このブログのコメント欄で、奈良の方言に関する話題が出ていたので、ここでまとめてみる。
※参考:「コメント欄」を下の方にスクロール
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/00ca68271f1ff4c9e670efacd8c7e121
「奈良の方言」としてコメントをいただいた中で、「うたて(うたてし)」「おとろし」「夜さり」は古語だった。「とごる」(沈殿する)は古語ではなく滞る(とどこおる) がなまった言葉で、奈良県や和歌山県だけでなく、愛知県でも使われている方言だそうだ。
※メーリングリストで存じ上げている福田和真さんの「田辺弁講座」
http://lb.tanabe-cci.or.jp/~fukuda/dialect/words/t/togoru.html
「回りする」(したくする)も辞書には載っていない。私が奈良弁だ思っていた「てれこ」(あべこべ)は広辞苑にちゃんと載っていて、方言ではなかった。
Wikipedia「奈良弁」の書きかけ項目には、《大阪弁や京都弁と似ている部分が多いが、「去ぬ(いぬ)」などの古語の表現も残されているのが特徴である。古来、日本の中心地として、日本語の発展に大きく影響を与えてきた方言の一つである。また、長岡京や平安京への遷都以降も交通の要衝として、大阪弁や京言葉に影響を与えたり、受けたりしていた》とある。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%88%E8%89%AF%E5%BC%81
確かに「いぬ」(帰る)も古語だ(和歌山県でも使われているが)。古語の表現が現在に残り、それが奈良弁の何割かを占めていることは、間違いなさそうだ。
Wikiのフランス語版には「Naraben」という項目があって、いろんな奈良弁の意味と仏訳が出ている。日本語版より充実しているところがスゴい。筆者は、奈良女子大にでも留学していたのだろうか。見出し語と意味をそのまま列挙すると、
まわり(したく)、ぐいち (ちぐはぐ)、きける (疲れる)、 ~いす ・~やいす (~ます)、ロック (平ら)、まとう (弁償する)やりこい(やわらかい)、はんざいこ (物の隙間)、おとろしー (面倒くさい)、もまない (まずい)、えー (良い)、ほーせき (おやつ)、とこぎり (徹底的)、なかなか (どういたしまして) 、げんろく (ひざがしら)、あんじょー (うまく)、ねがう (訴える)、けなるい (うらやましい)、はんそする(修理する)、~みー (~ね)、きたなか (半分)、はんつ (半端)
http://www.commecadujapon.com/dokuwiki/japonais/dialectes/naraben
生粋の奈良県人の皆さん、上記の奈良弁をご存じだったろうか。奈良市に30年住んでいる私にして、聞いたことのない言葉がたくさん混じっている。このうち、まわり、ぐいち、きける、まとう、もまない(もむない)、えー(これは関西標準語)、あんじょーは、私の故郷の紀北地方(和歌山県北部)でも使う。
上記を古語辞典で調べると、もむない、けなるい(けなりい)は古語だった。ポピュラーな奈良弁は、他にももっとありそうだ。ご存じの方は、コメントをお寄せいただきたい。
※写真は、奈良市柳生の「芳徳寺」(ほうとくじ・芳徳禅寺とも)。柳生宗矩(むねのり)が、亡父・柳生石舟斎宗厳(せきしゅうさいむねよし・柳生新陰流の創始者)の菩提を弔うため、沢庵禅師を開山として創立した。05年1月に撮影。
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http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/00ca68271f1ff4c9e670efacd8c7e121
「奈良の方言」としてコメントをいただいた中で、「うたて(うたてし)」「おとろし」「夜さり」は古語だった。「とごる」(沈殿する)は古語ではなく滞る(とどこおる) がなまった言葉で、奈良県や和歌山県だけでなく、愛知県でも使われている方言だそうだ。
※メーリングリストで存じ上げている福田和真さんの「田辺弁講座」
http://lb.tanabe-cci.or.jp/~fukuda/dialect/words/t/togoru.html
「回りする」(したくする)も辞書には載っていない。私が奈良弁だ思っていた「てれこ」(あべこべ)は広辞苑にちゃんと載っていて、方言ではなかった。
Wikipedia「奈良弁」の書きかけ項目には、《大阪弁や京都弁と似ている部分が多いが、「去ぬ(いぬ)」などの古語の表現も残されているのが特徴である。古来、日本の中心地として、日本語の発展に大きく影響を与えてきた方言の一つである。また、長岡京や平安京への遷都以降も交通の要衝として、大阪弁や京言葉に影響を与えたり、受けたりしていた》とある。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%88%E8%89%AF%E5%BC%81
確かに「いぬ」(帰る)も古語だ(和歌山県でも使われているが)。古語の表現が現在に残り、それが奈良弁の何割かを占めていることは、間違いなさそうだ。
Wikiのフランス語版には「Naraben」という項目があって、いろんな奈良弁の意味と仏訳が出ている。日本語版より充実しているところがスゴい。筆者は、奈良女子大にでも留学していたのだろうか。見出し語と意味をそのまま列挙すると、
まわり(したく)、ぐいち (ちぐはぐ)、きける (疲れる)、 ~いす ・~やいす (~ます)、ロック (平ら)、まとう (弁償する)やりこい(やわらかい)、はんざいこ (物の隙間)、おとろしー (面倒くさい)、もまない (まずい)、えー (良い)、ほーせき (おやつ)、とこぎり (徹底的)、なかなか (どういたしまして) 、げんろく (ひざがしら)、あんじょー (うまく)、ねがう (訴える)、けなるい (うらやましい)、はんそする(修理する)、~みー (~ね)、きたなか (半分)、はんつ (半端)
http://www.commecadujapon.com/dokuwiki/japonais/dialectes/naraben
生粋の奈良県人の皆さん、上記の奈良弁をご存じだったろうか。奈良市に30年住んでいる私にして、聞いたことのない言葉がたくさん混じっている。このうち、まわり、ぐいち、きける、まとう、もまない(もむない)、えー(これは関西標準語)、あんじょーは、私の故郷の紀北地方(和歌山県北部)でも使う。
上記を古語辞典で調べると、もむない、けなるい(けなりい)は古語だった。ポピュラーな奈良弁は、他にももっとありそうだ。ご存じの方は、コメントをお寄せいただきたい。
※写真は、奈良市柳生の「芳徳寺」(ほうとくじ・芳徳禅寺とも)。柳生宗矩(むねのり)が、亡父・柳生石舟斎宗厳(せきしゅうさいむねよし・柳生新陰流の創始者)の菩提を弔うため、沢庵禅師を開山として創立した。05年1月に撮影。
> 妻は相当、わかるというか、使ってきたといいました
そうでしたか、「奈良県人度」は相当高いですね。やはり「そねん」(そんなに)とか、「みぃ」(ねぇ)とか、おっしゃいますか?
大淀町越部出身の父は餅を“あも”、鮎を“あい”と言っては大淀町下淵出身の母から「いちびってそんな古い言葉ゆわんでよろしいがな」と横槍を入れられてました。
聞いていくと共通のお知り合いが出てきそうなことになりそうな・・・
「あもかもち」という言葉、ご存知ですか?これは吉野特有なのかしら、義父がよく使っていてきいた事が無かったのでよく覚えています。嫁いだ頃は吉野弁分からなくてひとつひとつ聞きました。生まれたときから大淀なのに・・・
とこぎり、はんそする、きたなか以外は全部知っています。80代以上のかたは普通に使っています。
「はんざいこ」は「はんだいこ」と使っていると思います。
> 大淀町越部出身の父は餅を“あも”、鮎を“あい”
紀北でも、年配の方は鮎を“あい”と言っていました。
> 「あもかもち」という言葉、ご存知ですか?
さすがにこれは紀北では使いません。大和に来て初めて知りました。北葛城郡出身の家内は、“あも”はあんころ餅のことだと言います。あるブログに、こんなコメントが出ていました。
《「あもか餅か」と言い方が、大和では昔からよく使われる言葉です。餅のことを「あも」と呼んだりしますが、どちらの呼び方もします。意味は、2つ選択肢があって両方共どっちもかわらないという事です》http://blogs.yahoo.co.jp/kawaraya2002/51346207.html
> とこぎり、はんそする、きたなか以外は全部知っています。
そうでしたか、それはスゴい。奈良弁は奥深いですね。
以前「ようの事」についてお書きでしたね。母に聞くと知らないということでした。今月末には89歳になり最近のことは物忘れするようになって来ましたが、昔のことはよく覚えています。下淵では使わなかったのでしょう。岸田さんの本によると結構おなじ村でも違いがあるということでした。
「あもかもち」は知りません。「はんそする」ではなく「はそんする(=修繕する)」は岸田さんの本に載っていました。岸田さんをご存知なのですか? あの先生は上北山村で過ごされたことがあるそうで吉野郡の紹介が多いですが、他地域の方言も載っています。
「ようの事」(他の事というような意味)は奈良市からこちらに嫁がれた方(70代後半)が使われていたので、奈良の言葉ではないかと思いました。吉野では使わないと思います。
奈良の方がいらしたら教えていただけるかと思ったもので・・・
お母様お元気なんですね。うちの義父はもうすぐ91歳です。認知症ですが、ホントに昔のことはよく覚えてます。
どこの誰かすぐに分かってしまいますが、私は寺のお守りをいたしております。岸田定雄氏は私どものお檀家様であります。もう亡くなってずいぶん経ちますが、晩年、地域のことなどもいろいろ調べて町の広報に載せたりなさってました。まさに学者肌の方で今でもその風貌はありありと浮かんできます。私は不勉強な者ですが、父や主人から立派な学者さんだと教えてもらいました。
> 岸田さんをご存知なのですか? あの先生は上北山村で
> 過ごされたことがあるそうで吉野郡の紹介が多いです
岸田氏は方言だけでなく、吉野の民俗についてもたくさんの本や論文をお書きなのですね。
> 岸田定雄氏は私どものお檀家様であります。
そうでしたか、それは不思議なご縁でした。業績を拝見すると、確かに大変立派な学者さんですね。古本屋でご著書を探してみます。
奈良県吉野郡吉野町の中に有って、昔は国樔村(国栖村/くずむら)と呼ばれた地方出身です。
僕が子供の頃(1960~70頃)でも、この地方は独自の方言が残っていて、同じ吉野町内でも場所によっては通じない言葉もちらほら。(国樔とは国の元(素)という意味が有るとのことです)
壬申の乱の際、大海人皇子(後の天武天皇)が一時期身を隠したという土地でもあり、古語が残っていても不思議でない地方と言えますね。
さて、ご紹介の有った幾つかの言葉の中から、子供の頃に使ってた言葉について僭越ながら分かる範囲で補足させてください。
ぐいち:ちぐはぐ、くちがっている
話が"ぐいち"になっとる。その花瓶とこの箱は"ぐいち"やで。
まとう:動詞としては"まとう"ですが、普段は、「これは、"まとて"もらえるやろか?」みたいな使い方になります
やりこい:「やりこい」は聞いた事が無く、「やらかい」と言ってました。
おとろしー :#僕の嫁は、初めてこの言葉を聞いたときはショッキングだったようです。
もまない:「もまない」は聞いた事が無く、「ももない」と言ってました。
えー:「えーもん買うてもうたなあ」=「良いものを買ってもらったね」というような用法でした。
ほーせき:「ほーせき」は聞いた事が無く、「ほせき」と言ってました。
げんろく:「ろ」のところにアクセントが有ります。
けなるい:「けなるい」は聞いた事が無く、「けなりい」と言ってました。
▼リストの中では聞いたような気がしない言葉
なかなか (NaKaNaKa)
とこぎり (ToKoGiRi)
ねがう (NeGaU)
はんそする (HaNSoSuRu)
きたなか (KiTaNaKa)
はんつ (HaNTsu)
▼リスト以外の言葉(奈良弁というよりは吉野弁あるいは国栖弁なのかもしれません)
くわし(くわしん):=お菓子。たぶん菓子の古い読み方「くぁし」が訛ったものだと思う。
やぶち:=みんな
くちな:へび
くどさん:かまど
あい:普段 「あいの日は家におるで」=「普段の日は、家に居るよ」
ほたく:暴れる 「ほたくな!」とよく叱られたもんです。
もだく:直訳するとなんでしょう?「家をもだく」と言えばリフォームする事だったりするので、なにか忙しくしていたりチョコマかやっていたりする様を言うのでしょうか?
づつない:=せつない
ひどっこう:ひどく、強烈に
「げんろくをひどっこう打ってんさー」=「膝を強烈に打ったんだよー」
さら(漢字ではたぶん"更"):新(新品)
「更のノートや」=「新品のノートだ」
さらい(漢字ではたぶん"更い"):=新しい
「この鉛筆まださらいやん」=「この鉛筆、まだ新しいじゃない」
ほりゃ:=ほれ 「ほりゃみー」=「ほれ見なさい」とか、なにか呆れるような話を聞いたときの感嘆詞として単独で「ほりゃー!」と使う。
な。:=ね。(念を押すとき)
もうこんな事せんときや。な。=もうこんな事をしないようにね。ね。
せやさ:=そうだよ 強調するときには語尾を延ばして「せやさー!」と言う。
せやな:=そうだな 物思いに耽るようなときには語尾を延ばして「せやなぁ」となる。
~にゃ。:「せやなー」などの「なー」が国樔弁では「にゃー」になる事が多い。
相づちとして「せやにゃー」と言ったり、
「今日はきけたにゃー」=「今日は疲れたなー」といった使われ方。
おめく:漢字で書いたらたぶん「大鳴く」だと思う。大声で叫ぶ事。
川の向こう岸に居る人を呼ぶためにおばちゃん達が大声をだすシーンでした。
おばちゃんA「みんなでおめこらよ」
おばたやんB「せやな、おめこ、おめこ」
この会話を聞いて大阪出身の僕の嫁は、気絶しそうになったそうです。
▼吉野川(紀ノ川)
イントネーションに関して奈良県吉野町~下市町~大淀町~和歌山県橋本町~和歌山市あたりの吉野川流域はとても良く似ていると思います。河川を通じて昔から人の交流が有ったという事だと思います。
国栖のご出身ですか。東吉野村へ行くときなどに、お近くを通りかかりました。奈良検定テキストには「手漉き和紙の里」として紹介されています。『奈良の地名由来辞典』には、クニス(国主=先住土着民)が語源とのことです。由緒ある土地柄ですね。
《▼リスト以外の言葉(奈良弁というよりは吉野弁あるいは国栖弁なのかもしれません)》の中に、私の知っている使う言葉がありました。
「くちな:へび」。これは広辞苑にも《くちなわ(朽縄に似ているからいう)ヘビの異名》と出ています。「くどさん:かまど」これも広辞苑に出ています。《くど【竈】(1)竈(かまど)の後部の煙出し。(2)かまど。へっつい》。私の出身の九度山は「かまどの土を取る山」という意味だそうです。
「あい」「さら」「せやな」は関西弁ですね「ひどっこう:ひどく」、これは母(大淀町出身)がよく使います。「おめく」は知りませんでした。紀北では「おがる」と言います。
> おばちゃんA「みんなでおめこらよ」
> おばちゃんB「せやな、おめこ、おめこ」
これは紛らわしいですねぇ。「らよ」(~しようよ)は、和歌山弁も同じです。
> イントネーションに関して奈良県吉野町~下市町~大淀町~和歌山県
> 橋本市~和歌山市あたりの吉野川流域はとても良く似ていると思います。
イントネーションはそのとおりですが、圧倒的に奈良県人の方が、言い方が丁寧です。以前、司馬遼太郎の「およそ紀州と土佐には敬語というものがない」という言葉を紹介しましたが、祖母(五條市出身)など、「嫁いできたとき、言葉が乱暴なので驚いた」と言っていました。