tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

名仏いろいろ(1)阿修羅と不思議な仲間たち

2007年06月02日 | 仏像
「奈良は好きだけど、古墳と仏像だけは苦手だなぁ」と長年思っていた。だから奈良検定(奈良まほろばソムリエ検定)2級試験でも、このジャンルではほとんど点が取れなかった。

ソムリエ(検定の最上級)をめざす私としては、最近になって「これではイカン」と一念発起し、関連本を読み出すと、これがとても面白い。おかげで古墳も仏像も得意科目になりそうな勢いだが、せっかくなのでブログでも紹介することにした。で、まずは仏像編。私が好きになった名仏(めいぶつ)を順不同で連載する。

書き始める前に、興福寺・猿沢池畔の茶店(池にせり出している)で親子丼を食べることにした。いとうせいこう・みうらじゅん共著『見仏記』(角川文庫)によれば、彼らは奈良へ見仏(けんぶつ)に来ると必ずここで親子丼を食べるそうなのだ。

税込550円の親子丼は、卵ゆるめ・つゆだく(汁たっぷり)・濃口醤油使用、という今どきの大衆食堂風で、特にコメントはない(東向商店街の「ザ・どん」の親子丼・500円の方がうまい)。しかし、窓から眺める猿沢池の風情は抜群だった。

さて初回は興福寺の八部衆像を紹介したい。このブログでも取り上げたが、JR東海はテレビCMやポスターで、八部衆など興福寺を売り出し中だ。お寺の国宝館でも、6月10日(日)まで「八部衆 特別陳列」を実施している。阿修羅(あしゅら)をはじめとする乾漆八部衆立像(かんしつはちぶしゅうりゅうぞう)すべてが勢揃いしているのだ。
※八部衆全員の顔(JR東海の車内ポスター)
http://nara.jr-central.co.jp/nara.nsf/doc/gallery

今は修学旅行シーズンとあって、境内は児童・生徒で一杯だ。国宝館も混雑していた。山田寺の仏頭(みうらじゅんによれば「加藤登紀子」)、千手観音立像、阿吽(あうん)一対の金剛力士立像も良いが、やはり人気は八部衆、なかでも阿修羅像の前には修学旅行生が集まり、ボランティアガイドのおじさんが熱弁を振っていた。
※山田寺仏頭
http://www.e-t.ed.jp/edotori390332/syasin2syou/001021.jpg

この阿修羅像、夏目雅子に似ているので女性だと思っていたが、青年だそうだ。柴門ふみは「沖田浩之」だという(『ぶつぞう入門』文春文庫)。両脇にくっついている2つの顔は「貴乃花」に激似だ。
※阿修羅像(JR東海)
http://nara.jr-central.co.jp/nara.nsf/doc/cp_kofukuji

かつて堀辰雄は「なんというういういしい、しかも切ない目ざしだろう。こういう目ざしをして、何を見つめよとわれわれに示しているのだろう。それが何かわれわれ人間の奥ぶかくにあるもので、その一心な目ざしに自分を集中させていると、自分のうちにおのずから故しれぬ郷愁のようなものが生まれてくる」と書いた。

JR東海が阿修羅に添えたキャッチコピーも「私が、私と、向き合う」だが、確かにこの像と向き合っていると、青年期に抱いていた屈託というか「故しれぬ郷愁のようなもの」が甦ってくるから不思議だ。

阿修羅の仲間のうちでは、沙羯羅像(さからぞう・少年)のあどけない表情はとても可愛いしい、迦楼羅像(かるらぞう・顔面は鳥)は怪獣のようでコワい。迦楼羅はガルーダ(神鳥)で、インドネシアやタイの国章になっていて、ガルーダ・インドネシア航空は尾翼に神鳥を描いている。もともと八部衆は古代インドの異教の神さまで、それが仏教の守護神として取り入れられたものだそうだ。
※迦楼羅像
http://www.kohfukuji.com/kohfukuji/database/image/but00006.jpg

興福寺では、あちこちにJR東海の看板(八部衆像)が掲げられ、東大寺に比べややマイナー感があった寺の雰囲気は、とても華やいでいた。興福寺は今、中金堂の再建に向けて動いてる。この上げ潮ムードにうまく乗って、ぜひ立派に再建を果たしていただきたい。
※うましうるわし奈良・興福寺(私のブログ)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/9a8e0484faae77c738b2c7daf44a5bb4
※写真は、興福寺境内に貼ってあるJR東海のポスター

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6 コメント

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仏像マニア?? (おぜん)
2007-06-03 16:02:39
とうとう、仏像マニアになられましたか。
奥が深いそうです。そりゃそうでしょう。歴史も古いし。
山田寺の仏頭が加藤登紀子ですか・・・。
そういわれてみれば、若干似てるかな。
阿修羅の夏目雅子は似てるかもしれない。
ウチの長男もマニアとはいきませんが、かなり好きみたいです。
たまたま、高校の担任がものすごいマニアでどうもそれに影響されたようです。
仏像ブログ楽しみにしてます。
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雑感 (ひろ)
2007-06-03 18:36:27
ブログよく拝見しております。とても勉強になり,大いに参考にさせてもらっています。
仏像と古墳は苦手ということのようですが,逆に私は大好きな分野です。検定でも仏像や古墳のマニアックな問題を出題してもらいたいと思っています。
なかなか初学者には難しい分野なのかもしれません。しかし,一度はまると病み付きになります。
一級,ソムリエに向けて共に学びましょう。
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仏友 (tetsuda)
2007-06-04 03:33:32
おぜんさん、ひろさん、コメント有難うございました。

> とうとう、仏像マニアになられましたか。
まだまだ修行の身です、合掌。

> 山田寺の仏頭が加藤登紀子ですか…。そういわれてみれば、若干似てるかな。
写真は横顔が多いのですが、こないだ真正面から見ると、よく似ていました。確かおぜんさんは、加藤登紀子のご両親とお親しいのですね。

> ウチの長男もマニアとはいきませんが、かなり好きみたいです。
仏友(ぶつゆう)として、よろしくお願いします。

> 検定でも仏像や古墳のマニアックな問題を出題してもらいたいと思っています。
> 一級,ソムリエに向けて共に学びましょう。
はい、私も頑張ります。今後「ズバリ!奈良検定2級の要点整理」で、仏像や古墳を取り上げます。いい加減なことを書いていましたら、ぜひご指摘いただきたく。
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仏像 (ひろ)
2007-07-24 05:44:10
先日,十輪院に行ってきました。住職の法話を拝聴いたしましたが,文化財としてではなく,信仰の対象として仏像を見てほしいという旨のコメントがありました。
私は仏像を美術史的な観点から見てきましたが,なるほどと思い,ショックを受けました。
祈りの対象であるからこそいままで伝えられてきたのだということを再確認いたしました。
私を含め,観光客の方も,祈りの気持ちを忘れずに仏像に接したいものです。
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祈りの対象 (tetsuda)
2007-07-24 06:08:56
ひろさん、お久しぶりです。私は8月に「大和の仏たち」(体験学習プログラム)に参加します。ひろさんは参加されませんか?

> 信仰の対象として仏像を見てほしいという旨のコメントがありました。

> 観光客の方も,祈りの気持ちを忘れずに仏像に接したいものです。

それは、おっしゃるとおりです。日本人が仏像を美術品として鑑賞するようになったのは比較的最近で、西洋人の鑑賞法をマネたものだと言われています。

もともと信仰の対象であり、お姿を凝視するものではありませんでした(たいてい薄暗くて、よく見えなかったと思います)。

何百万人、何千万人もの「祈り」が込められた対象として、私も、心して拝ませていただきます。
返信する
大和の仏たち (ひろ)
2007-07-24 19:16:29
私は8月5日の題記講座に参加します。
tetsuda様が5日か12日のどちらに参加されるか分かりませんが,満足のいく講座にしたいものです。
4ヶ寺のなかでも室生寺は私の大好きなお寺です。仏様と対峙すると心が癒される思いです。
講座は40名の団体で賑やかになるかもしれませんがじっくり祈りをささげ,現代まで名仏を伝えてくださった先達方に感謝したいと思います。
なお,関根先生は説明が簡略で分かりやすく,おそらく一般の方でも十分に理解できるような解説をしてくださると思います。
返信する

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