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故立花隆氏の「若者たちに贈る言葉」/奈良新聞「明風清音」第63回

2021年09月24日 | 明風清音(奈良新聞)
奈良新聞の「明風清音」欄(毎週木曜日)に、月2回程度寄稿している(今月は3回)。昨日(2021.9.23)掲載されたのは〈故立花隆氏「贈る言葉」〉だった。氏の『二十歳の君へ』(文藝春秋刊)などに掲載された言葉を紹介した。最近はたまに若者向けの講演などの依頼を受けるので、少しまとめておこうと思い立ったのだ。では、全文を紹介する。
※トップ画像は、文藝春秋社のサイトから拝借

ニュージャーナリズムの旗手、立花隆氏が4月30日に逝去されたことを知り、とても驚いた。長年、痛風、糖尿病、高血圧、心臓病、がんなどの病気をかかえ、入退院を繰り返しておられたことは聞いていたが、まだ80歳、新たな展開を楽しみにしていた矢先のことだった。

氏の代表作はあらかた読んでいたが最近は少し遠ざかっていたので、最新作を何冊か読んでみた。その中で『サピエンスの未来~伝説の東大講義』が刺激的だった。帯には〈すべてを進化の相の下に見よ!物質・生命・脳・宇宙……あらゆるテーマを綜合する立花人間学の集大成〉とある。本欄でこの本を紹介しようと試みたが、あまりに内容が豊富すぎて、とても文字数が足りない。

思案していたところ『「知の巨人」立花隆のすべて』(「文春ムック」永久保存版)が刊行され、そこに「東大生たちに語った特別講義」の章があった。同社刊の『二十歳の君へ』の抄録だった。切り口は違うが、若者への有益な助言となっている。ここからポイントを抜粋する。

▼数年以内に「大失敗」する
〈(これまでの自らの人生の)経験を踏まえた上で、今からはっきり予言できることは、君たちの相当部分が、これから数年以内に、人生最大の失敗をいくつかするだろうということです。失敗には取り返しがつく失敗と、取り返しがつかない失敗があります。君たちの失敗が後者でないことを祈るばかりです〉。

▼「大きな決断」を迫られる
〈もうひとつ予言できることは、これから数年以内に、君たちは次から次に予期せぬ事態にまきこまれて、充分な準備ができないうちに、大きな決断を下すことを何度も何度も迫られるということです。(中略)大切なことは、まず問題に具体的に取り組み始めることです。そして、途中で必ず「何が適切な順序か」分からなくなるという事態に遭遇するでしょうから、そこで集中的に「考える順序の問題と先決問題の議論」に取り組むのがいいということです。すべての問題には考えるのに適切なタイミングがあります。早すぎても最適解に達せないし、遅すぎてもいけません〉。

▼「正解のない問題」がある
〈そもそもこの世のあらゆる問題の正解はひとつではない、ということです。というか、現実世界には、正解がひとつもない問題も膨大にあるということを知らなければなりません。(中略)第一にやるべきことは、わけの分からなさの整理です。何が分からないのか、自分は何を知りたいのか、といったことを整理して書き出し、問題として設定してみる。問題設定、それがいちばん大事なことです〉。

▼「情報の発信者」に転じる
〈脳が若さを保っている間に、情報の受け手から発信者に転ずる必要があります。読んで知識を入れる一方の生活から、読みつつ書く生活に変わるということです。(中略)アウトプット能力はそれまでのインプット量に比例して大きくなっていきます〉。

▼人生は「苦戦の連続」だ
抜粋は以上だが、NHK総合「クローズアップ現代プラス」(6月30日放送)で、氏は若者に向かってこんなことを話していた。〈「ゲゲゲの鬼太郎」というのは、みなさん読んだことがあると思うんですが、必ず最後「今回も苦戦だったな」、そういうひと言が出るでしょう?人生っていうのは結局、苦戦の連続なんです。だから僕もずいぶん今いろいろ振り返ると、本当に苦戦の連続だった。でも苦戦を切り抜けていく、そういう内的エネルギーを持続させることが大事なんです〉。

立花氏にして、苦戦の連続だったのだ。老いも若きも「内的エネルギーの持続」を心がけたい。(てつだ・のりお=奈良まほろばソムリエの会専務理事)


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