若干述べさせて頂きたいと思います。




アメリカでは”国”というより”州”の意識が強いとされ、一番先に”州法銀行”が作られ発券も行なった。しかし”国としての銀行”を求める勢力もありその間、合衆国銀行設立の試みも二度行なわれたが、両方とも短期間で廃止された(1791年、1816年)
その間やはり州法銀行が主体であったが銀行券もバラバラであり、其の統一制も求められた。

 
 1863年に国の法律によると言う意味で”国法銀行”が各地に作られ国法銀行が統一様式で発券した為、銀行券は統一の方向に向かい1878年には、州法銀行券は廃止された。

尚、”本位”と言う事では1792年の貨幣法でそれ以来金銀複本位制であったがこれは1900年の金本位法で金本位になる。


しかしここで問題になった大きな一つの事は、国法銀行の発券が”担保国債”を基準にしていると言う事で、”発券が非弾力的であったと言う事”です。

(国法銀行券が恐慌時に通貨需要を満たす事が出来ない為に1873、1893、1907年に現金支払い停止が起こり、通貨に対する高いプレミアムが生じたとされます。これ等を称してベックハートは、”非弾力的銀行券発行とバジョット原理(最終の貸し手)の欠如の欠陥としています。p30)
つまり、銀行券の発行の為には国債の”購入”が必要であり、逆に発券の減少の為には担保国債の売却が必要であったと言うことです。(発券限度額が財務省への預託国債に制限される制度になっていた)


 それらからそれら中央銀行の存在しない状態は各方面より指摘されそれに対し1908年”全国通貨委員会”が設立されそこから当時の問題点として

①多数の銀行が全国に散在する脆弱性
②銀行券供給の非弾力性
③小切手の使用が普及しているにも拘わらず各地の習慣等が異なる事等
④連邦財政制度の不完全性 国庫金は”独立国庫”と呼ばれる国庫で保管され国法銀行に預託されていた。

 
 等の指摘を受け、制度改革は愁眉の問題であったので下院銀行通貨委員会から、グラス法案が出され1913年12月に”連邦準備法”が成立し、そこよりFRS:連邦準備制度(FRB:連邦準備制度理事会)が成立といたり国法銀行は発券を止め現在も州法銀行とともに活動している。





参照  アメリカの金融制度 高木仁
      ドルの歴史的研究  片山貞雄

          米国連邦準備制度 ベンジャミン.H.ベックハート        2011.5.2追記

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