「ファーストフード・ネイション」という映画を観ました。
ルポルタージュ「ファストフードが世界を食いつくす」(草思社刊)を元に
映画化された ファーストフード業界の実態を暴く物語です。
「食の安全性」のみならず「格差社会」「環境問題」などへの
問題提起になっています。
映画では、ハンバーガーチェーン店の本社幹部、
牛の生産現場、精肉工場と、そこで働くメキシコからの密入国者、
店舗で働く学生、それぞれに焦点をあてて問題をあぶりだしています。
中でも精肉工場の労働環境は悲惨です。
命がけで国境を越えて仕事を求めてやってきた密入国者たちの
弱みにつけいるような劣悪な境遇。
1時間に60頭分の処理をするというライン稼動の早さのため
従業員の作業が追いつかない。
動物の血や糞便が肉に混入することなど日常茶飯事。
ケガも多く、それに対する補償もない。
あまりのひどさに、どこまでフィクションなの?現実なの?と
逆に疑いたくなるほど。
牛が牛肉になっていく過程はあまりに残酷で機械的で
命をいただくことの神聖さが全然感じられなくて
ただ、重さだけがずっしりと石を飲み込んだように残る。
何も変わらず、救いのない映画の結末に
巨大産業に押しつぶされる無力を感じつつ
やはりこれも、知らなければならない事実、
伝えなければならない現実、だと思う。