tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

観光地奈良の勝ち残り戦略(5)奈良市観光戦略部会

2007年05月29日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
ショッキングな見出しの記事が出ていた。奈良日日新聞(5/26付)の1面トップだ。

《“大仏商法”時代すでに終わった 奈良市「戦略会議」が苦言 民間もっと努力を》。

5/24に開かれた奈良市の「観光戦略部会」(第6回)の模様を伝える記事で、同部会の事務局が、「観光戦略部会報告書(案)」を発表したのだ。

部会では《奈良観光の課題としては、「観光商品」がない▽食の魅力がない▽特産品を増やすことが必要▽宿泊施設が不足▽魅力を伝える情報発信が機能していない▽公共交通の便が悪い―などが指摘された》。

《委員らの議論では、「もっと観光の具体論を示すべき」といった意見から、「市長との意見交換が必要」という、官民の連携強化などが出されたほか、「民間が観光の努力を怠り、商売熱心でない」といった厳しい意見も出るなど、観光に対する抜本的見直しの必要性が示唆された》そうだ。

こんなキビしい「苦言」を呈する「観光戦略部会」とは、奈良市長の諮問機関である「都市経営戦略会議」の下にある4部会の1つだ。
※奈良市・都市経営戦略会議のサイト
http://www.city.nara.nara.jp/icity/browser?ActionCode=content&ContentID=1147829686195&SiteID=0

市のホームページによると《具体的な施策の後方支援としての奈良ブランドをもう一度創り出す、あるいは磨きだす施策を検討するにあたり、どのようにそれを進めるかを検討し、意見・提言します》とある。
※観光戦略部会のサイト
http://www.city.nara.nara.jp/icity/browser?ActionCode=content&ContentID=1153731902165&SiteID=0

観光戦略部会のサイトには、会員名簿(=奈良の著名人・有識者)やこれまでの議事録・資料が掲載されていて、とても参考になる(ただし苦言も多い)。詳細が紹介されている第4回資料「奈良の観光について」からピックアップしてみると、

1.奈良(市)観光の長所
・社寺、自然、神仏、人間、動物が共生している。
・1200年の文化が途切れず活かされている。
・神話・信仰の歴史があり、名所旧跡がある。
・奈良(市)に憧れ、行きたいという人が多い。
・寺院を訪れると心が癒される。

2.短所
・門前の菓子がない(江戸時代まではあった)。
・地元民が奈良に誇りを持っていない。
・町のまん中に商店(市場)がない。
・宿泊者数・宿泊施設数がともに少ない。
・奈良検定のPRが足りない。
・首都圏にPR拠点がない(iスタジオは不評)。
・観光パンフレットは「京都の付け足し」のよう。

3.今後の方向
・「行政がすべきこと」と「市民・企業がやること」の役割分担を明確に。
・中南部に送客し、奈良市に泊まってもらう。
・シニア層対象の「奈良講」(宿泊で歴史・文化を学ぶ)を設置。
・3日間使える共通拝観券(パスポート)。
・清潔な部屋と風呂だけの宿泊施設(個性やニーズに応じた施設)。
・行政は奈良検定の盛り上げ・やり方の工夫を(観光の起爆剤になりうる)。

長所・短所とも、よく書かれている。思い当たることばかりだ。市の機関なのに、耳の痛いことをきちんと出しているところがエラい。確かに「奈良検定」も、もっと活用すべきだ。

第5回の議事録には、報告書を仕上げた後《実際に、旅行業者、旅館組合等の方々と議論してみてはどうか》《次回(5/24)はその報告を作る会議とする》とある。

つまり、この次(第7回)には観光業者と議論することになる訳で、どんなバトルになるのか、傍聴したいものだ。

※参考:観光地奈良の勝ち残り戦略(4)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/da061e8e6a2ccb4e00900a2ae25467d4

※写真は、朝もやの興福寺(南円堂と五重塔 07年5月撮影)

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17 コメント

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勝負の年度ですね (はじめまして)
2007-05-29 22:06:38
 いろんな情報を束ねていただいてありがとうございます。

・門前の菓子がない(江戸時代まではあった)。

・町のまん中に商店(市場)がない。

この二つを規制緩和と店舗誘導で無理やり創り出してはどうでしょうか 興福寺境内や東大寺境内をショッピング空間にしてしまってはどうでしょうか。
 最高の日本文化を体験し、同時にその近接空間で土産のをお買い上げいただく。こんな発想はむりなのでしょうか


 清水寺になぜ沢山、世界から客が来ているのかを、わが(小さい)業界でこそっとアンケート調査しました。
 
 実はお寺の魅力でなく、「門前の多種多彩な土産物屋群とそれを’買う買わない’のやり取りをする商人と観光客が創り出す空間そのもの」が集客力の根源でした。

 
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美都としてのブランド力 (南都より)
2007-05-29 23:41:46
このテーマは深くて尽きませんね^^。

絶対に譲ってはならないのは「安易なよそのマネ」でしょうね。

わたしの知人の奈良好きはだいたい京都に対する評価が低いです。

京都の商売一途なところは部分的には見習って下手をすれば拝金主義的な物質主義に結びつきかねません。

癒しの空間としての静かさ、落ち着き、ヒトの適度な密度(対シカ)が奈良を独自の古都にしていると思います。

現状についての指摘、反省はもちろん当たっていますがだからといって今ある奈良の良さをないがしろにしないよう気をつけたいものです。

一番奈良で致命的なのは商業ゾーン(近鉄奈良駅~東向き、JR奈良駅前)がどうしようもないほど観光都市らしからぬところでしょうか。

とても古都の玄関とは思えません。

パチンコ屋や家電屋とか。。。

それに古都奈良に相応しからぬ近鉄ビルにJR奈良駅前玄関。

ローマにしろウィーンにしろミラノにしろ観光都市の玄関にはそれなりの風情があります。
今後、奈良は駅前の再開発を古都らしいデザインを考慮してやる必要があるのではないでしょうか?

品格のある古都らしいブランド力を構築するためには美しくなくてはなりません。

奈良には「美都」になる資格は十分あると思います。
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市場の賑わい (tetsuda)
2007-05-30 21:54:21
はじめましてさん、南都さん、コメント有難うございました。

《清水寺になぜ沢山、世界から客が来ているのか》《「門前の多種多彩な土産物屋群とそれを’買う買わない’のやり取りをする商人と観光客が創り出す空間そのもの」が集客力の根源でした》

なんとなく分かります。「市」の楽しさですね。境内はともかく、近隣の商店街をこのように作り変えることは可能だと思います。

なお「門前の菓子」は、県・農林部農政課の「奈良のうまいものづくり」第3弾で進行中です。

《癒しの空間としての静かさ、落ち着き、ヒトの適度な密度(対シカ)が奈良を独自の古都にしていると思います》

これも分かります。「癒し」がひとつのキーワードでしょう。

《致命的なのは商業ゾーンがどうしようもないほど観光都市らしからぬところでしょうか》

奈良市の資料には「民間が観光の努力を怠り、商売熱心でない」という意見もありました。

抹茶のアイスクリームを考案したのは、京都の土産物屋さんだそうです。京都の産寧坂には、著名な七味唐辛子のお店もあり、それだけを目当てに訪ねる人も多いようです。

奈良の良さを保ちつつ、観光客がおカネ落としてくれる仕掛け作りが求められています。
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拝金主義は避けたいですが (はじめまして))
2007-05-30 22:02:43

拝金主義的な物質主義は最も奈良らしくないもので
可能な限り避けねばなりませんが。
 衰退はもっと避けねばなりません。
 私は高台寺さんをあえて崇拝しています

 京都の高台寺さん(ねねの菩提寺)のご努力を 拝金主義という人はいます、しかし、ここまでに寺を復興され、自立的に寺の経済を動かされているのは
やはり自助努力の結果です。

 清水寺へ行く人を上手くねねの道の途中でキャッチして高台寺に誘導されるのには関心しました、夜のライトアップも凄いです、600円の抹茶セットもGOODでした。

 自治体が公的資金で観光都市づくりをすることも必要でしょうが、宗教法人なり民間ができることを応援する、あるいは後押しする ことも重要ではないでしょうか

 
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外国人の買い物 (横田)
2007-05-30 22:47:32
25日・毎日放送の「ランキンの楽園」では、調理用品店が並ぶかっぱ橋(浅草)での舶来さんの買い物を取り上げていたのですが、あまり高いものは買わず、むしろ地域の文化交流を楽しむのがメインだと説明されてたように思います。
(ランキングの内容についてはURL欄に入れてあります)

こうしてみると京都の物質主義は、買い物のやり取りを楽しむ、という点では、ぎりぎりの線という見方もできます。
清水寺らしい土産がないかな、と物色できるし。
行きすぎだな、と思った店には入らなければいいのですし、後で「あんな店に行ったのかよー」と揶揄されるのがオチ。

それから菓子も進取の気風らしく、ニッキをいれるのが常識らしい「生八つ橋」も、黒ゴマ主体にし、ニッキを排したものが数年前から出ていますが、これもニッキが苦手な人にはけっこう好評です。
私も数年前のデビューで、おっ、と思って手を出して以来のお気に入りです。

菓子屋の知人にいわせると、外気を遮断しない状態での製造販売は衛生法でも問題がある」とのことです。
下手に屋外製造販売を許可し、問題が起きたら責任をとらなきゃいけなくなります。
それと、鹿は、鹿せんべいしか与えられないという問題も考えておいてください。他のものを与えると、それに味をしめしてそれを狙って食べるようになるので、食品販売を厳しく制限しているのもそのためかもしれません。詳しくは奈良の鹿愛護会のサイトを。
http://naradeer.com/deer%20message.htm
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京都の知恵 (南都)
2007-05-30 23:37:10
京都にはいくつもアイディアがあって確かにすごいところがありますね。

抹茶アイスクリームにしろ高台寺の夜のライトアップにしろ・・・。

薬師寺さんの元気の良さもアイディアと強い意志があったからだと思います。

登大路などはもう少しメインストリートとして華があっても良いかなと思います。

いっそのこと県庁にはどいてもらって跡地を駐車場にして、あそこから先は歩行者天国にした方が色々な仕組みを考えることができるかもしれません。
(一寸過激かもしれませんがあそこに官庁がある必要は全然ないですよね。)
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Unknown (hashimoto_h)
2007-05-31 09:27:06
投稿の方はご無沙汰していますが、毎回感心しながら拝読しています。

実は私のお袋は京都西陣の出身で、私は半分京都人なんですが、あまり京都は好きではありません。

それは京都人のプライドの高さが鼻持ちならないからです。奈良人?もそういうところが感じられなくもないですが、京都人に比べると穏やかです。

いらんことはどうでもいいことで、奈良観光の再開発のためには、近鉄を水谷橋ぐらいまで延伸することです。もちろん水谷橋は東出口で西出口は新公会堂前です。もちろん地下鉄です。上へ上がれば、身も心も開放感に満たされる、まさに美しい日本の私です。

それだけで再開発の起爆剤になると思います。
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地下延伸? (横田)
2007-05-31 19:26:40
地下鉄の延伸となると、多量の土砂が出てくると思う…。また、シールドマシンをどこから入れるのかな。
世界遺産登録地域内での工事はユネスコの事前承認が必要です。
もちろん登録を取り消してもらえば何でも出来るようになりますが、世界的な世論が許すでしょうか。

大阪市営地下鉄今里筋線では、早くも多量の漏水に年に4000万円の対策費が掛かっています。駅舎を地上から開削する工法で安くしたせいもあるようです。
それでなくとも箕面や高尾の各トンネルでは、あっさり地下水がトンネル内に抜けてえらいことになってます。
(特に高尾では「試掘」だけで簡単に地下水が下がったのだそうです)

平城京跡の中を通る近鉄を阪奈道路へ移設するのに合わせて、跡地にLRTを敷設して、そのままJR・近鉄の2方向へ引くのがよさそうです。
クルマはパリなどに倣って「クルマは遠慮してね」をさらに強化してもらう必要はありますが、どう進めるかも考えておきたいです。
欧州では既に実現しているのなら、日本でも率先してやってみても良いでしょう。もともと奈良じたい、外国の文化も率先して取り入れたんですし。

県庁を駐車場にすると、旧R24北入り口になる梅谷口からクルマが繋がってしまいそうですが、ここをパークアンドライド拠点にして利用できるか試行してみる価値はありそうです。あとドリームランド跡の前の駐車場も。
返信する
歩いて楽しむ奈良 (tetsuda)
2007-06-01 05:45:50
はじめましてさん、横田さん、南都さん、hashimoto_hさん、コメント有難うございました。

> 私は高台寺さんをあえて崇拝しています

あの道を通ると、するすると高台寺に入ってしまいますね。でも後悔することはありません。嫌味なく上手にPRされているわけです。薬師寺もそうですが、これはアリだと思います。

> 買い物のやり取りを楽しむ、という点では、
> ぎりぎりの線という見方もできます。

巣鴨のとげ抜き地蔵商店街とか天理の本通り商店街でも、日用品的なもの(雑貨とか袋物)がよく売れています。奈良公園周辺でも、包丁などの刃物がよく売れるそうです。根っ子のところに文化を感じさせるからでしょうか。

> 詳しくは奈良の鹿愛護会のサイトを。

このブログでも取り上げましたが、皆さんぜひ愛護会の活動にご理解とご支援を。

> 県庁にはどいてもらって跡地を駐車場
> にして、あそこから先は歩行者天国に

土日の渋滞は、目に余るものがあります。パーク&バスライドを真剣に考える時期に来ています。

> 奈良観光の再開発のためには、近鉄を
> 水谷橋ぐらいまで延伸することです。

これはちょっと疑問です。奈良公園のまん中にまで延伸するのは、環境破壊の恐れがありますし、今の近鉄奈良駅も十分便利なところにあります。それに、延伸しても(おカネを落とさない)日帰り客が増えるだけではないでしょうか。

パーク&バスライドの実施で「じっくり歩いて楽しむ奈良」を演出することが先決だと思います。
返信する
環境との共存 (南都)
2007-06-01 23:45:21
奈良先端技術大が東京で環境再生関連のシンポジウムを高市議員を呼んで大々的にやるそうです。
これからは空気や水、緑が貴重な都市財産になるのではないでしょうか?
世界遺産としての奈良はやはり環境・自然との共存がキーポイントですよね。
パーク&ウォークみたいな環境に優しい古都復活が望まれますね。
排気ガスにまみれたり環境が破壊されてしまえば奈良の奈良たるゆえんがなくなってしまいますよね。
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