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興福寺五重塔を映す猿沢池/毎日新聞「かるたで知るなら」第21回

2021年09月14日 | かるたで知るなら(毎日新聞)
NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」は、同会が制作した「奈良まほろばかるた」の各札をもとに毎週木曜日、毎日新聞奈良版に「かるたで知るなら」を連載している。先週(2021.9.9)掲載されたのは「多くの伝説 采女入水/興福寺(奈良市)」、執筆されたのは大阪市出身・奈良市在住の小倉つき子さんだった。

小倉さんには『ドラマチック奈良』『廃寺のみ仏たちは、今~奈良県東部編~』(いずれも、京阪奈情報教育出版刊)というご著書もある。信貴山千手院で得度され、小倉涼真という法名もお持ちである。今は続編の『廃寺のみ仏たちは、今~奈良盆地編~』をご執筆中だ。では、記事全文を紹介する。

〈興福寺五重塔を映す猿沢池〉
猿沢池の穏やかな水面に映える興福寺五重塔は古代より親しまれてきた奈良随一の景勝です。猿沢池は天平時代、興福寺南の仏花を栽培する花園の中に造られた、周囲300㍍余りの池。今も捕えた魚などを放して殺生を戒める興福寺「放生会(ほうじょうえ)」が、毎年4月17日に営まれています。

猿沢池西畔に采女(うねめ)神社があります。平安時代に成立した『大和物語』によると、奈良時代に天皇の寵愛(ちょうあい)が薄れたことを嘆き、池に身を投じた采女(天皇の身の回りの世話をする女官)の霊を慰めるために創建されたと伝わる小さな神社です。鳥居は東向きですが、社殿は西向き。采女の霊が身を投げた池を見るのはしのびないと、一夜で社殿を、池を背にする西向きに変えたといいます。

中秋の名月の夜(2021年は9月21日)、采女の霊を鎮めるために「采女祭」が催されます。神社で神事が行われた後、午後7時から秋の七草で飾られた2㍍余の花扇(はなおうぎ)を猿沢池に浮かぶ管絃船(かんげんせん)に移します。雅楽が演奏される中、2隻の船が池を巡り、最後に花扇を池に投じる雅(みやび)な祭りです。

猿沢池の采女伝説は、鎌倉時代初めに成立した『古事談(こじだん)』でさらに話が展開していきます。采女の入水(じゅすい)を受けて、猿沢池にすんでいた龍が香山(こうせん)に逃げるという話になります。香山とは春日奥山にあった旧香山堂の近くに今もある竜王池と想定されています。ところが、春日山も騒がしくなってきたので、さらに宇陀市室生の龍穴に移ったとか。采女入水のお陰ですみかを二転三転させられた龍神説話です。(奈良まほろばソムリエの会 小倉つき子)

【興福寺】
(住 所)奈良市登大路町48
(駐車場)有り。1000円
【猿沢池】
(住 所)同市登大路町猿沢49
(交 通)JR奈良駅から徒歩20分、近鉄奈良駅から徒歩5分
※采女祭は2021年度はコロナ禍で規模を縮小して行う。


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